コンタクトセンター内での運用に切り替えたことで、障害時やシステム変更時の対応がスピーディーになり、
運用効率が格段に向上しました。テクノロジーの力でカスタマーサポートを変えていきたいと考えています。
GMO インターネットグループの一員として、クラウド・ホスティングサービスを中心としたビジネスを展開する GMOクラウド株式会社。コンタクトセンター業務を自社で運用している同社は、オンプレミス環境で運用してきたコンタクトセンターシステムを Amazon Connect に切り替え、約 6 ヶ月の構築期間を経て移行しました。カスタマーサービス部門内部で構築・管理が可能になったことで、お客様のニーズに合わせた迅速かつ柔軟なコンタクトセンター運用が実現。従来システムと比べて初期導入コスト、運用コストともに大幅な削減を実現しています。
国内最大級のクラウド・ホスティング事業者として、11 万社を超える顧客にサービスを提供する GMOクラウド。アマゾン ウェブ サービス (AWS) の導入運用を支援する『CloudCREW』など 10 種類以上のサービスをラインナップし、さまざまなニーズに応えています。近年は “ コトを IT で変えていく。”を合言葉に、IoT 事業やセキュリティ事業にも注力しています。「GMOクラウドは 24 年のクラウド・ホスティング運用実績により培ってきたノウハウや、累計 600 万枚以上の SSL サーバー証明書発行により、国内シェア No.1 の販売実績があるグローバルサインと連携し、今後も“One & 1st”を掲げ、日本初・世界初の“はじめて”を追い求めています」と語るのは、カスタマーサクセス部 部長 兼 クラウド・ホスティング事業推進部 部長の大澤啓行氏です。
多彩なサービスを提供していることから利用者からの問い合わせも多く、自社で運用するコンタクトセンターでは月間最大で 5,000 件のコールを受け付けています。コンタクトセンターは平日の 10 時~ 18 時まで、約 80 名の体制で対応。サービスの種類ごとにオペレーターを配置しています。
従来は、PBX (構内交換機) を用いたオンプレミスのコンタクトセンターシステムを利用してきました。システムの開発・運用・保守は、自社の情報システム部門に依頼することになるため、コンタクトセンター側で迅速かつ柔軟に対応できないことが懸念となっていました。クラウド・ホスティング事業推進部 クラウド・ホスティング事業推進セクション IT 推進グループの林龍作氏は「システム障害の対応を依頼してもタイムラグが発生したり、システム変更に手間と時間を要していました。今後のサービス拡大に合わせてコンタクトセンターの増席や機能拡張に対応していくためにも、自部門で対応できるシステムが必要だと感じていました」と語ります。
課題解決に向けて同社は Amazon Connect に着目。 2018 年 6 月頃より検討を開始し、評価試験の結果により採用を決定しました。
「Amazon Connect を選定した一番の理由は、自部門で構築・運用ができる容易さです。加えて、従量課金制によるコストメリットと、CRM システムと連携する CTI アダプターが用意されていたことも決め手となりました」(林氏)
開発はコンタクトセンターのスタッフを巻き込みながら内製化し、コンタクトフローも自部門で作成しました。日本のコンタクトセンター業務に合わせるためにいくつかの工夫を行ったといいます。
「日本独自の祝日を設定して受電時に休日用の音声ガイダンスを流すプログラムや窓口単位の受電率を自動更新する仕組みを開発しました。AWS のソリューションアーキテクトとビジネスチャットを活用し、ヒントをいただきながら構築しました。質問に対してスピーディーな回答をいただけたおかげで、開発はスムーズに進みました」(林氏)
Amazon Connect では、入電があると電話番号に紐付けられた顧客情報が CRM システム の画面上にポップアップされます。オペレーターは、電話番号やメールアドレスを自ら入力して検索する必要がなくなり、契約情報や過去の履歴を見ながら対応ができるようになりました。対応内容を録音した音声データも自動記録されるため、事後のトラブル回避も可能になり、オペレーターの精神的な負担も軽減されています。
Amazon Connect では業務スキルに応じたコールの振り分けやプライオリティ付けが容易に管理でき、混雑時には別サービスの担当オペレーターへ接続するなどルーティング機能が強化されました。「結果として電話応答率の向上につながり、システム障害が発生して問い合わせのコールが急増した際にも、お客様を待たせる時間が短くなりました」とクラウド・ホスティング事業推進部 カスタマーサービスセクション セクションチーフの竹村徹氏は語ります。
業務の改善と合わせて、大きな効果をもたらしたのは、初期導入コストと運用コストの削減です。大澤氏は次のように語ります。
「PBX をはじめ、コンタクトセンターに必要な機能をすべてオンプレミスで構築していたら億単位の初期導入コストがかかっていたはずです。クラウドサービスなら導入コストはゼロで、全部を合わせても 90% の初期コストの削減が実現しています。運用コストは電話を使った分だけですので、70% のコスト削減が実現する見込みです。オンプレミスなら運用保守費用もかかり、障害発生時には情報システム部門の工数が発生します。クラウドならそれらもすべてかからず、自部門内で管理ができるので運用効率も格段に向上しました」
GMOクラウドが次のステップとして進めているのが音声認識ソフトとの連携です。通話の音声を自動的にテキスト化し、蓄積したデータを AI によって分析。結果をもとに、重要事項説明などの言い忘れや NG ワードをアドバイスすることで対応品質を高めることを検討しています。管理者が個々のオペレーターの対応内容を分析しながら適宜アドバイスを送ることでスキルによるバラツキをなくし、顧客体験の向上につなげることも構想中です。
「コンタクトセンター業務をインテリジェント化して生産性の向上に寄与すると同時に、経営に対して新たな価値を提供することが狙いです。その観点では、re:Invent 2019 で発表された AI を活用したコンタクトセンター分析(VOC)ソリューション Contact Lens for Amazon Connect にも注目しています」(大澤氏)
GMO インターネットグループのコンタクトセンター業務も請け負っている同社では、自社の先行実績をもとにグループに対して自社サービスとして Amazon Connect の導入を提案し、グループ全体の業務改善や成長に貢献していく考えです。
次世代のコンタクトセンターの実現に向けて、さまざまな構想を抱える GMOクラウド。Amazon Connect および AWS に対する期待は高く、大澤氏は次のように語ります。
「AWS の最大の魅力は、絶えず進化を続けていくことにあります。リリース時点で機能面が不足していたとしても、マネージドサービスによる自動的な機能追加によって確実に成長していく。常に私たちをワクワクさせてくれる可能性を秘めています。それは日本のインターネットの一部を支えている私たちの発想の刺激にもなるので、今後も一緒にバリュープロポジションを創造していきましょう」