今回の AWS を活用したライブ配信の実現により、社内が活性化し新たなアイディアが生まれています。
このように新たなビジネスに取り組むことで、地方の企業や放送局として
置かれている状況や課題を打破していきたいと考えています。

齊木 基 氏 北海道テレビ放送株式会社 常務取締役 営業統括

『水曜どうでしょう』の制作・放送で知られる北海道テレビ放送株式会社では、同番組のイベント『水曜どうでしょう祭 FESTIVAL in SAPPORO 2019』の開催にあたり有料ライブ配信を実施。従来の放送用機材を使っての配信や、外部の動画配信サービスではコスト面で課題があったため、マネージドサービスの AWS Media Services やサーバーレスアーキテクチャを採用し、ライブ配信基盤を短期間で構築しました。同社では、今回のライブ配信の成功を契機に北海道に根ざした地域放送局として、新たなビジネスの創出をさらに推進していきます。


北海道テレビ放送株式会社(以下、HTB)は、北海道初の UHF 局として 1967 年に開局した民間放送局です。バラエティ番組やニュース・ドキュメンタリー、ドラマなど、さまざまな分野の番組を制作しており、その中でも特に知られているのがバラエティ番組の『水曜どうでしょう』です。1996 年から HTB で放送が始まった『水曜どうでしょう』は多くのファンを獲得、大ヒット番組となり、全国で放送されています。「レギュラー放送は 2002 年に終了しましたが、20 年近く経った 今でもコンテンツとして生き続けています。こうした番組は全国的にも珍しいと思います」と話すのは、北海道テレビ放送株式会社 常務取締役 営業統括の齊木基氏です。DVD の販売や他局への番組販売だけでなく、さまざまなイベントやプロモーションも実施し、2020 年になった今もなおファンとのコミュニケーションは活発に続いています。

斎木氏は同社の理念と今後のビジョンについて想いを語ります。「弊社の企業理念である”HTB は夢見る力を応援する広場です”は地域のためにさまざまな広場(コミュニケーション)を作るという想いで掲げており、水曜どうでしょうもある意味”大きな広場”だと言えます。ローカル局のビジネスに置き換えると、デジタル化や大インターネット時代に入り、その広場の意味は明らかに使命感が濃くなりました。情報伝達や娯楽のデバイスが多岐になったからこそ地域のコミュニケーションの場を創造することが非常に重要になり、リアルな接触の場となるイベント、ファンコミュニケーション、ビジネス面でのプラットフォームの創出など、ローカル局の意義やチャンスがそこにあるのです。我々がこれまで進めてきたことは間違いではないのだと確信に変わってきました」と話します。

HTB では 2019 年 10 月の 3 日間、『水曜どうでしょう祭 FESTIVAL in SAPPORO 2019』を開催しました。多くの熱心なファンを集めたほか、全国 47 都道府県 200 館以上の映画館でのライブビューイング、そして新たな試みとして有料ライブ配信を実施しました。

ライブ配信を実施するに至った経緯について、北海道テレビ放送株式会社 コンテンツビジネス局 ネットデジタル事業部 兼 編成局編成部 兼 技術局放送・IT システム部の三浦一樹氏は、「祭会場に来られない方のために、そしてもっと多くの方に見てほしいという想いがありました。しかし、放送用機材や外部の動画配信サービスを利用するとコストが高騰し、ビジネスとして成り立たせることが難しい状況でした。そこでクラウドの利用を考えたのです。動画配信にクラウドサービスを使えば収支の合うビジネスとして取り組めると考えました」と振り返ります。

今回のライブ配信ではイベントをしっかりと見てもらえるような視聴環境を提供して視聴を有料とすると同時に、「今回クラウドサービスでのライブ配信にチャレンジし、コスト面や品質面での成果を形にして、今後の新しい放送局のビジネスモデル推進につなげられる実績を残したいと考えました」と三浦氏は想いを語ります。

三浦氏は以前から AWS Users Group Japan などでアマゾン ウェブ サービス(AWS)が提供するサービスの情報収集を行っており、クラウド動画配信サービスである AWS Media Services を実際に触れてみた結果、今回の有料ライブ配信が実現可能と判断しました。

有料ライブ配信サービスは、3 日間の開催期間中で 1 日 90 分 から 120 分の配信、同時視聴 1 万人を想定した要件で構築をスタートしました。イベントの中継映像をパートナーが提供する閉域ネットワークを使い Amazon Virtual Private Cloud (Amazon VPC) につなぎました。AWS Elemental MediaLive に VPC 経由で映像を入力し、AWS Elemental MediaPackage でパッケージングします。この MediaPackage から AWS CloudFront を経由して配信・視聴してもらう構成です。「そもそも Linux を使ったサーバー構築の経験がなかったこともあり、できればサーバー構築をゼロから始めることは避けたいと思っていました。ただ、それまで得ていた情報を総合して AWS のマネージドサービスと、外部の SaaS をサーバーレスアーキテクチャでつなげれば、短期間で構築できると考えました」(三浦氏)

2019 年 8 月後半から構築をスタートし、実質 2 週間ほどで実装は完了。10 月 4 日の『水曜どうでしょう祭』初日には余裕を持って間に合いました。実際に今回のサービス構築にあたって AWS の開発に割いた社内リソースはわずか 3 名。しかもこうしたサービスを開発するのはみな初めての試みでした。「公式のドキュメントやコミュニティの技術ブログが充実しており、わからないことも簡単に調べられましたし、パートナーからのコンサルティング支援も受けながら、予定通りに構築を完了させることができました」と三浦氏は評価しています。

AWS 導入事例:北海道テレビ放送株式会社 | 構成図


 

『水曜どうでしょう祭』の有料ライブ配信サービスは 2019 年 10 月 4 日から 6 日、配信の遅延・停止などの問題なく運用されました。今回の AWS での配信基盤構築をノウハウとして蓄積できたことも大きな効果と三浦氏は挙げます。「従来型の放送設備や外部のサービスの利用といったそれまでの社内の既成概念にとらわれず新しい事業を実現できたことが真の効果と言えると思います」と三浦氏は語ります。今後は、“縦割り”で各々仕事を進めていた制作部やイベント部門などの他部門と一緒にビジネスに取り組んでいくなどの効果も期待しています。また、配信には権利関係の問題がつきものですが、自社で基盤を構築したことで認証や権限、セキュリティの設定などもコントロールしやすくなります。

今回のプロジェクトは、ライブ配信単独で黒字を実現し新たなビジネスモデルの立ち上げを成功させたとして評価され、コンテンツビジネス局の局長賞を受賞しました。三浦氏は「新しい時代にキャッチアップして AWS を活用して自社開発を行い、サービスを実現できたことは、自分たちはもちろん会社全体のスキルアップにつながっていますし、今後のプロジェクトを進めていく上で社内のエンジニアを含めて大きな資産になっています」と話します。

齊木氏は、「今回のライブ配信の成功を受けて、社内が活性化してビジネスに対する意識も変わり、新たなアイディアが次々と生まれています。これからも、北海道に根ざした地域メディアとしての強みを生かして道民のニーズに応えながら、新たなビジネスを推進して北海道の発展に貢献していきたいと考えています」と展望を話します。

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齊木 基 氏

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三浦 一樹 氏


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