オンプレミスでの商用データベース構成の費用を試算した際にはハードウェアとデータベースのライセンス費用だけでも数千万円規模の投資が必要でしたが、Amazon Redshift を活用することで、さらに優れたパフォーマンスを維持しながら 5 年間のトータル費用を 50%以下に削減することができました。
交通 Web のシステムでは Amazon Aurora も活用し、従来の 10 分の 1 程度の人的リソースでインフラ運用保守を実現しています。
遠藤 稔幸 氏 東急テックソリューションズ株式会社 開発ソリューション事業部 マネージャー

東京急行電鉄株式会社(以下、東急電鉄)は、鉄道事業や都市開発事業を軸に『東急百貨店』や『東急ストア』などのリテールビジネスを手がける生活サービス事業など、街を作るさまざまな事業を展開しています。同社は東京急行(以下、東急)沿線がこれからも東急沿線が「選ばれる沿線」であり続けるよう各事業を連携させ、相乗効果を発揮させることで沿線価値を高めるビジネスに注力しています。

東急電鉄では、鉄軌道や都市開発などの主軸事業と生活サービス事業を互いに上手く連携させることで、東急沿線地域に暮らす人々へ価値を提供する取り組みを行っています。

その取り組みのひとつとして、スーパーや百貨店を利用する地域住民の世代交代などによって大きく変化する生活者ニーズを確実に掴むために導入されたのが、東急グループや全国の加盟店で貯めて使えるポイントサービスである『TOKYU POINT』です。2006 年に開始された TOKYU POINT は現在 220 万人以上の登録者数を誇り、一部沿線エリアでは世帯数におけるカード保有率が 45% を超えるなど、東急沿線を中心に幅広く利用されています。この TOKYU POINT を通じて得られるさまざまな顧客情報を有効活用し、各事業へタイムリーに反映させることでさらなる沿線価値を生み出すことが次の課題となっていました。

東急電鉄では 2016 年 2 月、TOKYU POINT と連携したクレジットカードサービスである『TOKYU CARD』の利用状況を統合的に分析するデータウェアハウス構築をきっかけとして、新たにクラウド導入の検討を開始しました。

いくつかのクラウドサービスが比較検討された結果、AWS のデータウェアハウス向けサービス Amazon Redshift であれば、当初オンプレミス環境で想定していた性能が十分得られること、他者のクラウドサービスと比較してコスト的にも優位性があるといった点が評価され、導入に至りました。さらに、今後分析対象のデータを増やす予定があったため、その際に必要となる柔軟で高い拡張性があるという点も Amazon Redshift の採用の決め手となりました。

またデータウェアハウスと並行して、利用者が電車・バスの乗車ポイントの参照などを行う交通 Web システムのクラウド化も検討が進められました。東急電鉄では、当時利用していた商用データベースの高いライセンス費用に頭を悩ませていたこともあり、それを解決するため、まず Amazon RDS の利用が検討されました。「これまでデータベースの冗長化構成では技術的にもコスト的にもかなり苦労をしてきました。Amazon RDS であれば、熟練技術者でなくても簡単に冗長化構成を構築できます。」と言うのは、東急グループの技術部門である東急テックソリューションズ株式会社 開発ソリューション事業部 マネージャーの遠藤 稔幸氏です。

東急電鉄ではさらなる検討を重ね、結果的に当初導入を予定していた Amazon RDS ではなく、Amazon Aurora MySQL の導入が決定されました。「Amazon RDS でも可用性の高い環境を安価に実現できると評価しましたが、Amazon Aurora は Amazon RDS よりもさらに高度な拡張性があり、クラウド環境に最適化されたデータベースサービスであると判断し、導入を決めました。」(遠藤氏) 

tokyu-dentetsu

統合データウェアハウスでは、東急電鉄のデータセンターで稼働するポイントシステムから AWS Direct Connect を介し、Amazon VPC 環境にある Amazon Redshift にデータをロードしています。「オンプレミスでの商用データベース構成の費用を試算した際にはハードウェアとデータベースのライセンス費用だけでも数千万円規模の投資が必要でしたが、Amazon Redshift を活用することで、さらに優れたパフォーマンスを維持しながら 5 年間のトータル費用を 50%以下に削減することができました。」(遠藤氏)

そして、東急電鉄では 2016 年 7 月に具体的な要件定義を行い、すぐにプロトタイプの開発に入りました。「同時期にオンプレミスで進めていたシステム更新のプロジェクトでは、開発を始めるまでに1、2か月かかりました。データウェアハウスの開発では、AWS を利用することで環境の即時調達を可能にし、開発をすぐに開始することができました。」と言うのは、東急テックソリューションズ株式会社 開発ソリューション事業部の小笠原 弘二氏です。

もう 1 つの交通 Web の環境では Web アプリケーションを Amazon EC2 で構築し、Elastic Load Balancing で負荷分散をしています。データベースには Amazon Aurora MySQL を Multi-AZ 配置の 2 台構成で利用しています。「交通 Web には当初災害対策の要件はありませんでしたが、Multi-AZ を活用することで追加費用不要で災害への備えもできています。これは大きなメリットです。」(遠藤氏)

交通 Web では、オンプレミス利用時のアクセス集中による処理性能低下も課題の 1 つでした。「今回の構成でも処理性能の逼迫を心配しましたが、クラウドに最適化された Amazon Aurora のおかげで性能面の問題は発生していません。」と言うのは、東急テックソリューションズ株式会社 開発ソリューション事業部 マネージャーの江川 琢雄 氏です。

さらに東急電鉄では AWS 導入後、従来の 10 分の 1 程度の人的リソースでのインフラ運用保守を実現しています。「AWS なら、設計ができるエンジニアがいればインフラ担当は少なくても業務を回せます。オンプレミスなら構築段階で 2 人必要なところが 1 人で済むイメージです。これが運用保守の段階なら、0.1 人で良いくらいです。」(江川氏)

東急電鉄では今後、統合データウェアハウスに鉄道の乗降データなども取り込み、収集したデータをマーケティング・キャンペーンなどにも活用して行く方針です。将来的にはビッグデータの解析から得られる知見を活用して、交通のスムーズな利用にも貢献させたいと考えています。

「また、現在オンプレミスで稼働する業務システムについても、順次クラウド化する予定です。その際にはサーバーレスや AI など AWS の新しい技術も積極的に活用し、さらなる効率化で今後の人手不足対策も解決していきたいと考えています。」(遠藤氏)

tokyu-dentetsu_photo

左から、

- 東急テックソリューションズ株式会社
開発ソリューション事業部 マネージャー
遠藤 稔幸 氏

- 東急テックソリューションズ株式会社
開発ソリューション事業部 マネージャー
江川 琢雄 氏

- 東急テックソリューションズ株式会社
開発ソリューション事業部
小笠原 弘二 氏

 

AWS クラウドがビッグデータ活用にどのように役立つかに関する詳細は、AWS でのビッグデータ分析の詳細ページをご参照ください。