「開発・運用パートナーや技術情報など、フルクラウド化に求められる環境の豊かさを評価し、AWS を採用しました。
また、AWS が持つ最先端技術に触れることで、IT 部門や人材が大きく成長できることにも期待しています。」

中山 高史 氏 J. フロント リテイリング株式会社 執行役 経営戦略統括部 グループデジタル戦略部長

J. フロント リテイリングは、小売業の枠を超えたマルチサービスリテイラーとしての成長と同時に、“お客様との生涯にわたるエンゲージメントを強めていく” ための仕組みづくりに力を入れています。その中核となる顧客基盤『ライフタイム・サービス HUB』の構築に際して、データ分析基盤やクライアント環境をアマゾン ウェブ サービス(AWS)で整備。分析データベースの 1 つである Teradata の移行も完了し、フルクラウド化に向けて歩みを進めています。


J. フロントリテイリングは、2007 年に大丸と松坂屋が経営統合した際に共同持株会社として設立されました。百貨店事業のほかパルコ事業や『GINZA SIX』などの不動産事業、クレジット金融、人材派遣、卸売など幅広い事業を展開するグループの運営を担っています。

持続的な成長を目指す同社は、ビジネス環境が急激に移り変わる時代に、中核である百貨店事業の継続だけでは生き残れないと判断。従来のビジネスにとどまらない “ 非連続な成長 ” に向けて、経営の舵を大きく切りました。

そうした成長を支えるのが、クラウドによるデジタル基盤の構築です。以前からビジネスに ICT を活用してきましたが、クラウドの活用により、グループのデジタルトランスフォーメーションを進め新しい風を吹かせたいと考えています。

その取り組みの一例が『ライフタイム・サービス HUB』という考え方です。従来の百貨店/小売事業において、お客様との接点はリアル店舗が中心となってきました。しかし、店舗内の体験は一人ひとりのお客様の人生においてはごく限られた時間に過ぎないため、物理的な場所にとらわれないお客様との接し方が重要になると、同社の執行役 経営戦略統括部 グループデジタル戦略部長の中山高史氏は語ります。

「ライフタイム・サービス HUB では、商品やサービスの提供時に取得される定型情報のみならず、お客様との会話やコミュニティを通じて得られる非定型情報も収集/活用します。そうしてお客様の生涯にわたるエンゲージメントを強め、永く深い関係性を築くことで、人生に寄り添った新しい商品やサービスを提供していきます。」

新しいお客様体験の提供や営業施策の高度化といった新しい施策は、スピードが勝負となります。多角的な新規事業を素早く開発するためには、安価で安全なシステムをすばやく導入できる仕組みが不可欠でした。そこで J. フロントリテイリングでは、グループのシステムは原則としてクラウドで開発/運用する方針を掲げ、現行システムの老朽化対策や新規サービスの構築を AWS で進めています。ライフタイム・サービスHUB のデータ基盤も AWS 上に構築されています。

IT インフラの中核として AWS を選定した理由について、中山氏はまず実績を挙げました。すでに多くの企業がミッションクリティカルな基幹系システムを中心に利用しており、安定性/堅牢性が十分に実証されています。柔軟性や拡張性に富んだマネージドサービスが充実しており、多様な選択肢から最適な手法を選べるというのもポイントでした。さらに中山氏は技術やサービスのみならず、クラウドサービスを取り巻く環境の重要性を指摘します。「AWS は開発や運用を担うパートナーが他社サービスと比べて圧倒的に多く、AWS 本体と連携してさまざまなニーズに応えてくれます。技術情報も非常に豊富で、たいていのことはインターネットで調べて理解することができます。このような環境が豊かであることは、ユーザー企業にとって非常に重要です」

優秀なパートナーの紹介を受けられたこと、迅速に PoC を実施できたことも、AWS を採用した利点だったと語る中山氏。オンプレミスからクラウドへの移行において、最も気がかりなパフォーマンスをしっかりとテストできたことも、円滑な移行/構築につながった要因の 1 つだといいます。

J. フロントリテイリングは、AWS 活用の第一弾としてデータ活用を支える分析基盤の刷新を手がけました。また、既存の POS データ分析用データウェアハウス(DWH)をAWS へ リ フ ト す る 手 法 を 採 用 し ま し た 。既存 DWH の技術やライセンスに関するハードルも、AWS やパートナーのサポートを受けて乗り越えられたといいます。なお将来的には Amazon Redshift の活用も視野に入れています。新規システムはすべて AWS 上で構築しており、個別のデータベースもリフト&シフトで順次移行しています。

さらに、Amazon WorkSpaces と Chromebook によるクライアント環境により小売の現場スタッフが BI ツールを用いてデータ基盤へアクセスできる環境を整備し、働き方改革に取り組んでいます。2019 年時点で約 1,000 台を移行済みで、2020 年度には約 3,000 台の移行を完了する計画です。業務のペーパーレス化を推進するとともに、システムのセキュリティを担保したBYOD(Bring Your Own Device)の実現やテレワークの環境整備を進めています。Amazon WorkSpaces を利用している中山氏自身も、いつでもどこからでも自身のデスクトップにアクセス可能であり、使い勝手がこれまでと変わらない軽快なデスクトップであることを評価しています。

AWS 導入によってリードタイムを短縮できるようになり、バックアップや DR などの可用性を高める仕組みやセキュリティ対策も標準機能で容易に実装できるようになりました。さらに中山氏は、IT 人材育成やカルチャーの醸成にも効果があると語ります。「従来のオンプレミス環境に慣れていた IT 部門のメンバーにとって、クラウド技術の習得は相当なカルチャーショックとなりました。それでも現在は前向きに、AWS の最先端技術に対応できる人材の育成や獲得に取り組んでいます。ベンダー任せにできないクラウドサービスは、IT 部門の成長にもつながります。テクノロジーリーダーのAWS が採用すると決めた技術は必ず普及するはずですから、ユーザーもキャッチアップしないわけにはいきません。常に最新の技術に触れ、メンバーが成長できることも、AWS を採用した効果の一つだととらえています。」(中山氏)


 

将来的に中山氏は、旧来のソフトウェアライセンスおよびライセンスビジネスからの脱却を見据えています。また J. フロントリテイリングでは、コンテナやサーバーレスアーキテクチャなどの最新技術を学んでAWS を理解し、担当できる人材を増やしていきたいと考えています。今後は完全なクラウド化に向け、オンプレミスで稼働している基幹系システムの移行を検討中です。

「基幹系システムのクラウドシフトは、非常に難しいプロジェクトになることが予想されます。AWS のプロフェッショナルサービスを最大限に活用し、できるだけ早い段階で成し遂げられるように努めたいと考えています。AWS には、これからも私たちのビジネスに寄り添う力強いパートナーとして、よい意味でのベンダーロックインとなるサービスを提供してくれるよう期待しています。」(中山氏)

クラウド活用、デジタルトランスフォーメーションの推進を通じて、“マルチサービスリテイラー”としての機動力を高める J. フロントリテイリング。グループ全体で進む新たなサービス展開から、ますます目が離せません。

jfr_nakayama

中山 高史 氏


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