Quantic Dream 導入事例

Quantic Dream は、1997 年にパリで設立された、受賞歴のあるゲームデベロッパ・パブリッシャ・モーションキャプチャスタジオです。インタラクティブなストーリーテリングに重点を置いた AAA ゲームを作成するために設立された Quantic Dream は、Heavy Rain、Beyond: Two Souls、Detroit: Become Human などのプレイヤーの選択によってストーリー展開が大きく変わるナラティブゲームの制作で知られています。

Quantic Dream は、COVID-19 の爆発的感染によりパリの本社を一時的に閉鎖するよう求められたとき、採用の機会を広げ、世界中の人材と連携するためのクラウドワークステーションへの移行をすでに検討していました。突然、デベロッパー、アーティスト、アニメーター、サウンドエンジニアによる同スタジオ独自のチームは、リモートで作業およびコラボレーションをできることが必要になりました。

これを実現するために、Quantic Dream はいくつかの大きな障害を克服しなければなりませんでした。数十人に及ぶ従業員の家にハードウェアを再分配することは現実的ではなく、全員がスタジオの内部インフラストラクチャにリモートからアクセスすることは、ネットワークのボトルネックを引き起こし、システムの能力を上回るリスクがありました。

そのため、スタジオのアーティストチームを含む多くの従業員は仕事ができませんでした。「私たちのアーティストはプロ仕様のハードウェアにアクセスする必要があったので、その時点では完全な作業をすることができませんでした。これは明らかに大きな問題でした」と、Quantic Dream の CTO である Jean-Charles Perrier 氏は言います。

これは、Quantic Dream が速やかに解決策を考え出さなければならないことを意味しました。Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) G4dn インスタンス、NICE DCV、および AWS Lambda を使用するカスタム構築のサーバーレスバックエンドを組みわせることで、Quantic Dream はわずか 2 週間でリモートワークステーションをデプロイし、チームが優れたプレーヤー体験を開発し続けることを可能にし、さらに長期的な採用と成長の機会も拡大したのです。

2019 年に、Quantic Dream は中国のゲームパブリッシャーである NetEase と提携しました。Nasdaq 市場に上場している同社は、スタジオの少数株主でとなり、共同投資家である David Cage 氏と Guillaume de Fondaumière 氏が会社を発展および拡大させることができるように、新たな投資を行いました。そして、高品質で革新的なゲームプレイを提供するという取り組みを継続するために、Quantic Dream は大規模な採用活動を開始したのです。同チームが最初にリモートワーカー用のクラウドベースのワークステーションについて AWS に相談するようになったきっかけは、人材プールを広げたいというこの願望でした。

「私たちは、パリにあるスタジオの物理的な範囲に限定されるのではなく、他の国々から才能を引き付けてグローバルな魅力を広げたいと考えていたので、クラウドソリューションについて長い間検討していたのです」と、Perrier 氏は言います。「ただし、知的財産を保護する方法や、スタジオベースのワークステーションへのアクセスを効果的かつ安全に許可する方法についても考慮する必要があります。」

ヨーロッパがコロナウイルスに襲われた初期の段階で、オンサイトインフラストラクチャの一部をクラウドに転送する可能性がありました。フランス政府が封鎖措置を実施しようとしていたので、Quantic Dream はほぼ一晩でパリのオフィスを閉鎖しました。

リモートでの作業が最優先事項となったため、Perrier 氏と IT チームは、チーム全体が自宅で作業できるようにする技術的な解決策を見つけようと競いました。

Quantic Dream のチームは、現状のネットワーク構成を使用してスタジオ内のワークステーションへのアクセスを提供するだけでは、会社のネットワーク接続の限られた帯域幅に過負荷がかかり、不十分であることにすぐに気付きました。「全員が Quantic オフィスから完全な 60 FPS 4K でストリーミングする能力はなかったのです」と、Perrier 氏は説明します。

Quantic Dream チームの強みの 1 つは、独自の独自のエンジンやテクノロジーを構築できる能力です。AWS と連携したことで、Perrier 氏と彼のチームは、Amazon API Gateway と AWS Lambda を活用して独自のクライアントおよびサーバーレスバックエンドを構築できるようになりました。これにより、Amazon EC2 G4dn インスタンスで実行されているワークステーションへの接続が容易になりました。

クライアントがバックエンドに接続すると、Lambda 関数がユーザーに適したワークステーションを見つけ、停止している場合はそれを起動し、IP アドレスを照会します。さらに、リモートデスクトップおよびアプリケーションストリーミングをクラウドまたはデータセンターから任意のデバイスに安全に配信するリモートディスプレイプロトコルである、NICE DCV ストリーミングを使用してユーザーをワークステーションに自動的に接続します。

チームは、RDP、Parsec、Teradici などの多数のストリーミングプロトコルをテストしたうえで、NICE DCV を選択しました。Perrier 氏は、「ゲームをテストし、3D アセット作成ソフトウェアを使用しているアーティストに良いフィードバックを提供するために必要な高解像度と高速、低レイテンシーのストリーミングとして NICE DCV ソフトウェアを選択しました」と説明します。 さらに彼は、「グラフィックスのパワーと画像のストリーミングの両方に関して、高い品質が必要です。画面上で何かを動かすたびに遅延を発生させたくないのです」と付け加えます。

Quantic Dream の場合、Perrier 氏が説明するように、NICE DCV には追加のメリットもあります。「NICE DCV は、あらゆるゲーム開発スタジオに不可欠なデュアルスクリーン作業をサポートしています。また、USB デバイスへのアクセスも可能になりました。これは、私たちにとって重要なポイントでした。私たちのアーティストは、Wacom のようなグラフィックタブレットや非常に特殊なハードウェアで仕事をしています。」

クラウドワークステーションへの切り替えは、ロックダウンの直後には不可能であった、Quantic Dream のアーティストが作業を続けることを可能にする迅速な方法となりました。

「非常に柔軟性があります。AWS の主な利点は、3 つの異なるプロバイダーを同期する必要がなかったことです」と、Perrier 氏は説明を続けます。「解決策を迅速に実装することができ、本当にうまく機能しています。」

非常に多くの従業員や共同作業者が異なるコンピューターとホームネットワークでリモートで作業しているため、プロジェクトの資産や知的財産を保護することが重要な課題でした。「自宅で仕事をしている人が複数いる場合、自宅のマシンの安全性をコントロールすることはできません。」と、Perrier 氏は説明します。「たとえば、自宅のマシンには、本社にあるような強力なウイルス対策ソフトウェアがインストールされていない可能性があります。」

クラウドワークステーションは、リソースとコードへのアクセスを安全に許可するための理想的な解決策であることが証明されました。アーティスト、デザイナー、アニメーターがアクセスできるのはストリームだけです。つまり、アセットをダウンロードしたり、共有したりすることはできません。Perrier 氏は、「エンドユーザーは、ローカルワークステーションにストリーミングされている画像やビデオにのみアクセスでき、実際のアセットにはアクセスできません。これはとても優れたセキュリティ機能です」と説明します。

「AWS は、セキュリティというもう 1 つの大きなメリットももたらしてくれました」と、Jean-Charles 氏は続けます。「NICE DCV を使用することで、請負業者やサードパーティは、アセットへのアクセスが厳しくコントロールされているクラウドベースの仮想デスクトップでのみ作業することになり、データ漏洩はありませんでした。」

また、このリモート作業の解決策は、ゲーム開発の最終段階など、Quantic Dream のワークロードがより複雑になる今後にも役立ちます。この間、チームメンバーは、スタジオのリポジトリから自分のコンピューターに巨大で高品質の制作アセットにアクセスしてダウンロードすることが必要になることがよくあります。これにより、一度に 2 テラバイトものデータがダウンロードされる可能性があります。この新しい解決策により、Quantic Dream はリポジトリをクラウドに移行し、AWS の高帯域幅ネットワーキングとグローバルインフラストラクチャを利用して、大量のデータ転送を高速化できます。

AWS でのリモートワークステーションは、Quantic Dream にとって多くの可能性を拓きました。Perrier 氏は、「私たちが期待していたよりもはるかにうまくいきました。私たちの計画は、最終的に全員をクラウドに移行することであり、そうすることを妨げる技術的な制約はありません。チームはその結果に非常に満足しています。従業員や共同編集者の多くはまるで Quantic のスタジオで働いているかのようだと言います。そうした声を聞くのはとてもうれしいことです」と語ります。