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2022 東海電子株式会社

東海電子、運送・運輸の運行管理製品のソフトをクラウド化。顔認証に AWS の AI サービスを導入し、点呼・アルコール検査業務を効率化

製造業

概要

“飲酒運転をゼロに”をモットーに、業務用アルコール検知器を製造・販売する東海電子株式会社。同社は、点呼作業など運行管理に必要な業務をクラウド上で実現する『運輸安全 PRO』をリリースするにあたり、プラットフォームにアマゾン ウェブサービス(AWS)を採用しました。クラウド化により、導入企業の管理工数削減や端末依存で発生する不具合の解消に貢献。提供元の同社においても、ユーザーサポートにかかる負荷の軽減を実現しました。

Two individuals seated at a desk with electronic equipment and white blinds in the background.

課題・ソリューション・導入効果

課題

交通事故撲滅に向けて運輸安全プラットフォームの構築を検討

アルコール検知器業界において、2003 年以降、法人企業向けに特化して飲酒運転防止のデジタル化に取り組んできた東海電子。現在、鉄道、バス、タクシーなど、物流・交通・観光の分野を中心に全国 18,000 社以上の企業、35,000 以上の事業所に採用され、安全な交通社会の実現に貢献しています。

同社の主力製品は、アルコール測定器と記録・管理ソフトウェアをトータルで提供する『ALC-PROII』です。『ALC-PROII』 は、アルコール測定を実施すると同時に、測定者(ドライバー)の顔写真や測定中の動画、測定時刻等を記録し、ドライバーの基本情報から、アルコール測定の結果までを一元的に管理します。しかし、ALC-PROII はデータをローカル PC に記録するシステム製品であったため、複数に拠点を持つ事業者の場合、メール等を介してデータを共有することになります。近年はセキュリティソフトの機能が強化された結果、メールのブロックや遅延が発生することもあり、業務に支障が生じるケースもありました。そこで同社は、複数の拠点からでも容易にデータ共有ができるクラウドサービスの提供を検討しました。

一方、運送・運輸業界全体を見ると、飲酒運転による事故だけでなく、過労や経験不足など飲酒に起因しない事故も多発しています。同社は、社会的な意義としても、ドライバーの健康状態などをチェックしながら悲惨な事故をなくしたいという思いが強くあり、企業の運輸安全をクラウド上で管理するプラットフォームの構築を検討しました。

「業務多忙な運行管理者が、どうすればドライバーと向き合う余裕が持てるようになるかを考え、各種情報をクラウド上で管理する運輸安全プラットフォームの構築を検討しました」と語るのは、代表取締役の杉本哲也氏です。

ソリューション

Amazon Rekognition を用いて顔認証機能を実装

運輸安全プラットフォームの開発に着手した同社は、2018 年 9 月に『ALC-PROII』のクラウド版『ALC-web』と、運転者台帳管理システム『Karte-PRO』をリリースしました。その後、2020 年 6 月に血圧計やストレスチェッカーなどのデータから、フィジカル・メンタルヘルスのケアを支援する『HC-web』、2022 年 4 月には前者 3 つのサービスを内包し、IT 点呼、対面点呼、電話点呼、遠隔点呼などの点呼を実現するフラッグシップサービス『e 点呼 PRO』をリリースし、クラウドサービス全体を『運輸安全 PRO』のブランドで提供しています。

各種サービスのプラットフォームには、AWS を採用しました。その理由は、開発の容易さと将来性にありました。安全・健康システム開発部の喜多光二氏は「開発技術者が AWS に慣れており、これまで蓄積してきたナレッジが活用できることが決め手となりました。その他、採用実績の多さ、プラモデル感覚で試せる手軽さ、サービス拡張の将来性、セキュリティレベルの高さを評価しました」と振り返ります。

プラットフォームは、Amazon EC2 やAmazon Aurora などを用いて構築し、開発時は法令遵守とユーザビリティのバランスに配慮しました。

「運送・運輸業界は高齢のドライバーも多く、簡易なシステムを提供することが理想です。しかし、利便性だけを重視すると法令遵守が難しくなります。そこで使い勝手に配慮しながら、法令を遵守することを意識しました」(喜多氏)

フラッグシップサービスの『e 点呼 PRO』では、AI を活用した画像認識サービスのAmazon Rekognition を用いて顔認証機能を実装しました。自動化事業開発部の高橋秀氏は次のように語ります。

「これまでの IT 点呼では、ドライバーは数ケタの ID を入力してシステムにログインしていましたが、ID の打ち間違いも多く、点呼業務の遅延につながっていました。そこで、Amazon Rekognition に着目し、顔認証を実現しました。これにより、ID 入力の手間が省けるほか、アルコール測定時の身代わりを防止することが可能になります」

導入効果

導入や運用の負担が軽減され、導入企業が大幅に増加

現在、『運輸安全 PRO』のサービスは、1 営業所単位の年間ライセンスで提供しています。導入企業は、自社の状況に合わせて、必要なサービスを選択し、徐々にスケールアップすることができます。2018 年 9 月のリリース以降、徐々に導入企業が増加し、2022 年 11 月時点で約 200 社に達しています。

「国土交通省による規制緩和により、2022 年 4 月から要件を満たした機器・システムによる遠隔点呼が可能になって以降、『e 点呼 PRO』の採用事業者は 130 社以上増えました。比例して売上げも 2,000 万円近く伸び、事業に貢献することができました」(喜多氏)

採用事業者が増えた要因の 1 つは、導入や運用の負担が軽減されたことにあります。クラウドサービスなら、事業者は新たに専用線や VPN などのネットワークを用意する必要はありません。拠点間でデータを連携するためのメールアドレスの取得も不要で、セキュリティソフトによってメールが遅延したりすることもありません。従来は事業者自身で PC 内のデータのバックアップを取得する必要がありましたが、クラウドなら事業者に任せることが可能です。

同時に、サービス提供側である同社の導入・運用時の負担も大幅に軽減されました。ローカル PC で運用するオンプレミス版の場合、同社がユーザーの使用状況を把握することが困難で、サポート時は営業担当者や技術担当者が直接出向いて対応することもありました。点呼用のテレビ電話システムも、ユーザーのセキュリティ環境によって導入・運用で難航することもありました。クラウドならこれらの負担もなく、スムーズに導入することができます。

「例えば、システムのバグや不具合もクラウド上のシステムを修正するだけなので、お客様ごとの機器の対応も不要になります。個々のトラブル対応も遠隔からのサポートが可能になるため、直接出向く機会も減り、保守の負担は軽減されました」(高橋氏)

ビジネス面においても、多額の初期投資が不要なクラウドにより、新たなことに気軽にチャレンジしてみようという意識が社内に醸成されたといいます。

「クラウドのメリットを活かして、まずは作ってみよう、新しいビジネスにチャレンジしてみようといった意識が社内に生まれました。2022 年 4 月から白ナンバーの事業用車でのアルコールチェックが義務化され、10 月からはアルコール検知器を用いた検査が義務化されました。対象範囲が拡がり、今後は多くの事業者がアルコール検知器の市場に参入することが予測される中、競争に打ち勝っていくうえでも AWS の活用は欠かすことはできません」(杉本氏)

同社では、今後も継続して『運輸安全 PRO』の各種サービスの機能強化を図るほか、新たなクラウドサービスを提供し、事業を拡大していく計画です。

「現在、2023 年 1 月より国土交通省が開始する自動点呼に向けてロボット型点呼を開発中で、2023 年春に e 点呼 PRO の機能としてのリリースを予定しています。AWS には引き続き、点呼業務のほかさまざまな領域での支援を期待しています」(高橋氏)

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AWS の導入により、クラウドのメリットを活かして、まずは作ってみよう、新しいビジネスにチャレンジしてみようといった意識が社内に醸成されました

杉本 哲也 氏

東海電子株式会社 代表取締役

アーキテクチャ図

Architecture diagram showing Tokai Denshi's AWS Cloud infrastructure, including VPC, public and private subnets, NAT gateway, load balancer, auto scaling groups, databases, file storage, session management, and connectivity to external services such as browsers, video communication platform, and driver alcohol detection app. Diagram uses Japanese language labels and AWS service icons.

東海電子株式会社

1979 年、デジタル時計の部品の組み立て加工会社として設立。1990 年代に入り、社会問題となっていた飲酒運転事故の増大を受けて、アルコール検知器の開発に着手。2003 年に『業務用アルコール測定システム ALC-PRO』を発売。以来、“社会の「安全」「安心」「健康」を創造し、社会に貢献する”を理念に、業務用アルコール検知器のプロフェッショナルとして、各種製品を世の中に送り出している。

取組みの成果

  • 約 200 社
    クラウドサービスの提供実績
  • 2,000 万円
    半年間での売上伸び
  • サービス導入時のハードル低減
  • 保守・サポート対応の減少により約 5 % のコスト削減

本事例のご担当者

杉本 哲也 氏

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喜多 光二 氏

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高橋 秀 氏

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