需要予測・自動発注システムで業務改善へ
非エンジニアでも開発できる Amazon Forecast と手厚いサポートで人手による発注作業を 50% 削減

2022

島村楽器株式会社では、発注業務の自動化を目指して需要予測システムの構築に取り組んでいました。また昨今のビジネス環境の急激な変化に対し、需要予測に加えて将来的な変化に耐えうるプラットフォームの必要性を強く感じた同社は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)および Amazon Forecast の活用を決定。ロジスティクス部門の非エンジニアチームは、AWS の手厚いサポートを受けながら、内製によって需要予測・自動発注システムを構築。欠品率の改善と業務効率の向上を実現し、さらなる業務改革に向けて AWS の活用を推進しています。
AWS 導入事例  | 島村楽器株式会社
kr_quotemark
AWS の親身なサポートを受けることで、エンジニアではない私たちでも需要予測・自動発注システムが作れました。AWS はさまざまな用途に使える機能が充実しており、日々進化していく驚きがあり、業務改善に大きく貢献してくれるクラウドサービスです
中根 成介 氏
島村楽器株式会社
執行役員 ロジスティクス部長

需要予測や自動発注などロジスティクス強化を推進

島村楽器は、1962 年に開設した音楽教室を源流とし、生徒を対象に楽器販売をスタートした 1969 年に設立されました。「音楽を楽しむ人を一人でも多く創る」ことを追求し、現在は全国 39 都道府県に店舗と音楽教室を展開、日本最大の楽器小売店および日本有数の音楽教室として知られています。このほかにも楽器修理やイベント・コンサートの企画・実施、スタジオ運営など、楽器を演奏するプレイヤーをトータルサポートする事業展開が特徴です。

同社では 2002 年ごろから規模の拡大よりも質の最大化を目指す“充実戦略”を推進。全店に POS を導入するなどシステム化に取り組んで、顧客主導型の品揃えと在庫管理の効率化を図ってきました。昨今ではロジスティクスを強化するため、定番の商品や扱いが少ない商品の発注自動化を目指し、需要予測ツールの検討・検証を行っていました。

島村楽器がじっくりと需要予測ツールの導入に取り組み、2020 年に運用を開始したころ、新型コロナウイルス感染症の蔓延によってビジネス環境は大きく変化しました。大型商業施設などを中心に開店していた店舗・教室が休業し、また消費者の楽器に対するニーズも変わりました。
「一部の定番商品の売れ行きが変わったり、需要の少なかった商品の売り上げが伸びたりしました。そうした中で、オンラインストアの利用が大幅に増加しています。音楽教室は大きな影響を受けましたが、オンラインレッスンが俄然注目されるようになりました。このようにビジネス環境が大きく変化する中でスピーディーかつ的確にニーズに応えるためには、勘や経験に頼るばかりでなく、データを基にした需要予測が必要だとあらためて実感しました」と、島村楽器 執行役員 ロジスティクス部長の中根成介氏は述べています。

上述の需要予測ツールはオンプレミスシステムで、保有していたライセンスが古く、使い続けるにはバージョンアップが必要だとわかっていました。機能的に大きな不足があるわけではないものの、サーバー環境の運用負荷の高さも課題でした。将来的なビジネスやニーズの変化に応えて新しいサービスを創出しようとするならば、新しい技術を積極的に活用できる環境が欠かせません。つまり、運用負荷が小さく、使い続ける中で進化していくクラウドサービスのほうが望ましいと考えたのです。

中根氏は、以前から Amazon.com の在庫管理や需要予測の技術を耳にしており、同様のテクノロジーを利用できる AWS にも注目しました。島村楽器ではすでに一部のシステムで AWS を活用しており、周辺サービスや最先端技術が充実していることも理解していました。時系列予測サービス Amazon Forecast に関してもすぐに試すことができ、ハンズオンビデオなどの情報も多いことから、導入はすみやかに決定されました。

2,100 アイテムの自動発注を実現

エンジニアでなくても内製可能

島村楽器では、Amazon Forecast を活用して約 5,000 アイテムの月次予測を算出、そのうち約 2,100 アイテムは自動発注まで実現しています。商品回転率は、オンプレミスの需要予測ツールと同等レベルを維持。欠品率はコロナ禍の供給が不安定な状況にも関わらず 4 か月で 0.7 ポイントも改善することができました。また、Amazon Forecast の導入により自動発注の対象商品を 500 アイテム拡大することができ、結果的に需要予測導入前と比較すると、人手による発注を 50% 削減することができたといいます。

以前のシステムでは目視で確認すべきポイントも多く、取り扱うアイテム数の多いスタッフには特に負担になっていました。Amazon Forecast で自動化が拡大したことで負荷が大幅に減り、チームの業務も改善できました。他部門の発注業務を引き受けられるほど、劇的な効果を発揮しているとのことです。
「私たちはまだ AWS に精通しているわけではありませんが、それでも Amazon Forecast を活用した発注自動化を実現することができました。オンプレミスの需要予測ツールやデータベースから何の問題もなく移行して、現在も順調に稼働しており、長年の業務改善プロジェクトを継続できています。AWS を使っている最中にどんどん進化していくことにも感動しています」と島村楽器 ロジスティクス課の青柳瑠美氏は評価します。

実は Amazon Forecast のテスト中、青柳氏は UI の煩雑さに悩んでおり、外部のベンダーに開発を依頼すべきかどうか検討していました。ところがアップデートで UI が大幅に改善されて、問題なく利用できるようになりました。同時に予測モデルも刷新され、さらに精度の高い結果を得られるようになりました。青柳氏は、この進化の速さに驚きました。
「カスタマイズをして作り込むことは今後のアップデートなどでリスクとなりますから、手を加えずそのままで使いたいとは思っていましたので、とてもよかったです。AWS は情報が豊富で動画解説なども多く、私たちの質問にも的確に答えてくれます。もともと内製化までは考えていなかったのですが、AWS の親身なサポートがあれば私たちでも実現できると確信しました。その結果、内製化によってコストの肥大化を抑えられましたし、スピーディーに改善できるようにもなりました。今後は、この経験をチームに広げて業務改革をさらに推進したいと考えています」(青柳氏)

これからも AWS を活用しデータ主体のロジスティクスをさらに推進

島村楽器では、Amazon Forecast を活用した需要予測・自動発注システムを構築するにあたり、あらためてデータに向き合って、精細にチェックする機会を得ることができました。勘に頼った属人的な発注業務から解放され、高い品質のロジスティクスを実現できるようになりました。将来的には、さまざまなデータを基にして在庫効率や発注効率の効果そのものを検証し、さらなる改善に役立てていく方針です。
「私たちロジスティクス部門は、今後もデータ主体の管理を目指して環境整備に取り組みます。AWS は、Amazon API Gateway や Amazon QuickSight などの有用なサービスやセキュリティ機能が充実しており、幅広い用途に活用できます。将来的には、物流システム全体を AWS 上に展開することも視野に入れています。AWS は、サービスや機能の質問だけでなく、機械学習のスペシャリストにも定期的に相談する機会があり、高度なスキルを獲得できます。AWS のサービスとサポートを上手に活用していきたいと考えています」(中根氏)

中根 成介 氏

青柳 瑠美 氏


カスタマープロフィール:島村楽器株式会社

  • 設立: 1969 年 3 月(創業 1962 年 1 月)
  • 資本金: 1 億円
  • 従業員数: 2,275 人(2021 年 2 月現在)
  • 事業内容:国内外各種楽器・音楽書籍・音楽雑貨の販売、各種音楽教室・ミュージックサロンの運営、練習スタジオの運営、音楽関連イベントの企画・制作・運営、商品開発、技術サービス、音響工事の設計・施工、各種楽器および付属品のレンタル・リース、音楽教育システムの開発および運営指導

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 需要予測の効果上昇、業務効率の向上
  • アップデートで不安解消、完全内製化を実現
  • 物流システム全体の AWS 化を検討

ご利用中の主なサービス

Amazon Forecast

Amazon Forecast は、機械学習 (ML) をベースにした時系列予測サービスで、ビジネスメトリクス分析のために構築されています。

詳細はこちら »

AWS Lambda

AWS Lambda を使用することで、サーバーのプロビジョニングや管理をすることなく、コードを実行できます。料金は、コンピューティングに使用した時間に対してのみ発生します。

詳細はこちら »

Amazon S3

Amazon Simple Storage Service (Amazon S3) は、業界をリードするスケーラビリティ、データ可用性、セキュリティ、およびパフォーマンスを提供するオブジェクトストレージサービスです。

詳細はこちら »

Amazon EventBridge

Amazon EventBridge はサーバーレスイベントバスであり、アプリケーション、統合された Software-as-a-Service (SaaS) アプリケーション、および AWS のサービスから生成されたイベントを使用して、イベント駆動型アプリケーションを大規模に構築することを容易にします。

詳細はこちら »