導入事例 / 情報通信

2023
株式会社 NTT データ

NTT データ、新キャッシュレスプラットフォームを構築するとともに組織を変革。アジャイル開発で顧客志向のサービスを提供

約 1 億件

Digital CAFIS の月間決済件数

約 5 件

年間のサービスローンチ数

20 倍

アプリのスクラムチーム数の増加率(4 年間)

3 か月

アプリの開発期間(オンプレミス比 2 分の 1)

概要

国内最大級のキャッシュレス総合プラットフォーム『CAFIS(キャフィス)』を提供する株式会社 NTT データ。同社はデジタル決済の普及をふまえ、既存組織とは切り離した独自の DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクト『Digital CAFIS』を立ち上げ、アジャイル開発にシフトしました。決済サービスのプラットフォームにはアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用。マルチリージョン構成などにより可用性を高め、現在は月間で約 1 億件の決済処理を AWS 上で行っています。

ビジネスの課題 | 新たな付加価値の提供に向けた DX プロジェクト『Digital CAFIS』

クレジットカード市場の拡大を見据えて 1984 年に誕生した『CAFIS』。今や月間取引件数は約 9 億件に達し、100 万店以上の加盟店と国内ほぼすべてのカード会社や金融機関を結びながら、24 時間 365 日休むことなく日本の決済を支えています。

そうしたなかで、デジタル決済サービスの環境は近年、大きく変わりました。そこでNTT データは、2019 年に新たな DX プロジェクト『Digital CAFIS』を立ち上げました。

「既存の CAFIS は、1980 年代に決済端末を軸としたクレジット決済を対象に開発した基盤です。スマートフォンが普及し、EC 市場の拡大とともに複数の決済手段が登場した現在は、新たな付加価値が求められています。そこで構造的な変化に対応し、消費者志向、加盟店志向のサービス提供にシフトすることを考えました」と語るのは、カード&ペイメント事業部 事業部長の栗原正憲氏です。

Digital CAFIS は、前例や実績にとらわれないサービスを開発するために既存の CAFIS から切り離した同社のデジタル特区によって推進。外部のベンチャーから採用した 5 人のエンジニアがスクラムチームでアジャイル開発を開始しました。2019 年に Digital CAFIS の推進組織として、デジタルペイメント開発室を設立しました。

「破壊的創造に挑戦するためには、異文化組織をゼロから作る必要があります。そこで、組織のあり方から開発プロセス、働く場所までゼロベースで見直しました」とカード&ペイメント事業部 デジタルペイメント開発室 室長の加藤大樹氏は説明します。

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「クラウドの導入により、ビジネスとシステムの距離が縮まり、システムサイドはビジネスを、ビジネスサイドはシステムを意識してサービスを開発するようになりました」

栗原 正憲 氏
株式会社 NTT データ ペイメント事業本部 カード&ペイメント事業部 事業部長

ソリューション | 安定性、サービスの豊富さ、実績から AWS を選定

Digital CAFIS の推進にあたり、同社がサービスプラットフォームに求めたのはアジリティです。そこでクラウドの活用を検討し、AWS の採用を決めました。カード&ペイメント事業部 デジタルペイメント開発室 課長の森永浩史氏は「時代の潮流に乗り、アジャイル開発を進めるなら選択肢はクラウドしかありません。その中で安定性、サービスの豊富さ、金融機関での採用実績などを評価して AWS を選定しました」と振り返ります。

サービスプラットフォームは 2018 年に開発環境を構築した後、2019 年 4 月に商用環境をローンチ。まずは既存の CAFIS で運用していた EC 決済用ゲートウェイを AWS に移行。次に新規サービスとして QR コード決済ゲートウェイなどを AWS 上に構築しました。

アーキテクチャはアプリケーション基盤を Kubernetes でコンテナ化し、実行環境には Amazon Elastic Kubernetes Service(Amazon EKS)を採用。DB の同期は Amazon Aurora で実現しています。デプロイ環境は Terraform でコード化しています。

「金融サービスとして提供するため、CAFISと同等あるいはそれを超える信頼性と安全性を目指して段階的に強化しました。1 年目は Amazon EKS に統一してエンジニアのスキルセットを変え、2 年目でオペレーションを高度化し、3 年目でマルチリージョン構成にチャレンジしました」(森永氏)

4 年目以降は多様化を目指してコンテナ環境に Amazon Elastic Container Service(Amazon ECS)、開発環境に AWS App Runner を採用するなど、より簡単にデプロイができるようにしました。カード&ペイメント事業部 デジタルペイメント開発室 課長代理の矢口拓実氏は「過度な標準化は組織の硬直化につながることから、自由度の高い環境を意識しています。AWS アカウントは細分化して自由度を高める一方で、AWS Control Tower を用いてガバナンスを効かせたマルチアカウント管理を実現しました」と語ります。

アジリティを高める手段として、OSS やSaaS を積極的に導入している点も Digital CAFIS の特徴です。

「適材適所でツールを選ぶのがポリシーです。Kubernetes の採用も Amazon EKS のリリースがきっかけでした。OSS はKubernetes を起点に、監視ツールで Prometheus や Grafana、デプロイ管理でArgoCD などを活用しています」(矢口氏)

Digital CAFIS の立ち上げ以来、AWS のアカウントチームとも良好な関係を築き、支援内容にも満足しています。

「AWS とさまざまな課題を一緒に乗り越えてきました。プロフェッショナルサービスには最新のアーキテクチャレビューや技術相談に対応いただき、テクニカルアカウントマネージャーにはサービスのメンテナンス情報やコスト削減提案などを適宜いただきました。ソリューションアーキテクトやアカウント担当の方にも常に最新情報を提供いただき、助かっています。アカウントマネージャーとはクラウドのベネフィットを最大化するために、時に立場を超えて、忌憚ない意見を交わしています」(森永氏)

アーキテクチャ

導入効果 | アプリケーション開発のアジリティを高めるとともに、社内文化も変革

現在、Digital CAFIS には 150 人近い社員が参画し、パートナーを含めると 600 名規模の組織となっています。Digital CAFIS における決済件数も、CAFIS 全体の 9 分の 1 にあたる月間約 1 億件、金額ベースで 3,000 億円に達しています。

「スクラムチームは発足当時の 3 チームから約 60 チームと 4 年間で 20 倍になり、年間で平均 5 件のサービスをローンチさせています。開発期間もオンプレミスの 6 か月から半分の 3 か月に短縮でき、期待どおりのアジリティを発揮しています」(加藤氏)

Digital CAFIS には 20 代の若手社員も多く参画し、組織としても自主性と多様性が育まれています。その結果、顧客志向でサービスやシステムを開発することが可能となり、ビジネスにも好影響を及ぼしています。

「クラウドの導入により、ビジネスとシステムの距離が縮まり、システムサイドはビジネスを、ビジネスサイドはシステムを意識してサービスを開発するようになりました。開発チームの中には新たな技術にチャレンジする風土も醸成されています」(栗原氏)

Digital CAFIS は現在、立ち上げフェーズを終えて次のフェーズに移行している段階です。

「Digital CAFIS としてはまだ技術的な負債があり、2025 年の崖も実感していますので、今後も継続して組織や人を巻き込みながら、NTT データの文化を変えることにチャレンジを続けていきます」(加藤氏)

ビジネスとしても日本のキャッシュレス決済を次のステージへと前進させるべく、引き続き構造改革を進めていく方針です。

「引き続き消費者と加盟店の課題解決につながる価値創造に取り組み、国内のキャッシュレス決済の普及に貢献していきます。そのためにも AWS には金融決済基盤として、継続性と安全性に加えて、透明性の向上に期待しています」(栗原氏)

企業概要 株式会社 NTT データ

NTT データは、豊かで調和のとれた社会づくりを目指し、世界 50 か国以上で IT サービスを提供している。デジタル技術を活用したビジネス変革や社会課題の解決に向けて、お客さまとともに未来を見つめ、コンサルティングからシステムづくり、システムの運用に至るまで、さまざまなサービスを提供する。

栗原 正憲 氏

加藤 大樹 氏

森永 浩史 氏

矢口 拓実 氏

ご利用中の主なサービス

Amazon Elastic Kubernetes Service

Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) は、フルマネージド型の Kubernetes サービスです。

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Amazon Aurora

Amazon Aurora は、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるクラウド向けのリレーショナルデータベースであり、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスと可用性に加え、オープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性も兼ね備えています。

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Amazon ECS

Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) は、完全マネージド型のコンテナオーケストレーションサービスです。Duolingo、Samsung、GE、Cook Pad などのお客様が ECS を使用して、セキュリティ、信頼性、スケーラビリティを獲得するために最も機密性が高くミッションクリティカルなアプリケーションを実行しています。

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AWS Control Tower

AWS Control Tower は、ランディングゾーンと呼ばれる安全なマルチアカウント AWS 環境をセットアップおよび管理するための最も簡単な方法を提供します。

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