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[資料公開 & 開催報告] AWS for Software & Technology | Builders Forum Tokyo – AI Agent 時代の SaaS イベントを開催しました
2025 年 9 月 3 日に東郷記念館東京で開催された「AWS for Software & Technology | Builders Forum Tokyo – AI Agent 時代の SaaS」のイベントについてレポートします。本イベントの全セッション資料はこちらです。
本イベントは現地参加・オンライン参加合わせて 300 名以上の方にご参加いただきました。参加者からは「AI エージェント時代の SaaS について具体的な実装例が聞けて非常に参考になりました」「セキュリティや可観測性の観点からの実践的なアドバイスが有用でした」などの感想をいただきました。これから AI エージェント技術を導入してみたい方、すでに利用しているがさらに活用したい方、それぞれの皆様にご参考いただける情報をご紹介させていただきました。
このイベントは、AI エージェント時代の SaaS をテーマに、SaaS 提供者が今すぐに AI エージェントを AWS とともに取り組み始めるべき理由、既に AWS で AI エージェントに取り組まれているお客様事例、そして SaaS サービスへの AI エージェント導入のために必要な、テナントを考慮した全体像、オブザーバビリティ、セキュリティ、が紹介されました。
キーノートセッション
キーノートセッションでは、AWSジャパン 常務執行役員 デジタルサービス事業統括本部長 佐藤有紀子による開会の挨拶から始まり、AWSジャパン デジタルサービス技術本部 本部長 塚田朗弘と、一般社団法人日本 CPO 協会 – 代表理事 / 株式会社 LayerX – Product Strategy のワカマツ様からはグローバルな AI エージェント導入トレンドと、企業が今すぐ取り組むべき理由について「いつ始めるべきか?今日ではなく、昨日です!」というメッセージと共にお話しいただきました。塚田からは AWS の日本の未来への投資内容、AWS AI スタック全体を通じた本番グレードの AI エージェント基盤としての AWS のケイパビリティ、SaaS 領域での支援実績と我々が既にお客様と一緒に Agentic AI の世界を作っていく準備ができていることを力強く説明しました。
いつ始めるべきか?今日ではなく、昨日です!
お客様事例: フリー宇佐美ゆう様「SaaS × AI Agent 未来 – freee が AWS で築く AI Agent 基盤」
フリー株式会社様からは、AWS 上での AI エージェント基盤の導入事例について技術選択の意思決定、セキュリティ視点で詳細にご紹介いただきました。
実装例としてご紹介いただいた「まほう経費精算」では、チャットベース UI での正確な申請により経費申請者の負担を極小化させることを目的としており、デモを踏まえてご紹介いただきました。システムの安定稼働、コスト効率、品質向上等の整備が急務であり、そのために LLM Observability による評価基盤の重要性についてご説明いただきました。
会計業務の自動化を目的として AI エージェントを導入し、ユーザーの業務効率を大幅に向上させることに成功されています。特に、マルチテナント環境でのデータ分離とセキュリティ確保、リアルタイムでの処理性能最適化、ユーザー体験の向上などの技術的な課題をどのように解決されたかについて具体的な実装例と共にお話しいただきました。AI エージェント基盤の選定理由や全体の構成について非常に参考になるため是非資料をご覧ください。
お客様事例: kubell 藤井 謙太郎様「BPaaS におけるヒトと協働する前提の AI エージェント開発」
株式会社 kubell 様からは、短期と長期で目指されている BPaaS と AI エージェントについてご紹介いただきました。AI エージェントによる業務実行は、処理結果の再現性がない、サービスレベルをわかりやすく設定困難などの課題があり、ヒトによる業務代行は属人性やスケーリングの障壁などの課題があります。両者の良いところを受け入れつつ協調型からの発展をスケーリングできる仕組みと領域を選定する、ということを短期で目指されています。現在、経費精算エージェントで、人間のアシスタント、自律 AI エージェント、ワークフロー型 AI エージェントが協調する構成を検証されており、ドメイン知識と企業別のコンテキストをマルチテナントでどのように取り扱うのかがポイントであるとご説明いただきました。現実的な AI エージェントの導入のロードマップが非常に参考になるためぜひ資料をご確認ください。
お客様事例: エムオーテックス 小沼 祐貴様「開発チーム全員で AI の世界に飛び込む!〜全員参加で進めた Amazon Q Developer 導入物語〜」
エムオーテックス株式会社様からは、チーム生産性を向上させる取り組みについてご紹介いただきました。
組織として、チーム生産性の効果測定指標の検討、PoC、勉強会&ハンズオン、利用推進活動、報告会、等を設計され、組織に全員参加で AI コーディングエージェントを導入するための全体像を作成されました。アンケート結果から業務効率化の改善は PoC 期間の活用だけでも、600時間/月 だったとのことです。
多くの企業様では一部の社員のみで AI が活用され、全社的に広まっていかない、効果がわからないので投資判断できない、といった声を聞くことがありますが、エムオーテックス様では全員参加で利用推進の施策を取って取り組まれており、非常に参考になる社内導入の進め方ですので資料をご覧ください。
AWS テクニカルセッション: 「SaaS アーキテクチャの設計思想 AI – Agent との共創」
AWS ソリューションアーキテクトの福本より、AI エージェントと SaaS の協調アーキテクチャについて、マルチテナント環境で AI エージェントを実装・運用する際の考慮点について紹介しました。クォータ管理、テナント別プロンプト管理の効率化、監視、セキュリティ、そしてリソース使用量の最適化など、広く課題とその解決アプローチについて整理しました。
AWS テクニカルセッション: 「SaaS 開発者のための AI Agent Observability」
AWS ソリューションアーキテクトの桂井より、AI Agent の振る舞いを適切に監視・分析するためのアプローチについて紹介しました。AI Agent を活用した SaaS アプリケーションにおいて、可観測性(Observability)の確保はマルチテナントごとの精度向上、セキュリティの両面で重要な要素であり、福本の SaaS x AI エージェントセッション、後続の加治のセキュリティセッション両方に取って重要です。フリー様からも Langfuse の活用の重要性について説明いただいていることから実用上非常に重要であることが理解できます。本セッションでは AWS が AI エージェントの Observability のためにどのような仕組みを提供しているのかをわかりやすく解説しました。
AWS テクニカルセッション: 「SaaS 開発者のための AI Agent Security」
AWS ソリューションアーキテクトの加治より、AI エージェントを安全に運用するための包括的なセキュリティプラクティスについて説明しました。AI エージェントにおいても引き続き多層的なセキュリティ対策が重要であり、一般的な Web セキュリティ、SaaS セキュリティ、AI セキュリティについて包括的に考慮するための考慮ポイントを整理しました。Amazon Bedrock AgentCore Runtime、Amazon Bedrock AgentCore Identity などにも触れて本番環境のセキュリティについて概要をお伝えしました。
ワークショップ
L200: マルチテナント SaaS & AI エージェント 入門ワークショップ
AWS ソリューションアーキテクトの後藤から初学者向けの AI エージェントのワークショップを開催しました。ハンズオン形式で資料に沿って最も初歩的なチャットエージェントから徐々に Amazon Bedrock Knowledge Bases を用いた RAG の追加、マルチテナントプロンプト管理、などの少し発展的な内容までを取り扱いました。
L400: Model Context Protocol Security on AWS
AWS ソリューションアーキテクトの赤澤から Model Context Protocol の概要、包括的なセキュリティの考慮ポイントと対策案、について座学を実施し、そのあとはモクモク形式で参加者のペースに合わせてハンズオンを実施いただきました。MCP 含む AI エージェントのセキュリティは既に実用化のフェーズに至っているお客様にとっては喫緊の課題です。それらに対して包括的な視点から今回は MCP に特化して情報を提供しました。
ネットワーキング
ご紹介したセッション・ワークショップ以外にも、現地参加ならではの体験として、ブース展示やネットワーキングパーティを実施しました。ブースにご出展をいただきましたkubell 様、セーフィー様、フリー様、また、ネットワーキングパーティ中に開催したライトニングトークにご登壇をいただきましたエクサウィザーズ様、ゼンリンデータコム様、ユーザベース様、弁護士ドットコム様、Techouse 様、ご協力をいただきありがとうございました。
おわりに
今回のイベントでは、AI エージェント時代における SaaS をテーマにグローバル動向、AWS からのキーメッセージ、お客様の事例、ソリューションアーキテクトからの技術セッションを紹介させていただきました。AI エージェントは急速に進歩しており、SaaS 業界においても新たな価値創出の機会が広がっています。AWS では、日本への継続的な投資、各種プログラム提供、Amazon Bedrock をはじめとする AI サービスを通じて、皆様の AI エージェント導入を継続的に支援してまいります。