セキュアなブロックチェーンプラットフォームの構築に Amazon Managed Blockchain を活用し
デジタルコンテンツのアセット化を実現

2021

電子書籍取次を中心とした流通事業を展開する株式会社メディアドゥ。同社はデジタルコンテンツのアセット化、海賊版対策と世界流通を念頭に、ブロックチェーン技術を活用したセキュアな流通プラットフォームを Amazon Managed Blockchain を用いて構築。マネージドサービスを活用して管理コストを約 20% 削減し、開発リソースをビジネス価値の創出に集中しています。さらに、新たな領域におけるブロックチェーン関連のプロジェクトを進めています。

AWS 導入事例  | 株式会社メディアドゥ
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Amazon Managed Blockchain で、 1 秒あたり 5,555 以上のトランザクション処理が可能なブロックチェーン基盤を低コストに構築することができました。デジタルコンテンツの消費様式が大きく変容していく中、グローバル展開を見据えて活用していきたいと考えています

佐藤 美佳 氏
株式会社メディアドゥ
IPマーケティング企画室
ファンマーケティングチーム
シニアマネージャー

“デジタルアセットモデル”の実現に向けブロックチェーン技術に着目

著作物の健全な創造サイクルの実現に向けて、「ひとつでも多くのコンテンツを、ひとりでも多くの人へ」届けることをビジョンとするメディアドゥ。電子書籍取次事業では 2,200 社超の出版社のマンガ、書籍、雑誌を取り扱い、150 以上の電子書店との取引があります。2020 年はコロナ禍による巣ごもり消費の追い風を受け、売上・利益ともに想定以上のペースで伸長。現在は既存事業の磨き込みと並行して、デジタルコンテンツを利用した新規事業の創出に取り組んでいます。

デジタルコンテンツ業界のデジタルトランスフォーメーション( DX )を見据えて取次の枠にとらわれない新時代の流通プラットフォームの創造を目指す同社は、大きな可能性を秘めたブロックチェーン技術に着目し、2015 年頃から新たな流通プラットフォームの構築に着手しました。

「ブロックチェーン技術に着目した最初の理由は、海賊版対策と世界流通です。暗号通貨にも使われているセキュアなブロックチェーンを活用することで、コンテンツを安全にやり取りできるうえ、世界市場にも提供しやすくなります。さらに踏み込んで着目したのが、デジタルコンテンツのアセット化です。従来のような売り切りモデル、サブスクリプションモデル、広告モデルではなく、フィジカルなコンテンツと同様に、個数の制限を持つデジタルコンテンツの概念として”デジタルアセットモデル( Digital Contents Asset )"を構想しました」と語るのは、IP マーケティング企画室 ファンマーケティングチーム シニアマネージャーの佐藤美佳氏です。

ブロックチェーン技術の活用によってトレーサビリティが確保され、不正な動きも検知することが可能です。データの改ざんが困難というメリットもあります。「我々運用者を含めてデータを簡単に書き換えることができない仕組みのため、ユーザーやコンテンツフォルダーも安心して利用できます」と、IP マーケティング企画室 エンジニアリングチーム Fellow の沓名雅司氏は語ります。

高い安定性とパフォーマンスを実現する Amazon Managed Blockchain を採用

メディアドゥはブロックチェーン技術の効果の検証を行う中で、パブリック型とコンソーシアム型の比較も行いました。複数の特定運営者で管理するコンソーシアム型の Hyperledger Fabric を採用し、2019 年の実証実験で技術的な実現性を確認。クラウド型マネージドサービスとして、Amazon Managed Blockchain の採用を決定しました。採用の理由は、周辺サービスが充実し、より高い安定性とパフォーマンスが実現することにありました。
「大きかったのは、オープンソースの Hyperledger Fabric に対応していたことです。認証(CA)サーバー含めて、耐障害性が考慮されていることもポイントとなりました。データの取り込みから書き出しに至るまで AWS は使えるサービスが多く、総合的に判断して採用を決めました」(沓名氏)

同社では、主力の電子書籍取次システムなど、ほぼすべてが AWS 上で稼働しており、他システムとの親和性が高いことも採用を後押ししました。

同社はブロックチェーン基盤の構築を 2019 年 7 月に開始し、2020 年 6 月末に終了しました。ユーザーからのリクエストは、リクエストの要求仕様に応じて Application Load Balancer+AWS Fargate もしくは Amazon API Gateway+AWS Lambda で一次受けして、Amazon DynamoDB に記録し、そこから DynamoDB Streams 経由でブロックチェーン側に書き出すアーキテクチャを構成しています。Amazon DynamoDB はバッファの用途で利用し、蓄積したデータを DynamoDB Streams でバッチサイズを調整し、バルク処理で書き込むことでスループットを最大化。これによりトランザクション処理可能取引数は、1 秒あたり 5,555以上 を実現しています。
「基盤開発 4 名で行い、AWS のサポートを受けながら進めました。AWS の担当者経由で米国の Amazon Managed Blockchain チームと対面で意見交換する機会を設けていただき、パフォーマンス改善についてのアドバイスも得ることができました」(沓名氏)

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ブロックチェーンを活用した複数の新規プロダクトを開発

メディアドゥは Amazon Managed Blockchain の採用により、ブロックチェーン基盤の構築コストを大幅に圧縮できました。インフラのセットアップなども不要になり、開発効率が向上しています。
「インフラの管理を AWS に任せることで、可用性と冗長性が向上し、管理コストも約 20% 削減できました。また、当社メンバーはアプリケーション開発やビジネス価値の追求に専念できるようになっています」(沓名氏)

現在、同社では音楽など新たな領域における 5 つのブロックチェーン関連の開発プロジェクトを進行しています。2021 年 3 月には第 1 弾として、『ソーシャル映像視聴サービス』をリリースし、ライブ業界関係者向けの α 版としてサービス提供を開始しました。

「ソーシャル映像視聴サービスでは、ブロックチェーンのトレーサビリティを活かして、ファンの行動履歴を可視化することを目指しています。購買・視聴に加えて、ファンがファンを呼ぶことで、その累積に応じて特典を提供することも可能になります。アーティストやコンテンツホルダーに対しても、コロナ禍でリアルの場での活動が制限される中、新たなマネタイズの仕組みを提供することを目指しています」と、取締役 CBDO の溝口 敦氏は語ります。

新たなブロックチェーン基盤は、トランザクションあたり平均流通単価を 10 円と仮定すると、年間約 1.75 兆円の流通量をカバーしています。同社では 2021 年内にソーシャル映像視聴サービスに続き、電子書籍はもとより、幅広くデジタルコンテンツに関するプロダクトを複数リリースする予定です。
「デジタルライブ市場は 2024 年までに現在の 140 億円から 984 億円まで伸長すると言われています。デジタルコンテンツ全体の市場成長が見込める中、ブロックチェーンによる新たなコンテンツ配信は、約 0.4 兆円の電子書籍市場から、全体で 4 兆円の市場に参入する好機と考えています」(溝口氏)

海賊版対策を強化し海外向けライブ配信サービスへの拡張へ

メディアドゥでは今後、デジタルコンテンツの新たな流通の仕組み作りや市場創出を、海外に向けて進めていく予定です。2019 年には世界最大級のアニメ・マンガコミュニティサイト『MyAnimeList』を運営する米国の MyAnimeList 社を買収し、世界に向けたライブ配信をスタートしています。
「今後は MyAnimeList においても、デジタルアセットの購入、マーケティング、海賊版対策、日本コンテンツのグローバル展開などにおいて、ブロックチェーンを活用した形でサービスを開発していきます。AWS には、IT インフラに加え、海外視点での情報提供やアドバイスを通して、当社の世界進出を支援いただけたらと思います」(溝口氏)

溝口 敦 氏

佐藤 美佳 氏

沓名 雅司 氏


カスタマープロフィール:株式会社メディアドゥ

  • 設立:1999 年 4 月 1 日
  • 資本金:28 億300 万円(2020 年 11 月末日現在)
  • 事業内容:デジタルコンテンツ流通・配信/システム開発・提供/メディアコンサルティング/出版者支援サービス、および各種研究開発

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • インフラ管理コストを 20% 抑制
  • 可用性、冗長性、障害・災害発生時の耐障害性の向上
  • ブロックチェーンの活用領域を拡大し、大規模コンテンツ市場に参入
  • 海外市場向けサービスにおけるブロックチェーンの活用

ご利用中の主なサービス

Amazon Managed Blockchain

Amazon Managed Blockchain はフルマネージド型のサービスで、一般的なオープンソースフレームワークである Hyperledger Fabric や Ethereum を使用して、パブリックネットワークへの参加や、スケーラブルなプライベートネットワークの作成と管理を簡単に行えます。

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Amazon DynamoDB

Amazon DynamoDB は、規模に関係なく数ミリ秒台のパフォーマンスを実現する、key-value およびドキュメントデータベースです。完全マネージド型マルチリージョン、マルチマスターで耐久性があるデータベースで、セキュリティ、バックアップおよび復元と、インターネット規模のアプリケーション用のメモリ内キャッシュが組み込まれています。

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Application Load Balancer

Application Load Balancer を使用すると、マイクロサービスやコンテナといった最新のアプリケーションアーキテクチャを対象とした高度なリクエストルーティングを実現できます。

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AWS Fargate

AWS Fargate は、Amazon Elastic Container Service (ECS) と Amazon Elastic Kubernetes Service (EKS) の両方で動作する、コンテナ向けサーバーレスコンピューティングエンジンです。Fargate を使用すると、アプリケーションの構築に簡単に集中することができます。

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