株式会社レーベルゲートは、国内有力レコード会社の共同出資により2000年4月に設立された音楽配信サービス運営会社です。
レーベルゲートで提供しているサービス「mora ~“WALKMAN”公式ミュージックストア~」(http://mora.jp)は、パソコンとAndroid™OSを搭載したスマートフォン、タブ レット端末向けにワンストアを提供し、共通のmora IDアカウントを利用することで、それぞれの環境から直接音楽の購入・ダウンロードが可能です。
現在、オーディオ410万曲、 ミュージックビデオ2.1万曲(2013年4月末時点)の豊富なラインナップを多くのお客様にご利用いただいています。
2012年4月には「mora」から配信するダウンロードファイルが大容量化(高ビットレート128kbps -> 320kbps)することと、セキュアなURLを生成する要件に伴い、インフラ環境の見直し検討を開始しました。インフラは回線増強やハード購入などの初 期導入コストを抑え、ハイブリッド(オンプレミス+クラウド)にすることを決定。採用するクラウドの選定を進めました。主な採用条件としては、下記に対応 することが求められました。
- インフラの整備とコスト削減
- 柔軟なシステム構成変更対応
- BCP(事業継続計画)対策
AWSを利用し始めてから6ヶ月となりますが、AWS を採用した理由は以下のような点でした。
- 冗長性を確保出来るデータベース構築が容易(Amazon RDS MultiAZ, ReadReplica)
- 日々増加するコンテンツ(音源、動画)をストレスなく保持出来、なおかつ信頼性の高いストレージサービスが存在する(Amazon S3)
- セキュアにダウンロード配布が出来るCDNの利用(Amazon Cloudfront SignedURL)
- 予測のつかないアクセス数に対応可能(Amazon EC2, Elastic Load Balancing)
- オンプレミス間との通信にVPN経路を確保出来る(Amazon VPC)
- 初期導入コストを抑える
AWSを導入することにより、アクセス状況に応じて柔軟かつ迅速に拡張、縮小出来る配信環境を提供することが出来ました。また、サーバーその他、新たなインフラが不要になりコスト削減を図るとともにBCP(事業継続計画)対策も実現出来ました。
「株式会社レーベルゲート様 システム構成図」
レーベルゲートで AWSを導入するにあたっては、2012年3月中旬頃「mora」の配信プラットフォームを新たに構築する取り組みをスタートしました。
2012年4月には、「mora」から配信するダウンロードファイルが大容量化(高ビットレート128kbps -> 320kbps)することと、セキュアなURLを生成する要件に伴い、インフラは回線増強やハード購入などの初期導入コストを抑え、ハイブリッド(オンプ レミス+クラウド)にすることを決定しました。オンプレミスには既存の基幹系システムを配置し、ユーザサービス(ストア)をクラウドに配置するよう設計す ることが出来るよう、クラウドサービスの選定を開始しました。
2012年5月には上記の要件をAWS がクリアする環境であると判断し、AWS アカウント取得し、サイト構築設計・開発および基幹システムの改修をスタートしました。また、同時にAWS上での実現性について、主にSignedURL 周りや、RDSで実施検証を行いました。
また、ネットワークセキュリティ、保存データの堅牢性は、顧客情報を扱うため大事な要素でした。
このため、2012年7月には、Amazon VPCを活用し、オンプレミス間とのVPN経路を確保し、Amazon VPCにて2012年6月に利用可能となった、アプリケーション階層間(プライベートIP)でのロードバラロードバランシングを組み込み、AWS上の環境 の構築をひと通り完了。8月にはサービス検証をスタート。 楽曲コンテンツのエンコードを基幹システム上で開始し、Amazon S3上へ約150万曲分を自動配置し、2012年10月にサービスインすることが出来ました。
こうして本番リリースまで進めていくにあたり、AWS サポートのビジネスを利用しましたが、「上級サポートエンジニアへの直接ルーティング」のサービスが、開発時のヘルプとして非常に役に立ちました。
AWS を採用したことで、初期投資支出について、同等の規模をオンプレミス環境で用意した場合と比べると、およそ 17%程度のコスト削減が出来たと想定しています。また、運用コストについては、新システムのため、厳密な比較は出来ませんが、旧システムの場合と単純に 比較しても16%程度のコスト削減が実現出来ています。
AWS により、短時間でインスタンス追加が可能なため、急激なアクセス増加に対して瞬時に対応出来る環境が実現しました。また、短時間でインスタンス追加が可能 で、急激なアクセス増加に対して瞬時に対応出来る環境が整ったため、更なる今後のユーザ増加にも全く問題なく対応出来そうです。
クラウドの利用は初めてだったため、レイテンシーの問題を心配していましたが、平常時でもオンプレミス環境と比べ全く遜色ありません。
注意すべき点としては、運用費用が定額ではなく、アクセス、利用状況に応じて変動するため、変動要素を見越した予算措置が必要となることがあります。しか し、ピーク時においても、コミットメントなどが全く必要無く、利用分だけの支払いのため、当初の目的であるコスト削減を実現することが出来ました。
- 株式会社レーベルゲート エンジニアリング部 システム運用課 課長 櫻堂 朝彦 様