QuizKnock 伊沢氏 / 鶴崎氏が審査した「AWS Japan 生成 AI ハッカソン」 

生成 AI で仕事を楽に、楽しくを追求したアプリとは

2025-02-03
AWS ワークショップ

Author : 服部 京子

みなさんこんにちわ ! AWS の Developer Marketing Manager の服部です。

皆さんは生成 AI をどんなふうに活用していますか ? すでにいろいろなユースケースがあると思いますが、もっともっと生成 AI の力で仕事を楽に、そして楽しくできたら。そんな思いから AWS では「AWS Japan 生成 AI ハッカソン」を企画しました。

この記事ではその企画からハッカソンの全容をご紹介します。有用かつ楽しい作品の数々で楽しいひと時を過ごせること請け合いです。

当ハッカソンには QuizKnock の伊沢拓司氏、鶴崎修功氏にもご協力いただき、ナビゲーターおよび審査員としてハッカソンの面白さを伝えていただきました。なお、記事の最後には審査員を務めた QuizKnock の鶴崎修功氏が AWS を使って生成 AI アプリを開発する動画もご紹介しています。ぜひ最後までお付き合いください。


AWS Japan 生成 AI ハッカソン企画の経緯とテーマについて

生成 AI が世に広まって 2 年以上が経とうとしていますが、皆さんは日々のお仕事でどのように生成 AI を活用していますか ? ここの読者の皆さんはすでに日常的に使うことが多いのではないかと思いますが、日本全体でみると意外とそうでもないようです。下記図 1 のグラフは総務省の調査資料「令和6年版 情報通信白書」の個人の生成 AI の利用経験を表していますが、諸外国と比べても著しく活用の度合いが低いことが示されています。図 2 のグラフは同様に企業としての活用方針の策定状況を表したものですが、日本ではまだ生成 AI 活用があまり進んでいないことがわかります。

図 1 令和6年版 情報通信白書 : 生成AI利用経験(国民向けアンケート)より引用
(画像をクリックすると拡大します)

図 2 令和6年版 情報通信白書 : 生成AIの活用方針策定状況 (企業向けアンケート)より引用
(画像をクリックすると拡大します)

なぜこのような状況になっているのでしょうか。様々な要因があると考えられますが、私たちはその一つに「使いたくなるモチベーションが低い」という実態があるのではないかと考えました。便利なのはわかるけど今一つ使う気になれない・・・これではせっかくのテクノロジーが使われず勿体なく感じられてなりません。

そこでまず、毎日の仕事をもっと楽にしてくれて (便利に)、そして楽しくしてくれる (使いたくなる) アプリに巡り合える機会を作りたいと考え、このハッカソンを企画しました。

この経緯から、テーマは「生成AI を活用したアプリで社員がもっと楽しく、楽に仕事をすることが出来る仕組みを作ろう」としました。

なお、今回のハッカソンでは、ぜひ AWS 上で生成 AI アプリを構築していただきたく、①AWS を使用して開発、デプロイを行う ② Amazon Bedrockを使用する を参加条件としました。


AWS Japan 生成 AI ハッカソンの進め方

9 月に募集を開始し、短い募集期間にもかかわらず多くの皆さんにご応募いただきました。すべての方にご参加いただきたかったのですが、運営上どうしても参加チーム数を絞らなければならず、書類選考の上 12 チーム (1 チーム 4 人まで) にご参加いただくこととなりました。作品の発表までのアクティビティは以下の通りです。

発表会、事後の Meetup 以外はすべてオンラインで行いました

  • 説明会
  • 10 月 11 日    アイデアソン
  • 10 月 12 日 ~ 25 日 ハッカソン (アーキテクティング / 実装)
  • 10 月 31 日    発表会 / 決勝戦
  • ( 12 月 17 日    Developer Meetup)

今回のアイデアソンでは、応募段階で作られていたベースのアイデアを AWS のプロダクト開発の手法「Working Backwards」を用いてブラッシュアップするという作業を行いました。

ハッカソンでは、約 2 週間でゼロから環境構築、アーキティング、実装、プレゼンテーション作成などを行い、AWS のソリューションアーキテクトによるメンタリングも全てのチームに対して実施されました。


いよいよ発表会!作品の数々を一挙紹介

アイデアソンから数えて約 2 週間、いよいよ発表の日がやってきました。
実質 2 週間という短期間で開発された生成 AI アプリがどのようなものか、参加チームのご苦労に想いを馳せつつも楽しみでならない企画運営チーム。発表会が行われるのは AWS 初の大規模生成 AI イベント「AWS AI Day」。作品を発表していただくにふさわしい場といえるのではないでしょうか。

第一部・発表会 (最終予選) では全チームによる発表会が行われ、決勝戦に進む 3 チームが決定します。

審査を担当されたのは以下の 5 名の皆さんです。

  • 伊沢 拓司 氏 (QuizKnock)
  • 鶴崎 修功 氏 (QuizKnock)
  • 大西 さくら 氏 (株式会社ネイティブキャンプ 執行役員 CTO)
  • 中林 紀彦 氏 (ライオン株式会社 執行役員 全社デジタル戦略担当 / デジタル戦略部担当)
  • 中田 光昭 (アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 プロトタイプ & クラウドエンジニアリング本部 本部長)

審査員 左から
鶴崎修功氏 (QuizKnock)、伊沢拓司氏 (QuizKnock)、中田光昭(AWS)、大西さくら氏(株式会社ネイティブキャンプ)、中林紀彦氏 (ライオン株式会社)

そして、12 チームの作品は以下のとおりです。リンク先に全チームの発表動画がありますので是非ご覧ください。どれも2週間で開発されたとは思えないすばらしい完成度です。

チーム名 サービス名 サービス概要
MAWS-GAI 誰でもアイデア壁打ちができる AI ペルソナ 「Interview 8」 ソリューションや製品を開発の際に、事前にユーザーインタビューをしているにも関わらず真のニーズを引き出せていなかった、ということはありませんか?心ゆくまでインタビューを繰り返すことができる「壁打ち相手」になってくれる AI ペルソナがそんな悩みを解決します
クッキークラウド いつもそばにいて困ったときに助けてくれるAI「やるき出させる君」 「ボスや先輩に叱られた」「出来もしないことをつい安請け合いしてしまった」「タスク管理がうまくできない」そんなことが続くと落ち込んでしまいませんか?コミュニケーションの円滑化と自分のタスク管理を助けてくれるサポーターがいたらきっともっとモチベーションは上げられるでしょう。新人とマネージャーのためのお助けAI、爆誕!
伯爵一味 SNS 投稿を楽しくするアプリ「ぽすじぇね」 忙しい商品プロモーション担当者にとって SNS 投稿は悩みの種。マメに投稿したくても手が回らない、魅力的なコピーを作ろうとすると時間がかかる・・・などなど。「担当者に成り代わって投稿コンテンツを作成してくれるAI」がいてくれたらどんなにすばらしいことでしょう。そんな夢が実現する日は近い !?
アーベルソフト 楽しく学べる生成 AI システム「AI Teck Talkers」 スキルアップはエンジニアの最重要事項。しかしなかなか時間もやる気も起きないのが現実です。もっと楽しく、頑張らなくてもできるスキルアップの方法があったなら・・・。生成 AI がこの課題をどう解決するのか、ぜひ楽しみにご覧ください。
IENJOY Emotion Tracker/Analyzer 人間は感情の生き物。感情があるから想定外の反応が返ってくることがしばしばあります。
大切にしたい相手が今どんな気持ちでいるのか、虫の居所がいいのか悪いのか、事前にわかればコミュニケーションの失敗リスクは大幅に下げられるでしょう。
Miiko いつでも、どこでも、優秀なメンターと⼀緒に仕事のやり⽅を改善「ふりカエル」 新人でもベテランでも必ず実施する「振り返り」。それなりに時間がとられるこの作業ですが、もっと効果的に、効率的に行うことで何倍も価値あるものにできそうです。生成AIはこの課題をどう解決するのでしょうか?
mirAI Innovation Center(仮) 日々の仕事に自然に寄り添う
生成 AI パートナーアプリ
コントロールキャットにゃ♪
クリップボードでササッとお願い!「Ctrl +Cat」
生成 AI は便利ではあるものの、プロンプト作成やデータ加工など、だんだん手数が増えていませんか?生成 AI をもっと便利に使えるように、シンプルインターフェースで助けてくれる AI がいたら仕事がはかどること間違いなし!
AIda 部下とのコミュニケーションをもっと楽しく円滑にしたいマネージャーのための支援ツール「Dialog」 部下のA君は今何を求めているのでしょうか?マネージャーといえどスーパーマンではないので覚えられることには限りがあります。部下それぞれの近況や悩みをわかりやすく一覧できたら、1:1 ミーティングはもっとハッピーで生産的な場になるかもしれません。
GenMuck 継続的な成長をサポートする「GenMuck」 エンジニアの継続的な成長は日々の努力にあります。ただ、言うは易しでなかなか難しい現実もあります。だとしたら生成 AI の力でもっと楽に成長する方法はないものでしょうか。しかも意表を突く方法で。
散歩中に悟りを開いたチキン南蛮 あたりのきつい言葉をやわらかくしてくれるアドバイザー「ちくちくチェッカー」 チャットがコミュニケーションの中心となっている IT 業界。ちょっとした一言が相手を傷つけ、その後の仕事の進捗に支障をきたすことがあります。どんな言葉が相手の気持ちを害してしまうのか。送信前にちくちくチェックすることでコミュニケーションを円滑に。もしかしたら事前のちくちくチェックは新常識に?
マーブル バクアゲする Web ミーティングアプリ「バクミー」 毎日のように開かれる「Web 会議」。場所を必要とせず集まれる便利さの反面、発言しづらかったり会議のゴールを見失って生産的でなくなってしまうこともあるようです。ゴールを見失わず、しかも楽しく参加できる会議にしてくれるツールがあったら、と思いませんか?
パソナPDT 求職者に寄り添い、転職エージェントの工数を削減する「AI 面接エージェントサービス」 技術者不足が課題となっている今、求職者にとっては、興味のある会社がどんなことを求めているか理解し、事前に面接を再現度高くシミュレーションできる環境があれば、求職者、求人企業、そしてエージェントもみんな幸せになれる?

これらのラインナップで印象的だったのは、12 チームのうち約半数が仕事を楽に、楽しくする上で「コミュニケーションをいかに円滑化するか」にフォーカスしていたことです。何かの作業の手数を減らすことも重要ですが、仕事をスムーズにストレスなく進めるにあたって「コミュニケーション」がより重要で、そこに課題があることが浮き彫りになったように思われました。

チャットでコミュニケーションすることが多くなった昨今、送り手 (特に上司や先輩) はそうは思っていなくても受け手にはきつく感じられてしまう表現にストレスを感じたり、オンライン会議で知識に自信がないことから発言に躊躇してしまったり、部下との 1:1 ミーティングで部下の状況を理解しきれていなくて不適切なことを言ってしまったり・・・とこの領域での課題は尽きないようです。ただ、ここで生み出されたアプリがこうした課題を楽しく解決するケイパビリティを持っています。

さて、いよいよプレゼンテーション。各チームの持ち時間 7 分です。この時間内にユースケース概要、アーキテクチャ、システム概要、そしてデモを全てカバーしなければなりません。時間が迫ってくるとベルが 1 回、過ぎてしまうと 2 回鳴らされますが、皆さんすばらしいタイムマネジメントで時間を超過したところはほぼありませんでした。

各チームのプレゼンテーションの後には審査員からの質問があり、たくさんの質問が投げかけられました。審査員は下記の 6 項目の審査基準についてそれぞれ 10 点満点でスコアを付与しました。

  • 有用性
  • ユースケースの明確さ (対応する機会)
  • アプリケーションの品質
  • 生成 AI の適用度 / 活用度
  • 創造性
  • 使うのが楽しくなるアプリケーションかどうか / 頻繁に使いたくなるアプリケーションかどうか

約 3 時間の第一部発表会でしたが、どれもすばらしいアプリ & 発表で審査は困難を極めました。発表されたチームだけでなく、審査員の皆さんにとっても長時間集中して審査を行うという濃密な時間となりました。

そして悩みに悩んだ末、入賞を勝ち取ったのは、以下 3 チームとなりました。(発表順)

  • アーベルソフト : 楽しく学べる生成 AI システム「AI Teck Talkers」」
  • mirAI Innovation Center (仮) : 日々の仕事に自然に寄り添う生成 AI パートナーアプリ クリップボードでササッとお願い!**「Ctrl +Cat」**コントロールキャットにゃ♪
  • パソナPDT : 求職者に寄り添い、転職エージェントの工数を削減する「AI 面接エージェントサービス


決勝戦と入賞作品の概要

入賞した 3 チームは AWS AI Day の最終セッションに登場し、300 名近くの参加者の皆さん+オンライン視聴の皆さんの応援を得ながら最終プレゼンテーションに臨みました。

ナビゲーターは QuizKnock 伊沢拓司氏。審査員として引き続き上記の 4 名の皆さんが登壇され、否が応でも決勝戦が盛り上がります。

審査員の鶴崎修功氏 (QuizKnock)、ナビゲーターの伊沢拓司氏 (QuizKnock)

1. AI Tech Talkers (アーベルソフト)

最初の発表は「アーベルソフト」高橋 圭太郎氏 (株式会社アーベルソフト)。社員のテクニカルスキルを向上させるために開発したのが「AI Tech Talkers」です。

このアプリの素晴らしいところは、とにかく「楽しい」ことです。ユーザーが技術的な質問を投げかけると、楽しく味わい深い AI キャラクターたちがキャラクター性をもって回答してくれる、というものです。それだけではなく、この AI キャラクターたちはお互いに AI 同士でテクニカル談義を繰り広げてくれるのです。それを見ているだけでも楽しくなるアプリです。

それにしても AI 同志の会話がこんなに面白いとは思いませんでした。非常に完成度高いデモ動画ですので、ぜひご覧ください !

デモ | アーキテクチャー図

2. AI 面接エージェントサービス (パソナPDT)

次の発表は「パソナPDT」建部 信幸氏(株式会社パソナ)。

就職面接が行われるまでには求職者、採用企業、そしエージェントが存在しますが、「たくさん面接を実施しているのになかなか採用にいたらない」という課題があります。求職者は採用企業を理解し、過度に緊張することなく本来の自分をアピールできるようにできれば、エージェントは適切にマッチングして、採用率を上げ、ルーチンワークを効率化できたらと考えています。そこで「AI 面接エージェントサービス」はリアリティーあるキャラクターを用いて疑似面接官とし、面接対策として本番に近い疑似面接をアプリで行えるようにしました。疑似面接での採点や改善のためのアドバイスもしてくれる優れものです。

また、ちょっと面白いキャラクターの疑似面接官もいて緊張を和らげてくれます。

デモ | アーキテクチャー図

3. 「Ctrl +Cat」(mirAI Innovation Center (仮) (大日本印刷株式会社)

最後の発表は mirAI Innovation Center (仮) 佐藤陽平氏 (大日本印刷株式会社)。

生成 AI は一定の範囲で使用されているものの、機能がありすぎて複雑化しているという課題がありました。そこで、もっと活用するために (この短期間であるにもかかわらず) 社内リサーチを実行し、活用を阻む課題として「作業と生成 AI 利用が分断している」「プロンプト作成やデータ加工のために手作業が止まる」が多く挙げられました。そこで、検討の結果「いつでもサッと使えるようにする」「何をしたいのかを AI に察してもらい、提案してもらう」「AI が常に自分に寄り添うパートナーである印象をもたせる」の 3 点が満たされれば解決できると考えるに至りました。

そこで生まれたのが、ためらわずにタスクをお願いしたくなる AI パートナー、「クリップボードでササっとお願い! 日々の仕事に自然に寄り添う『Ctrl+Cat』」でした。Ctrl+Cat は AI エージェントが常駐し、やりたいことは何でもクリップボードに貼り付けるだけでどういう結果がほしいか推測、提案、実行してくれるのです。まさにコピペの感覚で Ctrl+C から始められる気軽さがありますね。

回答をくれるのは各分野担当の AI エージェントたちですが、これがかわいい猫のキャラクターで、使っていくうちに成長するという使う楽しさを持っています。

簡単に使えて、ものすごく便利で、しかもかわいいキャラクターを見る楽しみもあり、成長する楽しみもあり・・・ん?これはたしか 2 週間で開発されたような・・・。審査員の皆さんもこの短期間でのこの完成度に驚かされていました。

そしていよいよ結果発表!結果は以下のとおりとなりました。

  • 優勝 :  mirAI Innovation Center (仮)
  • 準優勝 : アーベルソフト
  • 第3位 :パソナPDT

皆さま、おめでとうございました !


決勝戦の模様は こちらの動画 でご覧いただけますので、ぜひご覧ください。

mirAI Innovation Center(仮)(大日本印刷株式会社)チームのみなさん


QuizKnock も AWS を使って生成 AI アプリ開発をやってみた !? 30 万再生を突破した必見動画とは ?

ハッカソン審査員をお引き受けいただいた QuizKnock 鶴崎修功氏が今度は開発する側となって生成 AI アプリ開発に挑みました。QuizKnock の人気コンテンツ「朝からそれ正解」で使われるクイズの出題と想定解答を生成する AI を作ることになった鶴崎修功氏と falcon 氏。与えられた時間は 2 時間ほど。果たして要件を満たすアプリが作れるのでしょうか ?

開発には AWS そして Generative AI Use Cases JP (GenU) が使われています。最後にハッカソンのふりかえりもあります。

12 月 17 日の公開後、すでに 30 万再生を超えた人気動画となっていますのでぜひご覧ください!

【エンジニア鶴崎】朝それをアシストするAIを作ってみた【ガチ開発】 »

生成 AI アプリを開発するための環境はかなり整っています。ぜひ皆様もこの機会に課題解決の助けとなる生成 AI アプリ開発にチャレンジしてみませんか ? 


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筆者プロフィール

服部 京子
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
Sr.Developer Marketing Manager

AWS マーケティングにて、主にイベント企画運営を担当しています。2025 年も Developer の皆様が思わず参加したくなるような、楽しくてためになるイベントを企画しますのでどうぞお楽しみに !

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