Milk、AWS Thinkbox Deadline を使用して 170 の液体シミュレーションショットを 6 週間でレンダリング

STXfilms 映画『アドリフト』のオープニングシーンでは、カテゴリー 5 のハリケーンに巻き込まれた 2 人の船員の実話に基づいて、何か恐ろしいことが起こった様子が見て取れます。濁った水に浮かぶ船の残骸と船体。浸水したボートの中で意識を取り戻す、血を流した女性。デッキを飲み込むような波でボートが大きく揺れる中、女性は行方不明のパートナーを必死に探します。シーン終わりの高角度の空中ショットが、彼女がどれだけの苦境に残されているのかを伝えています。制御不能となった船は、広大で何もない海に囲まれ、小さな点のように浮かんでいます。

このシーンは、まさにデッキ下に 3 フィートの水がうごめく本物の帆船でロケーション撮影されたように見えますが、それは錯覚です。実際にはスタジオ内のグリーンスクリーンの前で撮影され、ボートは波の動きをシミュレーションするためにジンバル上で揺らされていました。水が使われたのはセット上で俳優の髪を濡らしておくためだけでした。

海は Milk によって描き加えられていたのです。

  • Milk VFX について
  • アカデミー賞および 3 つの BAFTA 賞受賞歴を持つ VFX スタジオの Milk には、『アナイアレイション - 全滅領域 -』、『オルタード・カーボン』、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』などのクレジットがあります。同社はロンドンとウェールズのカーディフにスタジオを持っています。 

  • AWS の利点
    • 6 週間で 170 の海洋シミュレーションショットをレンダリング
    • レンダリングファームのスケールが 132,000 CPU コアでピークに到達
    • アーティストは新しいツールやプロセスを学ぶ必要がなかった
  • 使われている AWS のサービス

Skeleton Crew との船出

ロンドンに拠点を置く視覚効果 (VFX) 企業 Milk はテレビドラマや劇場映画で幅広い実績を誇ります。たとえば、『エクスマキナ』でアカデミー賞最優秀視覚効果賞を受賞したほか、『ドクター・フー』やその他のプロジェクトで BAFTA 賞を複数部門受賞しています。多くの VFX 企業はこの 7,000 フレームというオープニングシーンを作ったというだけでもを誇りに思うところですが、Milk は『アドリフト』の主要 VFX ベンダーとして、170 の海と嵐の流体シミュレーションショットを生み出しました。これらには、帆船がピッチポールされ、100 フィートの波によって左右に大きく揺れる 62TB、3,000 フレームシーケンスが含まれています。映画に使用するシミュレーションと VFS をすべてレンダリングするのには 6 週間を要し、毎日のリソースニーズは平均で 80,000 CPU コア、ピーク時で 132,000 コアとなりました。

このすべてを実現するために、Milk は SideFX Houdini および AWS Thinkbox Deadline 用のカスタムスクリプトを構築することで、広範囲な FX シミュレーション用にアニメーションパイプラインを最適化しました。これは、クラウドおよびオンプレミスのレンダリングファームの管理および計算管理におけるソリューションです。それにより、アーティストが数千の Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) スポットインスタンスを使用して、ローカルでシミュレートし、クラウドで Mantra によるレンダリングを行うことができました。

「『アドリフト』の VFX 制作の範囲は、これまで取り組んできたあらゆる作業と比較しても 10 倍を軽く超える規模でした。そして、取り組むプロジェクトはほかにもありました」と、Milk のシステムトップの Dave Goodbourn 氏は語ります。「AWS で Deadline を使用することで、当社の小規模のチームでも膨大な量の作品を簡単に制作できました。」

AWS を使用し、少ないリソースでより多くの成果を達成

2013 年に設立された Milk は創業 5 年目にしてアーティストを約 200 名に増員し、ロンドン本社の拡大を行いました。さらに、新進気鋭の Dan Films/Kindle Entertainment 制作の映画 『Four Kids and It』や、Amazon Prime/BBC Studios によるシリーズ『グッド・オーメンズ』など、テレビや映画作品への挑戦もしました。

Milk の戦略は、クラウドコンピューティングを使用してその企業規模にとっては前代未聞レベルとも言える能力と俊敏性を獲得することです。これは、『アドリフト』監督の Baltasar Kormákur 氏の野心的なビジョンに見合った VFX を提供するには適した戦略です。

「観客は水がどんなふうに見えるか直感的に知っているため、液体シミュレーションは容赦のないものです。生み出すのは非常に複雑な作業で、大量のデータが生成されます」と、Milk の FX とCG の監督責任者である James Reid 氏は言います。「信頼性と拡張性に優れたレンダリング能力はプロジェクトにとって最も重要な考慮事項でした。そこで、AWS を検討し始めました。」

また、Milk は最近 AWS が Thinkbox を買収したことにも価値を見出しました。「Thinkbox Deadline は、創業以来当社のパイプラインとインフラストラクチャに不可欠な部分でした」と Reid 氏は述べています。「『アドリフト』のような複雑な案件では、レンダリングファーム管理ソフトウェアとクラウドコンピューティングリソースの両方で同じ会社と協力していることを知っていたため、当社の快適性レベルはより高いものでした。」

AWS では、Milk は必要なスケールをすべて持っていました。Milk のパイプライン責任者、Benoit Leveau 氏は次のように述べています。「ピッチポールショットのデータ 62 TB 分は FX キャッシングでした。」「AWS Thinkbox Deadline と、その必要なときに数千の Amazon EC2 スポットインスタンスをスケールアップする機能がなければ、このような複雑なショットをレンダリングすることはできませんでした。」

AWS ツールでは、Milk チームは時間のかかるトレーニングをする必要なく作業を開始することができました。「当社のアーティストはすでに Deadline に精通していたので、新しいツールやプロセスについて学習したり、さらに必要なノード数を特定する必要すらありませんでした」と Leveau 氏は言います。「クラウドに自分の仕事を送って返送してほしい部分を示すだけでよく、残りは Deadline が仕事をしてくれました。」

Reid 氏は、AWS 上で利用可能なレンダリングノードの膨大な規模は、プロジェクト完了をすばやく行うために必須だったと説明しています。「『ファームに提出』ボタンを押すとき、こちらはその数にかかわらず、そうしたフレームがすばやく返ってくるよう期待します。AWS Thinkbox Deadline および Amazon EC2 スポットインスタンスの無制限のキャパシティーによって、より流動的な反復計算とより良い結果が実現されています。」

膨大な量をコンピューティングする能力が常に必要とされることはありませんが、もちろん、Milk は AWS にもう 1 つのメリットを見出しています。「『アドリフト』のようなプロジェクトをオンプレミスのリソースを使用して完了させるには、10 ~ 15 倍のレンダリングノードが必要ですが、それをかなり抑えられるのです」と Leveau 氏は言います。」 AWS では、256 GB の RAM を搭載した 96 個のコア、さらに多くのコアや RAM など、さまざまなリソースを必要に応じて短時間または長期間簡単にタップし、実際に使用した分だけ支払うことができます。物理マシンでは不可能だったでしょう。さらに、AWS では信頼性の高いマシンが容易に入手でき、仕様が常にアップグレードされています。」

Goodbourn 氏は、クラウドが同社の戦略に不可欠な理由を説明しています。「AWS Thinkbox Deadline および Amazon EC2 スポットインスタンスを使用することで得られる無制限のリソースにアクセスできなければ、『アドリフト』などのプロジェクトを引き受けることはできないでしょう。AWS を活用することで、Milk のようなスタジオはその実力を大幅に上回る案件に対処することができます。これはクラウドなしでは実現できないものです。」


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