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2024 株式会社フェリシモ

フェリシモ、開発環境のリリースプロセスを改善し、AWS サービスによる CI/CD 環境を構築してビジネスのスピードを向上

小売業

概要

ファッション、雑貨、手作りキットなどの自社企画商品をカタログや EC サイトなどを通じて提供する 株式会社フェリシモ。IT にもいち早く積極投資をしてきた同社ですが、クラウドシフトを進めていく中で、各種業務システムの構築/ 保守を異なる開発ベンダーによって行ってきたため、運用品質や社内での管理コストの増加が問題となっていました。そこでアマゾン ウェブ サービス(AWS)上に複数のベンダーで運用できる CI/CD 環境を構築し、品質向上や管理工数低減につなげています。
A creative workspace features two wall-mounted displays with neatly arranged Felissimo colored pencils in a rainbow gradient above a wooden desk decorated with plants, books, a globe, and papers.

課題・ソリューション・導入効果

ビジネスの課題

複数のベンダーが関わるシステム管理の見直し

神戸市に本社を置くフェリシモは、オリジナル商品を開発し、ファッションから生活雑貨、手作りキット、美容品、食品まで幅広いアイテムをカタログや EC サイトを通じて顧客に提供しているダイレクトマーケティング企業です。近年ではレストラン事業、自社のノウハウやバリューチェーンを活かした BtoB 事業にも力を入れています。同社は 1970 年代より自社システムの開発を開始し、1990 年代にはインターネットビジネスへと進出しました。2010 年頃からは EC サイトで AWS の利用を始め、以後、オンプレミスのシステムを順次クラウドシフトさせてきました。

「クラウド化は徐々に進めており、ただ移行するだけでなくクラウドネイティブなアーキテクチャへと技術を刷新できるよう、体制整備を強化しています」と語るのは、ビジネスプラットフォーム本部 IT 推進部 部長の山下直也氏です。

フェリシモでは、業務システムごとに異なるベンダーによって構築/保守が行われてきました。しかし、AWS へ移行し、同一システムでのマルチベンダー開発に取り組むにあたり、運用品質の違いや管理コストの増大が課題となってきました。ソースコードのコンフリクトやリリース前に各所で調整が必要な状況を見直し、標準化と統合管理を進める必要がありました。

「基幹システムは適切に管理できているものの、システムの分散化・疎結合化を進めていく際に開発プロセスの標準化ができていなかったため、フェリシモ担当者やベンダーごとに独自のルールで運用していました。ベンダーが増えていくにしたがって、社内の管理コストや不透明な部分が増えてきました。また、IT 内部統制として必要な変更証跡が個別に管理されており、監査対応に工数がかかるのも問題でした」(山下氏)

そこで、今後も分散化・疎結合化させていく IT システムの管理コスト・運用コストの削減を目的とした開発標準・リリースプロセスの整備を行うことにしました。2020 年頃、以前から付き合いのあった株式会社フェイスポートに、デファクトスタンダードな変更管理ツール Git をベースにしたマルチベンダーでの変更管理ルールの策定、更新作業の自動化と管理の一元化を可能にする CI/CD ツールの導入、リリースプロセスの標準化について相談しました。

山下氏は「アプリケーション/インフラ双方に精通しているフェイスポートであれば、相談した内容に対して積極的に提案をいただけるなど、インフラの内製管理を目指す当社に伴走してくれるスタイルが構築できると考えました」と振り返ります。

ソリューション

内部統制を維持するため、AWS サービスで CI/CD 環境を構築

フェリシモは CI/CD 環境の実現に向け、各ベンダーが別々に管理していたソースコードを AWS CodeCommit によってGit リポジトリに一元化。そして適切な運用のため、独自のブランチ戦略を構築し、各ベンダーと共有していきました。CI/CD ツールについてはさまざまなサービスを試し、AWS CodePipelineAWS CodeBuildAWS CodeDeploy を採用。基幹システムほか社内システムの要件としてセキュリティを最優先し、SaaS 型のサービスは外部からのアクセスが発生する可能性があるため、プライベートに通信を完結できる AWS のサービスを選択したのです。またマルチベンダーのコミュニケーションミスを避けるために、タスク管理ツールも導入。AWS CodePipeline によるデプロイ時に、基幹システムと共通のチケット管理システムへ自動連携し、共通の手法で、監査証跡として記録を残す仕組みも構築しました。

ビジネスプラットフォーム本部 IT 推進部 基幹システムグループ 上席係長の笹岡太郎氏は「当社の基幹システムのリリースプロセスと変更管理は 20 年以上厳格に管理されており、AWS 環境でもこれらの内部統制をおろそかにしたくないと考えました。一連のプロセスをどのように構築するか、マルチベンダー対応時の障害や問題点を洗い出し、当社として譲歩する部分と、監査などのため必須となる部分を確認して構築していきました」と説明します。

フェイスポートは、インフラ構築の基準の共通化と運用効率アップのため IaC(Infrastructure as Code)の支援も行いました。フェリシモのビジネスプラットフォーム本部 IT 推進部 インフラ基盤グループ グループリーダーの畑佐哲也氏は「環境構築時に、手作業でのミスを防ぐことができるようになりました。まだ組織すべてには展開していませんが、共通化によってアプリケーション施策準備のボトルネックを解消できるため、全体に広めていきたいです」と語ります。ビジネスプラットフォーム本部 IT 推進部 インフラ基盤グループ 主任の竹内章人氏も「それまでインフラエンジニアとしてコードを書くことが少なかったため、慣れるまで時間がかかりましたが、今では IaC のメリットを感じています」と語ります。

導入効果

リリースプロセスの改善でビジネスを加速

マルチベンダーでのブランチ戦略と CI/CD 環境の導入によってリリースプロセスが整備されたため、柔軟なリリースが可能となりました。「以前は関係するベンダー間でリリース前にコードのコンフリクトを避ける調整を行っていたため、月に 1 回程度のリリースに制限していました。今では 3~4 回リリースできるようになっています。開発リソース不足を理由に機能改善を見送ることもありましたが、各ベンダーの得意分野を活かした新しいサービスの開発や効率化など、細かく対応できるようになりました」(笹岡氏)

インフラ運用の内製化も実現し、IT サービスを迅速に導入できるようになりました。「社内の業務システムや業務支援において、特にデータ連携に力を入れていますが、AWS 環境の構築を自分たちで行えるようになったことで、スピード向上というメリットを実感しています」(山下氏)

フェリシモではすでに 50 以上の AWS アカウントを管理しており、その効率化もフェイスポートがサポートしています。アカウント管理の効率化について畑佐氏は「今もアカウントは増え続けています。AWS 環境のマルチアカウント管理強化の一環で AWS Control Tower を使ったインフラセットアップの効率化を行っていく予定です」と語ります。竹内氏も「インフラ内製化によって、私たちが動かなければ事業が動き出さないというプレッシャーも感じていますが、フェイスポートの担当者からアドバイスをもらえるのは心強いです」と語り、笹岡氏も「詳細を伝えなくても、こちらの想定以上の提案をいただけるので非常に頼りにしています」と評価しています。

山下氏は今後について、「クラウド活用は AWS を主軸に考えています。フェイスポートには現在は一部のシステムだけを担当してもらっていますが、徐々に依頼する領域を広げていきたいです。私たちがやりたいことに対するリソース不足を支援していただける関係を作っていきたいです」と期待を語っています。 

Felissimo company logo in Japanese, white stylized text on a dark background.
社内の業務システムや業務支援において、特にデータ連携に力を入れていますが、AWS 環境の構築を自分たちで行えるようになったことで、スピード向上というメリットを実感しています

山下 直也 氏

株式会社フェリシモ ビジネスプラットフォーム本部 IT 推進部 部長

アーキテクチャ

Architecture diagram illustrating the use of AWS DevOps services including CodePipeline, CodeBuild, CodeDeploy, CodeCommit, Lambda, and Amazon S3 for both development and production environments at Felissimo. It also shows deployment to Amazon EC2 instances within VPC private subnets and ticket management integration with Redmine.

株式会社フェリシモ

神戸に本社を構えるダイレクトマーケティング企業。アパレル商品や生活雑貨、手作りキットなどのオリジナル商品を自社で企画し、EC サイトやカタログを通じて提供している。社名の「FELISSIMO」は、「最大級で最上級のしあわせ」を意味する。事業コンセプトは、事業性・独創性・社会性の 3 つが同時実現する領域で、社員が情熱的になって、企画や商品を生み出すことによって、持続可能で発展的な社会を築くことを目指している。

取組みの成果

  • クロスアカウント環境における CI/CD 環境を構築

  • インフラ管理の内製化・標準化の体制を確立

  • リリースサイクルが月 1 回から 3~4 回に増加

  • 監査証跡としての記録を自動化

株式会社フェイスポート

AWS アドバンストティア サービスパートナー

神戸、東京を拠点とし、最新の技術を駆使したシステム開発とクラウドネイティブなアーキテクチャを採用したインフラ構築でお客様のビジネスニーズを満たすソリューションを提供している。さらに、AWS 運用の内製化を目指す顧客に対して CCoE 構築支援も実施。これまでの経験とお客様の声に基づき、プロジェクト管理の効率化にフォーカスした文書管理システム「SD fammit」なども提供している。

Feissport logo in blue cursive script on a transparent background

本事例のご担当者

山下 直也 氏

Portrait photo of a speaker featured in the Felissimo case study, wearing a gray blazer and black turtleneck, with a neutral background.

笹岡 太郎 氏

Portrait photo of a man with glasses and striped shirt, used as a speaker image for the Felissimo solution case study on the AWS Japan website.

畑佐 哲也 氏

Portrait of a speaker from the Felissimo case study, wearing a striped shirt and posing against a plain background.

竹内 章人 氏

Portrait photo of a speaker for the Felissimo case study, featuring an individual wearing glasses and a dark jacket, with a neutral gray background.