1.5 年以内での 3 極(アメリカ、アジア、中国)システム立ち上げ、
BtoB レベ ルのサービス品質、サーバーのコスト削減といった要件を検討した際、
すべて のニーズを満たしていたクラウドサービスは AWS だけでした。

 

田代 肇 氏 株式会社日立物流 IT 戦略本部 デジタルビジネス推進部 部長補佐

   

3PL(システム物流)、重量・機工、フォワーディングの 3 つのコア事業を通じて企業のサプライチェーン最適化を支援する日立物流。現在はコア事業を強化しながら IoT、AI、ロボティクスなど、先端技術の物流分野における実用化に向けてスマートロジスティクス(自動化/省力化)を推進しています。

同社がクラウド化に着手したのは 2014 年で、「他社と比べて周回遅れだった」と IT 戦略本部 デジタルビジネス推進部 部長補佐の田代肇氏は振り返ります。当時は e コマースの台頭や人口減などでマーケット構造が変化し、荷主のグローバル化が進行。同社も世界を意識したビジネス戦略を明確に打ち出し、IT 組織もグローバルへの対応・強化が必須でした。

同社では当時、世界 10 ヶ国で利用している在庫管理システム Global Warehouse Management System(GWMS)を日本のオンプレミス環境から提供し、DR 環境も国内で構築していました。しかし、自然災害などが発生して海外拠点の出荷が停止してしまうリスクに備え、システムの提供場所を 3 極(アメリカ、アジア、中国)に見直すことを決断。また、オンプレミスのサーバーの既存費用と比較しコスト低減も図りたいと考えました。さらに 1.5 年以内での 3 極立ち上げ、BtoB レベルのサービス品質という要件を加えて検討した結果、AWS の採用を決定しました。「当時、すべてのニーズを満たしていたクラウドサービスは AWS だけでした」(田代氏)

 

AWS 環境の構築はグループ会社の日立物流ソフトウェアが担当することになったものの、エンジニアからは「本当にアプリケーションが動くか責任が持てない」という声が上がり、日立物流社内からは「SAP のようなミッションクリティカルなシステムは載せられない」という意見も根強くありました。

そこで取り組んだのが、技術者のマインドセットの転換です。日立物流ソフトウェア ICT ソリューション本部長の吉田佑一郎氏は「自社で AWS をやらないなら他社を使うという強気な姿勢を示したところ、いずれやるなら最初から絡まないと後々の保守が大変、クラウドが本流になっていくと他の仕事も減っていくという危機感が芽生えました」と語ります。ポジティブマインドに変えるため、AWS 固有の難解な単語を技術者が知っている技術/単語に置き換える工夫も行いました。

従来の「障害を防ぐ構成」から「障害が起きても大丈夫な構成」への転換を図り障害発生への不安を払拭したところ、「仮想化技術を知っていれば何とかなる」という声も出始めました。実機が目の前にないと不便という意見にも、ほぼすべての操作がマネジメントコンソールからできる AWS ならオンプレミス環境より便利と説得したといいます。

「実際やってみると仮想化の知識が役立つ、障害は起きない、どこからでも操作ができて便利だ、ハードウェアの故障を心配しなくていいのは楽だといった声がエンジニアから上がり始めました」(吉田氏)

こうして GWMS の AWS 移行を始めた日立物流は、3 年かけて東京、バージニア、シンガポール、北京、シドニーへの展開を終了。並行して日立物流グループ共通システムである SAP ERP(FI、CO、HR)と SAP の周辺システム(経理系、人勤系、本社系)の移行にも着手。当初はマルチクラウド戦略のもと、事業系の GWMS などは AWS、SAP 含めた基幹系は他社クラウドを想定していました。しかし、評価の結果他社クラウドより AWS 環境の方が安定していることを評価して、SAP も本番機は AWS で稼動させることに決定。設計、構築、テストを実施後、2016 年 12 月末に Windows Server/SQL Server ベースで稼動している SAP ERP の本番環境を Amazon EC2 Windows 環境上へ移行しました。

SAP ERP に関しては、クラウドならではの運用ポリシーのもとサーバー費用の削減効果を最大化しています。1 つ目がサーバーの稼動時間の調整です。開発/検証系と待機系サーバーは、通常の営業日は午前 2 時〜 7 時、休業日は午前 2 時〜翌営業日の午前 7 時の時間を停止し、稼動率を抑制。次に、AWS のインスタンスタイプを見直し、利用料を低減。さらに、既存サーバーのリース解約時期を見直し、ランニングコストの低減を図りました。これらの施策によってクラウド化の投資額は 3 年以内に回収できる見込みが立ちました。実際、月額のサーバー費用は移行後の 2017 年 10 月以降、32% 低減されています。

移行後は、運用負荷が大きく軽減されました。「AWS のサーバー監視サービスによって異常時にはアラートメールが発信され、障害を未然に防止できます。異常を検知した際の情報共有も AWS のヘルプデスクとのチャット連携が可能で、障害対策時間の短縮につながっています。サーバースペックに起因する障害もインスタンスタイプの変更と再起動で対応できるため、対策時間が短縮しました」と、IT 戦略本部 経営システム統括部 部長補佐 石川博之氏は語ります。AWS 移行後はサーバー起因による大きなシステム停止もなく、安定稼動を続けています。

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日立物流では現在、5 つのリージョンで 204 個の Amazon EC2 Windows インスタンス(仮想サーバー)を中心に稼動し、利用拠点は 16 の国と地域にわたります。サーバーを新設する際はクラウドファーストとし、お客様の了承が得られないケースや AWS でサポートしていない OS 利用などの例外を除いて、AWS を採用しています。

高可用性については、データベースの Amazon Relational Database Service(Amazon RDS)を複数リージョンで保存する Multi-AZ で配置。DR 環境は、1 つのリージョンの環境を別のリージョンにバックアップとして保存するクロスリージョンにより、5 つのうち 1 つがダウンしてもバックアップ先のリージョンでカバーできるようにしました。

今後は AWS 以外のサービスも含めたマルチクラウド化を進め、ノウハウの蓄積とエンジニアのスキル向上を目指します。また、インフラの自社保有と外部委託の 2 つを仕分けながら、「持つ IT」から「使う IT」への転換を目指していく方針です。

技術面では増加するインスタンスの管理手法の確立に向けて、管理ツールの導入を検討中です。技術組織の体制もクラウド対応に向けて整備していきます。「クラウド化は単なるインフラ形式の変化でなく、業務のやり方が変わると捉え、クラウド専門チームや独立した技術研究チームの設置も視野に入れています」(吉田氏)

日立物流は今後も「グローバルサプライチェーンにおいて最も選ばれるソリューションプロバイダ」として世界に貢献していきます。

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田代 肇 氏

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石川 博之 氏

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吉田 佑一郎 氏

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SAP ワークロードの AWS 移行に関する詳細は、SAP とアマゾン ウェブ サービス ページをご参照ください。