Absa Group は、アフリカ 12 か国で 970 万人の顧客に銀行および金融サービスを提供しており、英国と米国でも現地事務所を設けています。親会社によって売却されたとき、Absa はオンプレミスのデータセンターをクラウドに移行することでテクノロジー資産をモダナイズする機会があることに気づきました。この組織は、システムとアプリケーションの信頼性を高め、リスク管理を中心に革新し、上昇し続けるコンプライアンスコストを削減したいと考えていました。

既存の IT の設定が非常に広範囲にわたるため、Absa はすべてのシステムを一度にクラウドに移行するのは複雑すぎると判断しました。Amazon Web Services (AWS) との提携を通じて、優先度の高いシステムから移行することから始めました。これには、顧客のオンボーディングでコンプライアンスに関する義務を果たすために必要となる、ミッションクリティカルな金融犯罪防止アプリケーションが含まれていました。

AWS 上でアプリケーションを構築することで、アフリカ大陸全体でのスケールがより容易になり、開発プロセスの効率が向上しました。また、可用性も向上したため、顧客は即時かつ確実に製品にサインアップして、取引を行うことができました。さらに、AWS に移行することで、金融犯罪の防止と報告にかかるコストを 5% 削減できたほか、チームが新しい機能を迅速にデプロイできるようになり、Absa の競争上の優位性が強化されました。Absa は、事業を展開しているアフリカ 12 か国のうち 11 か国のオペレーションを AWS に移行しており、最後の国については現在、規制当局の承認を取得するために対応しています。

Absa の金融犯罪報告アプリケーションにより、事業を展開している国におけるさまざまなコンプライアンス関連義務を履行できます。例えば、南アフリカでは、Absa は Financial Intelligence Centre Act (FICA) を遵守する必要があります。同法では、マネーロンダリングやテロ資金供与などの犯罪に対抗するために、新規顧客の本人確認を実施することが組織に義務付けられています。このアプリケーションでは、新しいアカウント所有者に対する必要なチェックが自動化されており、犯罪行為の可能性があれば、規制当局に通知されます。

Absa は、AWS アフリカ (ケープタウン) リージョンとその 3 つのアベイラビリティーゾーンを利用して顧客にサービスを提供し、Elastic Load Balancing (ELB) により着信アプリケーショントラフィックを複数のターゲットや仮想アプライアンスに自動的に分散します。これにより、Amazon EC2 Auto Scaling を利用する顧客は、需要の変化に合わせてコンピューティング性能を追加または削除するためにアプリケーションを利用できます。

アプリケーションの信頼性とパフォーマンスが向上したため、口座開設のカスタマーエクスペリエンスが改善しました。「AWS プラットフォームは回復力がより高く、迅速にスケールできるため、当社にとって非常に有益です」と Absa の Financial Crime for Africa 部門 Head である Nic Swingler 氏は述べています。

Absa は、他のビジネス機能を停止させることなく、問題を修正したり、アプリケーションの新しい機能をテストしたりできるようになりました。

以前は、利用可能なコンピューティング性能が限られていたため、他の処理タスクをシャットダウンする必要がありました。現在では、Absa は、アプリケーションの新機能の大規模なテストを実施するときなど、必要なときにコンピューティングリソースを動的に増強できるようになりました。

Absa は AWS 上でテスト環境を運用しているため、リリースについての作業を行いながら、問題が発生した場合は即座にロールバックできます。これにより、アップグレードがより簡単かつ迅速になり、カスタマーエクスペリエンスがより一貫したものになります。

Absa はシステムを改善することで、金融犯罪をプロアクティブに検出し、リスクを軽減できるようになりました。これにより、金融犯罪を標準的なコンプライアンスの問題ではなく、リスク管理の要素とすることで、戦略の転換が可能になりました。「金融犯罪の検出をリスクとみなすということは、リスクプロファイルを管理するためにデータをより深く調査し、お客様の行動における異常を見つけることを意味します」と Absa の Compliance Change, Transformation and Data 部門 Head である Robert Benvenuti 氏は述べています。「これにより、コンプライアンスに対する通常のルールベースのアプローチを超えて、より行動ベースのアプローチに移行することができます」。

この動きにより、金融犯罪の検出に対する同組織の年間支出が削減され、資本的支出から事業経費への移行が促進されました。「特にコンプライアンスのコストが世界中で年々上昇し続けている中で、このように大幅にコスト削減できるのはすばらしいことです」と Absa の Technology for Regulatory Functions 部門 Head である Ridwaan Rasool 氏は述べています。「しかし、コストが同じだったとしても、コンプライアンスやリスク管理活動に関してイノベーションを起こす能力などの追加のメリットに鑑みて、やはりおそらく AWS に移行していたでしょう」。

Amazon RDS マルチ AZ 配置で Absa のデータベースを実行すると、可用性と耐久性が強化されます。Apache Spark on Amazon Elastic MapReduce を利用すると、パフォーマンス上のメリットが得られるほか、Spark クラスターの管理が容易になります。バッチのランタイムは以前のオンプレミス設定の場合よりも速く、数百万の取引を数時間ではなく数分で取り込むことができます。これにより、企業のパフォーマンスとリスクプロファイルに関するリアルタイムのインサイトが得られます。

将来的に Absa は、AWS で実行されるデータ分析を利用して、コンプライアンス調査員の作業負荷を軽減するのに役立つインサイトを提供することを計画しています。このアプリケーションには、潜在的なリスクに対して自動的にフラグを付ける、使いやすいダッシュボードが備わる予定です。これにより、Absa の調査員は、口座を申請している顧客が本人であるかどうか、住所や個人情報が正しいかどうかなどの問題について、より迅速かつ正確な判断を下すことができます。また、分析を使用することで、金融犯罪防止アプリケーションが提示する誤検知を減らすことができるため、スタッフがこれらの潜在的なリスクの調査に費やしていた貴重な時間を節約できます。