日本通運株式会社

グローバルロジスティクスカンパニーに向けて
VMware Cloud on AWS でクラウド移行を加速
国内外の会計システムを SAP S/4HANA on AWS に統合

2022

総合物流サービスを提供する日本通運株式会社は、オンプレミス環境のシステムを 2014 年からアマゾン ウェブ サービス(AWS)への移行を進めています。そこでは、一部に AWS ネイティブの運用ルールに対応が難しいシステムがありました。そこで、VMware Cloud on AWS を活用し、順次移行を開始。全システムの移行により、年間最大 5,000 万円のインフラコストの削減を試算しています。また、会計システムを SAP S/4HANA に統合するにあたり、国内は AWS 上への新規導入、海外は AWS上で運用している SAP ERP 6.0 からのアップグレードが進められています。

日本通運株式会社
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NX グループの戦略に則して IT インフラを AWS に集約し、コストの最適化を進めていきます。さらに、AWS の最新技術の活用を通して、従業員エンゲージメントを向上させ、エンジニアが成長できる環境と強靱な組織を作っていきます"

宮本 一厳 氏
NIPPON EXPRESS ホールディングス株式会社
IT 戦略部専任部長

2022 年 1 月より持ち株会社制に移行
グローバルロジスティクスカンパニーへ

陸・海・空を網羅する輸送力とグローバルネットワークにより、総合的な物流ソリューションを提供する日本通運。2022 年 1 月には持ち株会社の NIPPON EXPRESS ホールディングスを設立して新体制に移行し、統一ブランド『NX』を立ち上げました。

同社は生産性の向上やワークスタイルの変革を支える IT を重要視しており、高品質、高可用性の実現と並行して、システムのクラウド移行を進めています。「現在、事業部門への貢献と NX グループの成長に向けて、クラウドネイティブな人材の育成と、アプリケーションのモダナイズに取り組んでいます」と語るのは、NIPPON EXPRESSホールディングス株式会社 IT 戦略部専任部長の宮本一厳氏です。

クラウド基盤の維持管理のハードルを下げる
VMware Cloud on AWS を活用

日本通運は、2009 年に VMware による仮想化基盤を構築し、オンプレミス環境での運用を続けてきました。しかし、ハードウェアの調達、システム構築にかかる工数、数年おきに発生する基盤更改などの運用負担が増大。ファームウェアやソフトウェアのバージョンアップも追いつかず、セキュリティ面でも懸念される状況が生まれていました。そこで、これらの課題を解決する手段として AWS を採用し、2014 年 4 月からクラウド移行を開始しました。AWS の選定理由は、先進性と機能性、グローバルで共通の環境が構築可能なこと、コストパフォーマンス、柔軟なリソース調達などにありました。

以来、新規案件および更改システムを AWS 上に導入・移行してきましたが、一部はメンテナンスルールに合わせて定期的にサーバーの再起動することが難しいシステムがありました。そこで無停止でのメンテナンスに向けて、VMware Cloud on AWS の採用を決めました。NX 情報システム 株式会社システム企画部 部長の水野賢一氏は次のように語ります。

「採用の決め手は、VMware 基盤の自動バージョンアップ・パッチ適用といった基盤の最新化の維持機能が含まれていることにありました。オンプレミス環境では調査・適用作業にスキルが求められ、基盤担当者の負担になっていましたが、VMware Cloud on AWS であれば、クラウド基盤の維持管理のハードルを大きく下げることが可能でした」VMware Cloud on AWS 上への環境構築は、2021 年 1 月から 10 月にかけて実施。環境構築では、セキュリティ向上を目的として分散ファイアウォール(DFW)による細かなアクセス制御を実施。VMware Cloud on AWS でロードバランサ―が必要となった際には、AWS ネイティブのマネージドサービスである Elastic Load Balancing(ELB)を採用して運用負荷の軽減を図っています。

環境構築後、2022 年 1 月には業務部門の要請に応じて VMware Cloud on AWS から仮想化環境を払い出し、サーバーの EOL を迎えた勤怠管理システムの仮想マシン 7 台分を移行しました。

「VMware Cloud on AWS は 2 つのアベイラビリティーゾーン(AZ)にまたがるクラスターを使用して SDDC が作成できる、ストレッチクラスターが利用できます。AZ 間でデータが同期レプリケーションされ、AZ 障害時は vSphere HA イベントとして取り扱われ、もう一方の AZ で仮想マシンは再起動されるため、ミッションクリティカルなアプリケーションを保護することができます。今回移行したシステムは、一部はアプリケーションレベルでクラスター構成を組んでいましたが、シングル構成とすることで移行時の設計・テストの工数を削減することができました」(水野氏)

今後、オンプレミス環境で稼働しているシステムは、サーバーのライフサイクルに合わせて AWS 上に移行していく計画で、これによって大幅なコスト削減が実現する見込みです。

「検討段階では、全システムを VMware Cloud on AWS に移行した場合、最大で年間 5,000 万円程度の削減を試算しています。これは、AWS のベアメタルサーバーによるスペック向上の効果が大きく、現行基盤で 50 台程度の ESXi ホストが 8 台(ストレッチクラスターにより 16 台構成)まで削減できると想定しています」(水野氏)

会計システムに SAP S/4HANA を導入
国内外のインフラ基盤を AWS で統一

VMware Cloud on AWS への移行と並行し、AWS ネイティブへの移行として進んでいるプロジェクトが、グローバル共通の会計システムとして採用した SAP S/4HANA の導入です。これまで国内グループ会社の会計システムは会社ごとに導入していました。一方、海外グループ会社の会計システムは、SAP ERP6.0 をワンインスタンスで AWS 上に構築し、2014 年から導入を開始しました。2021 年 4 月に S/4 HANA にアップグレードしまたが、2022 年時点では 37 か国、67 社に導入しています。

2022 年のホールディングス制への移行にあたり、決算業務の効率化、会計情報のタイムリーな取得、業務プロセスの標準化、ガバナンスの強化等を目指した同社は、国内外の会計システムの統一を検討。SAP S/4HANA の採用を決定し、あらたに AWS 上に構築することにしました。それに合わせて前述のとおり海外グループ会社の会計システムは SAP ERP6.0 から SAP S/4HANA にアップグレードすることと、インフラ基盤を AWS の SAP S/4HANA 専用インスタンスへ移行して、サーバー OS を Windows から Linux に変更することが求められました。

海外グループ会社の SAP ERP6.0 の SAP S/4HANA への移行プロジェクトは、2019 年からスタートし、2021 年 4 月に終了しました。なお、SAP S/4HANA への移行方式は、既存 ERP6.0 環境上にある全てのカスタマイズ及びデータを移行する方法であるブラウンフィールド(システムコンバージョン)を採用しました。日本通運株式会社 IT 推進部 次長の北野雅康氏は、プロジェクトについて次のように語ります。

「海外展開は、各国の税制に合わせて対応しています。導入時期は決算期を避け、各国各社の事情やルールにあわせるよう調整しました。また、運用面においては、拠点ごとに休日のタイミングも異なるため、システム停止の調整をしっかりと実施しました。コロナ禍でプロジェクトが一時停止になるなど、各国への展開にはさまざまなハードルが立ちはだかりましたが、何とかやり切ることができました。プロジェクト中に M&A で買収した海外子会社もあり、今後は事業の多角化に向けたシステム対応を進めていきます」

国内グループ会社への SAP S/4HANA の導入は、海外グループ会社の導入と並行して 2022 年 1 月から本格的に進んでおり、順次約 300 社のグループ会社に横展開していく計画です。

IT インフラを統合してコストを最適化
従業員エンゲージメントの向上へ

今後は、オンプレミス環境のサーバーが EOL を迎える 2025 年に向けて、クラウド移行を加速させる予定です。原則として可能なものは AWS ネイティブへの移行とし、難しいものは必要に応じて VMware Cloud on AWS に移行する方針です。

「NX グループの戦略に則して IT インフラを AWS に集約し、コストの最適化を進めていきます。さらに、AWS の最新技術の活用を通して、従業員エンゲージメントを向上させ、エンジニアが成長できる環境と強靱な組織を作っていきます。それによってオペレーションの効率化に留まることなく、蓄積したデータの活用や機械学習による分析等、デジタルトランスフォーメーションにもチャレンジしていきます」(宮本氏)


カスタマープロフィール:日本通運株式会社

  • 設立: 1937 年 10 月 1 日
  • 資本金: 701 億 7,500 万円
  • 従業員: 34,449 名(単体: 2021 年 12 月 6 日時点)
  • 事業内容:自動車輸送、鉄道利用輸送、海上輸送、船舶利用輸送、利用航空輸送、倉庫、旅行、通関、重量品・プラントの輸送・建設、特殊輸送、情報処理・解析などの物流事業全般 および関連事業

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • システム環境に応じた柔軟な AWS 移行の実現
  • 年間最大 5,000 万円のインフラコスト削減(VMware Cloud on AWS に移行した場合の試算値
  • 国内外グループの会計業務の標準化
  • 2025 年までに全システムを AWS ネイティブまたは VMware Cloud on AWS に移行

ご利用中の主なサービス

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