今までなら開発には半年、1 年と時間がかかっていたはずですが、APN パートナーにやりたいことを説明し、打ち合わせを重ねてできあがるまでに何日も待つことはなく、AWS を利用した肥料の在庫管理システムの開発は 2 ヶ月程度で完了することができました。
オンプレミスではシステムの更新や、パフォーマンス不足を解消するにはどうしたらいいのかなど、問題解決や現状維持に関することが主な話題でしたが、AWS 導入後は安心して運用できるため、次はどんなシステムを作りたいかなど、未来の話ができるようになりました。
山口 正広 氏 JA めむろ(芽室町農業協同組合)管理部 管理経理課 課長

北海道十勝平野の中西部に位置する芽室町は、十勝川、芽室川、美生川などが潤した肥沃な大地に小麦、じゃがいも、小豆、ビートなどの作物を育てる広大な農地が広がっています。芽室町の耕地面積はおよそ 2 万ヘクタール、平均耕作面積も東京ドーム 6.4 個ぶんの約 30 ヘクタール、平成 27 年の農業生産額は、297 億円に及びます。芽室町農業協同組合「JA めむろ」は、芽室町の農業を支える 614 戸の農家経営を支援し、農家と共に収益を上げる活動を行っています。

「農家経営のサポートから農業技術の指導はもちろん、農家の家族も含め総合的に生活をサポートし農家の社会的地位を向上することが JA めむろの役割です。」と語るのは、JA めむろ(芽室町農業協同組合) 管理部 管理経理課 課長の山口 正広氏です。さらに JA めむろでは農業生産品を出荷し市場に出すだけでなく、加工して付加価値を高めることにも取り組んでいます。直売場の経営や、生産品を市場で広めるためのマーケティングなども行っており、それらの活動を通じた地域社会への貢献も求められています。

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農業に関わる幅広い活動を行うために、今や IT の活用は欠かせません。JA めむろでは、15 年くらい前から IT の活用に力を入れてきました。農協における IT 活用は、かつては勘定系システムが中心でしたが、そこに新たに加えられたのが、情報系のシステムでした。「組合員が収益を上げるためにどうしたらいいのか。そのための戦略を農協では常に考えています。そしてその戦略を実現するために、情報系の IT システムを導入することにしました。」(山口氏)

情報系システムとして最初に導入したのが、どこにどのような作物を作付けしているかのデータを蓄積し、芽室町の作物の作付け状況を迅速に把握できるようにするものでした。このシステムでは、位置情報を活用し地図上に作物の作付け状況が分かりやすく表現されます。これに芽室町の作物に関するさまざまなデータを合わせることで、分析・予測が自由できるようにし、システムで集約された作物面積情報は、農家や農協だけでなく役場などでも共有することが可能となりました。

この情報系システムは、当初クライアント・サーバーの仕組みで構築されました。「JA めむろでは、それを数年間運用していきましたが、その過程でクライアント・サーバーに限界を感じました。」(山口氏)

その理由の 1 つが、屋外から利用ができないことでした。農業作業の多くは屋外で行われますが、その際にシステムへ直接アクセスができないため、あらかじめ事務所で地図を印刷して現地へ持って行く手間が発生していました。さらに 「サーバー管理の手間がかかることも問題でした。オンプレミスですとサーバーを管理するための職員がどうしても必要になってしまいます。」(山口氏) これら課題を解決することが、JA めむろが今後さらに IT を活用していくために必要でした。

情報系システムの導入後、世の中にタブレットなどのモバイル端末が普及したことを受け、JA めむろでもそれらを活用するシステムを別途構築し、農業領域で新しい IT 技術を活用できたことをもっと知ってもらおうと、東京で開催された IT イベントに出展し、システムを紹介することにしました。「このイベントに出展した際、JA めむろブースの向かいに大きなブースを構えていたのが AWS でした。この時は農協が IT イベントに出展していると話題になり、AWS の担当者の方も興味を持ってもらえたようで、私たちのブースを見にきてくれました。」(山口氏)

当時 JA めむろでは、さらなる IT の活用のためにクラウドコンピューティングの利用を考えていましたが、まだまだコストも高そうな印象を持っていたため、導入まで踏み切れない状態でした。そんな時、イベント出展をきっかけに AWS の担当者に JA めむろでクラウド活用の想いを伝え、その後 2 年ほどの検討期間を経て、新たなシステムの開発プラットフォームに AWS を採用することを決めました。 「他のクラウドベンダーも検討したものの、クラウド化についての相談を直接 AWS とできたことは、採用を決断する大きな理由となり、かつ我々にとっても大きなメリットでした。」(山口氏)

さらに世界規模でクラウドのビジネスを展開していることも、JA めむろが AWS を選択した理由でした。「日本の小さな市場だけでなく、先行する米国でもしっかりとした実績があり、AWS はクラウドの実質的な世界標準だと判断しました。」(山口氏) AWS は世界市場に展開されているるスケールメリットにより、導入しやすいコスト感にもなっていると評価しています。「セキュリティ面に関しても、AWS のインフラでは基本的なセキュリティ対策がなされており、システムの動きさえきちんと把握できていれば、あとは人の動きをコンプライアンス面から管理することで安全に運用できると考えています。さらに AWS は、セキュリティに厳しい金融機関でも実績があり、それも安心材料となりました。」(山口氏)

コストについても、JA めむろでは新しいシステムを最初からクラウドで実装するのであれば、基本的にはオンプレミスと変わらないということ、その上で運用管理の手間が削減されるので、トータルでは AWS のほうが安くなるということ、さらに使ったぶんだけしかコストが発生しないので、初期段階に大きな投資が必要ないのもクラウドのメリットだと評価されています。

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JA めむろが AWS を活用し新たに構築したのは、肥料の在庫管理のシステムでした。このシステムでは、スマートフォンを活用して現状の在庫が把握し、入庫や出庫に関する情報も現場で簡単に入力ができるようになっています。これによりリアルタイムで在庫管理が実現でき、さらに年間の肥料の予約管理機能も追加されました。

この肥料の在庫管理システムでは、アプリケーションサーバーに  Amazon EC2 を、データベースには Amazon RDS for PostgreSQL を活用しています。さらにロードバランサーに  Elastic Load Balancing を、安全にシステムにアクセスするために Amazon VPC の環境も利用しています。このシステムにより、JA めむろは、肥料在庫管理の業務のペーパーレス化、作業ミスの軽減、さらには情報の見える化を実現することができました。

また、今回のシステムを構築するにあたり、最適な APN パートナーを紹介してもらえたことも、大きなメリットとなりました。「今までなら開発には半年、1 年と時間がかかっていたはずですが、APN パートナーにやりたいことを説明し、打ち合わせを重ねてできあがるまでに何日も待つことはありませんでした。」(山口氏) 要件定義のスピード感と AWS を活用することで得られる開発のスピード感の双方が、今回の開発プロジェクトでは十分に発揮されました。

JA めむろでは、クラウド導入の検討から AWS の導入を決定するまでに 2 年以上の時間をかけたものの、「AWS を利用した肥料在庫のシステムの開発は2 ヶ月程度で完了することができました。」(山口氏)

また、運用面に関しても「AWS は動いていることが前提なので、システムのインフラについて悩むことがなくなりました。むしろその部分は忘れている状況です。データベースについても標準で二重化がなされており、バックアップの心配もありません。停電などの対応も必要なく、システム管理者はインフラを一切気にしなくりました。」(山口氏)

実際、JA めむろでは、クライアント・サーバー型のシステムを運用していた時と比べ、AWS では利用現場からの問い合わせや対応依頼の呼び出しの数を大きく削減することができました。「オンプレミスで運用していた頃は、システムの更新や、パフォーマンス不足を解消するにはどうしたらいいのかなど、問題解決や現状維持に関することが主な話題でしたが、AWS 導入後は安心して運用できるため、次はどんなシステムを作りたいかなど、未来の話ができるようになりました。新たなことにチャレンジして成果を出したい時には、AWS のようなクラウドが最適だと考えています。」(山口氏)

2016 年、北海道には例年にはなく規模大きな台風が多数上陸し、作物などにも甚大な被害が出た地域がありました。JA めむろでは、こういった自然災害への対策を BCP(事業継続計画)として積極的に推進します。「もちろん IT システム自体も災害対策の対象ですが、これについては AWS 上でシステムを構築していれば業務継続ができると考えています。情報を AWS 上で一元管理できれば、災害時にも止まることなくリアルタイムに耕作地の状況を把握できるようになります。そのため、JA めむろでは、既存のシステムも含め AWS への移行を検討しています。さらに、災害状況を迅速に把握できるシステムの構築も計画しています。」(山口氏)

また、農業では広範囲な農地を対象に、さまざまな農耕機具などを活用し作業を行うため、JA めむろではセンサー情報を活用するような IoT 分野への進出も視野に入れています。「AWS が提供する IoT 関連のサービスにはとても期待しています。AWS には便利なサービスがたくさんありますが、それらをもっと理解すればやりたいことが簡単に実現でき、さらに便利な仕組みが必ず実現できるはずです。そしてやりたいことを実現するには、自分たちからも積極的に情報発信していくことが大切だと考えています。」(山口氏)

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- JA めむろ(芽室町農業協同組合)
管理部 管理経理課 課長
山口 正広 氏

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