藤田医科大学
藤田医科大学、患者記録データを AWS クラウドに移行し、より質の高い医療提供と診療の継続性向上を目指す
2022
Fast Healthcare Interoperability Resources(FHIR) 規格は、医療情報交換のための標準的なフォーマットを提供するために2012年に策定されました。FHIR により、医療機関は相互運用可能な記録システムを構築し、患者の病歴の全体像を把握することで、より迅速かつ正確な医療を促進することができます。
藤田医科大学は、日本最大の私立医科大学であり、最先端の研究と医学の進歩で知られています。4 つの教育病院を有し、最大の病院では年間約 13,500 件の手術が実施されています。藤田医科大学は、患者ケアの質と継続性を高めるために、FHIR 規格に準拠した個人健康記録 (PHR: Personal Health Records)システムを構築することを決定しました。システムを構築することを決定しました。
PHR は、電子健康記録 (EHR: Electronic Health Records)と同様に、複数の臨床医療機関の患者記録データを組織間システムで保存するものです。しかし、医療の個別化・患者さん中心化に伴い、EHR とは異なり、治療を受ける医療機関ではなく、患者が管理・統制するPHR が主流のシステムを採用する組織が多くなってきています。
FHIR に準拠したシステムのアーキテクチャについて、AWS のエンジニアやビジネス開発チームと協働することで、多くのことを学ぶことができました。
小林 敦行 氏
藤田医科大学 、IT部長
クラウド技術に支えられた患者さん中心の医療への移行
これまで日本の医療現場では、手書きのカルテが主流でした。電子カルテが広まってきた現在でも、患者さんの情報を電子カルテシステム (EMR: Electronic Medical Records) に手入力で書き写すことで、患者さんとの対話に費やせる時間を削っていました。このような現状を打破するため、同大学はデジタル PHR システムの構築を目指しました。さらに、拡張性のある PHR システムを構築することで、レントゲン写真などの大量の画像を一元的に保存したり、診断に必要な計算量の多い人工知能(AI)モデルを導入することが可能になります。
日本 3 省のコンプライアンスを確保
デジタルPHR システムには、データのプライバシーと政府規制へのコンプライアンスを確保するため、セキュリティが主な要件となりました。藤田医科大学は、厚生労働省、総務省、経済産業省の3省に対応した医療情報システム設計のためのガイドラインと、医療データ交換インターフェイスの設計を容易にするツールキットである FHIR Works on AWS が提供されているアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用しました。)を採用しました。
藤田医科大学では、PHR システムを安全に構築するために、AWS のエンジニアと毎週ミーティングを行いました。医療情報システム部の小林 敦行部長は「 AWS にはすでに FHIR に準拠したフレームワークが用意されていたため、作業は非常にスムーズに進みました。」また、「オンプレミスの医療データをクラウドに移行する際も、第三者監査人と連携し、セキュリティのベストプラクティスを確認しながら作業を進めることができました。」と話します。
データ主導型モデルと API の活用
藤田医科大学は、PHR システムを AWS 上に構築することで、IoTをはじめとするAPI(アプリケーション プログラミング インターフェイス Application Programming Interface)を活用したアプリケーションの可能性を広げました。小林氏は、「私たちは、データを私たちや患者さんのために活用し、より健康な生活を送るためのエンパワーメントを行いたいと考えています。クラウドソリューションは、IoT、AI、API ベースのソリューションとの連携に柔軟性があります。」と話します。
藤田医科大学は、ユーザーのアクセス制御に Amazon Cognito を活用し、患者記録データに対するよく見られるウェブ脆弱性攻撃から保護するために AWS WAF(Web Application Firewall)を採用しています。また、コンテナ化されたアプリケーションの展開には、完全経営管理コンテナオーケストレーションツールとして Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS)、サーバーレス計算エンジンとして AWS Fargate を採用しています。また、マーケティングチームは、顧客とのコミュニケーションを効率化し、パーソナライズするために、AWS 上でのデータレイクの構築も検討しています。
患者記録データシステムの 100 万人規模への拡張を準備中
現在、藤田医科大学では、6,000 人の同大学職員が PHR システムを試用し、一般への展開を進めています。2023 年までには、毎年健康診断を受けるために大学病院を訪れる患者さんが、デジタルPHRシステムに自分のデータを入力することができるようになる予定です。同大学では、導入後 3~4 年のうちに、AWS 上の PHR システムに 100 万件の患者記録データを追加することを見込んでいます。
このシステムにより、記録の信頼性の向上、診断ミスなどの医療過誤のリスクの低減、医師が事務作業ではなく患者さんとの対話に時間を割けるようになるなどの効果が期待されています。藤田医科大学は、創薬や医療機器・サプリメントの開発に利用できる API 駆動型ソフトウェアアプリケーションにアクセスすることができます。家庭用健康管理機器の統合やオムニチャネルコミュニケーションなど、他の医療機関でも FHIR システムを利用して、より安全で便利な医療を実現するためのイノベーションを創出しています。
災害復旧の強化と既存 EMR の移行
藤田医科大学は、クラウド型 PHR システムによる災害復旧 (ディザスタリカバリ Disaster Recovery) の強化も目指しています。同大学は日本の主要な断層線上に位置しているため、自然災害の脅威からデータをクラウド上で保護することは、事業継続の観点からも理にかなっています。また、同大学では現在、臨床医の EMR システムを、オンプレミスサーバーから AWS クラウドに移行する実証実験も行っています。
小林氏は、次のように話しています。「 FHIR に準拠したシステムのアーキテクチャについて、AWS のエンジニアやビジネス開発チームと協働することで、多くのことを学ぶことができました。また、プロジェクトを通して AWS が社内のチームや外部の IT ベンダー、監査法人と連携してくれたことにも感謝しています。皆が同じ方向を向いているので、EMR を AWS に移行する次のステップに自信を持つことができました。」
もっと知る
詳しくは、aws.amazon.com/health をご覧ください。
藤田医科大学について
藤田医科大学は、4 つの教育病院を持つ日本最大の私立医科大学です。最大の病院では、毎年 13,500 件の手術が行われています。藤田医科大学は最先端の研究機関であり、患者や学生のためになる先進的な医療に力を注いでいます。
AWS 導入後の効果と今後の展開
- FHIR 規格や日本の 3 省庁のガイドラインに準拠
- IoT、AI、API を活用したソリューションでイノベーションを促進
- 医師が患者との時間をより多く確保
- 診断ミスなどの医療過誤の可能性を低減
- 計算負荷の高い医療画像を大量に保存可能
ご利用中の主なサービス
FHIR Works on AWS
FHIR Works on AWS は、既存のヘルスケアアプリケーションとデータ上に Fast Healthcare Interoperability Resources (FHIR) インターフェイスを作成するために使用できるオープンソースソフトウェアツールキットを備えた新しい AWS Solutions Implementation です。
Amazon Elastic Container Service
Amazon ECS は、フルマネージドコンテナオーケストレーションサービスであり、コンテナ化されたアプリケーションを簡単にデプロイ、管理、およびスケーリングできます。
AWS Fargate
AWS Fargate は、サーバーレスで従量制料金のコンピューティングエンジンであり、サーバーを管理することなくアプリケーションの構築に集中することができます。AWS Fargate は、Amazon Elastic Container Service (ECS) と Amazon Elastic Kubernetes Service (EKS) の両方に対応しています。
Amazon Cognito
Amazon Cognito は、数百万人のユーザーに拡張できるアイデンティティストアを提供し、ソーシャルおよびエンタープライズ ID フェデレーションをサポートし、コンシューマーとビジネスを保護するための高度なセキュリティ機能を提供します。
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