オンライン販売による収益増
オンライン販売に
よる収益増
オークション開催時のトラフィック増に対応
オンラインでの即売会の増加
顧客との対話で需要が明らかに
概要
福岡県久留米市を拠点に、錦鯉の養殖と輸出を行う株式会社尾形養鯉場。2020 年に始まったコロナ禍により、毎年春と秋に開催してきたオークション・即売会に国内外のバイヤーが参加できなくなる危機的状況に直面した同社は、オンラインでの開催を検討。柔軟にインフラを構築できるアマゾン ウェブ サービス(AWS)を活用してオークションのオンライン化を実現しました。現在は世界中からのアクセスに対応し、コロナ禍以前よりも収益を伸ばしています。

ビジネスの課題 | 世界的なコロナ禍でバイヤーの訪日が不可能に
泳ぐ芸術品とも言われる、鑑賞用に改良された錦鯉。福岡県久留米市を拠点とする尾形養鯉場は、1972 年の創業以来錦鯉の品質向上に取り組み、同社を代表する品種『紅舞妓』が第 21 回全日本錦鯉品評会において全体総合優勝を飾るなど、数々の品評会で受賞を重ねています。1980 年代から開始した錦鯉の輸出によってヨーロッパ、アメリカ、東南アジア各国に販路を広げ、今では収益の 95% が海外からの売上となっています。
同社では 10 年ほど前から毎年春と秋の 2 回、70 ~ 80 名のバイヤーを自社に招き、オークションや即売会を行ってきました。錦鯉の世界的な人気もあってバイヤーのほとんどは海外の事業者でした。しかし2020 年春の即売会の直後から世界的なコロナ禍が始まり、海外バイヤーの訪日が不可能になる事態に直面しました。「世界中で新型コロナウイルスの拡大が収まる気配がない中、今後どうやって錦鯉を販売しようかと苦慮した結果、インターネットしかないと決断しました」と語るのは、代表取締役社長の尾形学氏です。
以前にもビデオ通話ソフトを通じた即売会への参加を実施したことはありましたが、参加者は数名とあくまでも補助的なものでした。取締役の尾形浩美氏は「2020 年 4 月に、写真と動画だけを掲載したインターネット販売をやってみたのですが、お客様の購入依頼が同じ鯉に重複してしまい、やはりオークション形式の仕組みが必要だと感じました」と当時を振り返ります。
尾形社長は本格的にオンラインでのオークションを展開するため、AWS パートナー企業の株式会社テクノ・カルチャー・システムにシステム構築の相談を持ちかけました。同社の要件を詳しくヒアリングしたテクノ・カルチャー・システムは、オークションは常時開催ではなく期間が限られること、開催時には海外からアクセスが集中することなど、錦鯉ビジネスの要件を踏まえて、次に開催する 2020 年の秋のオークションに向けて、柔軟にインフラを構築できる AWS を選定しました。

これまでにないスピードで世の中が変わっています。その中で私たちも AWS のような新しい技術を取り入れながら、お客様の期待に応えていきたいと思います
尾形 学 氏
株式会社尾形養鯉場 代表取締役社長
ソリューション | オークションや定額販売時のアクセス集中にも柔軟にシステム処理能力を調整
従来の尾形養鯉場のオークションは、販売対象となる錦鯉をその場でバイヤーに見せながら、場を取り仕切る番台が開始価格を提示し、参加するバイヤーが挙手して競り上げる形で進行していました。そこでオンラインオークションでは、顧客ごとにアカウントを発行し、システムにログインして決められた終了時間までの間に入札していくという仕組みを作りました。テクノ・カルチャー・システムでは、尾形養鯉場からの要望に柔軟に対応しながら、2020 年 10 月のオークション開催に合わせてシステムを構築していきました。
販売価格が競りで上がっていくオークション形式のほかに、定額販売の仕組みもオンライン化しました。オークションに出品される錦鯉よりも低価格で、販売開始から早い者勝ちで購入者が決まる仕組みです。定額販売の時期は不定期ですが、これまでに10 回以上開催しています。
オンラインでの販売は、オークションでも定額販売でも開始時間が決まっているため、購入側もどうしても購入したい鯉を入手するため知恵を絞ります。このため、当初のシステム設計では想定していなかった、1 人の購入者が複数のブラウザを起動して参加するという事態が生じました。このためネットオークション上のクライアント数が増え、オークションのシステムが停止しそうな状況に直面しました。そこでテクノ・カルチャー・システムでは、システムの稼働状況を見ながらインフラの処理能力をリアルタイムに調整することで、システム停止に陥ることなく無事にオークションを乗り切ることができました。柔軟にインフラを拡張できる AWS のサービスが役立ったといいます。
アーキテクチャ
導入効果 | オンライン販売によって愛好家の選択肢が広がり売上が増加
オンラインオークションの場合、バイヤーが現地で現物を見ることができないことから、開催の 1 週間ほど前から、出品する錦鯉の写真と動画を公開しています。「従来の現地オークションの場合、お客様(バイヤー)は自身の目利きでどれを購入するか決定し、持ち帰った鯉を愛好家の方々に販売しておられました。しかしオンラインオークションの場合、誰もが事前にインターネットで写真や動画が見られるため、バイヤーの先におられる愛好家の皆様が直接気に入った鯉を選べます。そして愛好家の方々は『自分はこの鯉がこの金額で欲しい』とバイヤーに予算を伝えてリクエストされるようになり、バイヤーはそのご要望に沿ってオークションに臨むようになりました。愛好家の皆様のご要望がよりクリアになったことで、2020 年 10 月に最初に開催したオンラインオークションでは、前年より売上が上がり、定額販売も始めた 2021 年はさらに多くの売上につながりました」(尾形浩美氏)
2022 年になり入国制限が緩和されるようになると、従来通り現地でのオークションも開催できるようになりました。「オンライン入札の仕組みが整った今では、わざわざ日本に来なくても買えるならオンラインで参加したいという要望もありますので、現地とオンラインを融合したオークションにしようと考えました」と尾形社長は語ります。そこで、2022 年 11 月のオークションは、現地とオンラインでのハイブリッド形式で開催することを決定。システム運用を支援するテクノ・カルチャー・システムは、短時間にたくさんのリクエストを処理できるよう調整を行いました。
現地とオンラインでのハイブリッド型オークションを初めて開催した際には、運用上の課題も生じました。「現地の番台がバイヤーに価格を示すのですが、オンラインのお客様との対応に時間差が生じてしまいました。オンラインでは、金額が上がると終了時間を 5 分自動延長する仕組みになっていて、オンラインの参加者はそれに慣れてきていました。しかし番台が仕切るやり方は、終了時間がもっと早く展開してしまい、オンラインの参加者も現地参加者と遜色ないタイミングで入札できるよう、運用面も含めた改善が必要だと考えています」(尾形社長)
これからの改善点もまだ見つかっているものの、尾形養鯉場では定額販売の機会も増やしていくなど、今後はオンラインでの販売を主体としていく方針です。パートナーであるテクノ・カルチャー・システムについて尾形浩美氏は「当社だけでなく、地域のいろいろな企業様へのソフトウェア導入支援など、非常に信頼できる企業さんです。IT に詳しくない私たちにも分かりやすく説明してくださり、さまざまな要望を伝えられるよい関係を築いていただき、ありがたく思っています」と評価しています。
世界中からのアクセスに対応できるオンライン販売を開始し、事業を変革した尾形養鯉場。今後の展望について、尾形社長は次のように語っています。「これまでにないスピードで世の中が変わっています。その中で当社も AWS のような新しい技術を取り入れながら、お客様の期待に応えていきたいと思います」
カスタマープロフィール:株式会社尾形養鯉場
1972 年に個人経営にて錦鯉の養殖を開始、その後法人化で事業を拡大。品質向上に努め、錦鯉の美を競う全日本錦鯉品評会では、第 21 回大会にて総合優勝を勝ち取る。ほかにも、国魚賞、区分別総合優勝、種別日本一など数多くの賞を受賞。1980 年に台湾・香港・タイなどから始めた輸出は、年々需要が高まり、現在ヨーロッパやアメリカ、東南アジア各国へと販路を広げ、世界の錦鯉愛好家の需要に応えている。
AWS セレクトティアサービスパートナー
株式会社テクノ・カルチャー・システム
「ソフトウェアを地方の文化へ」という社是のもと、1985 年の設立以来、独立系ソフトウェア企業として、地元の農団体や自治体、金融機関、製造業や流通業などの組織や企業に対して地域密着のサポートを行いながら、コンピュータシステムの導入を支援している。近年ではお客様に対して積極的なクラウドサービスの提案を行い、お客様の課題に親身に寄り添い、AWSを主体としたクラウド基盤をベースに最適なソリューションを提供し、お客様のビジネス成功を支援している。

ご利用中の主なサービス
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。
Amazon RDS
Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) を使用すると、クラウド上のリレーショナルデータベースのセットアップ、オペレーション、スケールが簡単になります。
Elastic Load Balancing
Elastic Load Balancing は、アプリケーションへのトラフィックを複数のターゲット (Amazon EC2 インスタンス、コンテナ、IP アドレス、Lambda 関数など) に自動的に分散します。
AWS IAM
AWS Identity and Access Management (IAM) では、AWS のサービスやリソースへのアクセスを安全に管理できます。IAM を使用すると、AWS のユーザーとグループを作成および管理し、アクセス権を使用して AWS リソースへのアクセスを許可および拒否できます。
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あらゆる業界のさまざまな規模の組織が AWS を活用してビジネスを変革し、日々ミッションを遂行しています。当社のエキスパートにお問い合わせいただき、今すぐ AWS ジャーニーを開始しましょう。