人口約 156 万人の福岡市において 76 万ダウンロードという多くのユ―ザーに利用されている『にしてつバスナビ』ですが、利用者が増加しても十分なレスポンスがあり、サービスが止まることはありません。
AWS を利用することで自前のデータセンターにサーバー設置するよりもランニングコストはかなり安くなっています。また、AWS は企業利用での利用実績が豊富なため、セキュリティに関してもプロにお任せしているという安心感があります。
荒川 博敏 氏  松浦 泰之 氏 西日本鉄道株式会社 自動車事業本部営業企画部 システム管理課

1908 年に創業した九州電気軌道を前身とする西日本鉄道株式会社(以下、西鉄)は、福岡県を基盤に鉄道、バスの路線網を持つ大手私鉄会社です。同社は鉄道および自動車による運送事業だけでなく、海上運送事業、さらには不動産事業、ホテル事業など地域に密着した幅広いビジネスを展開しています。バス事業においては、路線バスを含む乗合バスと貸切バスの 2 つを展開し、路線バスの運行状況やバス停の位置や路線バスのをタイムリーに確認できる無料スマートフォンアプリ『にしてつバスナビ』を提供しています。

2012 年に設立された株式会社からくりものは、福岡市を拠点にスマートフォンアプリの開発を行っています。2012 年『にしてつバスナビ』の前身となる『バスを探す 福岡』を開発、公開しました。 

西鉄の主要ビジネスの 1 つである乗合バス事業には、地域の生活を支える足として重要な役割を担う一般路線バス『西鉄バス』と、九州各県を中心に都市間をダイレクトに結ぶ高速バスの 2 つがあります。「当社が運営する路線バスは、福岡市を中心に網目のように張りめぐらされており、路線の種類が多く利便性が高い反面、その路線図はとても複雑なものになっています。」と言うのは、西日本鉄道株式会社 自動車事業本部営業企画部 システム管理課 係長 荒川 博敏  氏です。

また、バスの運行は道路状況にも左右されやすいため、天候や通勤時間帯の渋滞、突発的な事故等が原因で、どうしても時刻表通りに運行できないこともあります。「バスの遅延が発生した際、利用者からは、なぜバスが遅れているのか、どのぐらい遅れるのか、といった運行情報をタイムリーに伝えて欲しいとの声があがっていました。」と言うのは、西日本鉄道株式会社 自動車事業本部営業企画部 システム管理課 吉村 こずえ 氏です。

西鉄ではこうした利用者の声を実現するために、15 年ほど前からバスロケーションサービスを用いて、乗りたい路線のバス停を指定すればバスがいつ到着するかが分かる Web サイト「バスナビ」を、PC およびフューチャーフォン向けに運営していました。そして時代の変化とともにスマートフォン利用者が増化したことで、スマートフォン環境でもさらに路線バスを利用しやすくするソリューションを西鉄では模索していました。

株式会社からくりものの代表取締役 岡本 豊 氏も、2010 年に長野から福岡へ移り住んで以来、バスナビを日々利用する 1 ユーザーでした。とはいえ、スマートフォンで閲覧する際にも PC 用サイトにアクセスしなければないなど、当時のバスナビは使い勝手があまり良くなく、岡本氏はこれがスマートフォンのアプリ化されれば、さらに便利かつ手軽に利用できるようになるのではないかと考えていました。

そんな中、からくりものでは会社設立から間もない 2012 年 8 月、社内メンバーの技術力向上のために合宿を行い、バスナビ Web サイトにある機能のスマートフォンアプリ化に挑戦しました。この合宿中に開発されたアプリは合宿後も改善を行い、iPhone アプリ『バスをさがす 福岡』として 2012 年 11 月に一般公開されました。この『バスをさがす 福岡』は、開発当初からアプリのインフラに AWS クラウドを採用しています。開発時点でインフラリソースの予測が難しいスマートフォンアプリでは、初期費用をなるべく安く抑える必要があります。さらに公開後に利用がスケールした場合に備えて、柔軟性や拡張性の高いインフラが必要でした。 「当時は AWS 一択でした。AWS は安く小さく迅速に始められて、利用後の柔軟性・拡張性も高いため、アプリ構築には最適だと考えました。また、九州地区にも AWS ユーザーグループ JAWS-UG の活動があり、コストをかけずに手早く開発するための知見が得られやすかったことも AWS の採用を後押ししました。」(岡本氏)  

アプリの評判はすぐに口コミで広がり、ダウンロードは公開後すぐに 1,000 を超え、1 年間で 65,000 ダウンロードを達成しました。

『バスをさがす 福岡』は、国土地理院が提供しているバス停の位置情報と西鉄バスのバス停名をマッチングさせて地図上に表示させる仕組みや、バスの遅延情報も表示される乗り換え案内の機能も兼ね揃えていましたが、非公式アプリということもあり、西鉄バスの Web サイト『バスナビ』から HTML データを独自に取得・解析して運用されていました。そこで、アプリのさらなる改善のため、より正確なバス停の位置情報や運行状況などの公式データを西鉄側から提供してもらうべく、岡本氏は 2012 年 12 月に直接西鉄本社を訪問し、データの提供について相談しました。「当時、西鉄さんの社内でも『バスをさがす 福岡』はちょっとした話題となっていたようで、担当者の方と実際に会って話をしたところ、アプリを好意的に受けとめ、使いやすいと評価してくださいました。その後のやり取りを経て公式アプリ化のオファーを頂き、2013 年 7 月に西鉄公式アプリ『にしてつバスナビ』として、iPhone版、Android版をリリースすることになりました。」(岡本氏)

当初『バスをさがす 福岡』は、Amazon EC2 にウェブサーバー、MySQL をインストールしたスマートフォン・アプリ用の環境で構築されました。「これをやってみたい!というアイデアをすぐに試し、実現することができたのが AWS でした。それが公式アプリ化にもつながったと思っています。」(岡本氏)

アプリの公式化を機に、からくりものではユーザー数が一気に増加すると予測し、Amazon S3 の静的ウェブサイトのホスティング機能を活用し、『にしてつバスナビ』を構築しました。Amazon S3 であれば高い可用性とロードバランス機能があり、利用者が増えても停止することのない公式サービスを安心して提供できると考えたのです。「Amazon S3 に静的コンテンツを置き、情報に更新があれば、Amazon EC2 が西鉄さんの API を利用して情報を取得する仕組みをとったことで、可用性の強化だけでなく、以前の構成と比べてコストの削減にもなっています。」(岡本氏)

公式アプリとしてリリースされた『にしてつバスナビ』は、2017 年 9 月末時点で人口約 156 万人の福岡市において 76 万ものダウンロードを達成している人気アプリとなっています。「このように多くのユーザーから利用されている『にしてつバスナビ』ですが、利用者が増加しても十分なレスポンスがあり、サービスが止まることはありません。渋滞や事故などでバスが遅れた際や、新たに通勤通学でバスの利用を始める人が増える毎年 3 月には利用者数やアクセス数が急激に増加します。そういった利用者数の変動にも AWS は問題なく対処できています。」(荒川氏)

さらに西日本鉄道株式会社 自動車事業本部営業企画部 システム管理課 課長 松浦 泰之 氏は「既存のアプリを公式化したことでスピーディーかつ安価に新しいサービスの提供を実現しただけでなく、AWS を利用することで自前のデータセンターにサーバー設置するよりもランニングコストはかなり安くなっています。また、AWS は企業利用での利用実績が豊富なため、セキュリティに関してもプロにお任せしているという安心感があります。」と、AWS を評価しています。

『にしてつバスナビ』の利用者からは「毎日使ってます」「アプリがあるので時間を有効に使えます」「福岡に移住、転勤してきた友人には、まず紹介しています」といった声が寄せられており、バスの乗客数増化や西鉄グループのビジネスにも貢献しています。西鉄では今後もこうした利用者の声を聞き、さらにアプリを使い安いものにしたいと考えています。そのための新たなアイデアが生まれた際には、柔軟性が高いクラウドを活用して実現していくことになります。

「スマートフォンには高度なセンサー機能もあるため、そういったものを使って利用者から得られるダイナミックな情報も活用したいです。AWS Lambda 、Amazon API Gateway、Amazon DynamoDB 等を使ったサーバーレスアーキテクチャであれば、アプリエンジニアだけで様々なことにチャレンジできるので、今後も AWS のサービスを積極的に活用して、利用者によりよい形になるよう、西鉄さんと協力しながら『にしてつバスナビ』をアップデートしていきたいと考えています。」(岡本氏) 

nishitetsu-karakurimono_photo

左から、
- 株式会社からくりもの 代表取締役 岡本 豊 氏

- 西日本鉄道株式会社 自動車事業本部営業企画部 システム管理課 課長 松浦 泰之 氏

- 西日本鉄道株式会社 自動車事業本部営業企画部 システム管理課 吉村 こずえ 氏

- 西日本鉄道株式会社 自動車事業本部営業企画部 システム管理課 係長 荒川 博敏 氏

AWS クラウドがウェブアプリケーションにどのように役立つかに関する詳細は、ウェブサイトおよびウェブサイトホスティングの詳細ページをご参照ください。