環境に優しい貨物輸送飛行船の迅速なローンチのために AWS で CFD を実行する FLYING WHALES
2021 年
FLYING WHALES は、重量貨物および大型貨物市場向けに、ペイロードが 60 トンの貨物飛行船を開発しているフランスのスタートアップ企業です。このプロジェクトは、遠隔地で木材を採取するための効率的で環境に優しい輸送手段を提供するというフランスの熱意から生まれたものです。FLYING WHALES の空気力学リードエンジニアである Guillaume Martinat 氏は、「フランスはヨーロッパ最大の森林地帯の 1 つを保有していますが、これらはアクセスすることが非常に困難な山の上にあります」と話しています。「着陸することなく、ホバリング飛行しながら貨物を積み降ろすことができる飛行船を作る必要があるのはこのためです」。
FLYING WHALES は、その飛行船を設計するために、あらゆる流体の流れを数値的にシミュレートするツールである複雑な数値流体解析 (CFD、Computational Fluid Dynamics) と、大量のコンピューティング容量を必要とする構造解析シミュレーションを実行しています。同社では物理的なテストを行うことができません。飛行船が大きすぎ、テストするにはコストと時間がかかりすぎることが原因です。その代わり、エンジニアには、飛行船のサイズを調整し、飛行フェーズごとにワークロードを定義するためのデータが必要になります。CFD は、部品を製造することなくこれらの必要不可欠なデータをエンジニアに提供するため、はるかに高速な設計プロセスが可能になります。しかし、各計算には約 600 個のコアが必要で、1 つのモデルを生成するには計算を約 400 回実行しなくてはならないため、膨大な計算リソースが必要になります。
当初、FLYING WHALES は CFD 分析を実行するために、社内のハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) クラスターに頼っていました。しかし、このクラスターにはコアが 200 個しかなく、ワークロードをサポートするために必要なスケーラビリティや柔軟性がありませんでした。FLYING WHALES は、その IT 環境がコスト効率性に優れており、2021 年のモデルデリバリー対応できることを確実にする必要もありました。Martinat 氏は、「スタートアップ企業として、私たちには独自に期限を守るためのリソースが不足していました」と話しました。
Amazon EC2 C5n.18xlarge インスタンスと EFA を使用することで得られるコンピューティング能力とノード間のネットワークパフォーマンスのおかげで、私たちは AWS で CFD ワークフロージョブを 15 倍速く実行できます”
Guillaume Martinat 氏
FLYING WHALES、空気力学リードエンジニア
HPC プラットフォームの AWS への移行
FLYING WHALES は、その HPC 環境をクラウドに移行して、CFD ワークロードを Amazon Web Services (AWS) で実行することを選択しました。「複数のクラウドプロバイダーを評価しましたが、AWS が最高のパフォーマンスを提供してくれました」と Martinat 氏は話しています。具体的に言うと、FLYING WHALES は Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) C5n.18xlarge インスタンスでの実行を選択しました。このインスタンスは、Amazon EC2 インスタンスネットワークインターフェイスとして Elastic Fabric Adapter (EFA) をサポートします。C5n インスタンスは、FLYING WHALES がその CFD ワークロードのために必要とする能力とスケーラビリティを提供します。 FLYING WHALES は、Amazon EC2 スポットインスタンスを使用して C5n インスタンスをプロビジョニングしています。スポットインスタンスは、最大 90% の割引額で利用できる Amazon EC2 の予備容量です。スポットインスタンスを使用することで、FLYING WHALES は HPC クラスターのコストを 64% 削減できました。
さらに、同社は AWS ParallelCluster を使用して、AWS で CFD シミュレーションを実行するための HPC クラスターのデプロイと管理を簡素化しています。FLYING WHALES は現在、NICE DCV を使用することでデータ転送コストを大幅に削減しながらアプリケーションをセキュアにストリーミングできるので、エンジニアはソリューションをローカルにダウンロードせずに、それらを検査することができます。
FLYING WHALES は、AWS Activate プログラムを通じて提供される財政的支援と技術的支援も活用しました。Martinat 氏は、「AWS からのクレジットとテクニカルサポートは、私たちが独自にスタートするよりも迅速にスタートを切るために役立ちました」と言っています。
CFD ワークフローを 15 倍に高速化
これらに加えて、オンデマンドで利用できるリソースは、FLYING WHALES のエンジニアが各ジョブを順番に実行するのではなく、多数の計算を同時に実行することも可能にします。その結果、エンジニアはインフラストラクチャの管理ではなく、データの分析と知的財産の作成により多くの時間を費やすことができます。これらの能力と AWS からの直接的なサポートにより、FLYING WHALES はその計画通り、2024 年に最初の飛行船を実現化できるでしょう。
600 コアの計算モデルをサポートするための高速スケーリング
FLYING WHALES は、その能力を使用して迅速にスケーリングし、以前よりも多くの作業を完了させています。多種多様な AWS インスタンスタイプを利用できることから、同社はオンプレミス環境では不可能であった複雑なシミュレーションを実行できます。例えば、飛行船のサイズを調整する上で重要な地面効果の計算の一部では、同社がそのオンプレミスクラスター全体を数週間にわたってブロックする必要がありましたが、今では、他のアクティビティを遅延させることなく、これらの計算を迅速に実行できるようになりました。「コンピューティングリソースが不足していたことが原因で、実行できなかった研究もいくつかありました」と Martinat 氏と話しています。「今では、実行したいことをすべて実行できるようになりました。これは、単に AWS での実行速度が速いというだけのことではなく、ジョブを完了させる能力があるということなのです。さらに、利用可能なさまざまなインスタンスタイプの中から高メモリハードウェアを選択することで、オンプレミスで得られたものよりも細かく、重いメッシュをリモートで生成し、CFD の精度を向上させることも可能になりました」。
エンジニアのための柔軟性の向上
AWS のスケーラビリティと柔軟性のおかげで、FLYING WHALES はその中核事業である革新的な貨物飛行船の設計に集中できるようになりました。「当社にとっての AWS の強みは、HPC クラスターをスケーリングおよびカスタマイズして、高パフォーマンスで、CFD ワークロードに対応する環境を常に確保できるようにしてくれることです」と Martinat 氏は言っています。「これは、私たちが製品を予定どおりにローンチすることを可能にするだけでなく、会社の成長にも役立ちます」。
FLYING WHALES について
AWS の利点
- CFD ワークフロージョブを 15 倍高速に実行
- 数か月ではなく、数日で CFD ジョブを完了
- 600 コアの計算モデルをサポートするために HPC 環境をスケーリング
- 最初の飛行船をスケジュール通りにローンチ予定
使用されている AWS のサービス
Amazon Elastic Compute Cloud (EC2)
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。デベロッパーがウェブスケールのクラウドコンピューティングを簡単に利用できるように設計されています。
AWS ParallelCluster
AWS ParallelCluster は、AWS がサポートするオープンソースのクラスター管理ツールです。AWS で容易にハイパフォーマンスコンピューティング (HPC) クラスターをデプロイおよび管理できます。
Elastic Fabric Adapter
Elastic Fabric Adapter (EFA) は、Amazon EC2 インスタンス用のネットワークインターフェイスです。これにより、お客様は、高いレベルのノード間通信を必要とするアプリケーションを AWS で大規模に実行できます。
AWS Activate
AWS Activate では、AWS クレジット*、AWS サポートプランクレジット、トレーニングなどのさまざまな特典をスタートアップ企業に提供し、ビジネスの成長を支援します。
開始方法
あらゆる業界のさまざまな規模のお客様が、AWS を活用してビジネスを日々変革しています。AWS のエキスパートにお問い合わせのうえ、今すぐ AWS クラウドジャーニーを開始しましょう。