概要

課題・ソリューション・導入効果
ビジネスの課題
施工業者と発注者のミスマッチを防ぐ画像生成 AI サービスの開発
花や植物を愛する人が集う国内最大級の植物コミュニティアプリ『GreenSnap』はじめとする SNS ・メディア運営事業などを手がける GreenSnap。同社は 2024 年 5 月、生成 AI で家や店舗、ビルの塀や門、庭、アプローチなどの外構における植栽デザインを制作するサービス『gardenAI』をリリースしました。植栽を施したい場所の写真をアップロードし、メニュー画面から「イングリッシュガーデン風」「日本庭園風」などの雰囲気を指定することで、完成後のイメージを確認することができます。
gardenAI の開発目的は、施工業者(造園業者、外構・エクステリア業者、建築・建設業者)と発注者(個人や企業)のミスマッチを防ぐことにありました。庭やアプローチなどに植栽を施す際、施工業者と発注者とでイメージを共有することは容易ではなく、完成時にギャップがあると高い満足度が得られません。
従来は CAD でデザインを起こす、雰囲気や立地が似ているサンプル写真を参考にするといった手段が取られてきました。しかし、デザインを起こすとコストと時間が必要で、気軽に対応できません。
「完成イメージを手軽に制作して共有する手段はないかと考えた時、画像生成 AI の活用を思いつきました。私自身も家を建てて庭の植栽を実施した際、完成するまでイメージできなかった経験があったことから、ぜひトライしてみようと考えました」と語るのは、代表取締役社長の西田貴一氏です。
ソリューション
画像生成モデルに Amazon Titan Image Generator を採用
早くから生成 AI に着目し、情報を収集してきた同社は、gardenAI の開発に向けて複数の画像生成モデルを評価しました。その中から Amazon Titan Image Generator がフルマネージドで利用できる Amazon Bedrock を採用しました。取締役 CTO の高畑匡秀氏は次のように語ります。
「Amazon Titan Image Generator にはドキュメントやコンソール画面をもとに、画像の一部を指定して編集する Inpainting という機能があります。これを使うことで編集時に境界部分がうまく調和され、競合製品より自然な画像を生成できたことが決め手となりました。当社で運営している SNS や EC サービスなど、ほぼすべてを AWS 上に構築して運用していることから、アーキテクチャの親和性が高いことや、エンジニアのスキルセットが利用できることも考慮しました」
開発期間は 2 か月で、アーキテクチャは Amazon Bedrock を中心にシンプルな構成で設計しています。開発時のポイントになったのは、gardenAI によって出力される「イングリッシュガーデン風」などのイメージをプロンプトに落とし込むことでした。
「Inpainting 機能で理想の庭を作成できることがわかった一方、脳内のイメージを言語化してプロンプトにすることが難しいということが明らかになりました。そこで、プロンプト自体も生成 AI で作ることにしました」(高畑氏)
具体的には、Amazon Bedrock で利用できる Claude 3 Haiku を活用しています。
「イングリッシュガーデン風」の庭を生成する場合なら、イングリッシュガーデンのイメージに近い庭や理想の庭の画像を用意し、その画像をもとに Claude 3 Haiku を使用してプロンプトを生成しました。プロンプトを Amazon Titan Image Generator に入力すると、イメージに近い画像が生成できたことから、それを調整しながら開発を進めました。
「Claude 3 Haiku でプロンプトを生成するアイデアは、AWS のソリューションアーキテクトとのディスカッションから生まれたもので、アドバイスをいただきながら開発を進めていきました」(高畑氏)
導入効果
ビジネスチャンスの拡大とエンジニアのモチベーション向上
gardenAI は現在、サービスサイト(https://lp.garden-ai.jp/)上で無料のお試し利用ができます(2024 年 12 月現在)。すでにユースケースも出始めており、外構・エクステリアの設計・施工を手がけるハンワホームズ社では、gardenAI を活用した外構提案システム『niwa U-M(ニワウーム)』をリリースしています。niwa U-M では、アプローチ、カースペース、ガーデンの中からイメージを作成したい箇所を選び、写真をアップロードして好きなテイストを選択するだけで完成イメージが出力されます。
GreenSnap は gardenAI をリリースしたことにより、ビジネス機会が拡大したといいます。「これまで園芸といった限られた市場でビジネスを展開してきた当社において、外構・エクステリアや建築・建設といった広い市場にリーチできたことは大きな意味があり、会社全体の成長に貢献しています」(西田氏)
技術面においても、Amazon Titan Image Generator を採用して画像生成 AI のサービスが開発できたことに手応えを感じています。
「お客さまの課題解決につながるプロダクトを、最先端の AI 技術を活用して開発できたことでエンジニアのモチベーションも向上し、チーム全体が盛り上がりました」(高畑氏)
今回の gardenAI は、同社が推進する「生成 AI 活用プロジェクト」の第 2 弾のとなります。第 1 弾は、生成 AI を活用してフラワーアレンジメント画像をデザインする『AI:zen(アイゼン)~Flower Arrangement Assistant~』として、2024 年 4 月にリリースしています。店舗でフラワーアレンジメントをオーダーする際は、色味と雰囲気を言葉で伝えるか、実際に花を組みながらイメージをあわせるという手法を取るケースが多く、イメージ相違による機会損失やサンプル制作によるロスが発生することが多くありました。これらを解消するために開発したのが AI: zen で、こちらにも Amazon Bedrock が活用されています。
現在は Web 受注の機能を実装中で、近日中のリリースを予定しています。
さらに、生成 AI 活用プロジェクトの第 3 弾としてオフィスや店舗など屋内のグリーンを生成 AI でデザインする AI エンジン『indoorgreenAI (インドアグリーンエーアイ)』を開発中です。
「今後も生成 AI の社会実装が進んでいく時流を捉え、イメージが事前共有できないがために効率化や需要拡大が進んでいない領域において、生成 AI を活用したサービスを開発し、業界全体の課題解決や発展に寄与していきます」(西田氏)

画像生成 AI を活用した新サービスの開発により、園芸から外構・エクステリアや建築・建設まで幅広い市場にリーチできるようになり、ビジネス機会が拡大しました
西田 貴一 氏
GreenSnap 株式会社 代表取締役社長アーキテクチャ

GreenSnap 株式会社
取組みの成果
2 か月 - 開発期間
生成 AI を活用した新サービスの開発
事業領域・ビジネス機会の拡大
エンジニアのモチベーション向上
本事例のご担当者
西田 貴一 氏

高畑 匡秀 氏

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ご利用中の主なサービス
Amazon Bedrock
Amazon Bedrock は、単一の API を通じて AI21 Labs、Anthropic、Cohere、Luma (近日リリース予定)、Meta、Mistral AI、poolside (近日リリース予定)、Stability AI、および Amazon などの大手 AI 企業からの高性能な基盤モデル (FM) の幅広い選択肢を提供するフルマネージドサービスであり、セキュリティ、プライバシー、責任ある AI を備えた生成 AI アプリケーションを構築するために必要な幅広い機能を提供します。