快適な空の旅を支えるシステムに AWS を採用
236 を超える厳しいセキュリティ基準をクリアし安全かつスピーディな構築を実現
2021
JAL グループでは、2017 ~ 2020 年度の中期経営計画において、目指す姿「JAL Vision」を掲げ、「世界の JAL に変わります」、「一歩先を行く価値を創ります」、「常に成長し続けます」の実現に向け、取り組みを進めています。
これを IT の面から後押しするのが日本航空株式会社の IT 企画本部と株式会社 JAL インフォテックです。両社は JAL グループが運航する航空機の管理や機体の整備、旅客サービスなど、事業のさまざまな場面で活用するシステムを刷新すべく、新たなクラウド基盤「CIEL (シエル)」の構築プロジェクトを展開。AWS 環境においてクラウド API 基盤の標準化や顧客対応システムの刷新を実現しました。
当初の想定を超えたスピードでクラウド化が進み、セキュリティを確保しながらコスト削減を実現しました。これからも新しい技術を活用し、さらなる効率化と利便性向上を目指していきます
栗田 和博 氏
日本航空株式会社
IT 企画本部 IT 運営企画部 部長
安定と成長を両立するためのハイブリッドクラウド基盤「CIEL」
航空業界のグローバルな変化に対応し「世界で一番お客さまに選ばれ、愛される航空会社」であり続けることを目指す日本航空株式会社(以下、 JAL)。2016 年、JAL の IT 企画本部と、JAL グループの IT 中核企業である株式会社 JAL インフォテックは、事業システムの土台となるクラウド基盤の構築プロジェクトに着手しました。このプロジェクトの名称はフランス語で「空」を意味する「CIEL」とされ、 2018 年 12 月から運用が開始されています。
CIEL は、仮想化技術などを用いてサーバーやストレージ、ネットワークをオンプレミス環境と外部のクラウド基盤に展開しながらも、シームレスな連携を実現し、品質・スピード・コストを柔軟に管理できることを目指しました。
ハイブリッドクラウド基盤である CIEL は大きく 3 つに分かれます。VMware の仮想化をベースとしたプライベートクラウドであり、自社データセンター(オンプレミス)で稼働する「CIEL/J」、CIEL/J と同構成で外部のホスティングサービスを活用した「CIEL/D」、 そして、クラウドのメリットを最大限に活用するためにアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用し構築した基盤である「CIEL/S」から構成されています。
「顧客最適化や事業継続のためにも、スピードやコスト削減、柔軟性に長けたクラウド活用を推進したいと思い、CIEL/S を企画しました。老朽化したシステム基盤をオンプレミスに更改するのではなく、クラウドを利用すると決めました」と語るのは、JAL の IT 企画本部 IT 運営企画部 部長の栗田和博氏です。
「従来のオンプレミス環境では 2008 年から仮想化技術による基盤が構築されていました。この場合、新しいシステムの需要が生じると、ネットワーク、サーバー、ストレージ、監視、ログ、バックアップなどの仕組みをそれぞれ準備しなければなりません。一方、同じ要件でのクラウドでの構築はより素早く行えるため、そのメリットを享受したいと考えました。また、データの活用が不可欠なプロジェクトが増えたため、インフラの需要予測が難しく、スピード感と柔軟性をもったクラウド基盤の構築ニーズが高まっていました。従来システムも健在だったことから、事業継続も考慮し、ハイブリッドクラウド基盤でのシステム連携を選択しました」
JAL の持つノウハウを AWS 上にていねいに展開
クラウド基盤の選定にあたって、各社への提案依頼の策定から CIEL プロジェクトを担当したのが、株式会社 JAL インフォテック システム基盤サービス事業本部システム基盤事業部共通サービス基盤部の藤嶋博氏です。「提案依頼の要件数は 236 ありました。いくつかのクラウドベンターに問い合わせしたところ、最も詳しく回答いただいたのが AWS でした。セキュリティ面や障害発生時にも自分たちで状況を切り分けできて、早期に復旧できる点など、JAL グループとして不可欠な要件を、AWS のサービスとどう関連づけていくか、その手法について詳細な説明があり、これを評価しました」と藤嶋氏は選定の理由を話します。
CIEL の構築プロジェクトに携わり、現在ではさらにクラウド基盤を有効活用していく役割を担っている、株式会社 JAL インフォテック システム基盤サービス事業部 システム基盤事業部 ハイブリッドクラウド基盤部 ハイブリッドクラウド運営グループの大嶋将志氏は、「AWS のサービスはバラエティに富んでおり、パートナーが多い点も魅力的でした」と補足します。
CIEL/S の導入は 2018 年 2 月頃に開始され、AWS プレミアコンサルティング パートナーの日本電気株式会社(以下、NEC)が導入支援を担当し、AWS プロフェッショナルサービスのコンサルティング支援も得ながら、2018 年 12 月には JAL グループのクラウド基盤としてリリースされました。
当初 JAL からは、従来から持っていたシステム監視、バックアップなどの要件の AWS 上での実現方法の提案依頼があり、NEC は、 JAL が持つこれらのノウハウをていねいに噛み砕いて AWS 上に展開、運航管理や機体整備などのシステムを構築可能としました。
厳しいセキュリティ要件の顧客対応システムを AWS に構築
2019 年 3 月 CIEL/S に顧客情報を新たに扱うシステムを展開することが決定しました。予約から搭乗まで快適な空の旅を支援するシステムであり、顧客情報の漏洩や改ざんが生じてしまうと社会的にも大きな影響が懸念されるため、 オンプレミス外での運用については JAL 社内でも何度も議論がなされました。
JAL の IT 企画本部 IT 運営企画部 技術戦略グループ長の庄司稔氏はセキュリティ要件への向き合い方につき、「AWS プロフェッショナルサービスの支援を受け、クラウド上のデータ管理の不安をどう解決するかなど、AWS のセキュリティに関する考え方を説明していただき、理解を促進しました」と話しました。
具体的な提案は、システムごとにアカウントを分けて、アクセス制御も施し、セキュリティを高めるという方法でした。「これは大きなヒントになりました。現在は、同じシステムの開発と本番の環境のアカウントを分けています。セキュリティレベルを落とさずに、クラウド環境に適用できるように既存のガイドラインの改定も行いました」(藤嶋氏)
クラウド人財を育成しデジタル変革を加速
CIEL/S での AWS 導入効果について評価している点の 1 つが、コスト面です。「災害復旧に備え、環境を多重に構築する選択肢が増えたことは大きなメリットです。また、需要の増減に応じて柔軟にボリュームを調整できるため、間接部門が利用するシステムは 平日 9 時から 17 時までの動作とするだけで、運用コストを 50 %低減することができました。今後は、お客さま体験の向上のため、データ分析などの先端的な技術を活用したいと考えています」(庄司氏)
クラウド活用はコスト削減だけでなく、技術担当者の意識改革にも役立っているといいます。「これまでサーバー、ミドルウエア、ネットワークといった各部門で個別に業務を進めていたメンバーが、部門を超えて集まることが増え、お互いの距離が縮まりました。CIEL を活用し、クラウドのメリットを最大化する意識が根付いてきました」(大嶋氏)
また AWS のサービスを使った新しい取り組みとして Web カメラと Amazon Rekognition を用いた空港混雑度の可視化などが始まっています。こうした動きを踏まえ、栗田氏は次のように語ります。
「当初の想定を超えてクラウド化が進み、開発スピード向上とコスト削減を実現できました。やってよかったと実感しています。IT 部門の我々自身が考え方を変え、新たなテクノロジーを活用し、JAL グループのデジタル変革を支える IT 基盤の安全かつ効率的な構築を加速していきます」
栗田 和博 氏
庄司 稔 氏
大嶋 将志 氏
藤嶋 博 氏
カスタマープロフィール:日本航空株式会社
- 設立年月日:1951 年 8 月 1 日
- 従業員数: 13,869 名(2020 年 3 月現在)
- 事業内容:定期航空運送事業及び不定期航空運送事業、航空機使用事業、その他附帯する又は関連する一切の事業
AWS 導入後の効果と今後の展開
- IT リソースの柔軟な運用によるコスト削減を実現
- 人財のクラウドへの理解が促進され、DX を支える IT 基盤の素早い提供が可能に
- データ分析による顧客体験向上など、先端技術活用に期待
AWS プレミアコンサルティングパートナー
日本電気株式会社
NEC は、安全・安心で効率・公平な都市実現を支える NEC Safer Cities と、人・モノ・プロセスをバリューチェーン全体で共有し新たな価値を生み出す NEC Value Chain Innovation の提供に取り組んでいる。プレミアコンサルティングパートナーとしての実績、経験を活かし、お客様のデジタルトランスフォーメーションの実現をサポートしている。
ご利用中の主なサービス
AWS プロフェッショナルサービス
AWS プロフェッショナルサービスは、AWS クラウドを使用して期待するビジネス上の成果を実現するようお客様をサポートできる、専門家からなるグローバルチームです。当社はお客様のチームおよび選任された AWS Partner Network (APN) のメンバーと協力し、エンタープライズクラウドコンピューティングの取り組みを実行します。
Amazon EC2
Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、安全でサイズ変更可能なコンピューティング性能をクラウド内で提供するウェブサービスです。ウェブスケールのクラウドコンピューティングを開発者が簡単に利用できるよう設計されています。
Amazon EC2 Container Service
Amazon EC2 では、数百のインスタンス全体で 1 個から数千個までコンテナを拡張できます。アプリケーションの実行方法がこれまでより複雑になることはありません。アプリケーション、バッチジョブ、マイクロサービスなどをすべて実行できます。Amazon ECS では、インフラストラクチャの複雑さがすべて解消されるため、お客様はコンテナ化アプリケーションの設計、作成、実行に集中できます。
Amazon Aurora
Amazon Aurora は、MySQL および PostgreSQL と互換性のあるクラウド向けのリレーショナルデータベースであり、従来のエンタープライズデータベースのパフォーマンスと可用性に加え、オープンソースデータベースのシンプルさとコスト効率性も兼ね備えています。