学校法人 近畿大学は、近畿地方を中心に西日本に6つのキャンパスを展開する、14 学部 48 学科(2016 年 4 月国際学部設置)を持ちます。また、法科大学院と大学院 11 研究科を有し、医学から芸術まであらゆる分野を網羅した西日本最大級の総合大学です。現在在籍学生数は約 33,000人、専任教員数は約 1,800 人となっております。

それまで教育系基幹システムをはじめとした学内のシステムは、オンプレミスで構築・運用を行っていました。しかしながら、システム化が進むにつれ、大量のサーバー群をオンプレミスで構築・運用するということが本当に適切なのか、という疑問を抱くようになっていました。

自前でサーバーを持つということは、資産管理も必要ですし、場所も電気代も掛かってしまいます。もちろん、障害やトラブルが発生したら、その対応も物理的に行わなければなりません。さらに、ハードウェアの老朽化に伴う更新作業も5~6年で必要となりますし、常に最新のセキュリティ対策を行わねばなりません。

このように、いつまで経ってもコストや手間が増大する一方となっていく状況を解消する方法として、注目したのがクラウドの活用でした。その手始めとして、まず SaaS ベースのメールサービスを検討したところ、オンプレミスと比べ、1/10 のコストで実現できることが分かり、その後も本学では、様々な分野でSaaSの導入・活用を進めていきました。

Saas や Iaas が普及し始めたころ、我々 IT 部門ではコスト・可用性・パフォーマンスの観点で導入に前向きでしたが、他部署・他学部では安全性や信頼性の観点でクラウドコンピューティングの導入に懐疑的でした。

しかしながら、SaaS を導入してから 1 年程経過すると、次第に「多機能」「ハードウェア管理が不要」「高可用性」「安価」といったクラウドのメリットが口コミで広まってきました。こうした外部環境の変化により、学内のクラウド化の機運が高まってきたことがきっかけとなり、2014 年に 9 月に教育系基幹システムを AWS に移行しました。

そして 2015 年、業務システムすべてをクラウドに移行することを決定し、クラウドサービスの比較検討を、2015 年 3 月から本格的に開始しました。

検討の際、我々が重要視したのは可用性・セキュリティ・コストの 3 つでしたが、いくつかのクラウドサービスを比較したところ、AWS は 他社の IaaS より商用サービスでの導入実績が豊富な上、運用機能も充実していました。さらに、本学とアマゾンジャパン社の間で、同時期に教科書販売分野での連携協定を結んだこともあり、候補に挙げたクラウド事業者の中でも AWS が最有力候補となり、日本初となる All-In でのAWS 採用を決定しました。

採用を決定後、仕様書作成や見積取得を経て 2015 年 8 月に学内稟議が完了し、9 月より業務システムの構築を段階的に AWS クラウド上で開始する予定です。

クラウドのメリットはハードウェアの調達コストが大きく削減できるという点だと思います。実際に当学で、AWS を採用する際にコスト面を試算してみたところ、初期投資費用は約 70 % 削減することができました。また、10年間の初期投資およびランニングコストを合わせた総費用は、オンプレミスと比べると約 20 % 程削減することができる見込みです。

また、インフラ調達からローンチまでのプロセスも大幅に短縮できるようになる見込みです。自前のサーバーを利用する場合、2~3 ヵ月かかるはずの作業が AWS クラウドの場合、1~2 週間ほどでできるようになっており、こうしたアジリティの改善が実現できる点も、AWS クラウドならでは、だと思います。

今回の全事務系システムの AWS 移行プロジェクトは、3 年半ほどかけて徐々に移行を実施していく予定ですが、これと並行して、主に DNS やメール等の基幹システム、教育系システムについても順次移行が可能なものから AWS に移行予定です。

24 時間 365 日稼働のシステムを AWS クラウドへ移行する場合、そのままではランニングコストを削減することは難しいですが、リザーブドインスタンスや、夜間のリソース縮退運転・スケールアップ/ダウン、運用人件費の見直しといったことを行うことで、必ずコスト削減を実現できます。今後、AWS クラウドを検討される方は、表向きの利用料だけで判断せず、様々な AWS 導入事例を見て検討を進めていただくことをおすすめいたします。

 

- 学校法人 近畿大学 総合情報システム部 主任 高木 純平 様
- 学校法人 近畿大学 総合情報システム部 前川 昌則 様