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AI 定着の現在地 ― 先行企業のリアルに学ぶ AWS AI Day in Nagoya 開催報告

こんにちは。Amazon Web Services Japan のソリューションアーキテクトの福嶋です。

2026 年 9 月 2 日、名古屋 STATION Ai にて「AWS AI Day in Nagoya ~先行企業のリアルに学ぶ、AI 定着の現在地~」を開催しました。当初は 70 名の定員で募集を開始しましたが、想定を上回るお申し込みをいただいたため会場の座席を拡張し、当日は東海圏を中心に 120 名のお客様にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様、ご登壇いただいた 5 社の皆様に、あらためて御礼申し上げます。

本ブログでは、イベントの背景、当日の様子、参加者の皆様からいただいた声をお届けいたします。

イベントの背景 ― PoC の先へ、AI が現場で成果を出す組織へ

多くの企業が AI の導入を始めています。しかし「導入したが、期待した成果が出ていない」「PoC は終わったが、現場に定着しない」という声が後を絶ちません。技術検証のフェーズを終え、いかに事業部門の現場で成果を出すか。いま求められているのは、「使いこなす組織」への変革です。

本イベントは、この課題意識を出発点に企画しました。事業部門が自ら AI を使いこなす事例と、開発部門が AI で生産性を変えた事例の両面から、「導入」ではなく「定着・成果」に踏み込んだ 5 社にご登壇いただき、Kiro、Amazon Bedrock、Amazon Quick を実際に現場で使った率直な手応えと課題を語っていただく構成としました。

イベント概要

項目 内容
テーマ AWS AI Day in Nagoya ~先行企業のリアルに学ぶ、AI 定着の現在地~
日時 2026 年 9 月 2 日(水)13:30~17:30
会場 STATION Ai(名古屋市昭和区鶴舞、鶴舞駅徒歩 6 分)
主催 アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
参加者 120 名
対象 AI 活用・DX 推進に携わるマネージャー・リーダークラス、DX 推進担当者、経営企画・事業部門の意思決定者

当日の様子

写真: 会場の様子

AWS 講演① 変わり続ける AI と変わらない価値 ― いま企業が本当に投資すべきものと AWS の役割

最初のセッションは、AWS プリンシパルソリューションアーキテクトの國政 丈力より、変わり続ける AI の時代に企業が本当に投資すべきものは何か、というテーマでお話ししました。

AI は、聞かれたことに答える「道具」から、目的を渡すと自ら段取りして進める「チームメイト」へ変わりつつあります。論点はすでに「AI を使うかどうか」ではなく、「何を AI に任せ、何を人に残すか」へ移っています。一方で現場からは、どの AI を選べばよいかわからない、導入したが期待した成果が出ていない、PoC は成功したのに現場に定着しない、という声も聞かれます。

同じ基盤モデルを使っていても成果に差が出る要因は、モデルの選択ではありません。自社のデータと業務の文脈を AI にどれだけ与えられるか、作って終わりにせず動かし続けて改善できるか、安心して全社で使える統制があるか。この 3 つだという整理をご紹介しました。

AI の価値は、モデルの賢さと自社の文脈の掛け算です。モデルの賢さは誰でも同じものが手に入るため、差がつくのは自社にしかない文脈、すなわち蓄積されたデータと業務プロセス、そして現場の人と暗黙知です。変わり続けるものは AWS が吸収し、お客様は変わらない資産に投資していただきたい、というメッセージでセッションを締めました。

スライド: 國政による AWS 講演①

AWS 講演② AWS の生成 AI Overview ~3 つの形で整理~

続いて、AWS シニアソリューションアーキテクトの福嶋 拓(筆者)より、AWS の生成 AI を 3 つの形に整理してご紹介しました。

冒頭で、会場の皆様に 2 つの質問をさせていただきました。「日々の仕事で AI を使っている方」には多くの手が挙がりましたが、「AI を使いこなしていると言える方」では、挙がる手がぐっと減りました。この 2 つの手の差が、本イベントのテーマである「AI 定着の現在地」そのものだと考えています。

整理の軸としたのは、聞くと答える「生成 AI」、頼むと動く「AI エージェント」、任せると働く「Agentic AI」の 3 つです。それぞれがもたらすビジネス成果に結びつけ、AI と人がどう役割を分担するのか、そして AWS サービスがどこを担うのかをお伝えしました。

3 つの形は成熟度の段階ではなく、対象となる業務に応じて選ぶものです。AI を使いこなすとは、何を AI に渡し、何を自分の手元に残すかを決めることだというメッセージをお届けしました。

スライド: 福嶋(筆者)による AWS 講演②

AWS 事例 AWS ファイナンス部門における Amazon Quick 活用

AWS シニアファイナンスマネージャーの坂本 英鴻より、Amazon 社内のファイナンス部門が実践する生成 AI「Amazon Quick」の活用事例を、ライブデモを交えて紹介しました。
AWS のファイナンス部門では、以前は業務時間の多くをレポート作成に費やしていましたが、現在は分析と戦略提言に時間の半分を充てられるようになっています。具体的なユースケースとしては、財務ポリシーや経理規定を学習させた専門 AI アシスタントによる問い合わせ対応の削減、ダッシュボードへの自然言語での問いかけと定例レポートの自動作成による資料作成時間の 70% 削減、予算と実績のリアルタイム可視化、承認フローのステータス確認と督促の自動化、請求書の計上処理の自動化などを挙げました。

小さく始めて広げるという導入ステップも示され、エンジニアではない職種における AI 活用の手触りが伝わるセッションとなりました。

スライド: 坂本による Amazon Quick 活用事例のセッション

お客様事例① 神鋼鋼線工業株式会社 様「現場を知る人が主役になる」

神鋼鋼線工業株式会社 技術総括・DX 推進部の佐々木 淳志 様には、「現場を知る人が主役になる ~非 IT 人材から始めた、現場主導の AI 活用と社内展開~」というテーマでご登壇いただきました。非 IT 出身の担当者が AI を自ら試し、社内のキーパーソンを巻き込みながら約 50 名規模の活用コミュニティへと拡大していった過程を、BI レポート構築や業務アプリの内製化といった具体的な事例とともにご紹介いただきました。継続と巻き込みのポイントに触れた内容は、参加者の皆様からも大きな反響をいただきました。

お客様事例② 株式会社東海理化 様「配って終わりにしない」

株式会社東海理化 ニュービジネス開発部の森下 泰博 様には、「配って終わりにしない ― 製造業のニュービジネス×AI 活用」というテーマでご登壇いただきました。AI ツールを導入しても使われない、その壁をどう越えたか。新規事業部門での組織的な巻き込み施策と、PoC の爆速開発、障害対応の自動化、MCP 連携による業務効率化など、製造業発の実践事例をご紹介いただきました。

お客様事例③ タック株式会社(イビデングループ)様「AI-DLC で製品開発はどう変わったか」

タック株式会社(イビデングループ)ビジネス事業本部 民需・公共 DX 部 Smart 工場化グループの巻口 明弘 様には、「AI-DLC(AI 駆動開発ライフサイクル)で製品開発はどう変わったか ― 自社製品 設備保全ソリューション・保全マイスターの開発で見えた品質・今後の SIer としての価値 ―」というテーマでご登壇いただきました。AI 駆動開発がお客様の課題解決にどう貢献するのか、AI-DLC と Kiro を用いた製品開発事例から、総工数は変わらない一方で要件・設計品質が向上したという結果と、適用時の課題をご紹介いただきました。AI 時代に SIer が担うべき役割についても、示唆に富むお話をいただきました。

お客様事例④ 株式会社メイテツコム 様「SIer における AI を活用した開発生産性の向上事例」

株式会社メイテツコム デジタル戦略室の伊藤 誠 様には、「SIer における AI を活用した開発生産性の向上事例 ~できる子だけのツールで終わらせないための仕組み~」というテーマでご登壇いただきました。「AI を使えない人」を教育で変えるのではなく、環境ごと変える。AWS 上の共有基盤に設定を同梱し、開発者がクローンするだけで AI 環境が整うゼロコンフィグの仕組みによって、属人化の壁を取り払った実践例をご紹介いただきました。

お客様事例⑤ 東邦ガス情報システム株式会社 様「AI 駆動開発導入による開発プロセス改善と本格適用に向けた組織課題への対応」

東邦ガス情報システム株式会社 デジタルソリューション部の杉本 あみ 様には、「AI 駆動開発導入による開発プロセス改善と本格適用に向けた組織課題への対応」というテーマでご登壇いただきました。エンタープライズ開発への AI 駆動開発導入事例をご紹介いただき、コード生成だけでなくログ調査や既存資産の刷新にも AI を活用していること、そしてハルシネーション対策や成果物管理といった、本格適用に向けた組織課題への取り組みについて解説いただきました。

参加者の声

イベント後のアンケートでは、全体満足度は 5 段階評価で平均 4.4 となりました。いただいた自由記述コメントの一部を、匿名でご紹介します。

全ての企業様で、AI の活用事例が具体的で大きく進められていることがよく理解でき、大変勉強になった。

開発から運用まで現場への定着について、各社の工夫を聞くことができて参考になりました。

非エンジニアの方が、AI をエンジニアである自分より使いこなしている印象を感じました。

自由記述コメントでは「他社事例が参考になった」というご意見を多くいただき、技術そのものよりも AI を組織にどう根付かせるかという観点への関心の高さが表れていました。Kiro や Amazon Quick を用いたハンズオン、AI ユーザーコミュニティへの参加をご希望いただいた方も多く、当日の学びを次の一歩につなげたいという意欲を多くの方からいただきました。

まとめ

「AWS AI Day in Nagoya」では、AWS の技術動向、Amazon 社内での活用事例、そして 5 社のお客様による実践事例を通じて、AI 活用を「導入する」だけでなく「組織に根付かせる」ための工夫や仕組みづくりについて、多くのヒントをお届けすることができたと考えています。

事業部門が自ら AI を使いこなす取り組みと、開発部門が AI で生産性を変える取り組み。立場の異なる 5 社のリアルな声から見えてきたのは、技術の巧拙だけでなく、現場の巻き込み方や組織への浸透プロセスこそが、AI 定着の分かれ道になるということでした。

なお名古屋開催では、Kiro と Amazon Quick を実際に体験いただけるハンズオンセミナーも計画しています。本イベントで紹介された取り組みを自社で試してみたいとお考えの方にご活用いただける内容となっています。

最後に、ご登壇いただいた企業の皆様、ご参加いただいた皆様に、重ねて御礼申し上げます。本イベントの内容についてご質問やご相談がございましたら、お気軽に担当営業までお声がけください。皆様の AI 活用の取り組みを、AWS として全力でご支援してまいります。

執筆者

Amazon Web Services Japan シニアソリューションアーキテクト 福嶋 拓