当社の VFX チームにとって AWS のアーキテクチャは、重要な納期の到来に合わせてより多くのリソースをレンダリングに投入できるセーフティーネットとして機能しています。つまり、クライアントの満足度を維持しつつ、芸術的品質全体を向上させているのです。
Chris Spry 氏 業務部長および VFX スーパーバイザー

Fin Design + Effects は、オーストラリアのシドニーと中国の上海に拠点を置き、デザインと視覚効果 (VFX) を専門に手がける企業です。2001 年の設立以来、Fin は General Electric、Coca-Cola、Jim Beam など、世界的な有名ブランドのマルチメディア広告や、その他のデザインプロジェクトを開発しています。同社は最近、長編映画の視覚効果にも活動領域を広げ、アレックス・プロヤス監督の『キング・オブ・エジプト』(ライオンズゲート) では 200 を超えるショットを完成させました。複数の文化やタイムゾーンにまたがる環境で、プロジェクトの需要に応え、各国のアーティストと共同作業を行うため、同社の VFX アーティスト、デザイナー、プロデューサーら 30 人は柔軟な対応を求められます。

Fin のアーティストたちは、レンダリングソフトを使用して予想外に複雑なタスクの実行が求められるプロジェクトに取り組むことがしばしばあります。そのため、このようなプロジェクトをオンタイムで完了するには、アーティストたちを支援する追加のコンピューティングリソースが必要になります。「コンピューティングリソースの需要はプロジェクトに応じて常に変動します」と Fin Design + Effects 業務部長および VFX スーパーバイザーの Chris Spry 氏は言います。「レンダリング作業では多くのデータ処理が必要で、プロジェクトのライフサイクルを通して必要計算量は大幅に変動します。最高品質の作品は、締め切りまでにできる限り多くの反復処理を確認することで生み出され、それぞれの反復処理で計算が必要となります」

従来 Fin では、外部のベンダーと協力して追加のサーバーを取得することで問題に対処していました。たとえば、社内のレンダーサーバーは処理能力が限られているため、Fin は特定のプロジェクトを外部のレンダリングファームサービスに任せていました。「それまで常に外部のソースやツールを利用してレンダーファームを拡張していましたが、その方法では費用が高額になる上、求められるスピードに対して必ずしも十分とは言えませんでした」と Spry 氏は言います。「重要な納期が近づいたとき膨大なデータ処理に対応できるよう、俊敏性を高めたいと思っていました」 また、Fin では外部のリソースに依存していた分の費用を削減したいと考えていました。「ローカルのレンダリングファームがアイドル状態にならないようにすることは一度もできませんでした」と同氏は語ります。「社内では午前 2 時にオンプレミスのファームで処理するジョブがなくなることもありましたが、それでも一晩中レンダリングを続行するため外部サービスに費用を支払っていました」

社内のニーズに対応するため、Fin はクラウドテクノロジーを活用することにしました。しかし、大部分のアーティストが勤務するシドニー本社では、オンプレミスのハードウェアへの投資と集中型のデータストレージを活用するため、複合環境での作業が必要な状況でした。「計算タスクのスケジュールをオンプレミスとクラウドの両方で自由に設定したいと考えていました」と Spry 氏は言います。

同社ではまた、アーティストたちが求める迅速なパフォーマンスを実現できるだけでなく、米国映画協会 (MPAA) のセキュリティ要件に準拠するクラウドソリューションを必要としていました。「より世界的な映画プロジェクトに取り組むようになって、それが大きな関心事になりました」と Spry 氏は言います。

Fin では複数のクラウドサービスプロバイダーを評価した結果、アマゾン ウェブ サービス (AWS) を選択しました。「コストを節約し、より柔軟な方法でコンピューティングリソースを追加したいと考えていました。AWS では、その両方を非常に簡単に行えるようになると思えました」と Spry 氏は言います。Fin が最初に取り組んだのは、AWS Direct Connect を利用し、Fin のデータセンターと AWS シドニーリージョン間の専用ギガビットネットワーク接続を確立することでした。「AWS Direct Connect を使用すると、AWS を自社データセンターの一部のように扱うことができ、スピンアップした仮想マシンも自社ネットワーク上に存在するかのように動作します」 その後 Fin では、オンプレミスのサーバーを引き続き運用しながら、Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) のオンデマンドインスタンスの使用を開始しました。組織では比較的短く計算量が少ないフレームをオンプレミスで実行し、長く複雑なフレームを AWS にプッシュします。

また、Fin ではAmazon EC2 スポットインスタンスを利用しています。これは、ユーザーが予備の Amazon EC2 コンピューティング能力に入札するための EC2 インスタンスです。スポットインスタンスは入札価格がスポット価格を上回ったときに実行され、従来の EC2 インスタンスよりも低価格で購入できることが多いため、Fin 社はこれらを使用してコスト効率よくコンピューティング能力を強化しています。「社内のウェブインターフェイスに、機種やアベイラビリティーゾーンに応じた EC2 スポットの価格をリアルタイムのグラフで表示しています」と Spry 氏は言います。「この方法だと、一定数のスポットインスタンスをリソースプールに追加できるだけでなく、タイプが異なるインスタンスのグループを同じプールに追加できるという柔軟性があります」

さらに同社は、クラスタ内で使用されていない場合に、EC2 インスタンスを自動的にスケールダウンするスクリプトを作成しました。「カウントダウンタイマーを使用していますので、指定の時間が来て対象のマシンが動作していない場合は自動でシャットダウンします」と Spry 氏は言います。

Fin は、納期直前のプロジェクトで顧客の要求を満たすため、コンピューティングリソースを臨機応変に追加する俊敏性を実現しました。「ほんの数分で、簡単にコンピューティング能力を 2 倍、3 倍にできます」と Spry 氏は語ります。「つまり、アーティストが重要な納期を守り、進行中のプロジェクトに対してクライアントが行ったすべての変更を処理するために必要な処理能力を常に確保できるということです」 全体的に見て、Fin のアーティストはプロジェクトの重要な期限を守る能力が向上しています。「当社の VFX チームにとって AWS のアーキテクチャは、重要な納期の到来に合わせてより多くのリソースをレンダリングに投入できるセーフティーネットとして機能しています。つまり、クライアントを喜ばせながら芸術的品質全体を向上させているのです。予定通りに納品できなかった理由について言い訳をする必要はもうありません」

また、Fin では Amazon EC2 スポットインスタンスによる大幅なコスト削減効果も実感しています。「当社がクラウドを使用するのは、明らかにコスト削減のためです」と Spry 氏は言います。「Amazon EC2 スポットインスタンスを利用することで、運用コストの 50% を削減できています。最安値でコンピューティング能力を追加できるので、その分購入できるノードも多くなります。全体的に見ると、これはクライアントにとって当社が費用面で有利となるだけでなく、アーティストの創造的能力を高めることにもつながります」

同社では現在、自社のレンダーファームマネージャーを介して、オンプレミスサーバーと EC2 スポットインスタンスの両方でスケジュールを自由に設定できるようになりました。「スケジュールを設定してレンダリングのジョブを夜間に実行できるようになりました。また、内部ネットワークで処理できないものがあっても、EC2 インスタンスを追加投入すれば午前中にバックログを解消できます」と Spry 氏は語ります。AWS Direct Connect を導入したことで、Fin の内部ネットワークのパフォーマンスも向上しています。「AWS Direct Connect を介してクラウドと自社データセンター間の高速ネットワークリンクを確立したことで、パフォーマンスが大きく改善されました。また、手間のかかる作業は Direct Connect で処理できるので、同期ツールを自社で開発する必要がなく、レンダリングに遅延を生じさせる心配もありませんでした」

さらに、Fin は新たなソリューションのセキュリティを信頼しています。「AWS が MPAA に準拠しているのも、当社にとっては非常に重要なポイントです」と Spry 氏は語ります。「当社のインスタンスは AWS Direct Connect を経由したプライベートネットワーク上にあるため、セキュリティも強化されます。全体的に、AWS のセキュリティについてはとてもよい印象を持っています」

近い将来、同社は災害復旧やその他の機能に、追加の AWS サービスを使用する予定です。「今後も AWS でもっといろいろなことをやっていく予定です」と Spry 氏は言います。「当社は間違いなくクラウド賛成派ですね。私たちのビジネスにとって理想的なモデルです」

開発およびテスト環境における AWS の活用法についての詳細は、EC2 インスタンスタイプのページをご覧ください