株式会社サイバー・コミュニケーションズ(以下、cci)は、日本のインターネット誕生とともに歩んできた歴史とノウハウを活かし、電通グループのデジタル領域を担う中核企業として、最先端のメディアやデバイスに最適な広告商品の企画販売など、高度なテクノロジーを基盤としたインタラクティブ領域のあらゆるマーケティングサービスを提供し続け、常に拡大、進化しています。

社内での基幹システム構築の検討にあたり、システムの安全性(可用性、事業継続性)を向上させようとすると、複数データセンターでのシステム運用等、多額の初期費用が必要となる点が課題でした。弊社は電通グループ情報セキュリティ(DGS)というグループセキュリティ基準に従い、ISO27001 の認定を得ていますが、その認証プロセスでクラウドが考慮されるようになったため、課題であった初期費用、運用費用を軽減する方法として、基幹システムのクラウド化を検討することになりました。

今回のシステムは基幹業務での利用となる事から、セキュリティ、特に DGS への対応が重要な要件でした。他のクラウド環境と比べ、AWS が多くの業界規制、セキュリティ基準に対応している事例が多いことが重要な要素となりました。しかしながら、その多くが米国での事例であったので、それを DGS でどう取り扱っていくかという点についての検討プロセスに時間をかけました。実際の構築に関しては、同じグループ会社であり、AWS のコンサルティングパートナーでもある株式会社電通国際情報サービス(ISID)、及び株式会社ISIDアドバンストアウトソーシング(ISID-AO)に AWS 環境の構築を委託し、DGS への対応をより確実なものにする体制を取りました。

もっとも重視したのは、事業継続性の担保と運用コストのバランスでしたが、その要求事項を満たすため、

  • 広域災害発生時にサービスの長期停止が発生しないシステム構成
  • システムの完全停止を防止するための冗長化策
  • 夜間、休日にシステム停止等が発生した際、人を介在させずにシステムを自動復旧する方式
  • ビジネスデータを復旧させるためのバックアップ/リストア方式

などについて ISID / ISID-AO と検討を行いました。その結果、AWS サービスの可用性、標準機能、セキュリティ仕様であればオンプレミスのシステムと同等のセキュリティレベルで業務運用が可能である上、運用コストでも有利であるとの判断に至り、AWS クラウドの採用が決定しました。

今回のシステムでは、IFRS といった大きな会計基準の変更にも迅速に対応し、統合されたビジネスプロセス、一元管理されたデータをもとに、迅速な意思決定を実現するための経営を支えるシステムを実現するために、AWSのパートナでもあるSCSK株式会社が開発した ERP パッケージ「ProActive E²」を採⽤しました。このパッケージを BYOL(Bring Your Own License:クラウドへのライセンス持込)により、AWS クラウド上に構築することで、導入、及び運用コストの軽減を目指しました。

まず、導入時においては AWS クラウドの特性により、機器調達やデータセンターの準備に関わる期間を削減でき、また評価環境や本番環境を数日で立ち上げることが可能であったことから、設計から構築まで 3 ヶ月の期間で完了することができました。また、セキュリティ要件のひとつとして求められた、システムの利用拠点間の通信制御については、最適なネットワーク設計にあたり、AWS のサポートチームから的確なアドバイスを頂き、速やかに要件検討を行うことが出来ました。こうした構築時の時間、及びコストの削減だけでなく、運用においても ISID / ISID-AO が AWS 上に実装していた運用・監視環境を活用することで、従来よりも運用支援のコスト低減を実現しています。

本システムは、AWSの以下のサービスを組み合わせることで構成されています。

  • Amazon EC2
  • Amazon S3
  • Amazon Glacier
  • Elastic Load Balancing
  • AutoScaling
  • Amazon RDS for Oracle
  • Amazon CloudWatch

特徴的な構成としては AutoScaling 機能をスケールアウトではなく、インスタンスの保持目的で利用したことにより、冗長構成によらずに低コストで一定レベルのシステム可用性を実現しています。また、Multi A-Z を活用することで、データ欠落のリスクを大きく減らすことができました。これらの構成を取ることで、基幹システムに求められる、高可用性、高信頼性、負荷分散(パフォーマンスの維持)等を実現しています。

一般的に AWS は、ウェブサービスのようなスケールアウトを求められるようなサービスに適合すると考えられがちですが、基幹業務においても、AWS の各種サービスを効果的に活用することで、高いセキュリティ、事業継続性の確保、可用性の確保、総保有コストの削減が実現できると考えています。

cci では、外部提供サービスでの AWS 利用も継続して行っていきますが、今回以外の基幹業務についても、Amazon DirectConnect を活用して、今後、システム移行をますます加速させていく予定です。

 

- 株式会社サイバー・コミュニケーションズ テクノロジー・ディビジョン エクゼクティブ・テクニカル・エキスパート 宮一 良彦 様