Amazon EC2 上に構築されたファイルサーバーをフルマネージド型の Amazon FSx へ移行
サーバー管理コストを年間約 100 万円の削減へ

2021

独立系不動産投資運用会社として、全国のオフィス、賃貸マンション、倉庫等のアセットを扱う株式会社イデラキャピタルマネジメント。同社は 2016 年に全社のシステムをアマゾン ウェブ サービス(AWS)に移行しました。その後、Amazon EC2 と Amazon Elastic Block Store (EBS)上に構築していたファイルサーバーのストレージ容量がひっ迫したことから、2020 年にフルマネージド型ファイルサーバーサービスの Amazon FSx for Windows File Server に移行。その結果、運用を含めたファイルサーバーの管理コストを年間約 100 万円、インフラ全体で 5% 相当の費用削減を実現しています。

AWS 導入事例  | 株式会社イデラキャピタルマネジメント
kr_quotemark

AWS の優れているところは、自動的に機能が強化されていくことです。Amazon FSx for Windows File Server を選んだのは、ストレージ容量の追加が可能になったことに加え、フルマネージドサービスで運用負荷が軽減できること、重複排除機能によってストレージ容量を圧縮できることです

田中 伸 氏
株式会社イデラキャピタルマネジメント
業務部門

ファイルサーバーとして利用していた Amazon EC2 と Amazon EBS の容量がひっ迫

イデラキャピタルマネジメントは、2001 年設立のエムケーキャピタルマネージメントと、2003 年設立のアトラス・パートナーズが 2012 年に合併して誕生しました。2014 年 5 月には医療・医薬事業、リゾート・観光事業、投資事業を中核とする中国の復星集団(フォースン・グループ)の傘下となりました。

現在は、不動産投資に精通したプロフェッショナルな投資家に対して、クリエイティブな投資戦略の提案を行い、ニーズに即したアセットマネジメントを提供しています。

ビジネスの基盤となる業務システムは、長らくオンプレミス環境で運用してきましたが、外注先の運用委託費用の増加や、パフォーマンスの低下、ストレージ容量のひっ迫、ブラックボックス化したシステム運用、Windows アカウントの管理など、多くの課題が顕在化していました。「当時、システム系の管理担当者が私だけだったことから、運用負荷を軽減したいという思いがありました。クラウドを採用するコンセプトは、自社で資産を持ちたくないということと、オフィスの建物に災害などがあっても事業が継続できる BCP 対策を実現することにありました」と語るのは業務部門の田中伸氏です。

そこで 2015 年にクラウドサービスへの移行を検討し、AWS の採用を決めました。当時は 2 つのメジャーサービスがありましたが、その中から AWS を選定した理由は、仮想デスクトップサービスの Amazon WorkSpaces が用意されていたことです。
「当社が扱う不動産物件は全国にあり、担当者は調査に出向いたり、運用に出向いたりと各地を飛び回ります。そこで、経営層には Amazon WorkSpaces を導入することで、出張先から会社に戻ることなく、よりフレキシブルな働き方ができるといって説得しました」(田中氏)

その後、自社でアカウントを取得し、検証を実施した後、パートナーとの要件定義と専用線開通を経て、約 7 ヶ月で会計システム、経費精算用ワークフロー、グループウェア、不動産物件情報を管理するシステム、Active Directory、ファイルサーバーなど全システムの移行と Amazon WorkSpaces の導入を完了しました。その結果、業務委託費用、データセンター費用、閉域網等のコスト等を、月額で 20 万円~ 30 万円削減。田中氏自身もサーバーのお守りから解放され、付加価値の高い業務に専念ができるようになりました。

現在、一部のシステムを SaaS を活用しているものの、基本的にはほとんどのシステムを AWS のクラウド環境上で運用しています。また、Amazon WorkSpaces では、LTE 搭載のノート PC を配布しています。現在、全社員約 70 名のうち、出張や外出の多い社員約 40 名が利用しており、コロナ禍のリモートワークにおいてもユーザーからは好評だといいます。

AWS への移行から 4 年が経った 2020 年。これまでのファイルサーバーのデータ保存容量が不足するようになり、対応を検討することになりました。
「当社は不動産物件を扱っている業務の性質上、ファイルサーバーに写真データを大量に保存しています。その結果、大画素数の写真データが急速に増加し、4 年たらずでストレージの使用量が上限の 95% まで達していました」(田中氏)

フルマネージドサービスの Amazon FSx for Windows File Server へ移行

ファイルサーバーの容量が不足する課題に直面した同社は、AWS パートナーから Amazon FSx for Windows File Server へ移行する提案を受けました。当時はストレージの容量追加機能がないことから採用を断念しましたが、その後の Amazon FSx for Windows File Server のアップデートで、ストレージ容量やスループットキャパシティーの変更ができるようになったことから再度検討し、導入を決めました。
「AWS の優れているところは、自動的に機能が強化されていくことです。Amazon FSx for Windows File Server を選んだのは、ストレージ容量の追加が可能になったことに加え、フルマネージドサービスで運用負荷が軽減できること、重複排除機能によってストレージ容量を圧縮できることが決め手になりました」(田中氏)

ファイルサーバーの移行作業は、2020 年 9 月から 11 月までの 3 ヶ月で実施しました。環境構築、データの移行作業自体はパートナーに委託したものの、データ移行後の確認作業を同社にて実施しました。

重複排除機能により移行前から約 40% のデータを削減

Amazon FSx for Windows File Server への移行により、懸念事項だったファイルサーバーの容量の課題は解消されました。現在は、5TB のストレージ容量を確保して安定運用しています。

これまでの Amazon EC2 と Amazon EBS の利用から、Amazon FSx for Windows File Server に切り替えたことで、サーバーの管理運用は同時に実施した AWS Direct Connect の接続サービスのリプレースと合わせて年間約 200 万円、サーバー単体でみると年間約 100 万円の削減が実現しました。
「年間 200 万円は、インフラやネットワークの管理コストの全体の 10%、サーバー単体でみると全体の 5% に相当します。マネージドサービスによって、外注の運用委託費用が削減できたこともあり、サーバー管理コストは大幅に下がった印象があります」(田中氏)

データ量も Amazon FSx for Windows File Server の重複排除機能によって、移行前から約 40% の削減ができ、コストパフォーマンスも向上しています。ユーザーにとっては、スループットや使い勝手はこれまでと変わることなく、意識することなく利用できているといいます。

不動産物件の管理におけるデータのライフサイクル管理を検討

Amazon FSx for Windows File Server は、今後もデータの増加に応じてストレージ容量を拡張しながら使い続けていく予定です。それ以外の AWS のサービスについても、運用委託先の AWS パートナーと密にコミュニケーションを取りながら、提案に応じて随時採用を検討していく方針です。

近々では Amazon WorkSpaces のゼロクライアント利用において PCoIP Connection Manager の利用を廃止し、さらなるコスト軽減を図る予定です。

ビジネスを支える IT 戦略面では、機械学習と AI を活用した不動産投資における物件選定のサポートや、各種データベースの一元管理の実現を視野に入れています。データベースの一元管理では、複数の部署で少しずつカスタマイズしながら管理している受託物件の情報を、統一フォーマットで統合的に管理することで、全員が「正」の情報にアクセスし、必要なファイルを引き出すことができるようにする予定です。

最後に田中氏は「AWS には、黙っていても継続的に進化していく期待感があり、新たなサービスの登場が楽しみです。引き続き機能拡張やマネージドサービスの追加をお願いします」と語ります。


カスタマープロフィール:株式会社イデラキャピタルマネジメント

  • 設立: 2001 年 9 月 10 日
  • 事業内容:ファンドマネジメント事業、アセットマネジメント事業

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • Amazon FSx for Windows File Server への移行により、年間約 100 万円のサーバー管理費用の削減(ネットワーク費用含めて年間約 200 万)
  • Amazon FSx for Windows File Server の重複排除機能により、約 40% のデータ量を削減
  • データの増加に応じてストレージ容量を拡張しながら Amazon FSx for Windows File Server の利用を継続

ご利用中の主なサービス

Amazon FSx for Windows File Server

Amazon FSx for Windows ファイルサーバーは、業界標準のサーバーメッセージブロック (SMB) プロトコルを介してアクセスできる、信頼性が高くスケーラブルな完全マネージド型のファイルストレージを提供します。

詳細はこちら »

Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。

詳細はこちら »

AWS Direct Connect

AWS Direct Connect はオンプレミスから AWS への専用ネットワーク接続の構築をシンプルにするクラウドサービスソリューションです。AWS Direct Connect を使用すると、AWS とデータセンター、オフィス、またはコロケーション環境との間にプライベート接続を確立することができます。

詳細はこちら »

Amazon WorkSpaces

Amazon WorkSpaces は、マネージド型でセキュアなサービスとしてのデスクトップ (DaaS) ソリューションです。Amazon WorkSpaces を使うと、Windows または Linux のデスクトップが数分でセットアップでき、すばやくスケールすることで世界中のたくさんの従業員にデスクトップを提供できます。

詳細はこちら »