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予見予測型のデータドリブン経営への転換
販売実績データのリアルタイム可視化による業務効率化
在庫情報の可視化による在庫の圧縮
エアコンの修理関連データの分析による予兆保守の実現
概要
空調機を中心に 100 か国以上で事業を展開する株式会社富士通ゼネラル。データドリブン経営に向けた DX 推進を 2022 年度から本格化した同社は、アマゾン ウェブ サービス(AWS)を全面的に活用したデータ分析基盤を構築。RISE with SAP S/4HANA Cloud Private Edition(RISE with SAP)で管理する販売・調達・財務データをはじめ、周辺システムで管理する予算データ、修理関連データなどを一元管理しながら、予見予測型の事業への体質転換を強く推進しています。

ビジネスの課題 | 膨大なデータ集計工数を要する Excel からの脱却
家庭用エアコン『nocria(ノクリア)』をはじめとする空調機事業を柱に、情報通信システム事業、電子デバイス事業を展開する富士通ゼネラル。同社は 2021 年度から基幹システムの刷新に取り組み、2022 年度に DX 推進室を新設してデータ分析基盤を中心とした DX 推進プロジェクトをスタートしました。その背景には、全社で Excel による業務が蔓延し、データの集計・可視化・報告資料の作成に膨大な工数を要していたことがあります。
「従来の基幹システムは 35 年以上にわたり COBOL ベースのメインフレームで運用してきました。その周辺にはオープン系システムがサイロ化した状態で稼働していました。その結果、経営情報の収集・分析・予測は Excel の 2 次加工となり、データに基づく課題把握が迅速にできませんでした。
そこで、国内の基幹システムを RISE with SAP に刷新するのと並行して、データドリブン経営のためのデータ分析基盤を整備することとしました」と語るのは、デジタル改革推進部 特任部長の三輪雄一郎氏です。

データドリブン経営への変革のために、データ分析基盤整備と基幹システム刷新を並行して進めました。接続性、セキュリティ、サポートレベル、機能拡充スピードの観点からインフラ基盤とし AWS を採用したことは自然の流れであり、予見予測型の事業運営へ体質転換をサポートいただいています"
三輪 雄一郎 氏
株式会社富士通ゼネラル デジタル改革推進部 特任部長
ソリューション | データ分析基盤を基幹システムや周辺システムと連携
データ分析基盤の整備に向けて同社は、社内クラウドとしてデファクトスタンダード化していた AWS を採用し、分析サービスAmazon QuickSight、Amazon Athena、Amazon Simple Storage Service(Amazon S3)、AWS Glue を用いて構築しました。
デジタル改革推進部 DX システム基盤推進グループ エキスパートの佐々木寛氏は「採用の決め手は安価に構築できる高いコストパフォーマンスです。加えて、サービスアップデートの頻度が高く迅速なデータ分析基盤の機能高度化に期待できること、Amazon Athena の DB が高速であることを評価しました」と語ります。
並行して進めた RISE with SAP もクラウド基盤に AWS を採用しました。デジタル改革推進部 基幹システムグループ グループマネージャーの鈴木年氏は「RISE with SAP のクラウド基盤に AWS を選定するにあたり、専用ネットワークとして AWS Direct Connect を活用できること、AWS で稼働する既存システムとのデータ連携が容易であることを考慮しました」と語ります。
データ分析基盤と RISE with SAP とのデータ連携については、SAP が提供する機能拡張用 PaaS である SAP Business Technology Platform(SAP BTP)を活用。SAP BTP の SAP HANA Cloud(DB)上で RISE with SAP のデータを管理し、統合機能/API 機能の SAP Integration Suite を介して SAP データを外部から参照できるようにしています。
データ分析基盤の構築は DX 推進室が主体となって推進し、AWS エンタープライズサポートの支援を受けながら内製開発しました。
「一番の難所は、SAP HANA Cloud との接続でした。SAP からのデータ取得につまずき AWS エンタープライズサポートに相談したところ迅速な回答を得ることができ、解決することができました」(佐々木氏)
導入効果 | 販売実績のリアルタイム把握や修理部品の予兆保守などが実現
データ分析基盤は 2022 年 10 月より順次稼働を開始し、2023 年 10 月に RISE with SAP が本稼働してからは、SAP データを含めた本格的なデータ活用がスタートしました。現在、基幹システムで管理する国内販売実績や 10 日単位の在庫状況を Amazon QuickSight で可視化して分析業務に活用しています。
「これまで支店別、セールス担当者別など別々の画面で販売実績を閲覧していましたが、SAP 外で管理している量販店の販売データも Amazon S3 に集約し連携することで、1 つの画面上で閲覧が可能になりました。在庫状況については 10 日単位の推移や、品目単位の滞留状況が把握できるようになり、営業部門や物流部門の担当者が在庫圧縮の施策検討に活用しています」(鈴木氏)
データ分析基盤と連携しているシステムは、RISE with SAP だけではありません。周辺システムとも連携し、さまざまな用途で可視化や分析が行われています。その 1 つが予算管理システムです。現在、予算管理システムから取得した品目別の予算進捗データと、基幹システムの販売実績データを Amazon QuickSight 上で同時に可視化して突き合わせることで進捗管理を効率化しています。
その他、エアコンの修理受付や修理完了実績を管理する修理情報システムからデータを抽出してデータ分析基盤と連携し、修理に必要な部品や故障しやすい部品を特定しながら予兆保守を行っています。
「これまで、世界中のエアコン故障情報を週単位、月単位で集計するのに膨大な工数がかかっていましたが、データ分析基盤ができたことで集計に要する工数が大幅に削減され、故障の傾向分析により時間を割けるようになりました」(三輪氏)
データ分析基盤の構築により、これまで Excel に依存していたデータ集計・分析業務から脱却でき、信頼できるデータに基づくさまざまな意思決定が可能になったことが大きな成果です。「Amazon QuickSight を利用することで、売上の把握が迅速かつ正確になりました。また、ダッシュボードにより全員が同じ情報を見られることも大きな効果を得ています。これに伴い、社内での意見交換も一層スムーズになっています」(佐々木氏)
今後は、一部に残っている手作業の集計をダッシュボード化してさらなる業務の効率化を図る予定です。
「将来的には、SAP データに加え、生産管理データや、IoT プラットフォームを介して取得した空調機のセンサーデータなどのデータを Amazon S3 に集約し、全社で利用できるデータレイクを構築する予定です」(佐々木氏)
同社では IT の民主化とデータドリブンへの変革に向けた DX 推進プロジェクトを引き続き推進し、さまざまな領域に拡大していく構想を描いています。
「データ分析モデルの海外展開、全社導入した生成 AI の利活用拡大、顧客接点への DX 推進、AI を活用したコールセンター業務の改革、空調 IoT クラウドを活用したエネルギー管理プラットフォームのグローバル展開と空調ライフサイクルビジネスの拡大、クラウドエンジニアを中心としたデジタル人財育成などを並行して進めています。これからも快適な空気と空間を提供するサービスビジネスを追求し、お客様や社会に提供する価値の持続的な向上を目指していきます」(三輪氏)
カスタマープロフィール:株式会社富士通ゼネラル
「Living together for our future」(共に未来を生きる)を企業理念に、空調機事業をグローバルに展開。国内では消防、防災、外食産業向けの IT ソリューション事業と、パワー半導体などの電子デバイス事業も手掛ける。主力の空調機事業では、エアコンディションの観点でウェルビーイングの創出・向上に寄与し、サステナブルな社会構築への貢献を目指している。

三輪 雄一郎 氏

鈴木 年 氏

佐々木 寛 氏
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