月間 2.5 億再生を超えるテレビ番組配信のバックエンドシステムを内製化放送と連携した広告配信システムも実現

2022

民放公式テレビ配信サービス『TVer(ティーバー)』を運営する株式会社 TVer は、2015 年のサービス開始以来サービスプラットフォームをアマゾン ウェブ サービス(AWS)上で運用しています。2022 年 4 月のサービスリニューアルを機にバックエンドシステムも内製化し、開発/運用のアジリティを強化。さらに、リアルタイム配信の開始に合わせて、AWS Media Services を使って開発されたオンラインビデオプラットフォームを採用し、スムーズな広告挿入を実現しています。

TVer
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月間 1,800 万人が利用する大規模な TVer サービスのバックエンドシステムを、トラブルなく移行できました。AWS からの大規模 DB に関するアドバイス、社内にノウハウがなかった Amazon OpenSearch Service に関するサポートなどにも助けられました"

内海 恵介 氏
株式会社 TVer
サービス事業本部 プロダクトタスク

サービスの成長に柔軟に対応するためバックエンドシステムを内製化

時間、場所、デバイスを問わずテレビ番組を無料で見られる『TVer』は、2015 年に放送後約 7 日間の見逃し配信プラットフォームとして始まりました。現在は 100 社以上の民間放送局が参加し、600 番組を超すコンテンツを配信。2022 年 3 月時点で月間再生数 2.5 億を超え、月間アクティブユーザー数は 1,800 万以上、スマートフォン / タブレット / コネクテッド TV を合わせた累計アプリダウンロード数は 2022 年 7 月に 5,000 万を突破しました。

また、2022 年 4 月の大幅リニューアルにより、民放 5 系列が揃っての番組リアルタイム配信と TVer ID によるログイン機能を開始。TVer ID を持つユーザーには異なるデバイス間でのお気に入り登録や、途中まで見た番組を異なるデバイスで続きから見る「レジューム再生」、リアルタイム配信の「追っかけ再生」が可能になりました。

リニューアルに合わせ AWS Organizations を導入し、用途に分かれた複数のアカウントを統合管理しています。また、TVer サービスのバックエンドシステムも刷新してインフラの内製化に舵を切りました。

「これまでバックエンドシステムは外部の協力会社に構築 / 運用を委託し、インスタンス増強やサーバー設定変更などを依頼していました。しかし配信サービスが右肩上がりで成長する中、外部に依存したままではスピード感に欠け、柔軟な対応も取れません。そこで、社内でシステムをコントロールするために内製化を選択しました」と語るのは、サービス事業本部 プロダクトタスクの内海恵介氏です。

適切なキャパシティへの即時変更とインフラコストの最適化

TVer はバックエンドシステムの開発を 2021 年 4 月に開始。動作環境は従来の Amazon EC2 から AWS Fargate に変更し、コンテナによるサーバーレス構成としています。さらにマネージドサービスを積極的に活用して運用負荷の軽減を図りました。

「ユーザー数の増加に応じてスケールできるように、データベースには Amazon DynamoDBAmazon AuroraAmazon ElastiCache を採用し、スケーラビリティの担保を徹底しました」(内海氏)

メトリクスやログの分析によるプロアクティブなモニタリングも実現。サービス事業本部 プロダクトタスクの加我貴志氏は「スモールスタートでモニタリング環境をリリースし、ドキュメントをベースにメンバー間で認識合わせをしながら必要なメトリクスやログを議論し、本当に使えるモニタリングの実現を目指しました」と語ります。

旧環境から新環境への切り替えには 20 回以上ものリハーサルを重ね、当日は 10 時間以内の停止時間で移行を終えています。

「月間 1,800 万人が利用する大規模な TVer サービスのバックエンドシステムを、トラブルなく移行できました。AWS からの大規模 DB に関するアドバイス、社内にノウハウがなかった Amazon OpenSearch Service に関するサポートなどにも助けられました」(内海氏)

インフラの内製化により、想定外の事態にも柔軟に対処できるようになり、適切なキャパシティへの即時変更が可能となっています。

「これまでスポーツや音楽などの大型番組があると外注先にサーバーの増強や監視を依頼する分タイムラグがあり、突発的なイベントには対応が困難でした。内製化によりサーバー増強も管理画面から手軽にできるようになりました」(内海氏)

アプリリニューアルにより提供する機能が大幅に増え、また配信番組数やアプリのダウンロード数が増えているにも関わらず、インフラコストも従来と変わらず、コストの最適化が実現しています。

「リニューアル 1 か月で定常稼働に移行した時点で AWS からリザーブドインスタンスやサーバーレスの活用などのアドバイスを得てサーバーの最適化を進め、納得できるコスト感で運用ができています」(加我氏)

AW277_TVer_ZU1_1012_1のコピー
TVer Backend System Architecture
AW277_TVer_ZU3_1012_1
Integrated management in AWS Organizations
AW277_TVer_ZU2_1121
TVer Realtime Streaming System Architecture

AWS Media Services でサーバーサイド広告挿入を実現

リアルタイム配信開始にあたっての課題は、サーバーサイド広告挿入(SSAI)でした。動画配信でも地上波放送と同様の視聴体験を提供するには、CM 用に確保された枠に対してスムーズで違和感のない CM 挿入が必要です。そこで TVer は、AWS Elemental MediaTailor を活用して構築された株式会社 PLAY が提供する SaaS 型オンラインビデオプラットフォーム『STREAKS』を採用。その理由についてサービス事業本部 プロダクトタスクの向原悠太氏は次のように語ります。

「第一に PLAY さんの技術力です。SSAI の提供に加え、リアルタイム配信から追っかけ再生までの対応、番組単位での視聴者数の計測など、多くの要件に対応していただきました。SSAI の機能をスクラッチ開発するのは現実的ではなく、何万人の視聴に耐えるシステムが SaaS で提供されることもポイントになりました」

STREAKS の基盤に活用している AWS Elemental MediaTailor について PLAY メディアプラットフォーム事業部 プラットフォーム統括部 統括部長の坂口隆久氏は、マネージドサービスで提供され、多くのライブサービスで利用されていること、AWS のサポート体制などを評価したと語ります。

「API でアドサーバーなどと疎結合で連携できることが AWS Elemental MediaTailor 採用の決め手です。細かなビジネスロジックを実現するためには、弊社のシステムや各放送局のシステムとの連携も必須で、AWS Elemental MediaTailor をラッピングする形で多様な要件を実現しました。同時配信は番組によって視聴者数が大きく異なります。特に SSAI は再生端末ごとに個別広告を挿入するため、一般的なライブ配信のようにキャッシュを利かせることができません。負荷ベースのスケールアウトの仕組みでは、番組ごとの視聴者数の差や広告挿入タイミングの急激な負荷に間に合わないため、同時視聴者数をリアルタイムにチャンネルごとに監視して AWS Fargate 上で動く各サブシステムを最適な台数にスケールするように工夫しました」

リアルタイム配信の開始以降、STREAKS を起因とするトラブルは 1 件もなく、向原氏は「TVer のサービス品質の維持に貢献しています」と評価しています。

AI/ML を活用したレコメンド機能やAWS WAF を活用したセキュリティ強化を検討

リニューアル後の TVer はユーザーからも好評で、「通勤中に見た番組を、家に帰ってテレビで見られる」「通信の負荷が下がって、快適に見られるようになった」といった声が届いているといいます。

同社では今後も継続的の機能改善・新規機能の実装を続けていく考えで、内海氏は「AWS の AI/ML ソリューションを活用した番組のレコメンド機能など、ユーザーが見たい番組を探しやすくなるように改善していきます」と語ります。

バックエンドのシステム環境では、セキュリティの強化にも AWS の活用を検討中です。「CDN による DDoS 対策や、ログベースのセキュリティチェックに加えて、AWS WAFAmazon GuardDutyAWS Security Hub などを活用したセキュリティ対策を検討していきます。AWS には、セキュリティ周りの情報提供も期待しています」(加我氏)

内海 恵介 氏

内海 恵介 氏

加我 貴志 氏

加我 貴志 氏

向原 悠太 氏

向原 悠太 氏

坂口 隆久 氏

坂口 隆久 氏


TVerについて

  • 設立:2006 年 4 月 3 日
  • 資本金:1 億円
  • 事業内容:民放公式テレビ配信サービス『TVer』、エンタメ情報サイト『TVer プラス』などの運営

AWS 導入後の効果と今後の展開

  • 自社エンジニアによる柔軟な運用管理
  • 適切なキャパシティへの即時変更
  • スムーズで違和感のないリアルタイム番組配信の実現

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