人工衛星の地上局を 1 分単位で利用。AWS Ground Station をグラレコで解説

2021-09-02
AWS グラレコ解説

Author : 三厨 航, 奥野 友哉

※ 本連載では、様々な AWS サービスをグラフィックレコーディングで紹介する awsgeek.com を、日本語に翻訳し、図の解説をしていきます。awsgeek.com は Amazon Web Services, Inc. プリンシパル・テクニカル・エバンジェリスト、ジェリー・ハーグローブが運営しているサイトです。

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こんにちは、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社ソリューションアーキテクトの三厨です。
Amazon 創業者の Jeff Bezos が先日宇宙旅行に行って話題になりましたが、実は AWS にも宇宙に関係するサービスがあるのをご存知でしたか ?

img_awsgeek-groundstation_01

引用 : Blue Origin

本記事では、「そもそもA WS Ground Stationって何ができるサービスなの ??」「AWS Ground Station が従来の地上局サービスと異なっているところは何 ?」といった疑問を持たれている読者の方に向けて、近年の宇宙ビジネスの動向を交えながら、AWS Ground Station をグラレコを使って解説します。

普段宇宙ビジネスとの関わりが薄い方にもなるべくわかりやすい表現を心がけましたので、この機会に是非ご一読いただけると幸いです。


従来の地上局の課題

従来の人工衛星の運用においては、運用する衛星の軌道条件から通信を行う地理的拠点を選定し、衛星と通信を行うためのアンテナ及び送受信機材等 (いわゆる地上局設備) を建設するための投資を行ったり、既存設備を保有する地上局プロバイダーと契約したりする必要がありました (Bring Your Own Ground Stations; BYOGS)。

結果として小規模事業者は、人工衛星を運用する際に複数の通信拠点から通信したり衛星運用をスケールさせたりすることが困難となっていました。

また、地上局とデータを処理する計算資源が地理的に離れている場合、データ転送がボトルネックとなりユーザーへの情報提供における遅延が大きくなっていました。

img_awsgeek-groundstation_02

Ground Station as a Service (GSaaS) とは ?

従来の地上局の初期費用に関わる問題や衛星運用における非本質的な課題を解決するために、Ground Station as a Service (GSaaS) と呼ばれる、必要な時間だけ地上局を借りられるサービスが提唱されています。

地上局がサービス化されるということは、アンテナの使用量に応じた従量課金制の料金体系が適用され、衛星事業者の地上局に対する支出が資本支出ではなく運用費用になることを意味します。また、衛星との通信のスケジュールを API ベースで簡単にスケジュールすることが可能となり、衛星運用における運用負荷が軽減されます。

単一地上局ではなく地上局のネットワークによってサービスが提供されるのも GSaaS の大きな特長です。衛星通信をオンデマンドで迅速にスケーリングさせることができるため、災害監視や天気予報などにおけるデータ配信における高い速報性を実現するために役立ちます。また、人工衛星における不具合発生時に、緊急のアクセスを柔軟に実現できるといった運用面におけるメリットも存在します。

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AWS Ground Station とは ?

一つの地上局は最低二つのアンテナから構成されており、各アンテナが全方向可動式となっています。これらの設備及びネットワークアーキテクチャは、セキュリティに対して最も厳格な組織の要件を満たすように設計されています。

また、サービス利用者は様々な地理的ロケーションに存在する地上局を用いて、軌道一周回で複数回通信を行う機会を得られます。

  • グローバルなアンテナのネットワーク
    一つの地上局は最低二つのアンテナから構成されており、各アンテナが全方向可動式となっています。
    また、サービス利用者は様々な地理的ロケーションに存在する地上局を用いて、軌道一周回で複数回通信を行う機会を得られます。

  • AWS と統合された迅速なデータ配信
    AWS Ground Station の地上局は AWS のグローバルネットワークバックボーンで相互接続されています。衛星からダウンリンクされたデータは地上局設備を介して速やかに最も近い AWS リージョンにダウンリンクされ、数秒以内にデータの分析を開始することができます。

  • クロスリージョンのデータ配信
    地上局にダウンリンクされたデータが各 AWS リージョン内にあるということは、転送コストを抑えるためにデータを処理・分析する基盤を各リージョンごとに準備する必要があるのでしょうか ? 答えは No です。AWS Ground Station は追加料金が発生することなく、衛星通信の過程で発生する処理用のデータを各リージョン間で相互に転送することができます。これにより、世界中の地上局で発生したデータを転送費用なしで特定のリージョンにおいて処理・分析することができます
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料金体系

AWS Ground Station の料金体系は、実際に使用したアンテナ時間に対する分単位の従量課金制を採用しています。

また、利用枠の予約購入による割引制度もあるため、これらの購入オプションを組み合わせることによって自社保有の地上局と比べて最大 80 % のコスト削減が期待できます。

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Ground Station の主な仕様について

衛星と地上局が通信する際には、以下の要素を考慮する必要があります。2021 年 8 月現在、AWS Ground Station は以下の通信周波数帯および衛星軌道に対応しています。

  • 通信周波数帯 : S 帯域アップリンクおよびダウンリンク、X 帯域狭帯域および広帯域ダウンリンク
  • 衛星軌道 : LEO 及び MEO

AWS Ground Station のその他の仕様につきましては、よくある質問 - AWS Ground Station をご参照ください。

img_awsgeek-groundstation_06

最後に、全体の図を見てみましょう。

img_awsgeek-groundstation_full

現在の宇宙ビジネスは従来の政府・機関から、NewSpace と呼ばれる新興企業群に裾野が広がってきています。安価な小型衛星の製造技術が発展したことにより、地球の周りを周回する衛星が増加し、宇宙空間との通信頻度や通信されるデータ量も増えつつあります。

この機会に、地上局ネットワークに簡単にアクセスできる AWS Ground Station を是非使ってみてはいかがでしょうか ?

サービスの詳細に関しましては、こちら をご覧ください。


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筆者プロフィール

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三厨 航
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
技術統括本部 ソリューションアーキテクト

2021 年 4 月に新卒として AWS に入社し、SA としての一人立ちに向けて日々勉強中。学生時代は超小型人工衛星の研究開発に従事。
趣味は散歩・映画鑑賞・SF 小説を読むこと。

監修者プロフィール

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奥野 友哉
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
技術統括本部 ソリューションアーキテクト

2018 年 4 月に AWS に入社後、自動車および組み立て製造のお客様を担当。
過去には微小重力実験や衛星を利用した地球観測プロジェクトに従事。趣味はコーヒーと散歩。

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