約 4,000 万
データレイクに蓄積している顧客口座数
約 500TB
データレイクのデータ量
約 80TB
DWH のデータ量
2 倍以上
1 年間のデータレイク、DWH のデータ増加量
概要
国内外のさまざまなビジネス分野で金融サービスを提供する株式会社三菱UFJ フィナンシャル・グループ(MUFG)。経営戦略に DX を掲げる同社は、グループ内のデータを格納するデータ利活用プラットフォームにアマゾン ウェブ サービス(AWS)を採用。第一段階として三菱 UFJ 銀行の約 4,000 万の顧客口座情報を含む各種システムのデータ 500TB を一元的にデータレイクに蓄積。BI ツールを銀行本部や営業店に展開し、ビジネスへの活用を開始しました。
ビジネスの課題 | オンプレミス環境で運用している分析系システムのデータ統合へ
「世界が進むチカラになる。」をパーパスに、変革への挑戦を続ける MUFG。2021 年度からの中期経営計画では、企業変革のテーマに DX を掲げ、デジタルの利便性・革新性と安心・安全を兼ね備える「金融・デジタルプラットフォーマー」となることを宣言しています。
MUFG がデータ利活用プラットフォームの構築を最初に検討したのは 2015 年のことでした。その後、「デジタライゼーション戦略」を構造改革の柱としたことからデータ利活用プラットフォームの構築構想を本格化。最初に三菱 UFJ 銀行へ先行導入することにしました。「2018 年当時、三菱UFJ 銀行内には経営管理システム、リスク管理システムなど分析・報告系システムが20 近くありました。多くのシステムがオンプレミス環境で運用されているため、個別にデータを集めなければならず、蓄積できるデータは数年分に限られていました」と経営企画部 経営基盤改革室 調査役の桑島透氏は振り返ります。
課題解決に向けて MUFG は、構造化データ、非構造化データを含めて行内のあらゆるデータを蓄積するデータレイク、加工データを蓄積するデータウェアハウス(DWH)、データを可視化する BI ツールからなるデータ利活用プラットフォームの構築に着手しました。経営企画部 経営基盤改革室 次長の藤咲雄司氏は「利活用されないデータ収集・蓄積はコストです。データ収集や整備を進めつつも、現在あるデータをまず使うことを考えました。銀行本部から営業店まですべての行員が、データから新たなインサイトを得て、スピーディーな意思決定ができる環境を整備することにしました」と語ります。
データ利活用プラットフォームのリリースにより、今まで見えなかった景色が見えるようになり、データドリブン経営へとシフトすることが可能になりました”
藤咲 雄司 氏
株式会社三菱 UFJ 銀行 経営企画部 経営基盤改革室 次長
ソリューション | 構造化・非構造化データを含む全社横断的なデータプラットフォームを構築
インフラ基盤は、2017 年の始めに同行が AWS の全面採用を宣言していたこともあり、AWS に決まりました。ところが、保有するデータをクラウド上で管理することに、情報セキュリティ部門から懸念の声が上がりました。そこで、プロジェクトチームは、クラウド利用におけるセキュリティリスク要素を一つひとつ解消しながら、情報セキュリティ部門と合意形成を図りました。グループの IT 会社である三菱 UFJ インフォメーションテクノロジー(MUIT)データ戦略一部の平林哲氏は「外部からのサイバー攻撃、内部からの不正アクセスなどのリスクを洗い出し、AWS 上でのセキュリティ実装を十分に検討した上で、クラウド上でのデータ活用の安全性を説明することで、合意を得ることができました」と語ります。MUIT データ戦略一部の松下摂氏は「今回設定したセキュリティルールや実装した機能は、結果として三菱 UFJ 銀行がクラウド活用する際のセキュリティ基準となり、後続のプロジェクトがスムーズに進む礎になりました」と振り返ります。
2019 年 10 月にデータレイクと DWH からなるビッグデータ基盤を構築。2020 年 10 月に BI ツールを本部向けにリリース。2022 年 12 月には BI ツールを営業店まで展開して、誰でもダッシュボードを見ながらデータ活用ができるようにしました。
データレイクは Amazon Simple Storage Service (Amazon S3)、DWH は Amazon Redshift を採用しています。
「段階的に機能強化を図りました。2022 年にはリアルタイムのデータ収集に Amazon Kinesis を採用したほか、現在は ETL ツールの AWS Glue を検証中です。今後、Amazon Redshift Serverless や Redshift の Data sharing などで進化させていく予定です」(松下氏)
現在、データ利活用プラットフォームには、三菱 UFJ 銀行が保有する 4,000 万の顧客口座情報や過去 10 年分の取引明細などの構造化データと、口座振替依頼書の画像データなどの非構造データを蓄積しています。データ量は、2022 年 12 月時点でデータレイクが約 500TB、DWH が約80TB に達しています。
「直近 1 年間のデータ増加量は、データレイクで約 300TB、DWH が約 40TB と、2 倍以上のペースで増えています。データを大量に蓄積しても利用できないと意味がないため、データレイク上のデータにメタ情報を付与し容易に検索・抽出できるよう、Web ベースのポータルサイトを構築しています。ユーザーはポータルサイト上で、与えられた権限に応じて分析に必要なデータを検索し、ダウンロードしたり Amazon Redshift に移すことができます。また社内の各システムとのデータ HUB の役割も果たしています」(平林氏)
導入効果 | 意思決定に必要なデータを取得し、データドリブン経営へシフト
データ利活用プラットフォームの構築により、三菱 UFJ 銀行におけるデータ利活用は大きく進みました。
「全店、全顧客のデータの横断的な検索が可能になった結果、過去 1 年分の入出金明細から法人を抽出して業種別に分析するといったことも可能になりました。コロナ禍の最中、業種別の前年比を分析するレポートを作成した際には、経営陣からも高く評価され、データ利活用に向けた流れが加速しました」(桑島氏)
営業店では従来、本部から還元されたデータを各店で加工し、顧客プロファイルや前年度比などを分析していましたが、営業店用のダッシュボードが提供されたことで、データ加工・集計作業の削減と、セールス業務への集中が可能になりました。
「小規模な営業店では、本部から還元されたデータの加工・集計作業が負荷となっていました。営業を支援する本部部署と協働し、ダッシュボードによる情報還元を順次開始。KPI の進捗状況など、支店長・課長・担当が同じデータを、同じタイミングで、同じ粒度で把握し、合理的かつ迅速な意思決定が図られ始めていると聞いています。まだ序章に過ぎませんが、全行員で目指すデータドリブン経営へ一歩踏み出すことができました」(藤咲氏)
銀行の本部業務の高度化にも貢献しています。商品開発から営業支援施策、経費分析や収益分析、またリスク管理データの切り口を変え営業支援ダッシュボードとして提供する等、さまざまな活用を進めています。
「ようやく種まきが終わったというのが実感です。今後、経営陣から本部、営業店まで、一つひとつは小さくても多くの成功体験を積み重ねていくことで、データ利活用の文化が根付いていくことを目指していきます」(藤咲氏)
データドリブン経営の推進に向けて、BI に関する人材育成プログラムや関連資格制度の拡充なども並行して整備。次のステージとして、AI シグナルサービスや意思決定の先にあるアクション自動化などを可能にする基盤と態勢の整備に取り組む計画です。
「本部や営業店の要望を受けて対応するのではなく、技術部門や IT 部門がニーズを先読みして新たなサービスを開発し、積極的にユーザーに展開していきます。将来展望としては収集するデータの範囲を拡大しながら、グループ会社への横展開を構想しています」(藤咲氏)
企業概要 株式会社三菱 UFJ 銀行
株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループ傘下の都市銀行。2021 年度-2023 年度の中期経営計画は「挑戦と変革の 3 年間」と位置付け、戦略の 3 本柱に「企業変革」「成長戦略」「構造改革」を掲げている。DX 戦略では、オンラインチャネルの機能拡充を図るほか、金融・デジタルプラットフォーマーへ向けた新たな取り組みを加速させている。
藤咲 雄司 氏
桑島 透 氏
松下 摂 氏
平林 哲 氏
ご利用中の主なサービス
Amazon S3
Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。
Amazon Redshift
Redshift では、データウェアハウス、運用データベース、およびデータレイクにあるペタバイト規模の構造化データと半構造化データを、標準的な SQL を使用してクエリすることができます。
Amazon Kinesis
Amazon Kinesis でストリーミングデータをリアルタイムで収集、処理、分析することが簡単になるため、インサイトを適時に取得して新しい情報に迅速に対応できます。
AWS Glue
AWS Glueは、分析、機械学習、アプリケーション開発のためのデータの検出、準備、結合を簡単に行える、サーバーレスデータ統合サービスです。
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あらゆる業界のさまざまな規模の組織が AWS を活用してビジネスを変革し、日々ミッションを遂行しています。当社のエキスパートにお問い合わせいただき、今すぐ AWS ジャーニーを開始しましょう。