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デベロッパーのためのクラウド活用方法

AI エージェントで開発効率を加速しよう!Bedrock Engineer を触って学ぶ AI エージェント活用術

2025-10-03 | Author : 淡路 大輔

はじめに

みなさん、こんにちは!ソリューションアーキテクトの淡路です。

日々の開発業務で「このコードの構造を理解するのに時間がかかる」「調査レポートの作成が面倒」と感じたことはありませんか?そんな課題を解決する AI エージェントソリューション「Bedrock Engineer」をご紹介します。

このアプリケーションは私を含む AWS の Solutions Architect 数名が開発し、GitHub にオープンソースとして公開しています。 Bedrock Engineer にはローカルファイルの操作、Web検索、数値計算などを含む機能が実装されており、ソフトウェア開発をはじめとして調査やレポート作成といった様々なタスクに利用できます。

私は日々コードを書いたり、AWS の構成図を作ったり、Web の調査から統計情報の分析まで幅広い業務をこの Bedrock Engineer を使って効率化しています。

これから数回にわたって Bedrock Engineer シリーズとしてブログをお届けしていきます。第一回では、Bedrock Engineer を使った開発効率化に焦点を当ててご説明していきます。今後エージェントのカスタマイズ方法や、エージェントアプリ開発における勘所などもお届けしていく予定です。どうぞお楽しみに!

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Bedrock Engineer の機能

Bedrock Engineer はメインとなるエージェントを実行する機能として、以下の 4 つのコア機能を提供しています。

機能名
説明
Agent Chat

エージェントを作成し、チャットのインターフェースとして実行します

Voice Chat

エージェントを音声で操作します(基盤モデルは 2025年07月時点で Amazon Nova Sonic のみをサポート)

Background Agent

エージェントをバックグラウンドで定期的に実行します

Agent Directory

コントリビューターによって作成された様々なエージェントを選んですぐ使えます

ユースケース

また、要件特化型の UI を備えたユースケースとして以下の機能も提供しています。

機能名
説明
Website Generator

ウェブサイトを作成するソースコードを生成してリアルタイムにプレビューします
React, Vue, Svelte に対応しています

Step Functions Generator

AWS Step Functions の ASL 定義を生成してリアルタイムにプレビューします

Diagram Generator

Draw.io 形式のダイヤグラムを生成してリアルタイムにプレビューします
AWS の構成図だけではなく、意思決定ツリーやデータベースの設計など多様な図を作成します

基本的な動作イメージ

Bedrock Engineer の基本的な動作のイメージを掴みたい場合、こちらの動画をご覧ください。

Getting Started

ソフトウェアのダウンロード

Bedrock Engineer は Electron 製のネイティブアプリとして実装しており、Mac, Windows, Linux の各種 OS 上で動作します。GitHub リポジトリの Getting Started からソフトウェアをダウンロードしてすぐに利用できます。

なお、ローカルでビルドして使用する場合は、Node.js 18.0.0 以上のバージョンを推奨しています。ビルドして利用する手順は こちら をご参照ください。

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初期設定

アプリケーションが起動したら設定画面を開いて、AWS に接続する認証情報を設定しましょう。この認証情報にはアクセスキー・シークレットアクセスキー・セッショントークンによる方法と、AWS プロファイルによる方法の2種類が選択できます。

アクセスキーを発行せず、セキュアに AWS に接続するためには IAM Identity Center 認証の設定 などを使用して安全に管理された AWS プロファイルを使用することを推奨します。なお、必要となる IAM ポリシーはこちらを参照ください。

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Bedrock のモデルアクセスを有効化

次に、AWS のマネジメントコンソールから Bedrock のモデルアクセスを有効化しておきましょう。Bedrock Engineer にて使用したいモデルを選択してアクセスをリクエストしてください。なお、詳しくは Amazon Bedrock の開始方法 も参照ください。本ブログに添付しているこれらの説明スライドは こちら からも参照できます。Bedorck Engineer 自体はオープンソースであり無料でお使いいただけますが、Amazon Bedrock で使用するモデルの利用料金が発生することにご留意ください。

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Agent Chat

さて、ここからはメインの機能となるエージェントとのチャット機能をご紹介します。この機能では AI エージェントを選択してチャットで指示をすることでソフトウェア開発からレポート作成、Web 検索まで様々な作業を AI エージェントに実施させることができます。ここではソフトウェア開発を行う “Software Developer“ と Web 検索を行う ”Web Deep Researcher“ という 2 つのエージェントを紹介します。

エージェントの選択 (Software Developer)

画面左上の “Software Developer” というエージェントの名称をクリックするとエージェントを選択・作成するモーダルが表示されます。デフォルトでは “Software Developer” が選択されていますのでこのまま使用しますが、他にも標準搭載されているエージェントも使用することができます。

作業ディレクトリの指定

“Software Developer“ が選択されていることを確認したら、左下のフォルダアイコンをクリックして作業ディレクトリを選択します。この作業ディレクトリを選択することで AI エージェントが作業ディレクトリ内のファイルを読み書きすることができるようになります。

ツールの選択

次に、 Tools アイコンをクリックしてみましょう。このツール設定モーダルでは AI エージェントが使用できるツールを選択することができます。ファイル操作をはじめとして、ウェブ検索、AI サービス、システム操作関連のツールなど多岐に渡ります。ここでは一例として tavilySearch ツールの画面イメージを添付しています。

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Tavily について

Tavily は AI エージェント用に設計された検索エンジン、検索 API です。Free Plan だと毎月 1,000 回の API コールが利用できる無料枠があり、クレジットカードは必要なく利用できます。利用してみたい方は tavily.com からアカウント登録を行い、発行した API キーを入力してご利用ください。

Tavily による検索ツールが使用できると、AI エージェントは学習していないライブラリの使い方や、AWS に新しく登場したサービスを AWS CDK で書く方法など、AI エージェント自身がわからない局面においても Web 検索を行って調査し、自律的に実装を行うことができるようになります。

利用可能なツールの一覧は こちら を参照ください。

エージェントの実行

ここまで準備ができたらいよいよ AI エージェントを実行してみましょう。以下のようなプロンプトでソースコードの解釈と図解に関する指示を出してみます。今回作業ディレクトリには Bedrock Engineer 自身のソースコードを含むディレクトリを指定してみました。

このアプリケーションにおいて Chat 機能はどのような処理で実装されていますか?
ユーザーから見た時のシーケンス図として表現してください。

実行イメージ

1. プロンプトの入力

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2. 作業ディレクトリの探索・調査

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3. ファイルの読み込み

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4. 調査した結果の図解・説明

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実行完了

いかがでしょうか、AI エージェントが自律的にフォルダ・ファイルを探索調査し、関連するソースコードの依存関係を理解した上で構造をシーケンス図として図解して説明をしてくれました。もちろんここからさらに詳しく調査することも可能ですし、機能追加する指示を行ってプログラムを実際に書いてもらうこともできます。

※ 本ブログでは Claude Sonnet 4 を使用した結果を記載しています。

エージェントのカスタマイズ

AI エージェントは自分でカスタマイズしたものを使用することもできます。エージェントを選択するモーダルから「新規エージェント追加」をクリックして作成するか、既存のエージェントを編集することでカスタマイズできます。ここではエージェントが使用するツールだけではなく詳細な指示を与えるシステムプロンプト、3rd party の MCP サーバーを使用したツールの拡張など様々なカスタマイズを行うことができます。詳細なカスタマイズ方法は第二回以降のブログで詳しくお伝えする予定ですのでどうぞお楽しみに!

Agent Directory

デフォルトで選択できるエージェントは限られていますが、エージェントを選んですぐに利用できるように Agent Directory という機能を用意しています。ここにはオープンソースのコントリビュータによって作成された様々な業務を支援する AI エージェントが並んでおり、好きなエージェントを選んで自分のエージェントとして取り込んで利用することができます。ここでは “Web Deep Researcher” というウェブ検索に特化したエージェントを利用してみましょう。エージェントを選択すると開くモーダルの下に表示される「マイエージェントに追加」ボタンをクリックしてみましょう。

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Web Deep Researcher

“Web Deep Researcher” というエージェントが Agent Chat 機能に追加されました。この新しく追加されたエージェントを使うことで、Web の調査業務を実行させることができます。

“Web Deep Researcher” エージェントを実行する

試しに以下のプロンプトを使用して、目黒駅周辺の美味しいトンカツ屋さんを調べてみましょう。


目黒駅周辺でおいしいトンカツ屋さんを教えてください。

画面イメージ

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多段にクエリを実行して、自律的に調査

Tavily Search ツールを使用して多段にクエリを実行して、自律的に調査してくれました。1回だけウェブ検索を行うのではなく、最初の検索結果を鑑みて多段にクエリを実行することで目的に到達するまで網羅的に情報探索を行います。今回の調査業務では以下のように思考して段階的に検索調査を実行したようです(このフローチャートも Bedrock Engineer が作成しました) 今回は Tavily Search ツールを使用して多段に検索しましたが、ファイルシステムを検索調査させてもいいでしょうし、Amazon Bedrock Knowledge Base にクエリをする Retrieve ツールを使用すれば AI エージェントによる Agentic-RAG の仕組みを簡単に実現できますね。

複数のエージェントによる開発体験

ソフトウェア開発作業において、使用するタイミングに応じて最適なエージェントに切り替えることで効率的な作業ができます。例えば最初に “Web Deep Researcher” エージェントを使ってライブラリの使用方法やベストプラクティスを調査した後に “Software Developer” エージェントに切り替えて開発作業を進めるといった具合に、複数のエージェントを組み合わせた開発をぜひ体感ください。 ※ 本画像は Amazon Nova Canvas モデルを使用した “アイコンクリエイター” エージェントにより作成しました。

Voice Chat

次は音声で AI エージェントをコントロールできる Voice Chat の紹介です。基盤モデルには Amazon Nova Sonic を使用しており、スムーズな音声による指示ができることが特徴です。3種類の音声が選択できます。ここでも Agent Chat 機能で作成したエージェントを利用できます。

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Background Agent

作成したエージェントはバックグラウンドで定期的にスケジュール実行することもできます。いちいちチャットで指示を出すことなく、定期的に実施する必要のある業務をオフロードしましょう。例えば以下のような用途で利用できます。

  • 毎日朝 9 時にメールをチェックして返信文章や、1 日の作業計画を立てる
  • 毎週更新されるデータから報告するレポートの自動作成
  • ローカルのフォルダを定期的にスキャンして、冗長なコードが実装されていないかリアルタイムにレビューする

など、アイディア次第で様々な定例タスクをエージェントに行ってもらうことができそうですね。

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Website Generator

ここからはユースケース特化型の UI を備えたエージェント機能をご紹介します。Website Generator ではウェブサイトを作成するソースコードを生成してリアルタイムにプレビューすることができます。React, Vue, Svelte の 3 つのフロントエンドのライブラリに対応しています。以下のように、自然言語で指示を出すだけで左側にソースコードが生成され、簡単にウェブサイトを作成できます。

入力したプロンプト

次の条件で、鉢植えの植物に特化した EC ウェブサイトの基本構造とレイアウトを作成してください。

- レイアウトは Amazon.com のようなものにする。
- EC ウェブサイトの名前は "Green Village" とする。
- グリーンの配色テーマを使用する。
- 植物をカード形式で表示するセクションを追加する。
- ショッピングカートに追加する機能を作成する。
- 現在のショッピングカートの中身を確認し、合計金額を計算する機能を作成する。
 

機能追加・デザイン変更

もちろん、追加で指示をすれば機能追加やデザインの変更を行うことができます。システム開発に本格着手する前にサクッと UI のイメージを決めるために使ってみても良いですね。ちなみに、“Search” ボタン、“Connect” ボタンをクリックすればウェブ検索機能や Amazon Bedrock Knowledge Base への検索機能を利用することができます。実装方法を調査したり、既存のコードを参考にしたウェブサイトを作成するために役に立ちます。

ウェブ検索をしている例

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Knowledge Base との接続

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Step Functions Generator

AWS Step Functions の ASL 定義を生成してリアルタイムにプレビューします。Step Functions のワークフローの定義を考える作業にはなかなか骨が折れますが、まずはこの機能を使って雛形を出力してみましょう。ワークフロー定義を作る際のブレストにも使えますね。なんでも Step Functions で動かしたいサーバーレスマニアはぜひ活用しましょう。

Diagram Generator

最後に、ダイヤグラム生成の機能です。AWS の構成図だけではなくビジネスのあらゆるシーンで作成する様々なダイヤグラムを生成できる機能を提供しています。Draw.io で使用できる XML ファイルとしてダイヤグラムを生成しており、draw.io で表示できる形式や PNG などの形式にエクスポートすることもできます。

私は数行程度の簡単な要件を最初に入力して構成図を作り、何度かフィードバックを繰り返してある程度全体像を捉えた構成図ができたら、最後に手作業で整形・加筆するような使い方をしています。

AWS 構成図生成の例

ここではシンプルな 1 行程度のプロンプトを入力していますが、複雑な要件や仕様書を直接入力してみても良いですね。複数の Availabilty Zone にリソースを配置する冗長構成も的確に表現できています。

入力したプロンプト)

ロードバランシングと自動スケーリングを備えたECS Fargateベースのコンテナ化アプリケーションアーキテクチャを作成する

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意思決定ツリー生成の例

AWS の構成図だけではなく、ソフトウェア開発やビジネスの多様なシーンで使える図を作成できます。たとえばデータベースのテーブル定義の関係性を表す ER図(Entity-Relationship図)や、意思決定ツリー、フローチャートを作成できます。

入力したプロンプト)

カスタマーサポートの問題解決のための意思決定フローチャートを設計する

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さいごに

本記事では Bedrock Engineer という AI エージェントのソリューションをご紹介しました。このエージェントアプリはファイルの操作だけではなくウェブ検索など様々なツールを提供しています。エージェントをカスタマイズすることで、様々な業務に適用できる可能性が広がり、ワクワクしますね。

次回以降も、Bedrock Engineer シリーズとしてブログをお届けしていきます。今後はエージェントのカスタマイズ方法や、エージェントアプリ開発における勘所などもお届けしていく予定です。どうぞお楽しみに!

筆者プロフィール

淡路 大輔

 (Awaji Daisuke / @gee0awa)

アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社 ソリューションアーキテクト

現在は、公共部門のお客様向けの技術支援に従事しています。特にアプリケーションのユーザー体験 (UI/UX) を専門とし、アプリケーションのモダン化の支援を行っています。仕事以外では、家族と過ごす時間、料理を楽しんでいます。

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