AWS は、社内の DNA に大きな変化をもたらしました。
私にとって AWS は、インターネットやスマートフォンに匹敵する、
人生を大きく変えるほどの IT のインパクトがありました。

 

山田 誠 氏 スーパーストリーム株式会社 取締役 CTO 企画開発本部 本部長

財務会計と人事・給与業務を中核とする ERP パッケージ『SuperStream』の企画・開発・販売を手がけるスーパーストリーム株式会社。2011 年より『SuperStream』の SaaS 化を開始し、2017 年には AWS 上で提供する『SuperStream Cloud』をリリースしました。SaaS 化の当初は、販売スタイルが大きく変わるため、社内やパートナーから不安の声が上がりました。しかし、ユーザーニーズの増加を受けて徐々に理解が深まり、現在は新規導入の約 50% を SaaS 版が占めるまでに成長しています。


財務会計・人事給与の ERP パッケージを通して、日本企業のビジネスに貢献するスーパーストリーム。1995 年に販売を開始した『SuperStream』は、GL、CORE、NX と 3 シリーズにわたって進化を続けてきました。これまでの導入実績は、中堅から大手企業を中心に 9,000 社以上。上場企業への導入は 780 社を超えました。販売は製品を熟知した約 80 社のパートナーに委託する方式を取り、幅広い運用形態や業務要件に対応しています。

パッケージ販売を主体としてきた同社は、クラウド市場の成長に歩調を合わせて、2011 年よりパートナーのデータセンター経由で『SuperStream』を利用する SaaS 版の提供を開始しました。同時に、スーパーストリーム社内でも、クラウド対応の研究を始め、2014 年に既存 SaaS 版の AWS 対応を実現。2017 年には AWS を全面採用した Multi Tenant/Single Tenant 両方に対応する SaaS 版として『SuperStream Cloud』を正式リリースしています。

「クラウド対応は、2011 年以降にクラウド対応の問い合わせが増えてきたことがきっかけです。2017 年になるとパートナーからも『自社で監視やセキュリティ対策、パッチ適用などのインフラ運用を続けるのは大変』という声が届き始めました。そこで手間がかかる部分は当社で引き受け、パートナーには本来のライセンス提供やインテグレーションに専念してもらうために、自社の SaaS としてリリースしました。」と語るのは取締役 CTO 企画開発本部 本部長の山田誠氏です。

『SuperStream Cloud』の基盤に AWS を採用した理由は、利用に制限がなかったことです。複数のクラウドを比較した中で、他社はルート権限が持てない、処理中のセッション切れが発生する、データベースのインデックス数が異なる、システムのタイムゾーン設定が必要といった機能的な制約があり、SaaS 化するためにはソフトウェアの改修が必要でした。「それに対して AWS は制約がほとんどなく、既存のソフトウェアがそのまま動くことから、迷うことなく採用を決めました。」と山田氏は語ります。加えて、常に最先端のテクノロジーを追究し、顧客志向でチャレンジを続ける AWS の企業精神に感銘を受けたことも大きかったといいます。

「“あったらいいな”という顧客の声に即応し、独自性のあるサービスをどこよりも早く提供する AWS の姿勢に共感を覚えました。エンジニアを中心に AWS ファンが多いこともポイントになりました。」(山田氏)

とはいえ、SaaS での提供には、工夫が必要でした。技術的な課題は、運用面のノウハウです。『SuperStream』を AWS 上で運用するには、Amazon EC2 に製品本体をインストールし、Amazon RDS にデータベースを構築します。AWS とお客様の拠点は VPN で接続してセキュリティを維持しています。アプリケーションの開発を本業としてきた同社にとって、サーバーやネットワークの知識、運用経験はそれほどありません。

そのため、仮想サーバーや DB の運用マニュアルを整備し、VPN で接続するためのノウハウも蓄積しました。さらにインフラ運用には 24 時間 365 日の監視体制が必須のため、人事制度を見直す必要もあったといいます。

SaaS という新しい提供モデルを始めるうえで、自社内やパートナーの理解を得ることも必要でした。山田氏は「当初は社内でも SaaS には反対の声もあり、『安い単価では商売にならない』『サブスクリプション型の社内評価制度がない』といった声が上がりました。また、パートナーからも『売上や利幅が小さくなる』といった反応が返ってきました。」と振り返ります。

しかし、2014 年頃から世の中にクラウドが浸透し始めると、自社もパートナーも SaaS を積極的に顧客に提案するようになりました。

「大きかったのはクラウドの導入を要望するお客様の声が増えたことです。RFP の段階でクラウドを指定されていたら、自社としてもパートナーも SaaS を提案せざるを得ません。3 大メガバンクで AWS を採用したことがアナウンスされたあたりから潮目が変わり、AWS 版のリクエストが一気に増えました。」(山田氏)

SaaS 化したことで同社にも変化が現れました。現在、『SuperStream』を新規で導入する企業の約 50% は、『SuperStream Cloud』あるいは、パートナーのデータセンター経由で提供する SaaS を選択。日本企業の海外拠点に限れば、100% が SaaS を採用しています。

お客様への提案も約 50% が SaaS となり、パートナー向けのセールス手法も大きく変化しました。

「従来は提案時にデモ環境を 1 日、2 日かけてローカル環境にインストールしてお客様に見せていました。クラウドならネットワークにつなぐだけで動作を確認してもらうことができ、経験の浅い担当者でも質の高い提案ができます。現在はパートナー・社内の大部分のデモ環境は SuperStream Cloud にある環境で動いています。」(山田氏)

開発者にとっても、AWS 上にサーバーを一時的に立てて、自分の試してみたい機能を実環境と同等の規模で試したりすることも簡単です。

お客様に対しても、クラウドの特性を利用して、月末や四半期などのシステムの負荷が集中するタイミングで一時的にリソースが強化できるインスタンスタイプを提供することで、コストとパフォーマンスの最適化を支援しています。

「AWS は、社内の DNA に大きな変化をもたらしました。私にとって AWS は、インターネットやスマートフォンに匹敵する、人生を大きく変えるほどの IT のインパクトがありました。」(山田氏)


 

2019 年 10 月にはパッケージ版の『SuperStream-NX 人事給与』を大幅にリニューアル。タレントマネジメント機能やグループ全体で人材管理を行える機能などを新たに追加しました。

パッケージとクラウドの 2 つを軸とする同社がさらにその先を見据えているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)への対応です。「従来、ERP は人が利用することを前提に進化を遂げてきましたが、DX の時代には AI やロボットが ERP のオペレーションを代行することになります。当社でも ERP の自動化にチャレンジしてく方針で、AWS の AI、機械学習、ロボットなどのサービスを取り込みながら、ERP×DX を推進していきます。」と話します。

山田 誠 氏



AWS での SaaS ソリューション構築についての詳細は、AWS での SaaS ページをご参照ください。