楽しみながら学べる AWS BuilderCards の遊び方、そして日本語化に込めた思い
Author : 山口 正徳 (AWS Community Hero)
こんにちは!AWS Community Hero の山口 (@kinunori) です。みなさん、AWS のサービスやアーキテクチャを楽しみながら学べるトレーディングカードゲーム AWS BuilderCards をご存知でしょうか ? 私は AWS re:Invent 2023 の会場で初めて AWS BuilderCards をプレイしてその楽しさを知り、日本に戻ってからも会社の同僚や JAWS-UG (日本 AWSユーザーグループ) コミュニティの仲間とプレイしています。さらに日本語でプレイする環境を作りたく、AWS BuilderCards を日本語に翻訳しました。
この記事では AWS BuilderCards の簡単な遊び方、日本語化に込めた思いを紹介します。
AWS BuilderCards とは
AWS BuilderCards は、Amazon Web Services が提供するクラウドサービスや、サービスを組み合わせたアーキテクチャを学べるカードゲームです。
サービスを組み合わせてアーキテクチャを構成する思想は、ビルディングブロックと呼ばれます。AWS BuilderCards を通じて AWS が提供している数多くのサービスを組み合わせて「可用性が高く」、「柔軟性があり」、「拡張性のある」、「セキュリティが適用された」システムを作り上げる Well-Architected なアーキテクチャを学ぶことができます。
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AWS BuilderCards の入手方法
AWS BuilderCards は、本稿を執筆している 2024 年 4 月時点で一般販売されておらず、AWS re:Invent などの AWS イベントで限定配布されたもののみです。現時点では、全国の JAWS-UG がオフラインで開催しているゲーム体験イベントに参加をすることができます。
もし、AWS BuilderCards を持っている方がこのプレイガイドを読んでいましたら、ぜひ会社の仲間、コミュニティの知り合い、友達と一緒にプレイしてください。
AWS BuilderCards の日本語化に込めた思い
AWS の学習は座学やワークショップなど手を動かして学ぶことはもちろんですが、自分の理解や考えを他の人と共有し、フィードバックを得ることが大切と考えています。例として、JAWS-UG が開催する勉強会に参加して、参加者や登壇者と情報交換することがありますが、きっかけがなければ話しかけることも難しい状況があるかと思います。(実際に私も JAWS-UG の勉強会に初めて参加した時はそうでした)
AWS イベントや JAWS-UG の勉強会などで AWS BuilderCards をプレイする機会があれば、テーブルを囲んだ人同士で会話にきっかけが生まれます。「このサービスを先日触ったことがあって便利だった」、「このアーキテクチャはこういう使い方もできるのではないか」などコミュニケーションが生まれ、情報交換のきっかけになることを期待しています。
AWS BuilderCards は英語のみだったため、多くの日本の方が AWS BuilderCards をプレイできる環境を作るための第一歩として日本語化を行いました。
AWS BuilderCards の日本語化は山口、AWS Security Hero の吉江さん (@Typhon666_death) で企画し、翻訳作業を山口、AWS Community Builder の榎本さん (@coosuke) にて対応しました。
日本語化にあたっては AWS BuilderCardsの原作者 David Heidt さん、AWS コミュニティマネージャーの沼口さんにご支援を頂きました。ありがとうございました。
AWS BuilderCards の遊び方 (簡易版)
ここでは AWS BuilderCards の遊び方を紹介します。簡易版としていますので各カードの詳細説明、上級者向けの遊び方などは省略しています。詳細な遊び方を知りたい方は、AWS BuilderCards 日本語コンテンツプロジェクトページ を参照ください。最新のルールなどもこのページで更新しています。
基本的なルール
- プレイ人数 : 2 人~ 4 人
- ターン制プレイ
- Well-Architected Card が山札からなくなるとゲーム終了
- ゲーム終了時に Well-Architected Card ポイント総数が最も高いプレイヤーの勝利
Well-Architected Card (ウェルアーキテクテッド・カード) が無くなるまでターンを重ねます。Well-Architected Card が山札から無くなるとゲーム終了です。ゲーム終了時に Well-Architected Card に記載されたポイントの総数が最も高いプレーヤーが勝者となります。
Starter Cards (スターターカード)
Starter Card (スターターカード) はゲーム開始時に各プレイヤーに配布されるカードです。Starter Card は、既存のシステムがクラウドにリフトするイメージで、上向きの矢印が記載されています。
カードの左上には S マークがプリントされ、4 つの色で各色それぞれ 10 枚あります。プレイヤーは同じ色のカードを 10 枚手元に持った状態でゲームを開始します。
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Well-Architected Cards (ウェルアーキテクテッド・カード)
Well-Architected Card は、1 ポイントと 3 ポイントの 2 種類があります。Well-Architected Card は AWSome (オーサム) クレジットでのみ購入可能です。
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BuilderCard (ビルダーカード)
Builder Card (ビルダーカード) は、左上に数字が記載されたカードです。Amazon EC2 や AWS Lambda など AWS のサービスやツール・フレームワークがアイコンとセットで記載されています。Builder Card には、カードによってさまざまな効果や効果の発生条件があります。Builder Card は、【TCO (コスト) で購入可能な Builder Card】と【AWSome (オーサム) クレジットで購入可能な Builder Card】があります。
【TCO で購入可能な Builder Card】
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【AWSome クレジットで購入可能な Builder Card】
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【ここに注意しよう !】
購入に必要な TCO (コスト)、購入に必要な AWSome クレジットはカードを購入するために必要なポイントです。黒で記載された数字が TCO、オレンジで記載された数字が AWSome クレジットです。
画像の Amazon EC2 カードを購入するには、TCO 4 ポイントが必要となります。
Amazon EC2 Autoscaling は、AWSome クレジットが 2 ポイント必要となります。(TCOでは購入できません)
エフェクト (カードの効果) とは ?
カードによっては、Builder Card を 1 枚多く引いたり、他のカードと組み合わせることでクレジットを増やしたり、購入回数を増やすといった特殊効果を発動する Builder Card もあります。この特殊効果をエフェクトと呼びます。
プライマリーエフェクト (上段に記載されたエフェクト) とセカンダリーエフェクト (下段に記載されたエフェクト) があります。各 Builder Card のエフェクトは 1 つの組み合わせのみ発動可能です。
セットアップ
Starter Card を配る
各プレイヤーは、同色の Starter Card を 10 枚手に取ります。
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例えば 2 人で対戦する場合は好きな色を1 種類ずつ持ち、残りの 2 種類は箱に戻します。
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Builder Card をシャッフルする
Builder Card をよくシャッフルします。シャッフルが不十分だと同じカードが固まりゲームバランスが崩れる可能性があります。特に未使用のカードでプレイする場合は入念にシャッフルをしてください。
Well-Architected Card を用意する
Well-Architected Card は、1 ポイントと 3 ポイントの 2 種類があります。1 が上、3 が下になるように並べて、表向きにして中央に配置します。
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Marketplace を配置する
各プレイヤーから見て中央に下記のようにカードを配置します。このカードを配置したスペースを Marketplace と呼びます。
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Marketplace にある 【TCO で購入可能な Builder Card】の山から 4 枚、【AWSome クレジットで購入可能な Builder Card】の山から 1 枚を下記のように配置します。
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【ワンポイント !】
2 ~ 3 人でプレイする場合、Well-Architected Card を減らすことで AWS BuilderCards のゲーム時間を短縮できます。
- 2 人プレイの場合: 3 人と 4 人のアイコンがついたカードを除外する
- 3 人プレイの場合: 4 人のアイコンがついたカードを除外する
- 4 人プレイの場合: すべてのカードでプレイする
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プレイ開始前のプレイヤーの Starter Card 配置について
各プレイヤーは Starter Card を手に持つ、または自身のエリアにまとめて置きます。
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ゲームスタート
ターン進行の順番を決める
ターンの順番については、公式ルールでは AWS 認定資格保有数に応じて順番を決めることを推奨すると記載がありますが、このプレイガイドではわかりやすいようにジャンケンを採用します。
ジャンケンで勝った人から時計回りにターンを進行していきます。
手持ちのカードを 12 枚にしてリソースパイルをセットする
最初、各プレイヤーの手元には 10 枚の Starter Card があります。 まず初めにターンを重ねて手持ちのカードを 12 枚まで増やします。
最初のプレーヤーから時計回りに Marketplace に配置した、表向きの Builder Card のうち【TCO で購入可能な Builder Card】から好きなカードを 1 枚取ります。1 枚とったら、【TCO で購入可能な Builder Card】の山札から 1 枚を場に 補充して再度 4 枚にします。(これをリフィルといいます。)
最初は『どのカードを取ったら良いのだろうか ?』と悩まれると思いますが、プレイに慣れるまでの間は好きなサービスのカードを選ぶなど、気軽に選択してください。(慣れてくると戦略を立てることもできます)
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次のプレイヤーも同様の作業を繰り返します。一巡したら、逆順 (反時計回り) に作業を行い、手持ちのカードを 12 枚にします。
リソースパイルが 12 枚になったら、その 12 枚をシャッフルして裏返しにして 12 枚かさねて各プレイヤースペースの左端に配置します。この裏返しで配置したカードをリソースパイルと呼びます。その後、リソースパイルから 5 枚をめくり表向きにならべます。
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ターンの開始
最初のプレイヤーから時計回りでターンを進めていきます。1 つのターンは、3 つのフェーズで構成されています。
フェーズ 1 : ビルドフェーズ
ターンは、フェーズ 1 : ビルドフェーズ からはじまります。
ビルド前に手札の 5 枚のカードを確認し、Starter Card の数が Builder Card よりも少ない (Builder Card の数が Starter Card より多い) 場合は、Starter Card をリタイアさせることができます。
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リタイアしたカードは、以降は使用しないため化粧箱に入れてください。
リタイアしたターンは 1 枚少ない 4 枚でビルドする必要がありますが、次回以降、Starter Card が手札として出る確率が下がるのでターンの後半では有利になります。(Starter Card は効果が存在しないため)
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手札の Builder Card から各カードが持つ条件を確認しアーキテクチャをデプロイします。単独で効果を発揮するカードは 1 枚でデプロイすることも可能です。デプロイできない場合は、ビルドフェーズ終了となり、購入フェーズに進みます。
各カードが持つ条件が揃うとアーキテクチャのデプロイ時にエフェクト (効果) を発動することができます ! (アーキテクチャのデプロイ例は巻末のデプロイ例を参照してください。)
アーキテクチャをデプロイすることによって発生した効果と、手札の Build Cards、Starter Cards の TCO と AWSome クレジット を計算してください。TCO と AWSome クレジットは、次の購入フェーズで利用します。
この画像の場合は、
- TCO: 1 + 2 + 1 + 2 + 1 = 7
- AWSome クレジット: 2 + 0 + 0 + 0 + 0 = 2
- エフェクト: なし
となります。
![](https://d1.awsstatic.com/Developer%20Marketing/jp/magazine/2024/202405/img_japanese-builder-cards_17.edaefd18ef765819ea05100b7244dcdcb54fb861.jpg)
【ゲームに慣れてきたら】
デプロイする時には、カード効果の発動に関わらず他のプレイヤーに向けてそのアーキテクチャを説明します。他のプレイヤーは説明されたアーキテクチャが正しいものであるか判断します。
例えば、Amazon EC2 と AWS Fargate カードが手元にある場合に、「EC2 に AWS Fargate をマウントしてデプロイします !」と宣言するとします。このアーキテクチャは果たして正しいでしょうか ?
AWS BuilderCards に参加するプレイヤーは全員ビルダーです。皆さんでアーキテクチャが正しいものか議論して決定していくことができます。
ただし、Starter Card はアーキテクチャを持ちませんので、Starter Card のみデプロイする場合はアーキテクチャを説明する必要はありません。
フェーズ 2 : 購入フェーズ
次は購入フェーズです。ビルドフェーズで計算した TCO と AWSome クレジット に応じたMarketplace に並んでいる Build Card または Well-Architected Card を購入します。フェーズごとの購入回数は 1 回 (1 枚) です。
下記例の場合、【TCO で購入可能な Builder Card】の左上に記載されている TCO コストが7、【AWSome クレジットで購入可能な Builder Card】の AWSome クレジットが 2 までのカードが購入できます。
- TCO : 1 + 2 + 1 + 2 + 1 = 7
- AWSome クレジット : 2 + 0 + 0 + 0 + 0 = 2
- エフェクト : なし
購入後、Marketplace に対して【TCO で購入可能な Builder Card】を購入した場合は【TCO で購入可能な Builder Card】の山から1枚配置し、【AWSome クレジットで購入可能な Builder Card】を購入した場合は【AWSome クレジットで購入可能な Builder Card】の山から 1 枚配置します。
![](https://d1.awsstatic.com/Developer%20Marketing/jp/magazine/2024/202405/img_japanese-builder-cards_18.005dd65b591510708a7b06a8d7d86529d3f3d9da.jpg)
フェーズ 3 : ターン終了フェーズ
最後にターン終了フェーズとして、手札のカード、購入したカードをトラッシュパイルに送ります。さらに、リソースパイルから新しくカードを 5 枚を引き、手札に並べます。
リソースパイルが 0 枚になったら、トラッシュパイルにあるカードをシャッフルして、再度リソースパイルに戻し、不足分のカードを手札に並べます。ターンが終了したときは、画像のような形になります。
![](https://d1.awsstatic.com/Developer%20Marketing/jp/magazine/2024/202405/img_japanese-builder-cards_19.58e3639689a0ba6913418c21c2c0f2fc092b3973.jpg)
ゲーム終了
Well-Architected Card が売り切れるとゲーム終了
ターンを重ねていき、Marketplace にある Well-Architected Card が 0 枚になったらゲーム終了です。
ゲーム終了時に、Well-Architected Card のポイント総数を最も多く獲得したプレーヤーが勝者となります。Well-Architected Card のポイント数が同じプレイヤーが複数いた場合、所有する Builder Card の枚数が多いプレイヤーが勝者となります。
まとめ
AWS BuilderCards を簡単な遊び方、日本語化に込めた思いを紹介しました。AWS BuilderCardsは、楽しみながら他のプレイヤーとコミュニケーションをはかり、座学だけでは得られない AWS 学習の機会を提供してくれます。
現時点では AWS BuilderCards の入手方法が限られるため、プレイする機会が多くないかも知れませんが、日本全国の JAWS-UG 支部でプレイ体験会が企画されています。
筆者が所属する JAWS-UG 千葉支部でも定期的にプレイ体験会を開催していますので、千葉県近郊の方は是非遊びに来ていただけると嬉しいです。
筆者プロフィール
![](https://d1.awsstatic.com/Developer%20Marketing/jp/magazine/profile/photo_yamaguhci-masanori_2023.281fbc6edcf951af5017b9d1540e58150cbb68b6.jpg)
山口 正徳
フォージビジョン株式会社 / AWS Community Hero
大手 SIer 、フリーランスを経て、クラウドインテグレーションを手掛けるフォージビジョン株式会社にインフラエンジニアとして入社。現在、同社で AWS 事業部長を務める。
JAWS DAYS 2014 への参加をきっかけに AWS に興味を持ち、2016 年から本格的に AWS を使いはじめる。2018 年から JAWS-UG 千葉支部の運営に携わるように。現在「APN Ambassador / 2020 APN AWS Top Engineers」であり、全世界共通の認定プログラムである AWS 公式の「APN Ambassador」のひとりでもある。
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