リコーが複合機を中心としたモノ売りの企業からサービス業への変革を成功させる為には、お客様とつながり続けることが最も重要です。
お客様の課題やニーズをより深く理解し、サブスクリプション方式のサービスを提供する事業基盤の構築には AWS が最適です。
AWS の最新技術を積極的に活用し、ビジネス変革を加速していきます。

野水 泰之 氏 株式会社リコー 常務執行役員 プラットフォーム事業本部長

複合機やプリンター、電子黒板、全天球カメラなどのさまざまなエッジデバイスやアプリケーションをクラウドプラットフォームでつなぎ、顧客の業務プロセス変革や働き方改革を支援するサービスを提供する株式会社リコー。“モノ”から“コト”へと、サービスを中心としたビジネスモデル変革に取り組む同社は、顧客のニーズやインサイトをより深く正確に知るために、事業部横断の共通データ基盤を AWS で構築しています。現在は、その内の一つであるデータ活用基盤を、ドキュメントサービスをはじめとした多くの事業部が利用しており、顧客のサービス利用状況の分析やサービス開発に対するフィードバックに活用しています。


1936 年の創業以来、世の中にイノベーションをもたらす製品やサービスを提供してきたリコー。現在、顧客に提供する価値を『EMPOWERING DIGITAL WORKPLACES』と定義し、人々の“はたらく”をよりスマートにする取り組みを進めています。

「従来は複合機を中心としたビジネスを展開してきましたが、現在は人の働き方変革を支援するための機器やサービスを開発・提供するビジネスへと舵を切っています。それは当社にとって、天動説が地動説に変化するほど大きなパラダイムシフトです」と語るのは、常務執行役員でプラットフォーム事業本部長の野水泰之氏です。

“モノ”から“コト”にシフトするためには、顧客との関係をより深めることが重要で、デバイスデータや人の行動データの取得と分析が欠かせません。そこで同社は事業部横断の共通データ基盤を構築し、パートナー企業とも連携しながらデータ活用や顧客へのソリューション提案を進めています。野水氏は「複合機もエッジデバイスのひとつに位置付け、共通データ基盤上で各種デバイス、クラウドサービス、他社アプリなどの利用状況のデータを活用しながら、オフィスと現場をつなぐソリューションを開発しています」と語ります。

リコーがデータ基盤のクラウド化に本格的に着手したのは 2016 年頃でした。当時は各事業部にてデータ蓄積や IoT の仕組みの検討がそれぞれに立ち上がっており、結果としてビジネスに必要な知見が分散する恐れがありました。そこで 2018 年 4 月に『プラットフォーム統括本部』(現・プラットフォーム事業本部)が新たに設立され、事業部横断の共通データ基盤の構築が始まりました。

プラットフォーム事業本部 RSI 開発センター PF 開発室 インフラグループ リーダーの梅原直樹氏は「事業部横断の共通データ基盤を準備し、その中でデータ活用の仕組みを用意することで、統制を取りながらデータドリブンの文化を全社に浸透させていくことを狙いました。AWS は既に事業部のサービス基盤として多くの採用実績があったことから、社内にはノウハウが貯まっていました。共通データ基盤の構築に際しても事業部のシステムとの親和性や、豊富なマネージドサービスが利用できることを考慮すると、AWS の採用は自然な流れでした」と語ります。

事業部横断の共通データ基盤の構築において同社が目指したものは、誰でも簡単にデータを蓄積でき、迅速な可視化が行える基盤とすることで、意思決定までのスピード向上に貢献することでした。その為、最初のスコープは共通データレイクと可視化ツールの提供でした。アーキテクチャは原則として、マネージドサービスとサーバーレスを前提に設計し、運用負荷の軽減を図っています。データレイクには Amazon S3 を利用し、データ集計には Amazon Athena を採用。用途に応じてAmazon Redshift を併用しています。ETL には AWS Glue を使用し、自動・手動でテーブルを作成。アクセス管理には、AWS Glue データカタログのきめ細やかなアクセス制御など、AWS の豊富な権限管理機能を活用してセキュリティを確保。可視化領域については、事業や人により要望が異なることから BI ツールは事業部が選べるように Amazon QuickSight とオープンソースのツールを提供しています。

データ収集には、共通データ基盤の Amazon S3 にデータソースとなる他のシステムを直接連携する方式に加えて、新たに構築したコンテナ基盤と IoT 基盤を接続できるようにしました。

コンテナ基盤では、AWS Fargate を中心に事業部の開発者や利用者が簡単にアプリケーションをデプロイしてビジネスを始められる環境を提供し、データ活用基盤に接続することでデータを自動収集できる仕組みを整備しました。プラットフォーム事業本部 RSI 開発センター PF 開発室 インフラグループの神田博之氏は「独自に構築すると半年かかるところが、AWS をベースとしたコンテナ基盤を活用することでクラウド環境を即日払い出すことが可能になり、すぐに開発に着手することができます」と語ります。

さらに、IoT 基盤では、事業部の開発者が自前でメッセージングの仕組みを用意することなくサービスを立ち上げられるようにしました。プラットフォーム事業本部 RSI 開発センター PF 開発室 インフラグループの白井達也氏は「事業部の開発者が、複合機、カメラ、電子黒板など数百万のデバイスのデータを収集できるよう、AWS IoT や AWS Lambda を中心に IoT プラットフォームを構築しています。また、同時にデータレイクへのデータ蓄積もサポートしています」と語ります。

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2019 年 12 月現在、共通データ基盤上では、約 20 のテーマで各事業部がデータ活用を進めています。プラットフォーム事業本部 RSI 開発センター PF 開発室 インフラグループの坂梨龍太郎氏は「共通データ基盤を導入した事業部ではデータ活用の習慣がついてきており、KPI を独自に設定し、BI ツールを用いて横断的に分析する事例も出てきています」と振り返っています。

リコーでは共通データ基盤の構築後も AWS の担当チームと共にアーキテクチャを日々進化させています。サポートにおいては、エンタープライズサポートプランを活用。テクニカルアカウントマネージャーやクラウドサポートエンジニアが様々な提言およびガイダンスを提供し、テクニカルな問題への早期解消の支援を行うことで運用環境を正常に保つことに貢献しています。

「AWS の技術サポートは、こちらからの問い合わせに対して一問一答の回答ではなく、プラスアルファの提案やワークアラウンドも含めて提示してくれるので非常に助かっています」(白井氏)

「AWS の担当チームとは月次ミーティングなどで頻繁にコミュニケーションを取っています。特にソリューションアーキテクトからはビジネス要件を的確に把握したうえで、当社の技術力や方向性に合致したサービスを費用対効果も含めて提案いただけるので、頼りになっています。セキュリティ面でも AWS Well-Architected のフレームワークのベストプラクティスを活用して、安定運用のためにアーキテクチャを改善することができました」(梅原氏)


※株式会社リコーは、AWS Summit Tokyo 2019 において、『来るべきAI時代のための「イケてる」データ基盤の作り方』について詳細なプレゼンテーションを行いました。下記のリンクより講演の模様をご確認いただけます。

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野水 泰之 氏

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梅原 直樹 氏

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白井 達也 氏

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坂梨 龍太郎 氏

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神田 博之 氏



AWS が IoT ソリューションにどのように役立つかに関する詳細は、AWS IoT の詳細ページをご覧ください。