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2025 株式会社サイバーエージェント

サイバーエージェント、『ABEMA』のサッカー中継のハイライト動画作成を AWS の AI/ML サービスで自動化し開発期間を短縮

サービス

概要

メディア事業やインターネット広告事業などを展開する株式会社サイバーエージェント。同社の AI オペレーション室は、動画配信事業『ABEMA』のサッカー中継においてゴールシーンなどを AI で検知し、ハイライト動画や SNS への投稿文を自動作成するプロダクトを、Amazon Bedrock や Amazon Rekognition などの AI/ML サービスで開発しました。この結果、一人当たりが担当するハイライト動画の工数が大幅削減の見込みとなり、より多くのハイライト動画をリアルタイムに SNS に投稿できるようになります。

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課題・ソリューション・導入効果

ビジネスの課題

映像の切り出しから SNS への投稿までの作業フローを自動化

「21 世紀を代表する会社を創る」をビジョンに総合インターネットサービスを展開するサイバーエージェント。同社は生成 AI の活用を推進する専門組織『AI オペレーション室』を 2023 年 10 月に新設しました。

「事業領域や職種を問わず、全社で生成 AIを活用して企業競争力を高めることがミッションです。2026 年までにサイバーエージェント全体でオペレーション業務の 6 割削減を目指しています」と語るのは、執行役員で AI オペレーション室 室長の上野千紘氏です。

それに先駆け、2023 年 9 月には全社員を対象とした『生成 AI 徹底活用コンテスト』を開催。約 2,200 件のアイデアが集まった中から採用された施策の 1 つが、サッカーのハイライト動画を AI で自動生成するプロダクトの開発です。AI オペレーション室 CTO で Developer Expert of AWSの小西宏樹氏は次のように語ります。

「動画配信の『ABEMA』では、国内外のサッカーの試合をライブ配信しています。その際、流入数の増加に向けてゴールシーンなどのハイライト動画を 30 秒ほど切り出して SNS にリアルタイムで投稿しています。これまではこれらの作業を内部のスタッフによる人力で対応していました。そこで、映像の切り出し指示から SNS への投稿までの作業フローを自動化し、業務を効率化することが狙いです」

従来は人手による作業のため、切り出す映像の選択は属人化しやすく、バズる場面の判断はサッカーにある程度詳しい人でないと難しいです。ABEMA の成長に伴い、配信する試合数も増加傾向にあり、作業者の負担が大きくなっていました。

「人依存の作業は、今後の ABEMA に大きく影響を及ぼすことから、AI オペレーション室のミッションとしてハイライト動画の AI 生成プロジェクトを 2024 年 4 月に立ち上げました」(小西氏)

ソリューション

AWS の AI/ML サービスを活用してハイライト動画を自動生成

ハイライト動画の自動生成に向けて同社は、AI/ML サービス中心とした AWS のマネージドサービスを採用しました。AWS 選定の理由は、膨大なサービス群の中から、要件に合うものを組み合わせて実現できる「ビルディングブロック」の考え方にありました。

「責務を明確に切り分けたうえで機能を設計・開発できるのが AWS の強みであることから、それを最大限に活かすために採用しています。また、極力マネージドサービスに寄せることで運用負荷を軽減し、価値創出に集中することにしました」(小西氏)

ハイライト動画の切り出しを業務適用させるための品質は次の 2 つを定義とし開発を進めました。これまで人が判定していたシーンを再現率 ≒100% として漏らさないことと、切り出したシーンの適合率を 80% 以上担保することです。切り出しの判定条件として、ゴールシーン、有名選手のスーパープレー、観客の大歓声など数パターンを設定し、動画、画像、音声、テキストなど複数の入力データを一元処理するマルチモーダルで検証を重ねてきました。AI オペレーション室 Engineer の松岡晃孝氏は「観客の歓声からの判定を目指して音声解析を検証してみたところ、リアルタイム性に適さなかったことから、フェーズ 1 の開発ではゴールシーンの切り出しに一本化しました」と振り返ります。AI オペレーション室 Engineer の岡修平氏は「ユニフォームの背番号から選手を抽出することもでき、現在は日本人サッカーファンから認知度の高いプレーヤーのスーパープレーをハイライトとして抜き出すことにチャレンジしています」と話します。

アーキテクチャは、主に動画データ連携、AI 検知、動画切り出しの 3 つのマイクロサービスで構成し、AI 検知の機能群では画像・動画分析の Amazon Rekognition と生成 AI サービスの Amazon Bedrock を活用しています。

「アーキテクチャは、ビルディングブロックの思想を意識しながら、イベントドリブンで各マイクロサービスをつなげています。リアルタイムに動画を切り出すため、速度とコストを意識して AWS Lambda を積極的に活用しました。さらに、得点シーンの順序を考慮して、DB は時系列に対応した Amazon Timestream を採用しました」(小西氏)

AI サービスについても判定する内容に応じて Amazon Rekognition と Amazon Bedrock の使い分けや、アプリケーションロジックでの判定などコストとスピードの両立を図っています。「例えば、AI でも文字読み取りで手書きは機械学習、印刷文字は生成 AI といった使い分けや、AI を使わずアプリケーションロジックのみで精度が出るのであれば AI を使用しないといった工夫を重ねました」(岡氏)

導入効果

人による判定と変わらないレベルで切り出し作業工数の削減に貢献

ハイライト動画を AI で自動生成するプロダクトは、フェーズ 1 の開発が終わり、映像の切り出しからチェック作業までの自動化が実現しました。現在、SNS の投稿文を Amazon Bedrock で生成する機能の開発を進めています。

「ABEMA のマーケティングチームからは、動画作成の工数が大幅に削減できるという報告を受けています。切り取った動画に関しては、当初はゴールの前後 15 秒を切り抜いていたところを、得点が入る過程を重点的に切り取るようにしたところ、より高い評価をいただきました」(小西氏)

プロジェクトでは、AWS のマネージドサービスをフル活用したことで運用負荷を軽減し、価値創出に集中することができました。

「技術のスピードに対応するため、開発チームのスローガンとして PoC は 2 週間以内、規模は 3 人以内としています。AWS のマネージドサービスを活用することで開発時間を短縮できました」(小西氏)

今後は、よりサッカーファンの注目を集めるハイライト動画を作成し、SNS 投稿の自動化を進める予定です。さらに次のステージとして、ABEMA で配信しているその他のスポーツや、スポーツ以外のコンテンツまで幅広く対応する予定です。

「AI オペレーション室は立ち上がったばかりだったため、AWS のサポートには助けられました。特に質問に対して常にプラスアルファの付加価値を回答いただけるので、非常にありがたく思います。AWS には引き続き支援をいただき、最新情報の提供を期待しています」(小西氏)

AI オペレーション室としても、同社の主力事業である ABEMA で生成 AI を活用した業務効率化の成功事例を示せたことは大きいといいます。

「社内でも注目度の高い ABEMA で、なおかつ注力分野であるスポーツのジャンルで AI を使って競争力を生み出すことができたことは、大きな実績になりました。AI オペレーション室として、今後もさまざま事業領域でプロジェクトを立ち上げながら、会社の競争力を継続的に高めていきます」(上野氏)

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社内でも注目度の高い ABEMA で、なおかつ注力分野であるスポーツのジャンルで AI を使って競争力を生み出すことができたことは、大きな実績になりました

上野 千紘 氏

株式会社サイバーエージェント 執行役員 AI オペレーション室 室長

アーキテクチャ

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株式会社サイバーエージェント

メディア事業、インターネット広告事業、ゲーム事業、投資育成事業を展開。「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」をパーパスに、あらゆる産業のデジタルシフトに貢献することを目指す。新しい未来のテレビ『ABEMA』は、テレビのイノベーションをコンセプトに、いつでもどこでも繋がる社会インフラを目指して展開。開局以来、多様なジャンルの生中継を実施し、大規模な同時接続時にも優れた視聴体験を提供している。

取組みの成果

  • ≒100% ハイライトシーンの再現率
  • ハイライトシーン切り出し自動化による動画作成工数削減
  • マネージドサービス選定による、開発価値創出への集中

本事例のご担当者

上野 千紘 氏

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小西 宏樹 氏

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松岡 晃孝 氏

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岡 修平 氏

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