はじめに
こんにちは。Network Specialist TAM の藤井です。
皆さまは、Amazon Virtual Private Cloud (VPC) とオンプレミス環境を接続する ハイブリッドネットワーク接続 の監視をどのように実装されているでしょうか。単純な死活監視から、グレー障害 に備えたきめ細かな品質/パフォーマンス監視まで、その手法は様々かと思います。
本記事では、Amazon CloudWatch Network Synthetic Monitor (Network Synthetic Monitor) を活用した、ハイブリッドネットワーク接続の品質監視について解説します。特に、冗長構成を採用したハイブリッドネットワークにおけるオブザーバビリティ (可観測性) の実装に焦点を当てます。これから監視体制や仕組みの構築を検討される方々にとっても、有益な情報となれば幸いです。
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1. 冗長構成におけるネットワーク品質監視の課題
2. Network Synthetic Monitor の基礎知識
Network Synthetic Monitor は、2023 年 12 月にリリースしたマネージド型のハイブリッドネットワークの監視・観測サービスです。 Direct Connect または Site-to-Site VPN 経由のハイブリッドネットワークにおいて、エンドツーエンドでのネットワーク健全性の可視化を実現します。仕組みとしては、VPC のサブネット内に Network Synthetic Monitor 専用の Elastic Network Interface (ENI) を配置し、そこからオンプレミス側の機器 (正確には機器にアサインされた IP アドレス) に対して定期的に監視プローブを送信。これにより、その ENI から監視対象機器までの「通信経路」のパケットロス率や遅延値などの重要メトリクスを収集し可視化します (図 1 参照)。
※ Network Synthetic Monitor の詳細なサービス説明や設定方法は割愛させていただきますが、ご興味のある方は、AWS ブログ 「Amazon CloudWatch Network Synthetic Monitor でハイブリッド接続をモニター」を是非ご参考にしてください。
図 1. Network Synthetic Monitor のメトリクス情報 (マネージメントコンソールでの Network Synthetic Monitor 概要画面)



3. AWS Direct Connect 冗長構成におけるネットワーク監視の実装例
本実装例では、AWS 推奨の「クリティカルなワークロードの高い回復性」に基づくネットワーク構成を採用しています。構成は以下の 3 つの主要セグメントで構成されています:
お客様データセンター (オンプレミス環境)
AWS Direct Connect ロケーション (複数拠点)
AWS 環境 (Direct Connect Gateway、AWS Transit Gateway、VPC)
図 2. ネットワーク構成図
冗長構成の特徴
監視の実効性
4. Network Synthetic Monitor の実装における推奨事項
- 単一 AZ 故障に備えて、AZ が異なる複数の VPC サブネットを Network Synthetic Monitor プローブの送信元としてご指定ください。
- Network Synthetic Monitor モニター毎に 2 つの専用 ENI が VPC サブネット内に自動作成されますので、(特に、大量にモニターを作成される際は) 対象 VPC サブネットの IP アドレス数の利用状況をご考慮ください。
- 本記事の公開時点におきまして、一部 AWS リージョンでは Network Synthetic Monitor が未サポートとなっております。Network Synthetic Monitor の導入をご検討の際は AWS 公式サイトより 利用可能なリージョン をご確認ください。
- オンプレ側の監視対象の機器は、ENI からの監視プローブ (ICMP、またはTCP) に応答可能な機器をご利用ください。
- オンプレ側のファイアウォールや ACL などのセキュリティポリシーにて監視プローブの通信を許可してください。
- Amazon CloudWatch Alarm や SNS と連携し、お客様のシステム/ネットワーク要件に沿った閾値監視や自動通知の導入をご検討ください。
- 共有型の Direct Connect (ホスト VIF など) をご利用の場合は、冗長化や監視において Direct Connect パートナー様の制限が加わることがあるため、詳しくはサービスを提供しているパートナーの技術窓口にご確認ください。
5. まとめ
本記事では、Network Synthetic Monitor を用いたハイブリッドネットワーク接続の実践的な監視実装について詳しく解説しました。
ハイブリッドネットワーク接続においては、AWS クラウド内のアーキテクチャだけでなく、オンプレミス側の機器構成やネットワーク設計を考慮した監視手法が不可欠となります。お客様の構成や通信要件に沿ったネットワーク監視を実装することで、有事の際の迅速なイベント検知が可能となり、サービスの迅速な復旧につながります。
本記事の内容が、ハイブリッドネットワーク環境における包括的な監視実装や監視体制の強化を検討されている方々の実務に役立つことを願っています。
筆者プロフィール
アマゾン ウェブ サービス ジャパン合同会社
シニア ネットワーク スペシャリスト テクニカルアカウントマネージャー
10 年以上、データセンターやキャンパス、バックボーンなどを含むオンプレミスネットワークの設計、構築、運用に従事した後、AWS ジャパンに入社。現在は、AWS エンタープライズサポートにご加入のお客様向けにネットワーク関連のコンサルティングや技術支援を担当しています。

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