金融機関の中でいち早くクラウド活用を開始し 60% のコスト削減を実現
2022 年度完了に向けて次期勘定系の構築プロジェクトが進行中

2020

ソニーフィナンシャルグループの一員として、質の高い金融サービスを提供するソニー銀行株式会社。最新のテクノロジーを活用した IT 戦略を進める同社は金融機関の中でいち早くアマゾン ウェブ サービス(AWS)の利用を決定しました。2013 年末から一般社内業務システムと銀行業務周辺系システムを段階的に移行し、2019 年末までに全システムの約 80% が AWS 上で稼働しています。2018 年から次期勘定系システムの本格検討に着手しており、2022 年度の本番稼働に向けて AWS の豊富なサービス群を活用したクラウドネイティブなシステムの構築を進めています。

AWS 導入事例  | ソニー銀行株式会社
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インターネット銀行としてスピード感のある経営を実現するため、AWS を採用しました。2013 年から AWS の利用を続けてきましたが、今でも AWS に対する高い評価、強い信頼は変わりません。現在、2022 年度に向けてクラウドネイティブなアーキテクチャによる次世代勘定系システムの構築に取り組んでいます

福嶋 達也 氏
ソニー銀行株式会社
執行役員

セキュリティ情報の積極的な公開をはじめ先進的な取り組みを評価して AWS を採用

ソニー銀行は「フェアである」を企業理念に、個人のための資産運用銀行として 2001 年に開業したインターネット銀行です。
以来、外貨預金や住宅ローン、投資信託、デビットカードなどさまざまな金融サービスを提供しています。

金融業界における創造的なビジネスを追求する過程で、同社がクラウドの導入を検討開始したのは 2011 年のことです。国内外のサービスについて情報収集・調査を続ける中、FISC 安全対策基準への適合性などセキュリティ情報を積極的に公開 / 開示している姿勢と、豊富かつ高度な機能を揃えていること、AWS の責任共有モデルで責任範囲が明確化されていることなどを評価して AWS の採用を決めました。

「当社は、低コスト・短納期・高品質を基本方針とし、それを実現するために“オープンな技術を活用する”、システムは従来の“作る”から“使う・組み合わせる”、“密結合”から“疎結合”で構築するというコンセプトがあります。その流れで国内外のクラウドを調査した結果、当時最もフィットしていたのが AWS でした」と語るのは、ソニー銀行株式会社 執行役員の福嶋達也氏です。

全システムの約 80% が AWS 上で稼働

最大 60% のインフラコストを削減

AWS への移行は 2013 年 12 月からスタート。まずは顧客への影響が少ない一般社内業務システム(ファイルサーバー、電子ワークフロー、グループウェアなど)、銀行業務周辺系システム(リスク管理、管理会計、融資管理など)を、システムのライフサイクルに合わせて順次移行し、2019 年秋までに完了しました。

2017 年末には勘定系の一部である財務会計システム(総勘定元帳 / Oracle EBS )で AWS の採用を決定し、2019 年 10 月に移行を終えています。

2018 年には既存の VDI (仮想デスクトップ基盤)を、Amazon WorkSpaces に置き換えることを決定。2019 年 4 月から、一般社内業務環境の端末約 700 台での利用を開始しました。2020 年には営業店舗で利用する銀行業務環境、開発環境の端末を約 1,000 台移行し、7 月より順次利用を開始しています。

2020 年 7 月現在、同社全体のシステムのうち、約 80% が AWS 上で稼働しています。これにより、インフラ関連のコストはオンプレミスと比べて最大で 60% 削減。インフラ調達・構築期間は半分以下に短縮されています。

「私たちが 2013 年から AWS を使い続けている理由は、コストやリードタイムなどのメリットはもちろんのこと、それ以上に可用性が高いことにあります。特に耐障害性の観点ではマルチ AZ、マルチリージョンに対応し、要素技術にも可用性を確保する仕組みを採用していることを高く評価しています。メンテナンスの負担も少なく、システムを止めることなく運用ができるため安心して利用でき、2020 年の現在でも AWS に対する高い評価、強い信頼は変わりません」(福嶋氏)

AWS の導入で同社が変わったのは、インフラ担当者がサーバー構築の作業から解放され、業務部門の要求に対してスピーディーに応えられるようになったことです。クラウドであれば必要な時だけリソースが確保できます。個別の案件・施策において、アプリケーションの開発やテスト環境が必要になった場合でもスピーディーな対応が可能です。

「結果として、新商品・新サービスの開発や銀行の業務改善にシステムがボトルネックとならず、私たちがサービス部門の要求に積極的に関与できるようになりました」(福嶋氏)

大阪リージョンの開設により勘定系システムの移行を決断

AWS によるクラウドジャーニーを歩んできたソニー銀行では、勘定系を含む全システムで AWS の利用を可能とする方針を 2019 年末に決定し、基幹系システムの移行を進めています。同社の基幹系システムとは、銀行業務のコアとなる勘定系システムと、インターネットバンキングシステムを合わせた大規模なものです。

「当社では、AWS 利用開始当初から銀行重要業務も含め、AWS 利用範囲の段階的な拡大を想定し、国内第二リージョンの開設を強く要望してきました。2018 年開設された大阪ローカルリージョンが、2021 年に大阪リージョンとしてフルリージョン化されることを受け、可用性・耐障害性のさらなる向上が見込まれることから移行を決定しました」(福嶋氏)

この背景には、これまで AWS を活用する中で得られた可用性・セキュリティへの信頼感や、顧客の声に対する真摯な姿勢と実行力、AWS のサービス開発のスピードへの期待などがありました。

特に AWS の着実なサポート対応には信頼を寄せており「これまでも障害時や技術的な問い合わせに対して、迅速な回答をもらって問題を解決してきた実績があり、基幹系システムの採用においても不安はありませんでした。通常のサポートレベルでもレスポンス良く質の高い支援が受けられますが、エンタープライズサポートに加入することで TAM(Technical Account Manager)との連携により障害時の迅速な対応や、運用に関するアドバイスを受けられることは大きなメリットです」と福嶋氏は語ります。

金融機関に求められる外部監査や監督機関への対応についても、AWS が取得している第三者認証や、同社が定めるリスクチェックに準じた Q&A 対応の実施などを通して的確なアドバイスを受けているといいます。

クラウドネイティブなアーキテクチャを活用したシステムへと進化

基幹系システムを AWS 上に構築するプロジェクトは現在、2022 年度中の本稼働を目指して順調に開発が進んでいます。新システムでは、マイクロサービス、コンテナ、サーバーレスといったクラウドネイティブなアーキテクチャを採用し、開発生産性の向上を目指しています。また、AWS の多様なサービスを東京と大阪の両リージョンにおいて活用することで、高い可用性を担保する設計としています。

データベースは、勘定系に求められる可用性・信頼性・パフォーマンスを担保することを念頭に、従来の商用 DB から Amazon Aurora PostgreSQL に移行することが決定済みです。これによって大幅なコスト削減も実現するとみています。

基幹系システムの移行が終わると、計画していたシステムはすべて AWS 化が終了する予定ですが、AWS によるクラウドジャーニーは今後も続いていきます。

「今後、AWS 上で稼働しているシステムは、クラウドネイティブな最新のアーキテクチャによる再構築を進めていきます。金融業界を取り巻く環境が大きく変化する中、AWS との強いパートナーシップによって新たなビジネスに対応していきますので、引き続き支援をお願いします」(福嶋氏)

福嶋 達也 氏


カスタマープロフィール:ソニー銀行株式会社

  • 設立年月日:2001 年 4 月 2 日
  • 資本金:310 億円
  • 事業内容:銀行業(インターネット銀行)

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • インフラ構築コストが最大 60% 削減
  • インフラ構築のスピードがオンプレミスの半分以下
  • 新規サービス構築や拡張への対応力を獲得
  • 2022 年度の本稼働に向けて勘定系システムを AWS 上に構築中
  • 新勘定系システムではクラウドネイティブなアーキテクチャを採用

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