はじめに
ソラコムが提供するサービスに SORACOM Flux があります。このサービスを活用すると IoT のカメラ画像をクラウドにアップロードするとともに、Amazon Bedrock を用いて画像分析できます。また、この機能の特徴として、画像分析のためのプロンプトをエンドユーザーが直接入力できるという特徴があります。
この記事では、以下を紹介します。
- SORACOM Flux で画像分析をさせるユースケースとして、店舗運営での商品の在庫切れを検出する「在庫監視システム」を題材に、Amazon Bedrock においてどのようなプロンプトが有効かを実験した過程
- エンドユーザーがプロンプトを入力するにあたって、システム (SORACOM Flux) で安全に Amazon Bedrock を呼び出すための工夫
builders.flash メールメンバー登録
builders.flash メールメンバー登録で、毎月の最新アップデート情報とともに、AWS を無料でお試しいただけるクレジットコードを受け取ることができます。
システム構成の概要
以下は、本記事で紹介する在庫監視システムの全体構成図です。 カメラで撮影された在庫画像は SORACOM Harvest Files に保存され、SORACOM Flux により画像解析と通知処理が行われます。画像解析は Amazon Bedrock の Claude 3.7 Sonnet によって行われ、結果は Slack へ通知されます。
今回使用する機器・サービス
今回使用する機器、サービス
- [ソラカメ対応製品] ATOM Cam 2
- クラウド型カメラサービス「ソラカメ」 クラウド常時録画ライセンス
- IoT オートメーションサービス「SORACOM Flux」
- SORACOM Harvest Files
◦ IoT デバイスからのファイルを収集・蓄積するファイルストレージサービスです。 - Amazon Bedrock - Claude 3.7 Sonnet
Fluxアプリの構成
Fluxアプリはこのような構成となります。
定期的にソラカメ対応カメラから静止画を取得し、取得した静止画を Amazon Bedrock で解析し、在庫状況を自動判定しています。結果を Slack に通知します。

AI アクションの設定
前述のとおり、当システムでは取得した画像を AI (Amazon Bedrock - Anthropic Claude 3.7 Sonnet) に問い合わせ、在庫監視と欠品アラートを検知します。
AI の問い合わせにあたっては、ユーザーにこののような設定を提供しています。
「AI モデルの選択」でモデルを選択します。ここに「Amazon Bedrock - Anthropic Claude 3.7 Sonnet」が含まれます。「プロンプト」でユーザーはAIへのプロンプトを入力します。「プロンプト」以外にも「AIからの返答をJSON形式にする」というオプションがあります。これは、AIモデルからのレスポンスを次のアクション等で扱いやすくするための、AIからの返答をJSON形式に指定するものです。また、マルチモーダルに対応したAIモデル向けに画像のリンクを付与できます。
当 Flux アプリのポイントは Amazon Bedrock の AI モデルにわたすプロンプトです。これは場所や商品に応じて調整も必要となり、AI を利用したアプリケーションではプロンプトの調整はさけられないと思います。もちろん AI モデルもいくつか試したほうがよいでしょう。

在庫割合を算出するプロンプト
プロンプトの調整では、まずは次のように在庫の割合を算出しました。
最終的なプロンプト
通知先には自然言語でのコメントが欲しく、また Amazon Bedrock で十分な識別ができるため、在庫の割合に加えて、補充判断の理由や補足もコメントもしてもらうように改善しました。最終的なプロンプトは次のとおりとしました。
実行結果
このように Slack で通知されました。
プロンプトにあるとおり、レスポンスでは、fill_ratio_percent (商品の充足率) や needs_restock (補充の要否判断) もありますので、これらの値に応じてアクションや通知先を変更できます。SORACOM Flux の Webhook アクションでは、AWS Signature Version 4 に対応しており、例えば Amazon Simple Queue Service (SQS) や Amazon Simple Notification Service (SNS) にも送信できますので、そこからサーバーレス IoT の仕組みに連携もできます。

Amazon Bedrockのサービスへの組み込み
効果と他ユースケースへの応用
本記事では Amazon Bedrock を活用して、現場のカメラ画像から在庫状況を自動判定し、欠品アラートを出す仕組みをどのように構築したかを紹介しました。在庫状況をカメラとAIで監視することで、現場での業務効率の向上が見込まれます。これまでスーパーバイザーが各店舗を定期的に巡回し、目視で在庫状況を確認していた作業を SORACOM Flux と Amazon Bedrock によって自動化することで、業務負荷の軽減と人為的な見落としの防止が期待できます。
SORACOM Flux と Amazon Bedrockの組み合わせは、在庫管理に限らず、他の用途にも展開可能です。たとえば、
- 駅や商業施設での混雑度可視化(人数カウント)
- 商品棚以外のエリアでの業務改善
- 製造現場での工程中の異常検知