世界に愛されるゲームタイトル
大規模な最新ゲームも少数精鋭で効率的に開発
AWS のサポートでコスト最適化・コンプライアンス強化も
2022
世界中で楽しまれている『ポケットモンスター』シリーズを始めとするゲーム作品の開発を手がける株式会社ゲームフリーク。同社は近年、ゲーム開発の大規模化に伴う IT リソース不足の解消や少数精鋭による効率的な開発を目指し、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の活用を推進しています。リソース消費の大きいデータビルド環境を中心に、テストプレイの分析基盤などを AWS 上に構築。AWS のサポートを受けながらマネージドサービスを使いこなし、コスト最適化やコンプライアンス強化にも取り組んでいます。
我々は人を豊かにするゲームの開発を目指し、『ポケットモンスター』シリーズを生み出し、手がけているゲーム開発会社です。少数精鋭の開発集団が、世界中の人々を魅了するタイトルを開発するために AWS のテクノロジーは欠かせない存在となっています
髙橋 友也 氏
株式会社ゲームフリーク
研究開発部部長
大規模化が進む家庭用ゲーム開発
効率的な開発環境のために AWS を選択
ゲームフリークは、家庭用ゲーム機を中心に多くのヒット作を出してきました。近年では、スマートフォンゲームや PC ゲームなどの開発にも取り組んでいます。
同社の特徴は、少数精鋭で世界的なゲームタイトルを生み出している点にあります。最新のゲーム機やゲームシステムの進化は著しく、ゲーム開発の大規模化が進んでいます。そのため、オンプレミスシステムのリソース不足に悩まされるケースも増えていました。それゆえに、開発環境のメンテナンスなどの運用負荷が大きく影響してしまうという課題を抱えていました。
「データセンターのリソースにも限りがあり、ラックスペースや電力の不足も大きな問題でした。特にコロナ禍以降はシステムを増強したくとも、マシンを調達することすら困難です。少人数でも運用でき、物理的制限が小さく、環境変化へ柔軟に対応できるスケーラビリティの高いインフラが必要でした」と研究開発部 運用統括リーダーの立原春木氏は当時を振り返ります。
そこで注目したのがクラウドです。特にビルド環境は、プロジェクトの進行に従ってリソース不足が目立つことが多く、プログラムのコンパイルや性能の確認を含む CI/CD 環境の拡張が課題視されていました。さらに、これらの作業を開発者の作業用端末 で行うことも多くあり、個々人の設定が CI/CD に影響してしまうことも少なくありませんでした。ビルド環境をクラウド化することで、マシンの調達に悩むことなくニーズの増減に対応でき、CI/CD の統合も図ることができます。
ゲームフリークは、数あるクラウドサービスの中から AWS を選択しました。可用性・柔軟性が高く、細かなセットアップが不要なマネージドサービスで運用負荷を低減でき、コストパフォーマンスが高い点が魅力でした。同社が利用している GitLabの コミュニティが活発であり、GitLab と AWS との連携に関するノウハウやドキュメントが豊富なところもポイントでした。
アカウントチームからの支援により
AWS を使いこなすとともにコスト最適化
ゲームフリークでは、Amazon EC2 上に環境を構築し、それを一部のプログラムのビルドに利用しています。ゲーム開発では日常的にプログラムを更新するため、EC2 Auto Scaling Group でその時々の規模に適したキャパシティを確保するとともに、Amazon EC2 スポットインスタンスを適用してコストの最適化も図っています。
従来、ゲームビルドの多くは Windows 環境で実行されていますが、同社は Amazon Elastic Kubernetes Service(Amazon EKS)を活用し、コストパフォーマンスの高い Linux 環境も併用しています。
「当初は独自に AWS の活用を始めたのですが、コアな部分の専門的な指南を受けたいと思い、AWS のアカウントチームに相談しました。ゲーム開発に適した Auto Scaling Group とスポットインスタンスを組み合わせるための工夫ポイント、Savings Plans の活用、データの最適な格納方法など実践的なアドバイスが多く、コスト最適化やコンプライアンス強化にも役立っています」と、研究開発部 運用統括チームの髙山玲央名氏は高く評価します。
ゲームフリークでは、ビルド環境だけでなく、ゲーム開発に欠かせないデータ分析基盤も AWS 上に構築しています。上述したように、ゲームの進化と、それにともなうゲーム開発の大規模化により、人力のテストプレイだけでは改善できないポイントが生まれるようになりました。Amazon OpenSearch Service を中核にゲームデータやプレイログを詳細に分析して、継続的なゲーム改善に努めています。
「オンプレミスの分析基盤からスムーズに移行でき、Amazon CloudWatch Logs と連携させることで運用しやすい環境を構築できました。日々、社内から数十万規模のリクエストがありますが、Amazon Kinesis Data Stream や AWS Lambda などの連携でリアルタイムに処理しています。ここまで大規模な分析環境を自社で構築するのは非常に困難です。AWS のマネージドサービスであれば、社内で運用している多数のサービスも、比較的容易に強化していくことができます」(髙山氏)
このほかにも同社は、内製ライブラリの共有・配信に AWS CodeArtifact、バッチ処理に AWS Lambda、コンプライアンス要件を充足するために開発する必要のあった独自ストレージサービスの仕組みを Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) と AWS Fargate そして Amazon Elastic File System (Amazon EFS) を組み合わせて構築したりと、開発支援機能も AWS で提供しています。
*各環境で使用されるソフトウェア ライセンスは、ゲームフリークの下で、それぞれの提供条件に準拠する形で運用しています。
変化に強い環境を構築
AWS によってゲーム開発に集中
ゲーム開発環境を AWS 化したことで、柔軟性・可用性は大きく向上しました。特に開発マシンの調達は、コロナ禍においては 2 か月もかかってしまうところが、AWSであれば 1 時間程度で用意できるようになりました。プロジェクトのデータが何倍に膨れ上がっても、クラウドであれば容量不足を心配する必要はありません。
「数年前、AWS の導入前には 1 タイトルの開発プロジェクトで 30 台ほどのマシンが稼働していました。最新のタイトルでは 50 台のマシンが必要になりましたが、最終的にはその 70% が AWS 上で稼働しています。マシンの故障に悩まされることもなく、ビルド環境の運用が非常に安定するようになりました。AWS のアドバイスはセキュリティにもおよび、S3 のバケットポリシーの記述法など具体的な改善ポイントを指摘してもらっています。クラウド上のデータ保護を含めて、安全運用の取り組みを進めているところです」(立原氏)
AWS で運用負荷を軽減したことで、ゲームフリークは人的リソースをゲーム開発に集中できるようになりました。立原氏は、「少数精鋭の環境チームでも大規模なプロジェクトを支えることができたのが最大のメリット」とし、オンプレミスシステムでは不可能だったと述べています。コロナ禍で出社を制限される中、ゲーム開発を支えることができたという点も重要な効果でした。
ゲームフリークでは、今後も家庭用ゲーム機やスマートフォンなどマルチプラットフォーム対応を推進していく計画です。オンプレミスのテストプレイ環境も課題の 1 つとして、AWS 化を検討している最中です。また、新しいシステムとして AI/機械学習を活用する計画があり、Amazon SageMaker をはじめとした AWS の AI サービスを活用すべく取り組みが進んでいます。
「今後もゲームの進化と共に、開発プロジェクトも大規模化していくと考えられます。そこで当社は、在宅勤務制度を今後も継続し、働く場所や座席などに縛らせずに自由に開発していくため、Amazon WorkSpaces などのサービスにも注目しています。AWSを最大限に活用し、よりいっそう楽しいゲームを作り上げていきたいですね」(立原氏)
立原 春木 氏
カスタマープロフィール:株式会社ゲームフリーク
- 設立:1989 年 4 月
- 従業員数:167 名(2021 年 8 月現在)
- 事業内容:ゲームソフトの企画・開発・販売
AWS 導入後の効果と今後の展開
- 1 時間でビルド環境を用意、稼働も非常に安定
- アカウントチームからの支援により、ゲーム開発にスムーズに導入
- Amazon SageMaker や Amazon WorkSpaces も活用を検討
ご利用中の主なサービス
Amazon EC2 Auto Scaling グループ
Amazon EC2 Auto Scaling グループ (ASG) は、類似する特性を共有する EC2 インスタンスの集合です。このグループは、フリート管理や動的スケーリング用の論理的なグループとみなされます。例えば、複数のインスタンスで動作する単一のアプリケーションがある場合、グループのインスタンス数を増やすことでアプリケーションのパフォーマンス向上を図ることができます。
Amazon EC2 スポットインスタンス
Amazon EC2 スポットインスタンスを使うと、AWS クラウド内の使用されていない EC2 キャパシティーを活用できます。スポットインスタンスは、オンデマンド料金に比べ最大 90% の割引料金でご利用いただけます。
Amazon Elastic Kubernetes Service
Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) は、フルマネージド型の Kubernetes サービスです。
Amazon ECS
Amazon Elastic Container Service (Amazon ECS) は、完全マネージド型のコンテナオーケストレーションサービスです。Duolingo、Samsung、GE、Cook Pad などのお客様が ECS を使用して、セキュリティ、信頼性、スケーラビリティを獲得するために最も機密性が高くミッションクリティカルなアプリケーションを実行しています。