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「AWS Women’s Well-Architected ハッカソン」レポート
クラウド上に新しいシステムやサービスを開発するとき、アイデアをカタチにする「アーキテクチャー」を作ることが必要となります。AWS では、2021 年 9 月 25 日、AWS Dev Day において、アーキテクチャーで競うハッカソン「AWS Women’s Well-Architected ハッカソン」を開催しました。チャレンジしたのは女性エンジニアのみなさんです。テーマの「Stay Connected ~ つながる楽しさをアーキテクトしよう」。このテーマを実現する魅力的なビジネスアイデア & アーキテクチャーが生み出されました。このブログではハッカソンの準備段階から決勝戦に至るまでの流れと結果について述べることとします。
なぜ女性エンジニアにフォーカスしたのか / コロナ禍でのハッカソン
2019年の調査「2019年版情報サービス産業基本調査(一般社団法人情報サービス産業協会)」によると、全 IT エンジニアのうち、女性が占める割合は約20%だとされています。開発人材の不足が懸念される中、また、国を挙げて女性活躍が謳われている今、より多くの女性がこのプロフェッションに従事し活躍することが望まれます。しかし、開発を学ぼうとしても、学習用の環境や教材、そしてどのように学べばよいのかわからない、など、いくつか二の足を踏んでしまう要素が見られます。そこで、初学者の皆さんの背中をもう一押しする何かがあればいいのではないか、と AWS は考えました。そして若手の女性エンジニアの方々を対象としたハッカソン(正確にはアーキテクチャーソン)「AWS Women’s Well-Architected ハッカソン」の開催に至ったのです。しかし、このハッカソンでは通常と異なり、対面で 1 日~ 2 日などチームが一緒に過ごすことはできませんでした。期間中はリモート環境ですべてのディスカッションや作業、メンタリングを行わなければなりませんでした。また、ほとんどのチームがあまり面識のない人同士で結成されました。それでもこの後にご紹介するとおり、大変完成度の高いすばらしいアーキテクチャーが次々と生み出されました。
AWS Women’s Well-Architected ハッカソン とは
ハッカソンのテーマは「Stay Connected ~つながる楽しさをアーキテクトしよう」。2021 年夏は、COVID-19 が発生してから1年と少しが経過していましたが、職場でも学校でも、それまでとは違う人とのつながり方に違和感ややりづらさが感じられた時期でした。このハッカソンでは人や組織などと「つながる楽しさ」を実現するアプリをアーキテクチャーで表現することを追求しました。参加者は学生部門、一般部門に分かれてチームを結成し、ビジネスアイデアとそのビジネスアイデアをカタチにするためのアーキテクチャーを成果物としてコンペティションにのぞみました。その他、以下のような審査基準と流れでハッカソンが進められました。
- 審査基準
- ビジネスアイディア : 50%
- アイデアが実現可能性を伴う明確な問題解決を
- 特定のユーザー像に対して行っており、
- 一定の新規性が確認されるもの
- アーキテクチャー : 50%
- クラウドを基盤とするアーキテクチャーがデザインされており
- AWS Well-Architected フレームワークの基準である
- スケーラビリティ、可用性、パフォーマンス、コスト効率、セキュリティのうち、少なくとも 2 つ以上に適合していること。
- ビジネスアイディア : 50%
- ハッカソンの流れ
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- チームビルディング
- アイデアソン(ビジネスアイデア創出)
- ビジネスメンタリング
- アーキテクティング
- AWS Well Architected Framework 勉強会
- アーキテクチャーメンタリング
- プレゼンテーション作成
- プレゼンテーションメンタリング
- 予選
- 決勝
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ファイナリストとそのサービス
学生部門、一般部門に分かれて予選を実施した結果、決勝進出は 4 チームとなりました。以下にファイナリスト各チームと開発したサービスについてご紹介します。
「Ring Trip」(旅行 SNS)
チーム名;Team おだんご(鳥山 菜海子 氏、濱野 栞 氏、武松 未来 氏)<学生部門>
- サービス概要
- 旅行プランをたてやすく、人と観光地の輪をつなげる「旅行 SNS」サービス
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- アーキテクチャー
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- デモ画面
「アトラスピーキング(仮)」(話し方トレーニングアプリ)
チーム名:チームぽてと(塚 佳子 氏(CODEAL株式会社)、横山 和音 氏(フレックシステムズ株式会社)<一般部門>
- サービス概要
- リモート会議などが増え、「話し方」が重要になっている昨今。しゃべり癖を指摘し、聞き手に与える印象をフィードバックすることでしゃべり方の改善につなげるサービス
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- アーキテクチャー
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- デモ画面
「platto-station」ぷらっと話してたのしくつながる
チーム名:どやねん・なんもだよ(牧野 有恵 氏(フリーランスエンジニア)、斎藤千佳 氏(クラスメソッド株式会社)、上條 芳美 氏(株式会社スマートバリュー))<一般部門>
- サービス概要
- コロナ禍で在宅勤務などが増え、一緒に働く人の「人となり」が見えづらくなっている今、「雑談」の必要性が感じられる。その雑談を通じてつながりを可視化する。共通の話題の提供などの会話サポート機能、プロフィール共有機能などで仕事や趣味に関する情報を共有。仕事や趣味に人とのつながりを通して広がりと幅を持たせる。
- アーキテクチャー
- デモ画面
働く女性のための 新感覚!コミュニケーションアプリ「隣のバーチャル世界」
チーム名:なにわ娘(伊藤 博美 氏(トレノケート株式会社)、泉 里佳 氏(情報技術開発株式会社)、新宅 史菜 氏(オムロンソフトウェア株式会社)<一般部門>
- サービス概要:
自分のペースで、程よい距離感で参加できるSNS。その場限りのゆるいつながりを実現する。
- アーキテクチャー
- ロードマップ
審査結果
2021年9月25日(月)AWS Dev Day Online Japan スペシャルセッションとして決勝戦が開催されました。ファイナリスト、審査員ともにリモートで参加するなか最終プレゼンが行われました。
そして、厳正なる審査の結果以下の結果となりました。
優勝:「働く女性のための 新感覚!コミュニケーションアプリ『隣のバーチャル世界』」なにわ娘
準優勝:「アトラスピーキング(仮)」:ちーむぽてと
入賞:「platto-station」:どやねん・なんもだよ
学生部門 優勝:「Ring Trip」:ちーむおだんご
オーディエンス賞:「アトラスピーキング(仮)」:ちーむぽてと
受賞された皆さん、おめでとうございました!
決勝戦のもようはこちらから映像で見ることができます ( 53 分 44 秒)。ぜひご覧ください
全体講評
まずは、コロナ禍にあって、対面で会うことができないなかのハッカソンとなり、場所が離れているだけでなく、一度もあったことのない人どうしがチームメンバーとなるなど、通常とは異なる環境で行われたハッカソンでした。その中で強力なチームワークを発揮し、短期間のうちにこれだけの成果を出されたことに、感動を覚えました。また、ビジネスアイデアを検討するにあたっては、すべてのチームでユーザー像を明確にし、ユーザーが持つ課題を明確化することが十分に行われていました。いくつかのチームでは、この短期間のうちに想定されるユーザー層へのヒヤリングや調査などを実施していたほどです。そして、アーキテクチャーについても、今回はアプリ開発まで行わないということもあり、Amazon GameLift, AWS AppSync など、先進的な機能を持つサービスも盛り込んだワクワクする内容のものとなりました。優勝した「なにわ娘」はこうした先進的なサービスをふんだんに盛り込み、「ゆるくつながる」という今の時代にマッチしたアイデアと完成度の高いプレゼンテーションもあいまって審査員、そしてオーディエンスの支持を多く集めました。「ちーむぽてと」は話し方トレーニングという目の付け所の素晴らしいビジネスアイデアとリアルデモを交え、強いインパクトで多くの人をひきつけました。また、「どやねん・なんもだよ」「ちーむおだんご」ともに Well-Architected フレームワークを十分に活用しながら実現可能性の高いアーキテクチャーを構築されました。
審査員も、オーディエンスの皆さまも素晴らしいアイデアとアーキテクチャーに触れることができ、幸せな時間を過ごすことができました。「なにわ娘」「チームぽてと」「どやねん・なんもだよ」「Team おだんご」のみなさん、本当にありがとうございました。
- 視聴者の声
アンケートを取ったところ、以下のとおり多数のコメントをいただきました(抜粋)。- どのチームも完成度が高く、実際にサービス化して使用したいなぁ、と思いました。
- 近代の課題に合わせた企画・サービスが面白い。サービスの実装について、AWSのフルマネージドサービスをフル活用し運用を軽減している工夫が非常に良いと思いました。
- 皆さん生き生きされており自社のメンバーにも同じようなマインドを持ってほしいと羨ましく思いました。
- アイディアを出すところから具現化するところまでとても刺激になりました。このようなイベントに参加してみたいです
- Well-Architectedを意識したハッカソンということでハードルが少し高い気がしましたがどのチームも AWS Well-Architected を考慮しつつきちんとユーザーニーズのありそうなプロダクトに仕上げていたのが素晴らしいと思いました。
まとめ
開発エンジニアになるためには、さまざまなスキルが必要になります。この「AWS Well-Architected Architeture ハッカソン」で取り上げたのは、ビジネスアイデアとアーキテクチャーでしたが、アーキテクチャーを作る上で是非参考としていただきたいのが、ハッカソンの名前にもある「AWS Well-Architected」です。AWS Well-Architected は、クラウドアーキテクトがさまざまなアプリケーションやワークロード向けに高い安全性、性能、障害耐性、効率性を備えたインフラストラクチャを構築する際に役立ちます。AWS Well-Architected では、6 つの柱 (優れた運用効率、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス効率、コストの最適化、持続可能性) に基づいて、お客様とパートナーがアーキテクチャを評価し、スケーラブルな設計を実装するための一貫したアプローチを提供しています。ぜひ、アーキテクチャー構築の際にはご活用いただければと思います。
「AWS Well-Architected Architecture ハッカソン」が開催された2021年9月はまだ世界中がコロナ禍にあった時期でした。2022 年の今、少し回復傾向にあるとはいえまだ油断できない状態が続いています。この環境下で開発者がスキルアップを続けるために、AWS のシニアエバンジェリストの亀田 治伸が提唱している「学びの方程式」をご紹介します。
「決めた時間はやってみる」「アウトプットを最初に宣言する」「楽しそうな人と交わる」これら3つが結果を出すことにつながる、というものです。ぜひ参考にしてみてください。
チームで短期間で開発し、プレゼンしてアウトプットするハッカソンはこの「学びの方程式」に合致したスキル向上に最適な方法の一つです。秋はスキルアップに最適な季節です。ぜひ皆さまもさまざまなところで開催されているハッカソンに参加されてみてはいかがでしょうか。