お客様事例/エンターテインメント

2023 年
株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム

コミックス・ウェーブ・フィルム、AWS のレンダリング管理ツールとストレージを活用。『すずめの戸締まり』では 約300台のクラウドレンダーファームを活用

約 300 台

同時レンダリングの台数

最大 6,202 タスク、2,221 ジョブ

1 週間あたりのレンダリングタスクとジョブ

最大 1,205 時間

1 週間あたりのレンダリング時間

7 日分

ストレージで取得可能なバックアップ日数

概要

アニメ映画『君の名は。』や『天気の子』などの制作を手がける株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム(以下、CWF)。同社は 2022 年 11 月公開の映画『すずめの戸締まり』の制作において、レンダリング管理ツールに AWS Thinkbox Deadline、ストレージに Amazon FSx for NetApp ONTAP を採用。AWS Thinkbox Deadline により、最大で約 300 台の同時レンダリングが可能となり、作品制作でクラウド環境が活躍しました。

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© 2022「すずめの戸締まり」製作委員会

ビジネスの課題 | 繁忙期を迎えるにつれハードウェアが乱立し、管理負荷が増大

作家マネージメント、アニメーション映画の製作・制作・劇場配給・パッケージ販売、海外セールスまで一気通貫で手がける CWF。制作に必要な IT 環境を管理しているシステム管理部門は、最新作『すずめの戸締まり』の制作において、前作『天気の子』の反省を踏まえて「クリエイティブを支援するシステム構築・運用・保守の実現」を目指しました。特に課題となっていたのが、レンダリングとファイルを保存するストレージの 2 点です。

レンダリングについて前作では、CG 部と撮影部が異なるレンダリング管理ツールを使っていました。そのため、レンダリング管理ツールごとにエラーの確認が必要となり、トラブル対応の煩雑化を招いていました。レンダリング管理ツールの複数運用により、レンダーリソースの不足も加速し、最初に 14 台導入したレンダーサーバーは最終的には 40 台程度まで増えました。「ハードウェアの追加ごとに発生するキッティングの手間や、仕様による振り分け、グルーピングの手間、さらには機器の電源と発熱、収納場所の確保などさまざまな問題が発生し、対応に苦慮していました」と語るのは、システム管理部の都川眞栄氏です。

ストレージについても、前作ではオンプレミスの共有ストレージ 1 台で運用を開始したものの、制作が進む過程でさまざまな問題が発生し、都度ストレージを追加してきました。「ストレージの乱立により、データ管理が属人化しました。また、ユーザーの接続数が想定以上に増えて転送速度に問題が発生するなど課題が山積でした」(都川氏)

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AWS にはメディア & エンターテインメント専門チームがあり、ストレージやネットワークだけでなく、さまざまな面で親身になって対応いただき、とても心強く感じました”

都川 眞栄 氏
株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム
システム管理部 

ソリューション | レンダリング管理ツールを AWS Thinkbox Deadline に統一

CWF はレンダリングの課題解決に向けて『すずめの戸締まり』の制作では、レンダリング管理ツールを AWS Thinkbox Deadline に統一し、クラウドレンダーサーバーを構築することにしました。AWS Thinkbox Deadline は、大規模なレンダリング処理において、クラウドを含めた多様なリソースが活用できるツールで、多くのコンテンツ制作ソフトとの連携に対応しています。

「当初から AWS Thinkbox Deadline の活用が念頭にあったため、他のクラウドを検討する余地はありませんでした。クラウドレンダーサーバーの構築を相談する中で、AWS にはメディア & エンターテインメントチームがあり、ストレージやネットワークだけでなく、さまざまな面で親身になって対応いただき、とても心強く感じました」(都川氏)

クラウドレンダーサーバーの構築にあたり、同社はスケーリングとコストを考慮して Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2)スポットインスタンスの活用を決定。ユーザーにはサブミット時にオンプレミスとクラウドを意識せずに利用できるように努めました。全社のレンダリング管理ツールを AWS Thinkbox Deadline で統一した後、まずは 2021 年 9 月にオンプレミスのレンダーサーバーで運用を開始し、2022 年 9 月には CG 部でクラウドレンダーサーバーの運用を開始しました。オンプレミスとクラウド間は AWS Direct Connect で接続。ユーザーは AWS Thinkbox Deadline 経由で、オンプレミスやクラウドのレンダーサーバーが利用できるようになっています。

ストレージについては、メインストレージを一本化する方針としました。さまざまな課題を解決したものの、映像制作の過程でIOPS(1 秒あたりの I/O 数)に起因する速度低下が発生。そこで、2022 年 7 月に Amazon FSx for NetApp ONTAP に切り替えることで課題を解消しました。

「当初の環境は IOPS が 200 程度で、サイズの小さなファイルを大量に扱う今回の制作には十分ではありませんでした。Amazon FSx for NetApp ONTAP に切り替えたところ IOPS は 21,600 となり、想定していた予算内で IOPS の問題をクリアすることができました」(都川氏)

AWS と CWF 内のローカル環境は、AWS Direct Connect を使って 10Gbpsの帯域で接続しているものの、物理的な距離のために小さなファイルを大量にやり取りする際の速度遅延が問題となりました。そこで、同社はローカル環境にキャッシュ機能(FlexCache)を置くことでレイテンシーの課題を克服しています。

アーキテクチャ

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導入効果 | クラウド環境だけで最大約 300 台の同時レンダリングが実現

レンダリングの運用では、撮影部はメインで使用しているソフト上で動くプラグインのライセンスがクラウドでの運用に適していなかったこともあり、オンプレミスのサーバーのみを利用。上記プラグインの制限がなく、CPUパワーを必要とするレンダリングが大半を占めるCG部では、オンプレミスとクラウドのレンダーサーバーを使い分けながら使用しています。

「CG 部においては、クラウド環境だけで最大約 300 台の同時レンダリングが実現しました。その結果、最終的に 1 週間で最大 6,202 タスク、2,221 ジョブの処理が実現し、最大 1,205 時間分のレンダリングを実施することができました」(都川氏)

ストレージについては、CG 部を除いたすべての部署で Amazon FSx for NetApp ONTAP を活用。前作から約 1.6 倍のデータ量(55.61TB)、約 1.8 倍のファイル数(1690 万)にも耐えることができました。懸念事項となっていたDR(ディザスタリカバリ)対策としても、安心できる運用環境が実現しています。

「これまでウイルス感染などの被害を被った際の迅速な復旧対策が課題となっていました。オンプレミス環境のバックアップは前日分までが限界ですが、Amazon FSx for NetApp ONTAP を導入し、7 日分のバックアップが取得可能になったことで、仮にウイルス感染した際もすぐにリストアして作業を続けることができるようになりました」(都川氏)

都川氏は今回のプロジェクトを次のように振り返ります。

「元はデザイナーの私自身、パソコンの知識がある程度で、AWS は初めての経験でした。AWS には必要なドキュメント類が揃っているので自分たちで解決しやすく、相談すれば必要なサポートが受けられる AWS のメディア & エンターテインメントチームはとても心強い存在でした。パートナーについても、私たちの課題を考慮し、要件や実力にみあったベンダーを紹介していただき、非常に助かりました」(都川氏)

「映像制作者は環境のスピードやレスポンスに敏感ですので、オンプレミス並みの手触りを目指してクラウド活用を進めていきます」(都川氏)

カスタマープロフィール: 株式会社コミックス・ウェーブ・フィルム

『君の名は。』や『天気の子』、『すずめの戸締まり』を手掛けるアニメーションスタジオ。
アニメーション映画の企画・制作・配給からビデオグラムの販売・輸出入業務、作家マネージメント、版権管理業務まで行う。

都川 眞栄 氏

都川 眞栄 氏

ご利用中の主なサービス

AWS Thinkbox Deadline

AWS Thinkbox Deadline はスケーラブルかつ柔軟なレンダリング管理を提供します。

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Amazon EC2

Amazon Elastic Compute Cloud (Amazon EC2) は、極めて幅広く、詳細な機能を提供するコンピューティングプラットフォームを提供します。

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Amazon FSx for NetApp ONTAP

Amazon FSx for NetApp ONTAP は、AWS クラウド内のフルマネージド共有ストレージで ONTAP の一般的なデータアクセスおよび管理機能を使えるようにします。

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AWS Direct Connect

AWS Direct Connect クラウドサービスは、AWS リソースにつながる最短のパスです。ネットワークトラフィックは転送中に AWS グローバルネットワークに残り、公開インターネットにアクセスすることはありません。

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