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2019 ヤマハ発動機株式会社

顧客満足度を高める POS システムをサーバーレスのクラウドネイティブアーキテクチャで構築し、わずか 3 ヶ月で実装

概要

ヤマハ発動機株式会社は、接客時の情報を販売店から収集し、バイクの需給管理の精度を高める POS システムの短期開発と機能追加の柔軟性という要件を満たすため、野村総合研究所の支援を得て、AWS AppSync などの新技術を取り入れ、サーバーレスのクラウドネイティブアーキテクチャを活用。顧客満足度向上につながる情報をリアルタイムに集める仕組みをわずか 3 ヶ月で構築しました。

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顧客が本当に欲しい商品を届けるため、小売店での接客状況を把握

「感動創造企業」を企業目的に掲げるヤマハ発動機は、オートバイやスクーター、レジャーボートなど、喜びや高揚感を感じさせる製品を世界中で販売しています。国内外のレースで輝かしい成績を収めてきた同社製のバイクは世界中で人気を集め、売り上げの約 9 割が海外というグローバル企業に成長しています。
顧客のニーズに応える商品を迅速に届けることは、同社にとって極めて重要です。しかし商品の多品種化が進んだ近年は、これまでの需給調整方法では課題が生じていました。そこで営業、物流、製造の担当者が連携して小売までつなげ、求められる商品を的確な品揃えで供給できるよう、計画を精緻化するためのデマンドチェーン革新部を 2016 年に立ち上げました。

「お客様が求める商品をタイムリーに供給するには、デマンドチェーンの動きを精緻に捉えることができる情報システムが必要でした。」と語るのは、ヤマハ発動機株式会社 生産本部 生産戦略統括部 デマンドチェーン革新部 デマンドチェーン戦略グループ 主事の横山研一郎氏です。特に必要性を感じていたのは、販売店での販売経緯から隠れたニーズを探ることでした。販売地域のディーラーに商品を卸して以降の小売の状況は、メーカー側からは見えにくくなります。「在庫がなかったから希望と違う色を購入した」など、顧客が購入商品を選んだ要因、来店したが購入につながらなかった理由など、最終的な売上台数データのみでは見えない情報を取得できれば、さらなる顧客満足度向上が可能となります。

そこで同社は、顧客と販売員のやり取りのデータを収集/分析する POS システム構築に着手。高度な POS システムの構築に実績を持つ野村総合研究所(以下、NRI)をパートナーとして、開発プロジェクトを立ち上げました。

3 ヶ月のシステム開発要件と高い柔軟性、拡張性の確保

この POS システムは操作履歴をクラウド上に丸ごとリアルタイム記録して、そのデータを分析に活用するという仕組みです。「日々の接客プロセスを変えることなくデータを収集可能で、しかも商談の効率化に貢献するシステムを目指しました。」と横山氏は語ります。最初のテストケースにはアジアの 2 店舗を選定。システム運用開始を急ぐため、約 3 ヶ月でシステムを完成し、グローバル展開を見据えて柔軟な機能追加やスケールアップができるようにするという厳しい条件がありました。従来のシステム開発手法では、これらの要求に応えられません。そこで、NRI の提案を取り入れて AWS のサーバーレスのクラウドネイティブアーキテクチャを活用したアジャイル開発により、条件のクリアを目指すことにしました。

サーバーレスのマイクロサービスとして構築し短期間/低コスト開発を実現

システム開発は IT 部門の協力のもと、2018 年 2 月から 5 月にかけてデマンドチェーン革新部の主導で進められました。「AWS の新技術の習得は、IT 部門にとっても大きな意義がありますし、新しいことに取り組む際、IT 部門が不要な足かせをはめてはいけないと考えています。今回の POS システム開発には IT 部門から 1 人担当を付け、新しい手法の吸収に努めました。同時にクラウドチェックリストや MDM などセキュリティ面で、ヤマハ発動機の基準・ルールを満たすようお願いしてきました。」とヤマハ発動機株式会社 企画・財務本部 プロセス・IT 部 IT アプリケーション戦略グループ アプリケーション担当 主査の金沢正樹氏は語ります。

今回の POS システム構築には、多くの新技術が投入されています。NRI からの提案により、GraphQL のマネージドサービスである AWS AppSync を活用してコーディングなしでバックエンドシステムを実現し、サーバー側の開発工数を大幅に削減しました。今回システムの構築コストを当初見込んだ開発予算よりも抑えられたのは、バックエンドの構築費用がほぼゼロだったためです。さらに、サーバーレスのマイクロサービスとしてシステム構築することで、短期間かつ低コストでの開発を実現。システム全体の可用性と信頼性を向上させるとともに、拡張性と保守性の向上も可能になりました。加えて、AWS の開発者ツールを用いた DevOps 導入により、運用を自動化。開発・試験時のリードタイム短縮と、リリース時の人的エラーの削減が実現しました。

また、海外では日本に比べてネットワーク環境が脆弱な地域もあります。そこで、画像データのサイズを CDN エッジロケーションで最適化するための AWS Lambda@Edge、Web コンテンツのサイズの最適化に AWS Fargate を活用しています。高度な分析機能は、利用状況のログを記録した Amazon Pinpoint から Amazon Kinesis Firehose を経由して、Amazon Elasticsearch Service/Kibana に連携する構成を付加することで実装しています。「NRI にフロー全体を監修していただいたおかげで迅速な開発が可能になりました。分析環境もわずか数週間で整備できました。」(横山氏)

現場の気づきを迅速に反映し進化し続ける POS システム

POS システムの運用が始まり、「ディーラーや営業の方から販売状況の話を聞くというスタイルから脱却し、データドリブンの情報活用が実現しました。ありのままの小売の様子がデータで見え、接客の過程からさまざまな気づきが得られるようになっています。」と横山氏は、多くの気づきを小売の施策にも反映させていくと示唆します。また、接客の現場からの要望をもとに POS システムも継続的に進化させています。例えば、販売店の状況を鑑み通信環境の悪い場所でも安定して利用できるよう、オフライン機能なども実装。新しい機能のアイデアが出てから、約 1 ヶ月後にはリリースというスピードが実現しています。

ヤマハ発動機では、次のステップとして POS システムの展開をさまざまな市場で予定しています。そして充分な検証をしたうえで、他国への展開に取り組む構えです。さらには 開発者向けビデオカメラ AWS DeepLens を利用した AI による店舗解析、スマートストア機能の評価なども検討しており、さらなる進化に向けて加速しています。

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期間 3 ヶ月というとてつもなく早いサイクルでシステム開発を実現できたうえ、 追加の機能開発もアイデアが出てから約 1 ヶ月後にはリリースというスピードが実現しています。 

横山 研一郎 氏

ヤマハ発動機株式会社 生産本部 生産戦略統括部 デマンドチェーン革新部 デマンドチェーン戦略グループ 主事

アーキテクチャ図

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株式会社野村総合研究所(NRI)

APN コンサルティングパートナー

AWS で多くのお客様のビジネス課題解決をご支援。シンクタンク由来の DNA で未来を見据えたクラウド活用をご提案。実績に裏打ちされたプロジェクト運営と技術力で AWS 導入を成功に導く。2013 年より AWS プレミアコンサルティングパートナー。移行、セキュリティ、金融な ど、多くのコンピテンシーを取得。

Logo of NRI (Nomura Research Institute) with the tagline 'Dream up the future.' and Japanese text '野村総合研究所'.

本事例のご担当者

横山 研一郎 氏

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金沢 正樹 氏

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