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ドコモがAWSでオンライン接客カウンターを実現した方法

ピアズ: 吉井 雅己
AWS: 小林剛士, 中川悠

このブログ記事は、株式会社ピアズ OL接客事業本部 企画開発部長 吉井雅己 とAWSシニアソリューションアーキテクト 小林剛士、AWSソリューションアーキテクト 中川悠が共同で執筆し、株式会社NTTドコモ コンシューママーケティング戦略担当部長 西廣政治が監修しています。

イントロダクション

2022年、日本最大級の携帯電話会社である株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)は、Amazon Chime SDKを利用したオンライン動画カスタマーサポートソリューション「dサービスオンラインカウンター」の展開に成功しました。全国のドコモショップの店舗に展開され、現在では毎月60000件超の通話をサポートしています。

(出展: 株式会社ピアズ)

本記事では、ドコモが店舗接客ソリューション専門のコンサルティング会社であるピアズをパートナーとして、 Amazon Chime SDKを活用し、顧客満足度向上、売上向上、業務効率化を実現した顧客体験のモダナイゼーションについてご紹介します 。

状況

世界情勢が不安定になると、ドコモは来店客数を管理し、店頭での待ち時間を短縮するために、来店予約制に移行しました。 しかしその結果、来店客1人あたりの滞在時間が限られてしまったことで、ドコモの営業担当者は、お客様からの問い合わせに対応するのが精一杯で、新しいサービス提案のためのコミュニケーションを開始できなくなってしまいました。ドコモは、これを販売機会の損失と捉え、専門の営業担当者をスケーラブルに配置することで、顧客体験の向上と成約率の向上を図るデジタル変革の取り組みが必要となりました。

これに対して私たちピアズは、長年にわたる店舗接客ノウハウ、カスタマーコンタクトセンターの運営経験を活かして貢献できる分野と考えました。ドコモは、ピアズと協力し、オンラインカウンターを全国に2 ,160店舗(2023年3月31日時点)のドコモショップへ展開しました。 「dサービスオンラインカウンター」は、来店したお客様と営業担当者をビデオ会議でつなぎ、専門的な知識や新しいサービスの提案など、お客様からのお問い合わせに対応し、ワンストップで契約を完了させることができます。

(出展: 株式会社ピアズ)

ソリューションの概要

私たちピアズは、APIを利用することで素早く実装でき、かつ必要に応じてビデオ通信の設定にアクセスし調整することができるリアルタイムビデオ通信サービスを探していました。いくつかの選択肢を検討した結果、Amazon Chime SDKを使えば、費用対効果の高い方法でWebRTC会議を簡単に立ち上げることができ、必要に応じてスケールし、APIを通じて会議を管理・維持することができることがわかりました。Amazon Chime SDKは、ネットワーク状況の変化に応じて音声と映像を自動的に調整し、モニタリングや分析のために会議のログを出力し、UIも完全に制御可能であるため、一貫した体験を提供することができます。また、Amazon Chime SDKは、多くの機能をビルディングブロックとして提供しているため、必要な機能だけを必要な時に柔軟に使用することができます。 私たちは、AWSのチームと密接に連携して実装設計を行い、ドコモのソリューションの立ち上げに成功しました。

AWSのAmazon Chime SDK担当GMであるSid Raoは、「Amazon Chime SDK の機能を最大限に活用してもらえるように、成功に向けて正しい方向へ進んでいることを確認できるように、私たちは開発の初期段階から ドコモ様およびピアズ様 と緊密に連携してきました。」と述べています。「私たちは、彼らのソリューションで会議データをキャプチャできるように、Amazon Chime SDK のMedia Capture Pipelineに早期にアクセスできるようにしました。また、背景ぼかし機能の挙動に関しての彼らからのフィードバックをもとに、私たちは背景ぼかしver 2.0のリリースに尽力し、彼らの要件に合うレベルまで背景ぼかしのクオリティを向上させました。ドコモ様とピアズ様の更なる業務拡大を期待しており、 私たちも引き続きサポートを続けていきます。」

「dサービスオンラインカウンター」では、お客さまが選んだテーマに詳しいオペレーターにビデオ会議がつながるため、ドコモは店頭業務の効率化と顧客満足度の向上を実現しました。また、商談の様子をデータで可視化し、成功した商談を分析することで、導入後の成約率を20%以上向上させることにも成功しました。オンラインカウンターソリューションが提供する一般的な機能の一部を以下に示します。

(出典: 株式会社ピアズ)

2022年初頭、ドコモはまず「dサービスオンラインカウンター」を数店舗に試験導入したところ、UXや内部運用の向上が見られました。この結果を受けて、ドコモは2023年に様々な方面への利用拡大を予定しています。

「店頭スタッフとの会話はもちろん、専門スタッフが必要なお客様や、お客様をサポートするために必要なスタッフの増員など、特定のテーマがある場合に「dサービスオンラインカウンター」を活用するハイブリッドモデルを現在試験的に導入しているところです。オンラインカウンターの構築にご協力いただいたピアズと AWS に感謝します。これは私たちにとって大きな財産となりました。このオンラインカウンターの利用を複数のシーンで広げていく予定です。」 とドコモの西廣政治氏は述べています。


(出典: 株式会社ピアズ)

テクニカルソリューション

「dサービスオンラインカウンター」は、トラフィックの負荷分散、高可用性アーキテクチャ、水平スケーラビリティ、高セキュリティ、高耐障害性を考慮し、AWSの上に構築されています。このソリューションは、AWSのフルマネージドデプロイメントサービスを利用して、ソリューションパッケージとして簡単にデプロイできるように構築されており、各顧客の要件に合わせてUXをカスタマイズすることが可能です。以下は、使用されたインフラとマネージドサービスを特徴とするハイレベルなソリューション図です。

(出典: 株式会社ピアズ)

このプロジェクトに必要な機能の1つは、会議を録画して、会議のアーカイブを事後分析に利用できるようにすることでした。 Amazon Chime SDKは、私たちの要求にマッチしたMedia Capture Pipelinesを提供してくれました。また、Amazon Chime SDKが提供する背景ぼかしや仮想背景、ボイスフォーカス(ノイズ除去)もオプションてとして活用しました。
背景をぼかす機能は、在宅勤務のオペレーターや自宅から電話をかけてくるお客様のプライバシーを守るために必要な機能でした。このような機能を自社で構築するとなると、より多くの労力と時間を要することになります。また、ボイスフォーカスは、オペレーターとお客様同士の会話におけるバックグラウンドノイズを最小限に抑え、音声の明瞭度を向上させるのに役立ちます。AWSは、ゼロから構築するには大変なこれらの機能を提供してくれるので、私たちは重要で製品の差別化要因となる機能の開発に集中することができました。

結論

ピアズでは、品質や機能に高い要求を持つ企業のお客様を相手に仕事をしています。Amazon Chime SDKの柔軟性により、サービスの差別化を図ることができ、お客様に提供できる強力なソリューションとなりました。最終的には、ドコモをはじめとした当社のソリューションを活用するお客様にご満足を頂き、今後もAmazon Chime SDKの機能拡張とともにソリューションの革新と機能拡張を続けていきます。

Amazon Chime SDKを使えば、Voice FocusEcho ReductionBackground Blur and ReplacementなどのML機能を使って、リアルタイム通話、映像、メッセージ機能をアプリケーションに簡単に追加することができます。Amazon Chime SDKには、音声・映像キャプチャ、コンテンツ共有ストリームに加え、Media Capture Pipelinesと呼ばれるミーティングイベントやデータ メッセージをキャプチャする機能が備わっています。Amazon Chime SDKの詳細はこちらをご覧ください。