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2024 ニンテンドーシステムズ

ニンテンドーシステムズ、AWS のマネージドサービスを活用した「プラットフォームエンジニアリング」で生産性向上を実現

ソフトウェアおよびインターネット

概要

任天堂株式会社は、娯楽をお客様にお届けしやすいシステムの構築するため、2023 年 4 月にニンテンドーシステムズ株式会社を設立しました。ニンテンドー e ショップのプラットフォームのモダナイゼーションも進めるこの新しい会社は、2020 年にプラットフォームエンジニアリングを採用しました。ニンテンドーシステムズは、顧客志向のシステムを開発するための社内向けの共通プラットフォームをモダナイズするため、Amazon Web Services (AWS) マネージドサービスを選択しました。AWS のテクノロジーにより、ニンテンドーシステムズは、アクセスの急増にもセルフサービス方式で対応できるシステムを社内で開発できるようになりました。

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AWS re:Invent 2023

本事例の内容は、AWS re:Invent 2023 の「Modernization of Nintendo eShop: Microservice and Platform Engineering」セッションで発表していただきました。詳細については、動画をご視聴ください。

機会・ソリューション・成果

機会

サービスの成長を支えるために、アーキテクチャをモダナイズ

ニンテンドーシステムズは、ニンテンドーアカウントやゲームニュースなどのニンテンドーネットワークサービスの開発と運用を担っています。ユーザーがインターネット経由でソフトウェアをダウンロードしたり、追加コンテンツを購入したりできるオンラインストアである Nintendo eShop は、同社が提供するサービスの 1 つです。

2011 年にサービスの提供を開始した Nintendo eShop は、現在、世界中で 1 億 3,000 万台以上の販売実績を持つ Nintendo Switch 向けに、40 か国以上で 24 時間年中無休のサービスを提供しています。任天堂のデジタルコンテンツの売上は 2017 年から 2023 年の間に 10 倍以上に増加し、現在では任天堂のゲームソフトの売上高全体に占めるデジタル購入の比率は 50% 近くが達しています。

任天堂は当初、eShop プラットフォームをオンプレミスで運用していましたが、ホリデーシーズンの商戦期中の急激なユーザー増加に対応するため、2015 年に AWS に移行しました。「当社は、Oracle データベースを利用するためのマネージドサービスである Amazon RDS for Oracle と、社内で利用実績があったことを理由として、AWS を選択しました」とニンテンドーシステムズのシステム開発部チーフである古髙潤一氏は述べています。

AWS への移行によりスケーリングの問題が解決されたにもかかわらず、任天堂のアーキテクチャは依然としてモノリシックなままでした。そのため、Amazon Relational Database Service (Amazon RDS) インスタンスのサイズに対する制限により、アクセスが集中した場合、eShop サービス全体のスケーラビリティが制限されていました。

また、アプリケーション開発の面では、新たに追加された機能や、グローバルサービスとして各国の法令要件に対応しなければならなかったことから、インフラストラクチャはますます複雑になり、ブラックボックス化が進んでいました。ニンテンドーシステムズのシステム開発部マネージャーである小椋信弥氏は次のように述べています。「時間が経つにつれて、以前のロジックを理解しているエンジニアが少なくなっていきました。機能強化と生産性向上に至る上での障壁を打ち破るには、アーキテクチャのモダナイゼーションが必須でした」。

ソリューション

プラットフォームエンジニアリングアプローチの構築

このモダナイゼーションプロジェクトでは、ニンテンドーシステムズは、長期的な保守性、生産性の向上、リリースサイクルの高速化、コスト効率の高いスケーラビリティを実現するために、マイクロサービスアーキテクチャを採用してサービスを分離しました。従来、各サービスはアプリケーション開発者と DevOps エンジニアを 1 組として開発され、コンプライアンスとガバナンスの観点に基づいて両者の役割が区別されていました。DevOps エンジニアは、デプロイとアーキテクチャの変更を担当していました。

同社は、効率的な開発と管理のためにプラットフォームエンジニアリングアプローチに切り替えました。このアプローチは、セルフサービス型の機能を活用してインフラストラクチャの運用を自動化し、アプリケーション開発者の作業をよりスムーズかつ生産的なものにします。

「DevOps エンジニアが不足していることを踏まえると、アプリケーション開発者が自律的にアプリケーションとインフラストラクチャを開発できるようにすることで、開発の生産性を高める仕組みを作る必要がありました」と小椋氏は説明します。「しかし、アプリケーション開発者によるエンドツーエンドのデプロイは現実的ではありません。そこで、アプリケーションデベロッパーの作業負荷を軽減するために、セルフサービス型の共通インフラストラクチャを提供するプラットフォームエンジニアリングを採用することにしました」。

プラットフォームエンジニアリングの鍵となったのは、アプリケーションフレームワーク、コンテナオーケストレーター、CI/CD (継続的インテグレーション/継続的デリバリー) を含む新しい「内部開発者プラットフォーム (IDP)」でした。ニンテンドーシステムズでは、Amazon ECS on AWS Fargate マネージドサービス上でアプリケーションを実行するプラットフォームを運用し、開発者は IDP を利用してアプリケーションとインフラストラクチャを構築します。

「アプリケーション実行インフラストラクチャの候補として、Amazon ECS と Amazon Elastic Kubernetes Service (Amazon EKS) を比較しました」と古髙氏は述べています。「ガバナンスを考慮して、サービスごとに専用の AWS アカウントを作成しましたが、すべてのアカウントで Kubernetes を運用するのは困難でした。Kubernetes に精通していないデベロッパーでもコンテナ内でアプリケーションを簡単に構築および運用できるようにするために、Amazon ECS on AWS Fargate プラットフォームを選択しました」。

成果

アプリケーションおよびインフラストラクチャサービスの立ち上げが迅速化

プラットフォームエンジニアリングの取り組みにより、アプリケーション開発者と DevOps エンジニアの意識改革や、IDP を構成するコンポーネントの整備が促進されました。2023 年 5 月の『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』の発売に向けて、アプリケーション開発者は、IDP コンポーネントを活用してセルフサービス方式で開発に取り組み、アプリケーションプラットフォームとして Amazon ECS on AWS Fargate、データベースとして Amazon DynamoDB、デジタル著作権管理のために AWS CloudHSM を活用しました。

アプリケーション開発者がゲームの発売予測と予約注文に基づいて Amazon ECS を 120 タスクまでスケールし、AWS CloudHSM インスタンスをスケールして、Amazon DynamoDB のキャパシティモードを変更したおかげで、システムは発売日のアクセスピークを乗り切ることができました。

「AWS を活用したプラットフォームエンジニアリングによるアプローチは開発の効率化につながり、アプリケーション面、インフラストラクチャ面の双方で新しいサービスの立ち上げが早くなり、開発期間が短くなったことを実感しています」と小椋氏は述べています。「今後もすべてのサービスチームでプラットフォームエンジニアリングを推進していきます」。

次のステップとして、ニンテンドーシステムズは Amazon ECS Service Connect と Amazon VPC Lattice を採用し、アカウント間および VPC 間の接続を簡素化することでセルフサービス化をさらに推進する予定です。

古髙氏は次のように述べています。「AWS はアーキテクチャ選定の段階から十分な情報を提供してくれました。開発中にアーキテクチャレビューを依頼したときには数々のアドバイスをいただき、ダイレクトチャンネルを通じて多くの技術的な質問にもご回答いただきました。AWS マネージドサービスは、セルフサービス開発に必要不可欠です。今後も引き続き AWS の新機能を活用して、サービスプラットフォームを改善していきます」。

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AWS を活用したプラットフォームエンジニアリングによるアプローチは開発の効率化につながり、アプリケーション面、インフラストラクチャ面の双方で新しいサービスの立ち上げが早くなったことを実感しています

小椋 信弥 氏

ニンテンドーシステムズ システム開発部 マネージャー

アーキテクチャ

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取組みの成果

  • 120 - 力を入れているゲームの発売日における Amazon ECS タスクの数
  • 10 倍 - 2017 年から 2023 年にかけてのデジタルコンテンツの総売上の伸び率
  • プラットフォームエンジニアリングによる開発の効率化
  • アプリケーション開発者によるインフラストラクチャの開発とデプロイのセルフサービス化
  • マネージドサービスによるアプリケーション開発者の運用ワークロードの軽減

 

ニンテンドーシステムズ

ニンテンドーシステムズは、任天堂の娯楽をユーザーに届けるためのシステム開発を目的として、任天堂と株式会社ディー・エヌ・エーのエンジニアチームにより 2023 年 4 月に設立されました。社員は、さまざまな強み、任天堂の斬新さとディー・エヌ・エーの技術に対する深い知識、独創性と柔軟性を大切にしながら議論を重ね、チームでしか実現できないすばらしい成果やシステムを生み出すことを目指しています。

本事例のご担当者

小椋 信弥 氏

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古髙 潤一 氏

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