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re:Invent 2020ストリーミング配信の裏側

re:Inventは、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とAWSイベントテクノロジーチームのメンバーにとって、最大の年次イベントです。リーダーシップセッションのライブストリームは、他のAWSイベントよりも視聴者数は約500%多くなっています。 2020年、COVID-19の影響により、re:Inventは初めて対面式からオンライン開催へと転換しました。これにより、大規模で信頼性の高いコンテンツ配信を実現するための、ライブストリーミングサービスとハードウェアがさらに重要視されるようになりました。本ブログ記事では、すべてのre:Invent 2020ライブコンテンツのライブコンテンツを提供することを可能にした、最新のクラウドワークフローと現地でのエンコーディングとアーキテクチャについて説明します。

2019年、AWSイベントテクノロジーチームとAWS Elementalチームは協力して、re:Inventコンテンツ配信ワークフロー全体をレガシーソリューションからAWS Media Servicesに移行しました。これは、新しいワークフローの構築、テスト、ドライ・ラン運用を経て、最終的に2019年のイベントの新しいソリューションへの完全な切り替えを含む1年間のプロジェクトでした。この移行により、AWSイベントテクノロジーチームはAWS Media Servicesのメリットを活用し、配信ニーズ拡大への対応、コンテンツ配信プランの見直しを行うとともに、クラウドベースのクローズドキャプションや自動フェイルオーバーなどの新機能をAWS re:Invenチームと検討することができました。

今年は完全オンラインイベントというだけではなく、イベントを10日延長し計3週間となりました。これにより、リーダーシップシリーズやエグゼクティブサミットのはじめての配信など、これまで以上に多くのコンテンツをストリーミングすることが求められました。もう1つの大きな変更は、直近のライブ映像を各地域で時差に合わせて再生する(フォローザサン配信モデル)必要があることでした。これらの変更と要件に対応するため、私は過去数年に開催されたイベントから、このイベントへの対策方法を考察する必要がありました。私は、以前のような5日間のショーではなく、3週間にわたって24時間コンテンツを配信する大規模なグローバルスポーツイベントから学ぶことにしました。新しいコンテンツ配信プラットフォーム、複数のスタジオとスタジオサブの使用、インバウンドとアウトバウンドの信号を管理するためのリアルタイム字幕などのライブ放送運用方法を採用しました。これらすべてを組み合わせることで、「真のグローバルチーム」としてこのイベントを実現することができました。

A screenshot from AWS CEO, Andy Jassy as he presented on stage for the 2021 re:Invent Keynote presentation.

AWS CEO Andy Jassyのre:Invent 2020での基調講演

re:Invent の基調講演は通常、ラスベガスのSands Expo Centerで開催しておりますが、2020年はシアトルからストリーミングされました。これにより、新しい運用計画を立て、ショー配信のプロセス全体を再構築する必要が出てきました。 Andy Jassyが頻繁に言及するように、「再発明の鍵は、適切な再発明文化を構築することと、その再発明のために利用できるテクノロジーを知ることの組み合わせです。」 AWSでの変化の文化と、2019年に行った新しいテクノロジーの採用により、この新しい要件に対応することができました。社内複数のチームの助けで、Amazonキャンパスに3つの主要な制作スタジオをまとめ、制御を行うコントロールルーム(スタジオサブ)を別々の場所に設置しました。スタジオ1はメインの基調講演ホールであり、スタジオ2はリーダーシップセッションやその他のプレゼンテーションに利用され、スタジオ3は広報、アナリスト関係、プレスイベント、エグゼクティブサミットの制作に利用されました。これら3つのスタジオとコントロールルームから、Corriviumが提供するクラウドブロードキャスト制御システムにすべてのコンテンツフィードを送りました。

安全上の取り決めの遵守と、グローバルチームへの24時間にわたるコンテンツ配信を管理する必要があるため、AWS Media Servicesと他のソフトウェアを使用してクラウドベースのブロードキャスト制御システムを構築するために、Corriviumに協力を依頼しました。これにより、柔軟性を最大限に高め、担当者とプレゼンターの安全を優先し、リモートからチームをバックアップすることができました。クラウドベースのブロードキャスト制御を導入することで、コンテンツをクラウドに送信することができました。

過去4年間わたるre:Inventに関する私のブログ投稿(2018年2019年の投稿を参照)を見ていただければ、私がチームと協力して常に革新行い、より良いワークフローを作成し、復元性を改善し、視聴体験を向上することができたことを理解いただけるかと思います。この間、AWS Elemental Live アプライアンスエンコーダーを使用して高品質のメザニンストリームを作成し、クラウド環境に送信していた、オンサイトでの構成はそれほど変わっていませんでした。 これらは優れたエンコーダーですが(特に4Kコンテンツの場合)、今回のイベントでは、シアトルにある既存の小規模な制作スペース内で作業する必要がありました。そこで、低消費電力で静かなエンコーダであるAWS Elemental Linkがフィットするであろうと考えました。

A look at the limited amount of space we had to work with and how the Link devices fit.

限られたスペースにElemental Linkを設置している様子

2020年5月に発売されたAWS Elemental Linkは、ライブビデオソース(SDIまたはHDMI入力)をAWS Elemental MediaLiveに直接、安全に送信する小さなデバイスです。簡単に設置し、プラグアンドプレイで、即座にストリーミング配信を開始できます。キャンパス全体で10台のAWS Elemental Linkデバイスをメザニン品質のストリームをクラウドへ送るためのパイプラインとして利用しました。AWSクラウドでは、その信号のルーティング、モニタリング、トランスコーディング、配信を行いました。冗長性のために、各ビデオソースに対して2つのAWS Elemental Linkを配置し、それぞれ異なるISPを介してストリーミングすることにしました。 2つのLinkデバイスをAWS Elemental MediaLiveの標準チャネルに設定することで、AWS Elemental MediaLiveの自動フェイルオーバーおよびリカバリ機能を利用でき、冗長入力ソリューションが完成します。

ストリームがクラウド環境に送られると、その出力をAWS Elemental MediaConnectベースで構築したをルーティングソリューションで、さまざまな配信パスにルーティングしました。これらの配信パスには、監視用のプロキシストリーム、ライブのクローズドキャプションの作成と挿入のオプション、トランスコーディング、そして最後に配信用のパッケージングが含まれていました。

 

A high-level overview of the live and replay streaming architecture used to deliver re:Invent 2021.

re:Invent 2020の配信でのライブ&リプレイストリーミングアーキテクチャ

また、このソリューションを2つのリージョン に展開して、冗長性とフェイルオーバーを確保し、プライマリリージョンで問題が発生した場合に、ビデオプレーヤーのストリームをバックアップリージョンにフェイルオーバーできるようにするルールを設定しました。各リージョン内で、MediaConnectを使用してインバウンド信号をさまざまな宛先にルーティングしました。一部のMediaLiveの構成では、従来のオンプレミスビデオルーターと同じように、入力スイッチングオプションを使用してストリームをルーティングしました。 複数のISPをまたがった2つのAWS Elemental Linkを一緒に利用し、MediaLiveチャネルで冗長化したストリーミングをするために、ほぼ全てのケースで、MediaLiveのStandardチャネル構成を利用しました。 MediaLiveのStandardチャネル構成では、入力の損失または障害が発生した場合の自動入力切り替えが可能であり、入力に優先順位を付けることができます。たとえば、プライマリリンクエンコーダが接続を失った場合、MediaLiveは2番目のLinkエンコーダフィードに切り替えます。プライマリリンクが回復して再接続すると、優先順位設定をプライマリにしている場合、MediaLiveで利用されるフィードはプライマリフィードに戻ります。

この機能のもう1つの用途は、AWS ON AIRブロードキャストチーム向けでした。AWS ON AIRコンテンツは、世界中のさまざまな場所から制作されてきますが、同じ出力チャネルでストリーミングする必要がありました。 MediaLiveでプライマリとセカンダリの構成を設定したため、プライマリ入力にストリーミングして1つの場所でショーをオフにすると、その場所でセカンダリ入力がストリーミングされました。この場合のセカンダリー入力は、Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)に保存されたmp4ファイルでMedia Liveにてループ再生されました。優先順位付けルールを設定すると、プライマリストリームがオンに戻ると、MediaLiveはプライマリフィードを配信しました。

A screenshot of the Automatic Input Failover Settings in MediaLive.

MediaLiveでの自動フェールオーバー設定

MediaLiveを使用すると、入力損失だけでなく、「ビデオブラック検出」および「オーディオ損失検出」にも基づいてフェイルオーバー条件を設定できます。これにより「常時オン」の配信の実現を最大限自動化することができます。

コンテンツが取り込まれてルーティングされると、クラウドベースのクローズドキャプションソリューションに送られ、そこで人力とMLで生成されたキャプションがストリームに挿入され、受信側のMediaLiveに送り返されました。そこでは、MediaLiveの入力フェイルオーバーソリューションを再び使用し、キャプション付きストリームをプライマリとして割り当て、キャプションなしストリームをバックアップとして割り当てました。これにより、条件に設定したパラメータに応じて、入力ソースの切り替えを自動化するワークフローを実現できました。トランスコーディングでは、7つのビットレートのアダプティブビットレート(ABR)と最終的なストリームを、パッケージ化、ビデオオンデマンドのアーカイブウィンドウ設定、Amazon CloudFront CDNを経由して動画プレーヤーにストリームを配信するためにMediaPackageへ送るための構成を取りました。

ワークフローの最後のステップとして、MediaPackageを使用して、6秒セグメントのHLSを介して、ジャストインタイムのパッケージングを提供しました。また、MediaPackageの「Live Playlist Window Duration」機能を使用して、ストリームでDVRウィンドウを設け、視聴者が30分以内にセグメントをスクラブして再視聴または聞くことができるようにしました。 DVR機能を備えたプレーヤーを使用する場合、ウインドウは自由に設定でき再生機能と同じ見た目でDVR機能を実現できます。 300秒を超える期間を設定されたい場合は、制限の引き上げリクエストする必要があることに注意してください。

A screenshot of where to adjust the DVR window settings in MediaPackage.

MediaPackageでのDVRウインドウ設定

最終的に、CloudFrontを介してルーティングし、ライブコンテンツとリプレイコンテンツをビデオプラットフォーム上の指定されたメディアプレーヤーで配信しました。

re:Invent2020では大きな成功を収めることができました。 2019年にスタートした段階的な移行を行い、AWS Media ServicesとAWS Elemental Linkデバイスを使用して、魅力的で有益なコンテンツをお客様に提供する方法を再発明し続けるチームの基盤を作ることができました。これらのクラウドツールとプロダクトチームの専門知識を活用することで、わずか数か月でグローバルに展開できるマネージドなコンテンツ配信ソリューションをゼロから構築することができました。

AWS Elemental Linkデバイスの詳細、注文については、製品ページにアクセスしてください。すでにLinkデバイスをお持ちで、数クリックでストリーミングを開始したい場合は、AWS Elemental MediaStoreソリューションを使用した AWSライブストリーミングページを確認してください。


 

*国内代理店様からAWS Elemental Linkが購入可能となりました。詳しくはこちらをご覧ください。

 

AWS Media & Entertainment 参考コンテンツ

AWS Media & Entertainment Blog (日本語)

AWS Media & Entertainment Blog (英語)

Corrivium社サイト

 

AWSのメディアチームの問い合わせ先: awsmedia@amazon.co.jp

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翻訳は BD山口とSA石井が担当しました。原文はこちらをご覧ください。