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ビジネス課題の解決を高速化 ~ハッカソンイベント開催報告 Part 2 ~
こんにちは、AWS ソリューションアーキテクトの上野です。2025年6月17日、7月4日に、AWS 主催のハッカソンイベントを開催しましたので、その取り組みについてご紹介させていただきます。本イベントは、通常のハンズオンとは異なり、短期集中型の支援を通じて実務で即活用できる機能開発を実現し、お客様のビジネスを加速させることを目指しています。
イベントの流れ
2日間のイベントを軸に進めていきます。初日となる Day 1 では、まず開発で利用する AWS サービスの基礎を学んでいただき、その後、実際に開発する機能の要件整理や設計に取り組んでいきます。AWS のエキスパートが終日同じテーブルにつき、一緒に考え、技術面でのアドバイスを提供させていただきます。
Day 1 で整理した内容を持ち帰っていただいた後は、実際の開発フェーズに入ります。開発中に疑問点や課題が出てきた際には、随時技術相談会を開催し、スムーズな開発をサポートさせていただきます。
締めくくりとなる Day 2 では、参加者の皆様に開発した機能についてご発表いただきます。技術的な工夫だけでなく、開発中の試行錯誤など、貴重な経験の共有の場となっています。
参加企業様の素晴らしい取り組み
それではここからは、ご参加いただいた企業様のご登壇の様子をご紹介していきます。
株式会社クリエイティブ・ウェブ 片桐 翼 氏(写真右)、藤井 龍生 氏(写真中央)、大皿 綾馬 氏(写真左)らは、電話による問い合わせの一次対応をAIで行い、問い合わせ内容を仕分けして担当者に通知する仕組みを開発されました。システム・PCサポート・WEB サイト・EC 関連の問い合わせに対して、最初に受電した方が内容を聞いて、担当者に取り次ぐ必要があり、問い合わせる側の待ち時間および、対応をする側の工数にそれぞれ課題がありました。これらの課題を解決するためにまず、問い合わせ内容の仕分けを生成 AI で行い、適切な担当者に振り分ける機能を開発することで、一次対応する方の負荷を削減されております。また問い合わせをした方は、一度、問い合わせ内容を電話で伝えた後、担当者から折り返し電話がかかってくる仕組みのため、電話越しに長時間を待つ必要がなくなります。すでに社内ではベータ版としてリリースされており、今後は問い合わせ内容の仕分けだけではなく、AI と顧客の会話まで実現させ、一次対応の完全自動化を目指していかれるとのことです。
株式会社BTM 瀬﨑 優太朗 氏は、システムトラブルに伴う調査依頼を生成 AI と MCP サーバーの組み合わせで効率化する仕組みを開発されました。調査を行う上で、複数の関係者が存在するため、調査に必要な情報が不足している場合、再度確認を行うなどのコミュニケーションコストが多く発生している点や、調査作業として都度、状況に応じたクエリを考えてデータベースに対して実行する必要があるなどの課題があったとのことです。今回は、問い合わせ内容をもとに生成 AI が実行すべきクエリを考え、MCP サーバー連携によりデータベースにクエリを実行するという仕組みを Strands Agents を軸に開発されております。また開発においては AI コーディングエージェントも利用されており、技術的にも非常に興味深い取り組みをされております。今後はレスポンスタイムの向上と、情報不足時にチャットで聞き返えしができるようにするなど、さらにブラッシュアップをされていくとのことです。
AZAPAエンジニアリング株式会社 鬼頭 肖太 氏(写真左)、清水 凌太 氏(写真右)らは、本イベント の中で、既存の駐車場解析システムの構成をモダナイゼーションされました。映像解析処理は複数の工程に分かれており、それぞれの処理が一つのサーバーの中で順番に実行されるという構成をとられていました。しかし、工程ごとに処理の規模は異なり、必要なリソース量も変わる中で、最大規模の処理にあわせてサーバーのサイジングが必要なっていることから、コストに課題を持たれておりました。また1台のサーバーではリソースにも限度があり、処理速度にも課題が出てきている状況でもあったとのことです。今回は、一つのサーバー内で行われていたフローを AWS Step Functions に置き換えることで、工程別に必要な分だけのマシンリソースで処理を実施できる構成にモダナイゼーションされました。これによってコスト47%削減、処理速度3倍という検証結果が出ており、課題解決に向けた大きな一歩を本イベントで踏み出されたと実感いただいています。コスト面では、Lambda、スポットインスタンスを利用することでさらなる改善が見込め、処理速度とコストのパッケージに幅を持たせることが可能になりました。
まとめ
今回のイベントでも、参加された全てのお客様が、実務で使える機能を見事に開発されました。「ディスカッションを通して、アイデアの着想から掘り起こしまでできてとてもよい時間となった」、「短い時間であるからこそ集中的に開発ができた」など、うれしい声を多数いただき、本イベントがお客様のビジネスを加速させる場になっていることを改めて感じることになりました。また各企業様、それぞれまったく色の違う開発内容でありましたが、とある企業様の開発tipsが別の企業様の今後の開発効率化につながりそうであるなど、知見のシェアにもつながる素晴らしい場になったと感じています。これからもお客様のビジネスの発展により一層貢献できるよう、イベント内容の改善を重ねてまいります。