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【日本初開催】AWS Unicorn Day Tokyo 2025 ─ スタートアップのデベロッパーとエンジニアのための一日
スタートアップに関わるデベロッパー・エンジニアを対象としたテックイベント「AWS Unicorn Day Tokyo 2025」が、2025 年 9 月 2 日(火)に東京都渋谷区の東郷記念館で開催されました。会場では、スタートアップ各社によるセッション発表やブース展示が行われました。本記事では、イベント概要や展示エリアの様子、キーノートセッションの内容をレポート。スタートアップの可能性が交差した一日を振り返ります。
「AWS Unicorn Day Tokyo 2025」とは
「AWS Unicorn Day Tokyo 2025」は、スタートアップに関わるデベロッパー・エンジニアが実践的な学びを得られるイベントであり、今回が日本での初開催となります。
セッションでは、Seed / Early フェーズから Mid / Later フェーズまで、幅広いお客さまが登壇。加えて、アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社(以下、AWS ジャパン)からも複数の社員が登壇しました。プロダクト開発の設計戦略から生成 AI 活用、AI エージェント型 IDE「Kiro」の活用方法まで、多岐にわたるテーマが語られました。発表概要は、イベントページをご覧ください。

「Customer Experience Demo Zone」全体

AWS ジャパンの展示ブース
また、会場内の展示エリア「Customer Experience Demo Zone」には、協賛の NVIDIA 社や Creator’s X 社、Preferred Networks 社、Livetoon 社の最先端技術や事例が並びました。AWS ジャパンも、ファッションコーディネートの生成や英会話練習を可能にする AI のデモ、お客さまの事例などを展示いたしました。来場者の方々は最新のソリューションを実際に体験しながら、理解を深められていました。
キーノートセッション

AWS ジャパン Head of Startup Solutions Architect 濱 真一
ここからは、イベント冒頭のキーノートセッションの模様をレポートします。まず、AWS ジャパン Head of Startup Solutions Architect の濱 真一が登壇し、本イベントが参加者にとっての新たな気づきや交流の場になることへの期待を語りました。
続いて、AWS のスタートアップチームが掲げる「スタートアップが世界を変え、大胆なアイデアを実現できるよう支援すること」というミッションに触れ、リスクを取って挑戦するスタートアップと共に働けることへの誇りを述べました。
また、多くのユニコーンスタートアップが AWS を選ぶ理由として「チーム」「サービス」「メカニズム」の 3 点を挙げ、それぞれを解説しました。
1 つ目はチーム。AWS には、グローバルで 33 万社以上のスタートアップを支援してきた経験豊富なメンバーが多数在籍しており、プロフェッショナルによる多角的なサポート体制が強みです。
2 つ目はサービス。240 を超える多種多様なサービスを「ビルディングブロック」として組み合わせ、迅速にアプリケーションを構築できます。これにより、MVP 開発後の機能拡張や事業のピボットにも柔軟に対応可能なアーキテクチャを実現できるのです。
3 つ目はメカニズム。スタートアップの成長を支える多様なプログラムとして、最大 10 万ドルのクレジットを提供する「AWS Activate」、B2B スタートアップの販路拡大を支援する「AWS パートナーネットワーク」や「AWS Marketplace」などがあります。さらに日本独自の取り組みとして、スタートアップの CTO を表彰する「Startup CTO of the Year」や、技術経営者向けカンファレンス「Startup CTO Night & Day」などコミュニティ活動への貢献も挙げました。
濱は最後に「AWS はみなさまのパートナーとなって一緒に未来を築きます。日本のユニコーンスタートアップがさらに増えていくことを切に願っています」と締めくくりました。

AWS ジャパン シニア生成 AI スタートアップソリューションアーキテクト 針原 佳貴
続いて登壇した AWS ジャパン シニア生成 AI スタートアップソリューションアーキテクトの針原 佳貴は、生成 AI 時代におけるスタートアップの動向と、それを支える AWS のテクノロジーと支援体制について語りました。
針原はまず、AI/ML ユニコーンの 96% 以上が AWS を利用しているというデータを示し、さらに日本のスタートアップにおける AI 活用の現状を紹介しました。国内スタートアップの 84% がすでに AI を導入しており、大企業の 68%、日本全国平均の 43% を大きく上回る水準に達しています。
スタートアップ各社の先進的な取り組みを支える基盤として、AWS が提供する AI スタックを「インフラ層」「ツール層」「アプリケーション層」の 3 層構造で紹介しました。
インフラ層では、最新の NVIDIA Blackwell GPU や AWS 独自のチップ Trainium・Inferentia に加え、NVIDIA H100 GPU が 1 個搭載された小規模な Amazon EC2 シングル GPU P5 インスタンスを提供開始したこと、Amazon SageMaker HyperPod による大規模クラスタ構築も可能であることを説明しました。
ツール層では、複数の基盤モデルを API 経由で利用できる Amazon Bedrock を中核とし、Claude、Amazon Nova などのモデルを統合しています。さらに Amazon Bedrock Marketplace を通じ、パートナー企業各社が提供する 100 種類以上の特化モデルへのアクセスも可能だと述べました。
アプリケーション層では、対話形式や仕様書ベースでの開発を実現する AI エージェント型 IDE「Kiro」など、実際の開発を支えるサービスを紹介しました。
加えて、スタートアップの技術活用を後押しする支援プログラムについても言及しました。2023 年に 17 社のモデル開発を支援した「AWS LLM 開発支援プログラム」を発展させ、2024 年からは「生成 AI 実用化推進プログラム」としてモデル利用者の支援も対象に拡大。さらに経産省と NEDO が推進する基盤モデル開発事業「GENIAC」においては、計算資源や技術サポート、コミュニティ形成、事業化まで幅広く連携していると説明しました。

株式会社Preferred Networks 共同創業者 代表取締役 最高技術責任者 岡野原 大輔 氏
ここからは、GENIAC 採択事業者の一社である株式会社Preferred Networks より、共同創業者 代表取締役 最高技術責任者の岡野原 大輔 氏が登壇しました。岡野原氏は、同社の 2014 年の創業以来、産業向けの AI 実装を軸にしつつ、AI ソリューションや基盤モデル、計算基盤、さらには AI チップまで垂直統合開発を進めてきたことを紹介しました。
同社の生成 AI 基盤モデル「PLaMo」は、データ収集から学習まで一貫して自社開発しており、日本語において高い性能を発揮しています。最新版「PLaMo 2 Prime」はコストパフォーマンスにも優れ、すでに Amazon Bedrock 上から利用可能です。さらに「PLaMo」を翻訳専用にチューニングした「PLaMo 翻訳」は、文脈理解に強みを持ち、複雑な文章も高精度に処理可能。汎用原子レベルシミュレータ「Matlantis」は、国内外の製造業で急速に利用が拡大しています。今後は GENIAC 第 3 期の一環として、Vision Language Model の開発を進める予定です。
岡野原氏は、これらの先進的な取り組みを支える基盤として AWS が不可欠であると解説しました。経営層レベルでの強固なパートナーシップが築かれており、AWS 幹部が Preferred Networks 本社を訪れて議論を重ねるなど深い連携を行っています。
また、生成 AI 開発における大規模データ生成には AWS 基盤が欠かせず、Amazon SageMaker HyperPod などの活用によりインフラ管理を最小限に抑え、エンジニアが研究開発に集中できる環境を実現していると説明しました。さらに「PlaMo」や「Matlantis」をエンタープライズ顧客に展開する際には、セキュリティや可用性、スケーラビリティといった要件を世界水準で満たす AWS の信頼性が大きな役割を果たしています。
その後、岡野原 氏の講演に続き、再び登壇した針原は、ソフトウェア開発が「AI エージェントの構築」へと大きくシフトしていると解説しました。一方で、エージェントを本番環境に導入するにはセキュリティやスケーラビリティなど多くの課題が残るとしました。その解決策として新サービス Amazon Bedrock AgentCore を発表。エージェント開発に必要な機能をビルディングブロックとして提供し、AI 時代の新たな基盤になると述べました。
最後に、AWS の機能やプログラムの 9 割以上が顧客のフィードバックから生まれる「Working Backwards」の文化に触れ、今後もスタートアップの声に基づき支援を続けていく姿勢を示しました。
おわりに
「AWS Unicorn Day Tokyo 2025」は、エンジニアやデベロッパーが最新技術や実践的な知見を共有し合う貴重な場となりました。ここから生まれたネットワークや学びが、次のユニコーン企業を生み出す力になることを願っています。AWS は今後も、スタートアップ各社を支援するためにさまざまなイベントを開催していきます。Youtube より本イベントのダイジェスト動画を公開しておりますので、よろしければご覧ください。